近年、日本では少子高齢化に伴う労働人口の減少ならびに人手不足が深刻な問題となっています。
一方で観光客の急増による影響もあり、多くの業界では人材確保に向けての対策が急務とされています。

本記事では労働人口の減少における現状と、その対策について解説します。

労働人口減少の現状

出生数は過去最少を記録

厚生労働省によると、2023年の出生数は75万8631人で過去最少を記録しており、8年連続で出生数は減少しています。

それに伴い「生産年齢」とされている15歳〜64歳の人口も年々減少し、人手不足の原因となっています。
内閣府の調査では、2020年時点での生産年齢人口は約7500万人を記録しており、2065年には約4500万人にまで減る見込みです。

参考:厚生労働省 令和5年人口動態統計月報年計(概数)の概況

参考:内閣府 人口減少と少子高齢化

幅広い業種で人手不足

2024年1月に帝国データバンクがおこなった調査によると、正社員の人手不足率は52.6%となっています。

特に「建設」「物流」「医療・福祉」では7割近くの数字を記録していて、働きたいと希望する若者が少ない上に、離職率の高さも目立っている現状があります。

参考:帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査

政府の取り組みと政策

労働環境の改善と働き方改革

日本政府は労働人口の減少に対応するために、労働環境の改善と働き方改革に力を入れています。

2019年に施行された「働き方改革関連法」では、長時間労働の抑制や有給休暇の取得義務化が定められました。企業に対して労働時間の上限を設けるとともに、従業員の健康管理に対する責任を強化しています。

こうした取り組みにより、労働者のワークライフバランスの改善と、それに伴う健康的で持続的な働き方の促進が目指されています。また、テレワークやフレックスタイム制度の普及を推進することで、育児や介護と仕事を両立させやすい環境の整備が進められています。

この改革により、女性をはじめとした働き手の増加が期待されています。

外国人労働者の受け入れ強化

外国人労働者の受け入れ拡大も、政府により積極的に進められています。

2019年には新たな在留資格「特定技能」が創設され、建設業や介護業など特定の産業分野で外国人労働者の受け入れを積極的に進められるようになりました。
特定技能の創設により、即戦力として期待される外国人労働者が増加し、労働力不足の解消に寄与しています。また、2024年には対象となる業種が4つ追加され、今後もさらに外国人の働きやすい環境が整えられると予測できます。

特定技能については以下の記事で詳しく解説しています。

在留資格「特定技能」についてぜんぶわかる|制度の概要・受け入れや支援の方法・関連機関の役割をまるっと解説

労働力人口減少の対策

全体の人口が減少していることから労働力人口の減少だけを回避することは困難です。労働力人口が減少していく中で、企業が現状の業務を遂行し成長を続けるためには、企業体制の見直しが課題でしょう。

ここでは、機械化を導入し生産性を高めることや年齢や性別、国籍での判断によらない雇用対策に焦点を絞り解説します。

①生産性を高める

少ない労働力人口でも成果をあげるためには、業務削減できるところは改善し、生産性を高める取り組みが必要となるでしょう。具体的には、機械化できる業務は順次移行することや、賃金を含め社員の福利厚生や労働環境を整えることで、精度の高い仕事をしてもらうことが有効手段としてあげられています。

この2点は共に、近年問題視されている長時間労働と密接に関係しており、議論されている点です。膨大な量の業務により勤務時間は長くなり、疲労感が社員の労働意欲を減退させ、ミスや離職など負の連鎖を招く要因とされています。

政府の働き方改革の一環としても、社員の業務負担を軽減し長時間労働にならざるを得ない環境の改善を図ることは避けて通れない課題です。支払いが不要になった残業代を賃金に還元するなどして社員のモチベーションを向上させることは、質の高いパフォーマンスに繋がり、生産性を高めるためには必要とされています。

②雇用を見直す

労働力・人手不足対策として雇用の見直しが迫られています。

少子高齢化により労働力人口が減少する中で、日本経済が持続的に成長を続けるためには個々人が年齢や性別、国籍などではなく能力や適性に応じて活躍の場を得られることが重要です。

職場環境の整備

具体的な例の1つ目としては、女性の積極採用及び働きやすい職場環境の整備です。

育児休業の取得を3年に引き延ばすことや時短勤務、在宅ワークを取り入れるなどの対策は、出産・育児による女性の離職対策に一定の成果を期待できるでしょう。

労働力の多様化

2つ目の例として、労働力の多様化が挙げられます。

定年以降の労働者を年齢で判断するのではなく能力に見合った職種に積極的に採用することや、パートタイム・派遣・アルバイトなど、柔軟な雇用形態を導入することで持続的な人材の供給につながります。

外国人採用

外国人採用も近年多くの企業が取り入れている対策です。

令和5年には外国人労働者の数が約205万人を記録しており、年々増加している現状があります。また、外国人労働者の採用は単なる労働力の補充だけにとどまりません。多言語への対応や新たな市場の発掘など、企業に革新的な変化をもたらすきっかけとなります。

外国人の人材を雇用するメリットや外国人から見た魅力的な職場については以下の記事で解説しています。

グローバル企業の条件とは? 外国人の働きやすい日本の職場|メリット・おすすめ人材について解説

まとめ

労働人口減少・人手不足の現状と、その対策について解説しました。
年々深刻化している人手不足を改善するには、雇用における工夫と労働者のパフォーマンスを最大化させる職場環境の改革が必要となります。

ぜひ本記事を参考に、対策を練りましょう。