外国人を採用した際、「雇用契約書」は様々な点に注意して作成しなくてはなりません。といいますのも、外国人はもともと文化が違うので、そこを配慮して作成しなかった結果、後々トラブルの原因になってしまうことがあるのです。

そこで今回は外国人の雇用契約書で絶対に押さえたい12のポイントを解説していきますので、すでに外国人を採用なさっている方も、今後外国人を採用する可能性がある方も、ぜひ一度確認をしてみてください。

【ポイントに入るその前に】雇用契約書は何のために書く?

驚いている外国人の写真

外国人の雇用契約書のポイント解説に入る前に、「そもそも雇用契約書は何のために書くのか?」という点について解説していきます。

最初に、「雇用契約書は必ず作成しなければいけない」というわけではありません。民法に基づくと契約自体は口頭のみでも成立しますが、何かと問題が発生しやすい労働関係法令では契約内容の「通知」までを雇用側に義務付けております。したがって、「雇用契約書」といった形で双方の合意がとれる形にしなくても、

  • 労働条件通知書
  • 雇用通知書

といった「雇用主が労働者に対して一方的に労働条件を通知する」といった方法でも大丈夫なのです。しかし、雇用主の一方的な通知のみですと、労働者とのトラブルになったり、会社への不信感をつのらせたりする原因となってしまう可能性があります。

雇用契約書を書くことによって、「雇用主と労働者」双方の条件に折り合いをつけることが出来ますので、お互いに気持ちよく仕事をしたりコミュニケーションを円滑にしたりする為に「雇用契約書」は必要となるでしょう。

女性 書類を書いている

ちなみに、新在留資格である「特定技能ビザ」においては当該ビザ発給の性質上、より一層無用なトラブルを避けるため「雇用契約書」の作成までが義務付けられています。

雇用契約書のポイント1:職務内容

外国人が驚いている顔

「雇用契約書がなぜ必要なのか?」について理解したところで、早速雇用契約書のポイントをみていきましょう。

1つ目は「職務内容」となります。これは雇用契約書の中でも「絶対明示事項」となっており、必ず明記しなければいけません。

特に外国人は日本人よりも契約に重きを置く傾向がありますので、「職務内容」に雇用主と労働者で相違があると争いの種となってしまう可能性があります。就業しようとしている外国人ですから、ある程度日本語を理解できるといっても完璧にできるとは限りませんし、難しい日本語で書いてあったから「就業内容を理解できなかった」となってもおかしくないので気を付けましょう。

したがって、職務内容のポイントとしては国内の労働者を雇用するときと同じではあるのですが、外国人労働者が職務内容について勘違いがないように母国語での契約書も作成するのがベターといえます。また、各在留資格に記載されている職務内容以外での職務を任せることはできませんので、そちらもよく確認して雇用契約書を作成していきましょう。

雇用契約書のポイント2:就業場所

外国人が働く場所

2つ目のポイントは「就業場所」で、これも「絶対明示事項」となります。就業場所も職務内容と同じく在留資格取得時に申請書に記載のしていない場所では就業不可となりますので注意が必要な項目です。

同一会社で就業するのであればOKですが、会社以外で就業する場合は就業する場所を明記する必要性がありますので、しっかり確認しておきましょう。就業後に変更があった場合には入管への届出が必要となります。

雇用契約書のポイント3:勤務期間

3つ目のポイントは「勤務期間」で、これも「絶対明示事項」です。

外国人が日本で就業するには永住者でない限り、就労ビザに期限がもうけられ、1年、3年などという期間設定になります。最長でも5年になりますので注意してください。

雇用契約書は就労ビザを取得する際に必要な書類となってきますので、在留資格に記載されている在留期間と照らし合わせながら、外国人労働者をどのくらいの期間雇用するか決定します。(正社員もしくは契約社員といった区分も明記しましょう。)

またこれも「絶対明示事項」となりますので、

  • 業務を開始する時間
  • 業務を終了する時間
  • 休憩の時間
  • 休日
  • 契約がいつまでなのか
  • 契約更新があるのかといった条件

といった項目も忘れずに記載していきましょう。

雇用契約書のポイント4:職務上の地位

高層ビル

4つ目のポイントとなるのは「職務上の地位」です。これは職業内容に関係する項目となり、「絶対明示事項」ですので必ず記載する必要があります。例としては「正社員」「契約社員」などです。

職業上の地位がどのような形態になるかは事前交渉となりますので、労働者との認識のズレがないか今一度確認しましょう。もし認識が違っていた場合は採用をあきらめるのではなく、一度外国人従業員とよく話し合ってみることをオススメします。がいこk

雇用契約書のポイント5:給与

5つ目のポイントとなるのは労働者と雇用主どちらにも重要な項目である「給与」で、これも「絶対明示事項」です。

国内の労働者・外国人労働者のどちらにも起こりうる典型的な問題として、「貰えると考えていた給料より安い」というものがあります。

自分が考えていた以上の金額がもらえれば文句はありませんが、自分が考えていたより少ない金額だとトラブルに繋がる可能性が非常に高いので、「必ず給与がいくらになるのか」という部分は労働者が分かる状態にしましょう。少なくとも日本人と同等以上の給与水準であることが必要です。

