外国人を採用するとき「身分系ビザ」や「就労系ビザ」といった言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
外国人が日本で働くための在留資格(ビザ)には様々な種類がありますが、「身分系」はその中でも特に注目されるカテゴリーです。

本記事では、「身分系」の在留資格に焦点を当て、その特徴やメリットについて解説します。

身分系の在留資格(ビザ)とはなにか

身分系ビザとは、出入国在留管理庁が身分や地位に応じた在留資格として設定している「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4つを総称した用語です。

これらは外国人が一定の期間以上日本に住むことを前提とした在留資格であり「活動内容を制限されていない」というのがいちばん大きな特徴です。仕事内容を限定されることなく、日本人と同じようにどのような職種でも就労が可能です。

「就労系」の在留資格との違い

身分系とは違い、就労系の在留資格は活動内容に制限があります。
就労系の在留資格は日本で働くことを目的として取得する在留資格であり、自身の持つ知識・技術を生かして働くことが前提となっているため活動内容はそれに適したものでなければいけません。

具体的にいうと「教授」の在留資格を持っている外国人の場合は大学教授や准教授・助手などの職種ではたらく必要があり、「介護」の在留資格を持っているのであれば介護施設職員やホームヘルパーである必要があるなどということです。
母国で従事した(学んだ)経験があり、上陸審査の際に就労が認められた職種にしか就くことができないということが就労系の在留資格の特徴です。

また、身分系・就労系のほかにも学習などを目的とした在留資格があり、これらは基本的に就労が認められていません。

身分系の在留資格
「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」

就労系の在留資格
「外交」「公用」「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職1号・2号」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能1号・2号」「技能実習1号・2号・3号」

それ以外の在留資格
「文化活動」「短期滞在」「留学」「研修」「家族滞在」「特定活動」
※一部特例によりアルバイトやワーキングホリデーなどの労働が可能

身分系の在留資格を持つ外国人の割合

データ出典:出入国在留管理庁:令和5年6月末現在における在留外国人数について

2023年現在、日本で暮らす外国人3,223,858人のうち身分系の在留資格を持っている外国人は1,572,663人でおよそ半数を占めています。

外国人の採用を検討する際に「特定の業務しか任せられない」と思っている企業担当者が多いですが、実際の割合を見てみると在留外国人の約半数は日本人と同様に柔軟な働き方ができるということがわかります。

4つの「身分系在留資格」それぞれの特徴

在留資格「永住者」の概要

永住者は日本での半永久的な滞在を可能にする在留資格で、これを持つ外国人をさします。

取得した外国人は「国籍を変えることなく」「在留期間の制約を受けず」「日本国内に半永久的に滞在」できます。

本人が問題を起こさない限りはほぼ無期限にわたり日本に住み続けることが可能です。

項目内容
取得要件素行が善良であること
 ※法律を遵守し、日常生活において住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいる

独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
 ※安定した日常生活が見込める目安として、年収300万円が基準となる

その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
 ※原則として10年以上継続して日本に在留していて、そのうち5年以上は「就労系在留資格(技能実習・特定技能1号を除く)」もしくは「身分系在留資格(居住資格)」を持っている
 ※罰金刑や懲役刑などを受けておらず、納税や年金、出入国管理に係る届出などを怠っていない
 ※申請日時点で付与されている在留資格の在留期間が最長である(最長の在留期間が5年の在留資格であっても、3年の在留資格であれば申請自体は可能)
 ※テロリストや反社会性力に加わっておらず、公衆衛生上の有害となるおそれがない
就労制限なし
在留期間無制限(7年に1度在留カードの更新が必要ですが、審査はありません)

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参考:出入国在留管理庁 永住許可申請

在留資格「定住者」の概要

定住者は法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める在留資格で、これを持つ外国人をさします。

定住者には「告示定住者」と「告示外定住者」があります。告示定住者は特定の国からの難民や日系外国人などが取得し、告示外定住者は配偶者と離婚・死別した方などが状況に応じて取得します。

