グローバル化が進むとともに人手不足が加速している現代の日本。
企業にとっては外国人雇用が問題を解決する上で日ごとに重要度を増しています。

この記事では初めて外国人採用を行う企業のために、仕組みや流れについてわかりやすく説明しています。

外国人採用を検討する際に知っておくべきこと

外国人採用を考えるうえで、前提となる知識を頭に入れておくことが大切です。ここではぜひ押さえておくべき、いくつかのポイントを紹介いたします。

なぜいま「外国人採用」が注目されているのか

人手不足の対策(人材の確保)

日本は年々人口が減少し、今後はさらに高齢化が進むと予測されています。このような人口比の偏りによって労働力が減少し、すでに一部の産業や地域では人手不足が深刻化しています。
企業として経済成長していくには、労働力はベースとなるものです。女性の社会進出、高齢者再雇用とともに、外国人雇用を始める企業が増えています。

グローバルな競争力の向上

伝統や安定性を重視する日本企業の文化は、新しいアイデアに対して保守的な傾向を持つ要因のひとつです。実際に昨今の世界的な経済発展をけん引しているIT分野などにおいて、日本は新しいアイデアの導入が遅れているとされています。

外国人が持つ高いスキルや専門知識は、日本経済における課題である「新しい技術の導入」や「ビジネスチャンスの創出」をサポートし、産業全体の発展に寄与します。
さらに日本語以外の言語を得意とする外国人がプロジェクトに加わることで、企業の国際展開や多国籍企業との情報共有が円滑に進み、日本のビジネス環境がより国際的になることが期待されています。

企業が持つ社会的責任の一貫

異なるバックグラウンドや文化を持つ人材を受け入れることで、組織内の多様性・グローバル化が進みます。
企業がさまざまな人材に平等な雇用機会を提供し、異なる視点を尊重する姿勢を示すことで「社会的な課題に対して改善の取り組みを行う企業」として世間にポジティブな印象を与えられる、と考える企業が増えています。

外国人労働者を雇用する企業は年々増加している

現在の雇用トレンドを把握しておくことは採用担当者にとって大切です。

厚生労働省が公表しているグラフをみると、外国人労働者数は年々増加していることがわかります。

引用:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)

外国人労働者の雇用が増加している状況下では、法的および事務的な対応方法も変化します。これに対する理解と対応力があれば、競合他社よりも効率的・効果的な採用プロセスをすばやく確立できます。

現在の雇用トレンド「外国人採用」の重要性を理解して、優秀な外国人候補者をいち早く獲得することは企業の競争力強化につながります。

外国人が日本で働くには特定の在留資格を持つ必要がある

日本に滞在している外国人は、かならず在留資格を取得しています。ただし在留資格を持っている外国人なら誰でも雇用できるわけではありません。
よく「就労ビザ」という言葉を聞きますが、これは就労を目的とした在留資格を総称するものです。正式な在留資格名ではありません。

業務内容が在留資格と異なる場合は「不法就労」となり、これを助長したとして企業が罰則を科せられることもあります。
任せたい業務に対して適切な在留資格は何なのか、採用担当者が事前に把握しておくことが重要です。

以下は「在留資格に対して許可されている業務内容」の一覧表です。
職種の参考例も記載しています。自社で採用を検討している職種には、どの在留資格が必要なのかを確認しましょう。

在留資格日本で許可されている業務内容               職種例        在留期間
外交外交交渉(国家間の関係の処理)、日本滞在中の自国民の法的な保護や支援など・外国政府の大使/公使/総領事
・代表団構成員 など
外交活動の期間
公用外交交渉(国家間の関係の処理)、日本滞在中の自国民の法的な保護や支援など
※在留資格「外交」を取得している外国人の付添人や公務員が取得する
・外国政府の大使館/領事館職員
・国際公務としての派遣職員 など
15日・30日・3ヶ月・1年・3年・5年
教授日本の大学(これに準ずる機関)や高等専門学校などでの研究や指導、教育・大学教授/准教授
・講師
・助手(常勤/非常勤) など
3ヶ月・1年・3年・5年
芸術芸術の向上を目的とする活動、芸術活動の指導
※十分な収入実績があり、団体に所属していないフリーランスが取得する
・作曲家/作詞家
・彫刻家/工芸家
・映画監督 など
3ヶ月・1年・3年・5年
宗教布教、その他宗教上発生する業務・宣教師
・神官
・牧師 など
3ヶ月・1年・3年・5年
報道外国の報道機関との契約に基づいて行う取材、その他の報道上の業務・新聞記者
・アナウンサー
・カメラマン など
3ヶ月・1年・3年・5年
高度専門職(1号)就労可能ないずれかの在留資格(国際業務以外)に該当する業務
※日本の学術研究や経済の発展に寄与することが見込めるレベルの専門的能力を持つ者が取得する
・国際業務を除き​​原則職種制限なし