雇用契約書のポイント6 : 退職金

外国人女性 カフェ 仕事

6つ目のポイントは「退職金」です。「退職」に関する項目は「絶対明示事項」となるのですが、「退職金」は「相対的明示事項」となり、雇用契約書に必ず記載しなければならない項目ではありません。しかし会社に規定がある場合は記載しなければならない項目となります。

退職金の記載ポイントとしては

  • 退職金が適用される労働者区分がどういったものか
  • 退職金の計算方法やどのように支払うか
  • 退職の支払い時期

といった部分になります。

雇用契約書のポイント7 : 賞与と最低賃金額

7つ目のポイントは「賞与、最低賃金額」となり、こちらは「相対的明示事項」ですので、会社に規定があったら記載する項目です。

特に「最低賃金額」では賃金同様外国人労働者であるからといって、国内の労働者よりも低く設定することはできませんので、国内の労働者と同等程の基準にしましょう。法律で定められている最低賃金額を下回ることもあってはなりません。

賞与額に加え、回数や時期も記載しておくと外国人労働者も計画をたてることができるため親切です。外国人労働者は生活に慣れることはもとより将来を見据え経済的な計画をたてることが必要になります。

雇用契約書のポイント8 : 労働者に負担させる食費など

8つ目のポイントは「労働者に負担させる食費等」で、「相対的明示事項」となります。

住み込みの会社などはこちらの規約がどうなるのか外国人労働者が気になるところですので、記載しておくのがベターです。さらに住み込みの場合は光熱費もかかるか会社負担か明記しましょう。住み込みでない場合でも、昼食手当が出るか、食堂を使えるかなどは記載する必要があります。

雇用契約書のポイント9 : 安全衛生に関する事項

9つ目のポイントは「安全衛生に関する項目」で、「相対的明示事項」となります。

作業服の着用や機械の点検といった項目の記載となっており、業種によって会社に規定があるものを記載しましょう。実際法律で企業は安全衛生に関する就業規則を定めなくてはなりませんから、その内容を記載するのが一般的です。

例えば定期的に健康診断を受けることを義務化しているならばその旨が必要になります。

雇用契約書のポイント10 : 職業訓練

10個目のポイントは「職業訓練」で、これも「相対的明示事項」となります。

しかしながら職業訓練があるかどうかは外国人労働者にとって重要な部分ですので、会社に記載がある場合は積極的に記載していきましょう。例えば、働きながら資格を取ってほしい場合や職業訓練時期のみ賃金が低くなる場合は注意して細かく記してください。トラブルに発展しやすい項目の1つとなります。

雇用契約書のポイント11 : 表彰や制裁

11個目のポイントは「表彰・制裁」で、「相対的明示事項」となります。

表彰に代表されるものが「永年勤続表彰」と「開発・発明表彰」です。この2つは定めている企業も多いのではないでしょうか。永年勤続表彰については、期間や表所の形をすべて明記しておきましょう。また開発・発明表彰はどのように企業側が評価するか、事例なども踏まえて明記しておくと、訴訟に発展するなどのリスクを軽減できます。

一方、制裁は懲戒などを指しますが、罪刑法定主義の日本においてここは企業内でしっかり取り決めておかなくてはなりません。そして、その内容をそのまま外国人雇用契約書にも載せると良いでしょう。実際外国人は慣れない日本でトラブルに巻き込まれる可能性が多いです。

またこの「表彰・制裁」は「賞与、最低賃金額」の部分に記載しましたが、外国人を特別の枠とするのではなく、国内労働者と同等の条件とする必要があります。

雇用契約書のポイント12 : 休職

外国人夫婦 旅行中

12つのポイントは「休職」で、「相対的明示事項」となります。

日本では休職というと、取りづらいという風潮がありますが、労働者の権利でもありますので、記載する方が良いです。その際、外国人の母国と日本の制度が違う場合も大いにあり得ますので、傷病休職や自己休職といった種類も明記するようにしましょう。

労働者がこの休職制度を把握できていない場合、大きな負担をかけてしまう可能性があるので留意してください。

12のポイントを押さえてしっかりした雇用書をつくりましょう

黒板 数式

外国人の雇用契約書で絶対に押さえたい12のポイントを解説してきましたが、雇用契約書には

  • 絶対明示事項
  • 相対的明示事項

の2つがあり、しっかり確認して記載することが重要です。

雇用契約書は就労ビザをとる際に必要で、その不備によって就労ビザが下りなかったら、雇用契約書の作成や面談時間の意味がなくなってしまう可能性もあります。外国人労働者採用後にスムーズに業務を開始するためにも、ポイントを抑えた雇用契約書を作成していきましょう。