高度人材とは?1から教えます!

少子高齢化が進む日本社会。近年、労働力不足が叫ばれていますが、その状況はますます深刻になる一方です。そこで、日本政府は外国人を積極的に受け入れていく方針を打ち出しました。その一つが外国人の「高度人材」です。
実は、約30年前から外国人の高度人材の受け入れは行われてきました。それをさらに推進する優遇制度が2012年に始まり、これによって、優秀な外国人は日本に来やすくなりました。グローバル化が進む中で、海外の市場を見据え、「これからうちの会社にも高度人材を採用しようか」と考えている企業も多いのではないでしょうか。
今回は高度人材について、1からご説明します。
高度人材は在留資格なのか
駅やスーパー、コンビニなど私たちの生活の中にも多くの外国人を見かけるようになりました。しかし、その外国人がどうやって日本に来たのか、どんな申請が必要なのか、普段は気にすることもありませんよね。ここでは、在留資格、要件、申請方法について詳しく解説します。
高度人材とは何か
外国人の高度人材とは、高度な専門知識や技術を持った外国人のことで、海外とのビジネスや技術の開発などの場面での活躍を期待されています。日本企業が海外との市場競争に勝つためには、こういったグローバルに活躍できる優秀な人材が必要不可欠です。
そして、2012年に導入されたのが「高度人材ポイント制」です。要件をクリアすると、ポイントが加算され、そのポイントが一定以上になると、「高度専門職」という優遇措置のある在留資格を取得することができます。
では、それにはどんな要件があるのか、次の項目で見ていきましょう。
その要件とは
在留資格「高度専門職」を取得するためには、高度人材ポイント制に基づき、70点以上のポイントが必要です。そのポイントは、「学歴」「職歴」「年齢」「年収」の基礎点と「その他の実績・能力」による特別加算点の合計で決まります。
そして、少し複雑なのが、どの分野の活動をするかによってポイントが異なるところです。
その分野は、
- 高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」(例:研究者や先生など)
- 高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」(例:エンジニア、プログラマーなど)
- 高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」(例:会社経営者など)
の3つに分けられています。
多くの企業が採用する高度外国人材は、高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」に当てはまると思います。ここでは、高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」のポイント制の例を見てみましょう。
基礎点
5点 | 10点 | 15点 | 20点 | 25点 | 30点 | 35点 | 40点 | |
学歴 | 複数の分野
博、において 修士号、士号 又は専門職 学位を有して いる者 |
大学を卒業
し又はこれと 同等以上の 教育を受けた者[1] |
博士号 | |||||
職歴 | 3年以上 | 5年以上 | 7年以上 | 10年以上 | ||||
年齢 | 39歳以下 | 34歳以下 | 29歳以下 | |||||
年収[2] | 400万~
(29歳以下) |
500万~
(34歳以下) |
600万~
(39歳以下) |
700万~
(同左) |
800万円~ | 900万円~ | 1000万円~ |
特別加算
本人 | 研究実績[3] | 15点 |
(A)日本語能力試験N1取得者[4]/外国の大学において日本語を専攻して卒業した者 | 15点 | |
日本語能力試験N2取得者[5](AまたはBを獲得した者は除く) | 10点 | |
(B)本邦の高等教育機関において学位を取得 | 10点 | |
法務大臣が告示で定める大学を卒業した者[6] | 10点 | |
本人/企業 | 成長分野における先端的事業に従事する者(法務大臣が認める事業に限る) | 10点 |
企業 | イノベーションを促進するための支援措置[7]を受けている機関(法務大臣告示で定めるもの) | 10点または20点[8] |
【参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)「高度外国人材活用資料集」
採用したい外国人がこのポイント制に基づいて、70点以上あれば在留資格「高度専門職」を取得し、あなたの会社で働くことができます。
申請方法は
高度外国人材のポイント制についてわかったら、あとは出入国管理局に申請をするだけです。申請方法は、採用したい外国人が「すでに日本にいるか」「海外から呼び寄せるのか」で異なります。
①すでに日本にいる場合
採用したい外国人がすでに日本にいる場合は、その外国人は「留学」や「特定活動」など何らかの在留資格を持って日本に住んでいます。そのため、在留資格変更の手続きが必要です。
申請の流れ
- 在留資格変更申請
- 結果の通知(本人宛)
- 許可
- 入社
提出資料など詳細は、出入国在留管理局「【高度専門職1号】 在留資格変更許可申請要件」をご確認ください。またこれらの申請や準備は、基本的には申請人本人(採用された外国人)が行うものですが、企業側からの資料も必要になるので、採用した企業はフォローしましょう。
②海外から呼び寄せる場合
採用したい外国人を海外から呼び寄せる場合は、在留資格の認定を受けるほかに、現地の日本大使館や領事館でビザを発行してもらわなければいけません。
申請の流れ
- 出入国管理局で在留資格認定証明書交付の申請
- 在留資格認定証明書(COE)の発行・受け取り
- COEを海外現地へ郵送
- 日本大使館や領事館でビザ申請
- ビザ発給
- 来日上陸審査・許可
- 入社
提出資料など詳細には、出入国在留管理局「【高度専門職1号】 在留資格認定証明書申請要件」をご確認ください。ここで一番押さえておきたいポイントは、申請や審査などに1~3か月かかることです。長い場合は半年以上かかることもあるので、採用担当の方は要注意です。採用計画をしっかりと行い、余裕を持って申請をしましょう。
高度人材を雇いたい!