※単純労働不可
5年
高度専門職(2号)就労可能ないずれかの在留資格(国際業務を除く)に該当する業務
また、上記活動と並行して副業を行う場合はその業務内容に制限がほとんどない
※日本の学術研究や経済の発展に寄与したと認められた者が取得する
・国際業務を除き​​原則職種制限なし

※副業可能
※単純労働不可
無期限
経営・管理個人/法人による日本での開業や投資、経営、事業の管理など・経営者
・取締役
・工場長 など
3ヶ月・4ヶ月・6ヶ月・1年・3年・5年
法律・会計業務法律上の資格を持つ者が専門知識を生かして行う法律や会計に係る業務・弁護士
・公認会計士 など
3ヶ月・1年・3年・5年
医療法律上の資格を持つ者が専門知識を生かして行う医療に係る業務・医師
・歯科医師
・看護師 など
3ヶ月・1年・3年・5年
研究日本政府や企業の研究部門に所属し行う研究・公的機関の研究員
・民間企業の研究者 など
3ヶ月・1年・3年・5年
教育日本の小学校/中学校/高等学校などで行う語学教育、その他の教育に係る業務・小中学校の語学教師
・高等学校の音楽教師
・特別支援学校の算数教師 など
3ヶ月・1年・3年・5年
技術・人文知識・国際業務外国の文化に基づく知識や技術が必要な業務・システムエンジニア
・通訳/語学学校の教師
・デザイナー
・マーケター など
3ヶ月・1年・3年・5年
企業内転勤海外事業所の職員が一時的に日本の事業所へ転勤して行う、外国の文化に基づく知識や技術が必要な業務・海外事業所の転勤者3ヶ月・1年・3年・5年
介護介護又は介護の指導など・介護施設職員
・ホームヘルパー など
3ヶ月・1年・3年・5年
興行公衆に対して演劇・演奏・スポーツなどを見せる、または聞かせる活動・俳優/歌手
・プロスポーツ選手
・オーケストラの指揮者 など
30日・3ヶ月・6ヶ月・1年・3年
技能外国で考案された技術に熟練したスキルが必要な業務・各国料理のコック
・パイロット
・貴金属の加工職人 など
3ヶ月・1年・3年・5年
特定技能(1号)特定の産業(12分野)で相当程度の知識や経験を生かして行う業務・空港グランドハンドリング
・介護施設職員
・レストランスタッフ など
法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲)
特定技能(2号)特定の産業(介護を除く11分野)で熟練の知識や経験を生かして行う業務・航空工場整備士
・宿泊施設の広報担当者 など
6ヶ月・1年・3年
技能実習(1号)※廃止(新制度創設)予定出身国での習得が難しく、日本で技能の習得・習熟・熟達することを目的とした業務職種制限なし

※転職不可
法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲)
技能実習(2号)※廃止(新制度創設)予定技能実習(1号)で習得した技能の習熟・熟達することを目的とした特定の産業(90職種165作業)での業務・木材加工職人
・漁船漁業者 など

※転職不可
法務大臣が個々に指定する期間(2年を超えない範囲)
技能実習(3号)※廃止(新制度創設)予定技能実習(2号)で習得した技能の習熟・熟達することを目的とした特定の産業(81職種147作業)での業務・建築大工
・婦人服のソーイングスタッフ など

