「弊社でも外国人を採用したい!」とお考えになる担当者様も多いのではないでしょうか。近年、国内での外国人労働者が増えており、外国人を積極的に雇う企業も増えてきています。外国人労働者を雇ううえで心配になるのが税金です。実際、外国人と日本人では税金の納税額も異なります。

しかし、外国人を雇いたい担当者様の中には「日本の税金だけでもややこしいのに、外国人の税金なんて勉強する時間がない。」と考えている人もいると思います。今回はそんな「外国人の税金制度がわからない」という悩みを解決するために、「外国人の税金は日本の税金と何が違うのか」を解説していきます。5分ほどで読み終わるので、ぜひ最後までご覧ください。

外国人の税金は何が違う?種類別にわかりやすく解説!

外国人でも日本に住む場合は、日本人と同じように税金を納める必要があります。特に外国人が知っておくべき税金は以下4つです。

  • 「所得税」
  • 「相続税」
  • 「住民税」
  • 「二重課税」

この4つの税金は日本人と外国人とで異なる部分があるので注意が必要です。そのため、ここからは「所得税」、「相続税」、「住民税」、「二重課税」の違いを踏まえつつ、見やすくまとめて解説していきます。

外国人の税金は何が違う?:所得税

外国人の所得税控除は日本人と異なる部分が多くあります。税金控除の中でも特に重要になってくるのが、

・「扶養控除」

・「居住者と非居住者の違い」です。

ここからは外国人と日本人の所得税の違いについて解説していきます。

外国人の所得税控除

まずは扶養控除から解説していきます。扶養控除は一定の条件をクリアすれば、外国人でも受けることができます。その一定の条件とは以下の通りです。

  • 扶養家族が16歳以上
  • 6親等内の血族及び3親等内の姻族(配偶者は配偶者控除)
  • 納税者と生計を一つにしていること。
  • 年間合計所得金額が38万円以下であること。(給与のみの場合は103万円以下)

上記の条件を満たしている場合は年齢によって控除を受けることができます。

  • 16歳以上で23歳未満の場合:63万円
  • 同居する人70歳以上の場合:48万円
  • それ以外:38万円

日本に住んでおり、その外国人の扶養家族も日本にいる場合は問題なく扶養控除を受けることができます。しかし、扶養家族が海外に住んでいる場合は注意が必要です。というのも以前、外国人が扶養控除の調査が手薄だったことにより、不正に利用されたことがありました。しかし、2015年から外国にいる扶養家族に関する調査が厳しくなり、明確な「親族関係書類」と「送金関係書類」の提出が必須になりました。この書類の手続きが少し厳しくはなりましたが、適切に扶養している実態があれば扶養控除を受けることが可能です。

居住者と非居住者では何が違う?

ここまで「扶養控除」について解説してきましたが、居住者と非居住者でも控除額は異なってきます。控除額の説明をより理解知るためにまず居住者と非居住者の定義を見ていきましょう。

・居住者

居住者と一概に言っても「永住者」と「非永住者」の2種類があります。永住者とは日本国籍を有しているか、10年の間に日本に住所・居所を有していた期間の合計が5年以上ある人です。一方で、非永住者は日本国籍を有さず、過去10年間に日本に住所・居所を有していた期間の合計が5年以下で、非居住者ではない人の事を指します。

・非居住者

非永住者は日本に住所を有さない個人で、日本に1年以上の居所を有さない人の事を指します。

納める所得税は以下の通りです。

  • 永住者-国内と海外で生じた全ての所得から
  • 非永住者-日本国内での所得と海外で生じた所得で、日本国内で支払われたものや海外から日本へ送金されたものから
  • 非移住者-国内で生じた所得からのみ

所得税は日本に長く住んでいる外国人ほど納税額は大きくなります。一方で、在留期間の短い非居住者の場合は納税額の控除が多く、納税する額も少なくなります。

外国人の税金は何が違う?:住民税

日本ではたとえ外国人でも所得のある人は住民税も納める必要があります。住民税は毎年1月1日からの1年間に得た所得全てに対して課税されます。住民税の課税の基準になってくるのが、前年中の所得金額です。納税先は居住する市町村で、その市町村からあらかじめ通知された課税額に基づき6月より納税を始めます。

外国人の税金は何が違う?:相続税

次は相続税の税金制度について解説します。

相続税はほとんどの場合、国籍に関係なく納める必要があります。しかし、外国人の場合相続税が非課税になる場合があります。課税対象になる相続財産と対象にならない相続財産の違いは相続人の住所と相続財産がどこにあるかによって決まります。唯一日本で相続税が非課税になるのは被相続人(相続財産を遺して亡くなった人)も相続人(相続財産を受け取る人)も海外に住んでいる場合のみです。

簡単にどんな時に非課税になるのかを解説していきます。

例えば、アメリカ人の男性が奥さんと日本で生活しており、その男性のお母さんが母国のアメリカにいたとします。その状態でアメリカ人の男性が相続財産を遺した状態で亡くなった場合、奥さんと男性のお母さんのどちらが相続する場合でも相続財産は全て課税対象になります。一方で、そのアメリカの男性が家庭の事情でお母さんとアメリカで住み、奥さんが日本で生活していた場合、奥さんが相続するなら全ての財産が課税対象となります。一方で、お母さんが相続するなら日本の財産のみが課税対象となります。

外国人税金の注意点:二重課税とは?

外国人 驚きの顔ここまで所得税、住民税、相続税について説明してきましたが、この3つの税金は何も調べずに納めると母国でも同じ税金を納める二重課税をしてしまう可能性があります。この二重課税を防ぐために日本では各国と租税条約を結んでいます。租税条約とは国際的二重課税を防ぐために、色々な国々で外国人の納税を免除または一部控除する条約のことです。しかし、この控除はなにもしないと受け取ることはできません。そのため、以下の書類手続きが必要になります。

  • 確定申告書
  • 外国税額控除に関する明細書
  • 外国所得税を課されたことを証する書類
  • 国外所得総額の計算に関する明細書
  • 振込先の銀行の通帳
  • 印鑑
  • 各年の控除限度額や納付することになった外国所得税の額を記載した書類

上記の書類を提出しないと外国税額控除を受けることができないので、必ず提出するようにしましょう。因みに、外国税額控除を受けることができるのは租税条約を結んでいる国だけなので、結んでいない国の外国人はこの外国税額控除を受けることができないことは覚えておきましょう。

【外国人の税金について押さえる知識】

  • 所得税は外国人でも扶養控除を受けることができる。
  • 住民税は国籍関係なく納める必要がある。
  • 相続税は被相続人も相続人も海外に住んでいる場合のみ非課税になる。
  • 租税条約を結んでいる国から来た外国人は二重課税を防ぐ外国税額控除を受けることができる。

外国人と日本人の税金制度は異なる部分が多く複雑に感じてしまった方もいるかもしれません。しかし、最も大きな違いは、外国税額控除を受けることができることです。そのため、外国人の税金に過払いがないかを調べる際は外国税額控除の見落としがないかを最初に見るようにしましょう。