いま外国人雇用のチャンスが広がってきています。日本で働く外国人労働者の数は146万人と、過去最高記録を更新しました。専門技能を有する「高度人材」だけでなく、2019年からは「単純労働者」についても受け入れが認められるようになっています。

企業としても採用を拡大させるチャンスです。そこで今回は外国人労働者の受け入れ政策や新たに導入された「特定技能制度」の概要、外国人労働者との共生をはかるための環境整備についてご紹介します。

外国人採用のメリットと方法についても解説しますので、今後の採用計画を考える際のヒントになるはずです。

外国人労働者の受け入れ政策 2019:現状とは

 

単純労働

「日本は外国人労働者の受け入れに消極的だ」との声もありますが、実際に受け入れは拡大しているのでしょうか。外国人労働者の数や、この10年間での変化をご紹介します。

また数の変化だけでなく、その受け入れを拡大するための法制度や環境面での整備も行われています。従来、外国人労働者による就労は「高度な専門的分野」に限定されてきましたが、2019年からは「単純労働」にも門戸が開かれるようになりました。

外国人労働者の受け入れ政策もまた進化をしています。その概要について解説していきます。

受け入れは拡大している?

厚生労働省の発表によれば、2018年10月末時点での外国人労働者数は146万人、就業者全体に占める割合で見ると2.2%となっています。これは過去最高の数字です。2008年は48.6万人(0.8%)だったので、10年間で約3倍に増えたことになります。

データ引用:「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(平成30年10月末現在)

またその増え方も、年を追うごとに加速しているのが特徴です。2008年から2013年までの前半5年間は「0.8%から1.1%へ」という微増でした。しかし、2013年から2018年までの後半5年間を見ると「1.1%から2.2%へ」と倍増しています。

増加の背景には、高度外国人材の受け入れや留学生の受け入れが増加していること、そして技能実習制度を活用した技能実習生の受入れが広がっていること等が挙げられます。

政策➀:新たな在留資格を創設

パスポートとスタンプ

外国人労働者の数は今後も増えていくと予想されています。日本における深刻な人材難という現状から、日本政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向けた政策を打ち出しはじめました。その目玉となるのが、新たな在留資格である「特定技能1号、2号」の創設です。

従来の日本は移民の受け入れに消極的で、就労のための在留についても医者や大学教授など、高度な専門的分野に限定してきました。「高度外国人材」と呼ばれるものです。しかし政府は「特定技能」という新しい在留資格を創設することで、「単純労働」にも外国人に門戸を広げる政策転換をおこないました。

「出入国管理及び難民認定法(出入国管理法)」の改正を行い、2019年4月から新たな制度が施行されています。人手不足が顕著な14の業種に限定されているものの、政府はこの新制度によって、今後5年間で最大34万5,150人の受け入れを予想しているのです。

政策②:特定技能2号の制度で

「特定技能1号」は、介護、ビルクリーニング、素形材産、産業機械製造、電気・電子情報関連、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造、外食という14の業種が対象です。

それぞれの業種の所管省庁による試験に合格する必要がありますが、技能実習生としての経験が3年あれば試験がパスされるというのが特徴です。在留期限は通算で5年間となっています。

「特定技能2号」は「特定技能1号」より熟練した技能を要する業務が対象とされ、その業種は建設業と造船・舶用工業という2種類に限定されています。

1号との違いは在留期限が設定されていないこと、そして配偶者や子供などの家族帯同が認められることです。条件を満たせば永住の申請も可能となるのが「特定技能2号」の特徴です。

政策③:外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策

オフィス 男女

こうして外国人労働者が増えるようになると、会社が彼らをどう受け入れるかという問題だけでなく、地域社会としてどう受け入れるかという問題も出てきています。特に「特定技能2号」では家族の帯同も認められるため、言語の問題や異文化理解、生活支援といった側面でも「共生」のための環境整備が進められているのです。

その1つが「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」と呼ばれるものです。2018年12月の閣議で決定され、翌2019年6月には「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の充実について」が決定されました。