※転職不可
法務大臣が個々に指定する期間(2年を超えない範囲)
文化活動資格外活動許可を取得したうえで、本来の活動に支障がない程度(週28時間以内)の在留目的に関連する業務・翻訳・通訳
・国際交流センターのスタッフ など

※単純労働不可
3ヶ月・6ヶ月・1年・3年
短期滞在就労不可15日・30日・90日以内の1日単位
留学資格外活動許可を取得したうえで、本来の活動に支障がない程度(原則週28時間以内)の業務・原則職種制限なし

※単純労働可能
法務大臣が個々に指定する期間(4年3ヶ月を超えない範囲)
研修就労不可3ヶ月・6ヶ月・1年
家族滞在資格外活動許可を取得したうえで、週28時間以内の業務・原則職種制限なし

※単純労働可能
法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)
特定活動法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動のうえで発生する業務・インターンシップ
・ワーキングホリデー
・アマチュアスポーツ選手 など
3ヶ月・6ヶ月・1年・3年・5年または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)
永住者すべての日本人と同様の業務・職種制限なし無期限
日本人の配偶者等すべての日本人と同様の業務・職種制限なし6ヶ月・1年・3年・5年
永住者の配偶者等すべての日本人と同様の業務・職種制限なし6ヶ月・1年・3年・5年
定住者すべての日本人と同様の業務・職種制限なし6ヶ月・1年・3年・5年または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)

  • 高度専門職(1号・2号)は、​​就労可能な在留資格を持つ外国人の中から「高度人材ポイント制度」の基準点(70点)をクリアすると獲得できる在留資格です。
    専門分野において最先端の知識や技術を持っていることが多く、採用できれば企業の即戦力になります。
  • 外国人が就労するにあたって単純労働は原則禁止です。
    しかし「留学生」と「家族滞在」の在留資格を持っている外国人の場合は、資格外活動許可を取得することで単純労働が可能になります。
  • 「留学生」の場合は学則による長期休暇中であれば「1日8時間以内かつ週40時間以内」の就労が認められる場合があります。
  • 外国人労働者は風俗業での就労は原則禁止です。ただし「永住者」「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」に関しては適用外。
  • 技能実習(1号・2号・3号)制度は廃止が決定し、代わりに「人材確保」と「人材育成」を目的とする新たな制度が創設される予定です。

参考:出入国在留管理庁 高度外国人材のポイント計算表

外国人労働者を採用する流れ (採用フロー)

外国人労働者を雇用する場合、採用までの流れが日本人とは少し異なります。
初めての外国人採用を行う場合は、採用活動を始める前に採用フローをしっかり固めておきましょう。

STEP1. 人材ニーズの明確化

募集するポジションに対して必要とされる要件・要求を洗い出します。

これは企業が達成しようとしている目標や、業務上の課題に対処するためにどのような人材を求めているか明確に定義するプロセスです。

「業務内容」はもちろんですが、「特定の国や地域の出身者を採用したいのか」「単純労働にならないか」「週28時間以内の勤務を厳守できる業務か」など、人材ニーズを具体的にイメージして要件に当てはまる在留資格を把握します。

STEP2. 求人票の作成・掲載(募集実施)

適切な人材を採用するためには、まず求人を広く公開して多くの応募者を獲得する必要があります。いちばん簡単な方法は「コーポレートサイト(企業のホームページ)に求人を掲載する」こと。しかしこれだけでは不十分でしょう。

日本の会社名や業界の知識がない外国人は多く、決め打ちでホームページにアクセスする可能性はかなり低いです。

以下に、外国人採用の代表的な求人方法を紹介します。
コーポレートサイトと併せて活用することで、外国人採用の成功に近づくことができます。

・ハローワーク

ハローワークで求人募集を行ういちばんのメリットは「利用料が無料」という点です。また外国人の雇用に関する情報や、法的なアドバイスを提供しています。雇用契約や在留資格に関する疑問や不安がある場合、適切な助言を受けることができます。

しかしながら求職者の登録方法が複雑だったり、ハローワーク自体の知名度が高くないことから、リーチできる外国人材の数が少ない場合があります。
利用する際には、事前に人材ニーズとマッチしそうな外国人登録者の数などを確認することをおすすめします。