項目内容
取得要件素行が善良であること

身元保証人がいること
 ※親戚や配偶者、勤務先担当者などによる証明が可能

ただし定住者は告示内容によって申請条件が大きく変わるため、詳細は出入国在留管理庁 在留資格「定住者」を確認してください。
就労制限なし
在留期間6ヶ月・1年・3年・5年または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)

在留資格「日本人の配偶者等」の概要

日本人の配偶者等は日本人と国際結婚した外国人が日本に居住することを認める在留資格で、これを持つ外国人をさします。

国際結婚をした場合、婚姻届の提出だけでは日本で外国人配偶者と一緒に暮らすことはできません。
特にアジア系外国人と結婚した場合は偽装結婚を疑われることも多く、審査が比較的厳しくなるといわれています。この在留資格を取得するには適切な手続きと根気強さが必要です。

項目内容
取得要件素行が善良であること

安定した結婚生活を営むに足りる資産を有すること
 ※申請者と配偶者の収入を合算して審査

社会通念上の婚姻の実態が伴っていること
 ※交際の経緯や現状の夫婦関係など、偽装結婚ではなく共同生活を営んでいることが証明できる
就労制限なし
在留期間 6ヶ月・1年・3年・5年

参考:出入国在留管理庁 在留資格「日本人の配偶者等」

在留資格「永住者の配偶者等」の概要

永住者の配偶者等は在留資格「永住者」を持つ外国人と婚姻関係にある外国人が日本に居住することを認める在留資格で、これを持つ外国人をさします。

また、永住者の実子も日本に在留する場合はこちらの在留資格が該当します。

項目内容
取得要件素行が善良であること

安定した結婚生活を営むに足りる資産を有すること
 ※申請者と配偶者の収入を合算して審査

社会通念上の婚姻の実態が伴っていること
 ※交際の経緯や現状の夫婦関係など、偽装結婚ではなく共同生活を営んでいることを証明できる
就労制限なし
在留期間 6ヶ月・1年・3年・5年

身分系の在留資格を持つ外国人を雇用するメリット

外国人採用において、身分系の在留資格を持つ候補者を選ぶことにはさまざまなメリットがあります。

雇用において日本人と同様の扱いができる

身分系の在留資格を持つ外国人は、就労制限がないため単純労働も含めて日本国内で自由に働くことができます
就労系の在留資格では、資格を取得するときに申請した業務内容のみを許可されているため、部署の異動など突発的な業務の変更は認められていません。

就労制限がない外国人を雇用することで任せられる仕事の幅が広がり、人手が不足している業務の手伝いや新しいスキルをつけてもらうことが可能になります。

手続きにかかる手間を最小限におさえられる

身分系の在留資格を持つ外国人は、在留期間やカードの更新を比較的スムーズにおこなえる傾向があります。
日本で長く暮らすことを前提に在留資格を取得していることが多く、手続きに慣れている外国人がほとんどのため、企業担当者は書類作成以外にフォローする機会はあまりありません。

また、就労制限がないため業務内容を変更するたびに再申請する必要がなく、就労系の在留資格を持つ外国人よりも管理にかかる手間が少なくすむといえます。

超高齢化社会への対応策

身分系の在留資格を持つ外国人の雇用は、今後日本が超高齢化社会へと突入するにあたって「労働力の確保」という課題に対する有効な対策となります。

身分系の在留資格は、就労系の在留資格よりも更新時の審査が寛容といわれており採用後に長期間働き続けてもらうことが期待できます。

さいごに

日本で暮らす外国人のおよそ半数は身分系の在留資格をもっています。
彼らは将来も日本で暮らしたいと考えていることが多く、日本語能力も高いです。

外国人採用を難しいと感じている企業は、まずは日本人と同じように働ける身分系外国人の採用からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

多様性のある労働力を生かし、将来的な人材不足に備えて採用活動をすすめていきましょう。