では、そんな優秀な高度外国人材はどこで探してくればいいの?と思ったあなた!さきほどもお伝えしましたが、現在日本にはたくさんの外国人が住んでいます。きっとその中にあなたが欲しい優秀な高度外国人材がいるはずです。
ここでは、外国人の高度人材の見つけ方、雇用の方法、注意点をご説明します。
日本にどのくらいいるのか
まず、高度人材を見つける一番の方法は、外国人留学生から探し出すことです。なぜなら、在留資格を申請する際に、申請者本人の専門・専攻と企業での業務が一致しなければ、許可が下りません。せっかく人材を見つけて採用を決めても、在留資格が許可されなければ、これまでの苦労が無意味になってしまいます。
ですから、それを防ぐには自分の会社で行ってほしい業務を専攻している外国人留学生を探すのが一番手っ取り早く、ミスマッチをなくすことができます。
そして、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の発表によると、平成30年度の調査では、日本への外国人留学生は約30万人に上ります。その中で、9割以上がアジアからの学生です。1番多い国籍は中国で、その次にベトナム、ネパール、韓国、台湾という順序になっています。アジアの市場に展開している日本企業は多いので、必要となる高度人材も留学生の中から探せるのではないでしょうか。
また、日本語能力については中国や台湾、韓国の学生は漢字圏、語順の関係から非常に伸びがよく優秀です。ネパールの学生は英語能力が高く、英語圏への進出を考えている企業には最適でしょう。
雇用方法は?
ここでは、外国人留学生から高度人材を見つけたいあなたに採用、雇用の方法をお伝えします。まず、外国人留学生向けに「うちの会社は外国人が欲しい」ということをどんどん広めましょう。そこで効果的なのがインターネットです。
まずは、自社のサイトや就活サイトに登録する際はしかりと外国人募集の旨を書きましょう。それから、ハローワークや地方公共団体、大学などが行っている外国人だけに向けた企業説明会、面接会に参加しましょう。そこで直接話すことでいい人材を見つけられる可能性も高まります。
そして、採用される外国人側としては、これまでに外国人を採用した経験がある、すでに働いている外国人がいると聞くと安心するものです。特に同じ国出身であれば、わからないことを聞いたり相談したりできるので、安心して仕事に専念できます。そのためには、まずは一人目を採用して実績を作ることです。
積極的に外国人採用の意思を示し、あなたの会社に合った高度人材を見つけましょう。
雇うための注意点は?
よい高度外国人材を見つけたら、その人材にはできるだけ長く働いて、会社に貢献してほしいですよね。そこで、高度人材を雇う際に会社が注意しなければいけないポイントをご紹介します。
雇用契約などをしっかり理解してもらう
まずは、雇用契約、条件、規則などを外国も理解できるよう翻訳するなどの準備をしっかりしましょう。雇用後のトラブル防止にもなります。
日本人社員の理解も進める
採用された外国人は、わざわざ異国の日本に来て働くことを決めたのですから、日本が好き、日本人文化に順応しようという気持ちはもちろん持っています。しかし、一緒に働く日本人社員が外国人社員を理解しようとしなければ仕事はうまく進みません。外国人を採用すると決めたら、日本人社員に向けた説明やそのメリットなどをしっかりと伝えましょう。また、飲み会などがあれば外国人社員も誘い、親交を深め、よりよい仕事ができるように努めましょう。
日本で生活する上でのサポート
外国人は生活面でもサポートが必要なときがあります。例えば、住居。外国人は入居できないと言われてしまったり、日本人の保証人が必要となったり、外国人にとって難しい問題も出てきます。安心して働くためには、住む場所はしっかりと確保したいものです。もし、必要としていれば生活面のサポートもしてあげてほしいです。・
高度人材について掴めました?
外国人の高度人材の可能性を知っていただけたでしょうか。高度人材を採用することで、海外へ事業を展開させたり、企業を多様化させ、新しいアイディアを生み出したりすることもできます。日本企業が世界で今後も活躍するためには、高度外国人材は必須です。
さあ、高度外国人材獲得に向けて、一歩踏み出してみましょう!高度外国人材はあなたの会社に新しい風を吹かし、会社を発展させる一端を担ってくれるはずです。