・人材紹介会社

1社1社が得意とする業界を持っていることが多く、業界特有の求人票の作成や選考プロセスの最適化をサポートしてくれます。

人材紹介会社は、企業と求職者の双方のプライバシーを尊重するうえで広いネットワークを持っています。そのコネクションを活かして「高度専門職の在留資格を持つ外国人」などの、直接的なアプローチが難しい層の候補者を紹介してもらうことが可能です。

・外国人向け求人サイト

多様な在留資格を持つ外国人求職者が自発的に集まるプラットフォームです。
外国人向け求人サイトの多くは多言語対応しており、求人情報をすぐに多くのユーザーに届けられます。

また「正社員」「契約社員」「パート・アルバイト」など、雇用形態や契約期間に関する要件の設定が可能です。複数の人材ニーズや要件がある場合には、それぞれのポジションに最適な雇用条件を設けることができます。

ユーザーが知人に情報をシェアできるため、外国人ネットワークでの拡散が期待できることも特徴です。

また最近は掲載するだけの求人サイトとは異なり「採用コンサルタント」「面接代行」が可能なプラットフォームもありますので、このようなサイトを使うことで効果的な採用が実現できるでしょう。

STEP3. 書類選考

書類選考を通じて、応募者の基本情報や経歴、資格などと業務内容の関連性を確認します。

履歴書には、かならず「在留資格」「在留期限」「資格外活動許可の有無」を記載してもらいます。職務経歴書には期間や企業名だけでなく、前職で与えられていた権限や個人の功績なども記載してもらいましょう。

これら労働条件に関する基本情報をチェックして、面接前に法的要件を確認します。

外国人採用を行う場合は、求人票とあわせて「応募書類のフォーマット」を作成することをおすすめします。
法的要件の確認項目を含めて「やさしい日本語」や「英語」にしたフォーマットが準備されていれば、書類選考の際に応募者とのやりとりを何度も行わずに済みます。

STEP4. 面接(条件のすり合わせ)

面接を受ける方には「在留カード(有効かどうかを確認)」「パスポート」「就労資格証明書」を持参してもらい、書類選考で提出された内容にまちがいがないか、ひとつずつ確認します。

STEP5. 内定・雇用契約を締結

面接で話した内容と日本語レベルが業務に支障がないと判断できたら採用通知を送付します。

同時に「労働条件通知書」や「雇用契約書」を送付しますが、外国人採用の場合は「雇用契約書」で本人の合意を得ましょう。

◇雇用契約書で注意すべきこと

  • 職務内容 :やさしい日本語(小学校2~3年生のレベルを意識するといい)もしくは英語
  • 就業場所を細かく
  • 在留資格に適した勤務期間
  • 職務上の地位
  • 賃金
  • 賞与・最低賃金額
  • 退職金の有無・条件
  • 安全・衛生に関すること
  • 職業訓練に関すること
  • 表彰・制裁に関すること
  • 休職に関すること

より詳細な内容は、以下の記事を参考にしてください。

外国人労働者向けの雇用契約書の作り方 作成する際にチェックしたい12のポイントを紹介

 

家族の反対がでた場合は?

当人が入社の意志を持っていても、家族からの反対が上がるケースもあります。
業界を変更するときなどには、家族は不安から転職をブロックするのは世界共通です。

このような場合にはご家族にも面接に立ち会ってもらって、自分たちの会社のいいところや転職するメリットなどを直接伝えましょう。

STEP6. 受け入れ準備

会社に入社が決まった外国人の方がスムーズに業務を開始できるように、社内の受け入れ体制を整えます。

・配属先調整(メンターの割り当て)

配属先となる部署(チーム)のメンバーから、外国人社員にメンターを割り当てましょう。

外国人社員の言語的なサポートや日常生活におけるケアなど、外国人が安心して働ける環境をつくっていくことが大切です。

・外国人本人と出身国に関する社内共有

1.言語に関すること

引用:電通報 数字で見る、「国内外国人」と「やさしい日本語」

外国人社員と積極的にコミュニケーションを取っていても、どうしても「言語の壁」ができてしまうことがあります。
統計の結果、グローバルビジネスにおいて日本語
割普段の日本人社員と同様の指示出しだけでなく、ビジュアルで説明を加えるなど「外国人社員の日本語レベル・人柄を考慮した業務指示(やさしい日本語を推奨)」を出すことが必要な場合があることを日本人社員に理解してもらいましょう。