外国人との共生に向けた仕組みづくりや啓発活動、外国人に対する生活支援や教育支援、在留管理体制の構築、大都市圏への集中防止、留学生の就職促進など、様々な観点からの整備がまとめられています。詳しい内容は以下をご覧ください。英訳もあるのでこれから外国人雇用を検討している企業にも役立つはずです。

★外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(2018年12月)★

★外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の充実について(2019年6月)★

外国人労働者の受け入れ政策 2019:雇用するには

we are hiring

外国人労働者を雇用するチャンスは拡大しています。法制度や環境整備の面だけでなく、地域社会でも外国人との共生を目指す動きも次第に広がってきています。外国人を雇用するということは、企業としても大きなチャンスだと言えるでしょう。

しかし外国人を雇用するという企業は、まだ少数派です。メリットや採用の手法がわからないという担当者も少なくありません。そこで外国人採用のメリットと方法について紹介していくことにしましょう。

外国人採用のメリットは

外国人採用には様々なメリットがあります。まずは若い労働力の確保です。少子高齢化による日本の人材難は深刻です。企業としても日本人だけに限定せず、幅広い国の若者を対象に人材募集をすることは、より優秀な若者を見つけるという点でメリットになるでしょう。

また社内の活性化が挙げられます。「日本で成功したい」という思いは、熱心で勤勉な勤務態度につながります。様々な文化的背景があるため、今までにない独特の発想や行動が見られることもあるでしょう。日本人社員にも大きな刺激が与えられるはずです。

また海外への進出可能性が生まれます。外国人社員の出身国とのコネクションが増えるため、自然とその国との間でビジネスチャンスを見出す企業もあります。このように、外国人採用には日本人採用では得られないようなメリットがあるのです。

外国人採用をするには

タブレット

外国人採用をするには様々な手法があります。例えば「学校に求人を出す」「求人サイトを活用する」「SNSで募集をかける」「ハローワークを活用する」などがあります。ぜひ手軽に使えるところから試してみましょう。

外国人留学生を狙うなら、大学や専門学校、日本語学校などに問い合わせるのも1つの方法です。また「LinkedIn」(リンクトイン)等のビジネスSNSで検索し、候補者と直接連絡を取り合うというのも最近になって増えている手法です。

外国人採用を専門とする求人サイトもあります。在日外国人向けの情報サイトでNO.1とされる「Gaijinpot.com」運営の求人サイト「Gaijinpot Jobs」。バイリンガル人材専門の求人サイト「Daijob.com」が運営する「Jobs in Japan」。その他、外国人専門の紹介派遣事業を運営する会社にアプローチしてみるのも良いでしょう。

またハローワークの活用もおすすめです。ハローワークは厚生労働省が運営する職業支援サービスですが、日本人だけでなく外国人にも門戸が開かれています。そのため外国人採用の相談も可能です。また厚生労働省は、外国人就職に特化した公的機関「外国人雇用サービスセンター」の運営も行っているので、こうしたサービスを利用することも検討してみましょう。

東京外国人雇用サービスセンターのホームページはこちらから!!

また外国人採用の際には募集の出し方や選考のフローなどにいくつか必ず確認しなければならない事項があります。
外国人採用を検討している人は行政書士監修の以下の資料に目を通してしてみてはいかがでしょうか?

2019年の外国人労働者受け入れ政策は理解できましたか?

キャリアウーマン

外国人労働者の受け入れ政策や、2019年から導入された「特定技能制度」の概要などを解説しました。単純労働にも外国人採用の門戸が解放されるようになり、多くの企業にとって採用のチャンスが広がりつつあります。

外国人採用は大企業だけのテーマではありません。中小企業にとっても外国人採用にはたくさんのメリットがあります。社内の活性化や新規ビジネスの可能性にもつながっていくはずです。

制度の中には複雑なところもありますが、一つひとつ理解していけば難しくありません。採用の方法も日増しに整備され、低予算でもチャレンジが可能になりました。この記事が、より多くの企業で外国人労働者の活用を検討するきっかけになればと願っています。

★外国人雇用のルールに関するパンフレットについてはこちら

本記事のライター

渡邉 裕晃(「インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本」共著者)

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