2.考え方に関すること

出身国によっては日本人にとってなじみがない宗教を信仰をしていることがあります。日本人の価値観を押しつけずに、特定の祝祭日や食事制限など「外国人本人が大切にしている宗教理念」に配慮しましょう。

最近はベジタリアンの方も増えていますし、ハラール食品(イスラム教で許されている食品)のみ食べる方もいます。食事面にも気を遣ってあげるとよさそうです。

引用:外務省 世界のおもな宗教分布

また「怒る・叱る」ことに関して、日本は世界的にもかなりきびしい方です。自分たちではあたりまえと考えていることも、世界的には厳しすぎるということもあります。人前で怒るなど、パワハラ的な行為はNGです。充分に気をつけましょう。

・住居の確保

在留外国人が賃貸物件の契約を行うことは一般的にハードルが高いとされています。それは意思疎通が難しくトラブルを避けたいと考えるオーナーの方針であったり、支払い能力に対する懸念、連帯保証人がいないなどさまざまな背景によるものです。

外国人社員を採用する場合は「寮・社宅の提供」や「連帯保証人・保証会社の確保」など、住居を確保するサポートができるといいでしょう。

・掲示物やマニュアルの見直し

外国人社員が見る・使う可能性のある文書は「やさしい日本語」「英語」「母国語」などの読みやすい文書で書かれているものが望ましいです。
スムーズに書かれている内容を理解して業務を始めるためにも、改善できる場合は文書を刷新しましょう。

歓迎会や定期的な食事会など、業務外になりますが社員同士がリラックスした雰囲気で交流できる場を提供することも必要です。

もちろんその他に各種事務的な手続きが必要ですが、手続きや書類に関しては次項で詳しく説明します。

STEP7. 入社

入社までの期間は上記フローに加え定期的な連絡を取り、疑問や不安に応えて入社に向けて迷いがない状態でいてもらうようフォローします。
入社日の数日前には、当日の場所や時間や持ちものなどの事務連絡を行い「入社を歓迎している」ことを伝えましょう。

こうした流れを経ていよいよ入社です。

入社直後は外国人労働者といっしょに各部署へ挨拶へ行き、オリエンテーションとして企業理念や文化、キャリアに対する説明を行いましょう。

外国人採用に必要な手続き・書類

ここでは入社前後に必要な事務的な手続きを紹介します。

入社前に必要な手続き・書類

【採用担当者】条件通知書・雇用契約書の作成

採用フローの中でも紹介した通り、採用通知の際に「雇用契約書」を作成・送付します。
話しておたがいに納得した内容が書かれている雇用契約書を、やさしい日本語または英語で作成しましょう。
日本語があまりできなくて読めない方の場合には、渡していっしょに読んであげることや、家族と話して考えてもらうプロセスが必要になります。
ここで双方で内容をしっかりと理解して同意を得ることが重要です。

【内定者本人】就労資格証明書の発行・提出(任意)

採用予定の外国人が、現在持っている在留資格のまま自社で働けるかを確認するために、就労資格証明書を提出してもらいます。
この書類は原則として外国人本人が出入国在留管理庁に申請を行う必要があります。提出してもらう場合は早めに発行を依頼しましょう。

就労資格証明書とは?概要から申請法まで!

【採用担当者・内定者本人】在留資格変更許可申請

もしも業務内容に合わせて内定者の在留資格を変更する場合は、入社前に変更を完了させておく必要があります。
申請時には、企業担当者は「雇用契約書のコピー」「法人登記事項証明書」「企業の決算報告書」など、外国人が自立して生活できる条件での雇用が証明できる・実在する企業だと証明できる書類を準備します。
またその申請は内定者本人が、「申請書」や「現在の在留カード」「パスポート」などを持参して行う必要があります。申請内容に問題がなければ、通常は申請後1〜2ヶ月で変更許可がおります。

参考:出入国在留管理庁 在留資格変更許可申請

入社後に必要な手続き・書類

【採用担当者】外国人雇用届の提出

外国人の入社日の翌月10日までに、氏名や在留資格などをハローワークに届け出る義務があります。

採用した外国人労働者から在留カード・パスポートを借り、かならず照らし合わせて確認してください。
在留カード・パスポートのコピーの提出は不要ですが、届出の記載内容にまちがいがあると企業が罰則を科される恐れがあります。十分に注意しましょう。

参考:厚生労働省 外国人雇用状況の届出について

「外国人雇用状況届出書」とは? 出し忘れるとどうなる? 30万円以下の罰金にならないように注意が必要です!

【採用担当者・外国人社員本人】所属機関等に関する届出

特定の在留資格を持つ外国人を雇い入れた場合は、入社から14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。この届出は本人の署名があれば会社が提出することも可能です。
所属機関の名称が変わった場合や、所在地が変わった場合も同様に提出してください。

参考:出入国在留管理庁 所属機関等に関する届出手続

【採用担当者・外国人社員本人】在留期間更新許可申請書

引き続き外国人を雇用しつづける場合、在留資格の期限が切れる前に期間の更新が必要です。
申請時には、企業担当者は「在職証明書」や「前年ぶんの給与所得の源泉徴収票」など、外国人社員が自立して生活できていることを証明できる書類を準備します。

またその申請は、内定者本人が「申請書」や「現在の在留カード」「パスポート」などを持参して行う必要があります。申請内容に問題がなければ、通常は申請後2週間〜1ヶ月で変更許可がおります。

参考:出入国在留管理庁 在留期間更新許可申請書

このほかにも雇用保険加入の手続きなど、日本人社員に対して行う手続きは外国人社員にも同様に行います。
外国人労働者を採用する際は、事務手続きが多く時間もかかります。それをみこして早めの準備・申請を進めるようにしましょう。

外国人採用の注意点

あらためて、外国人を雇用する際に必ず抑えておくべきポイントをまとめます。

外国人労働者の待遇は日本人と同じであることが前提

「同一労働同一賃金」は外国人労働者にも適用されます。これは賃金や福利厚生などを含め、日本人のあいだで待遇差別があってはならないという制度です。
多様性と平等の原則が重視される現代、適正な労働条件は企業の社会的責任です。

法的な基準を満たすことはもちろん、従業員のモチベーション維持や生産性向上のためにも、外国人労働者と日本人労働者が協力して働く環境を整備しましょう。

外国人労働者の給与設定ガイドライン|最低賃金・在留資格別の平均賃金、源泉徴収の注意点について解説

保有している在留資格の内容に合った仕事しかできない

外国人の在留資格は、その種類に基づいて働くことができる職種や期間が限定されています。企業は外国人の在留資格の種類を把握し、その内容に合致する業務を割り当てる必要があります。

在留資格とは異なる業務を依頼すると、外国人社員が在留資格を取り消されたり、企業が不法就労助長罪に問われることがあります。採用前に在留資格に関する正確な情報を確認してください。

入社後のフォローアップを継続する

入社後のオリエンテーションが済んだら完了とはいえません。組織に定着してもらい、戦力として活躍できる環境を作ることが最重要です。
採用担当者やメンターは外国人労働者との定期的な面談を通じて、コミュニケーションを深めましょう。

キャリアパスに対して具体的な目標の設定や達成度の確認をしたり、私生活に関する疑問・不安をヒアリングしてフォローをつづけることが大切です。
問題解決や改善点の共有を行うことで、円滑な業務遂行と外国人労働者の定着率が上がります。

外国人採用の手続きや採用フローは理解できましたか?

外国人向けの採用活動では、いままで行ってきた日本人向けの採用活動とは異なるポイントがあることを説明しました。

初めて外国人労働者を雇用する場合、企業側の担当者が新しく覚える業務も多く戸惑うことがあるかと思います。
しかし企業にとって外国人材の積極的な受け入れは「これからの時代に、新たな可能性を切り拓く鍵」となります。

いち早く外国人採用を取り入れて、有能な外国人労働者を雇用することで企業をさらに発展させましょう。