私たちが普段の生活を送るなかで、外国人と関わる機会は増加しています。
令和5年6月時点の在留外国人数は322万人となり、過去最高を記録しました。そのなかでも「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格は約35万人が取得しており、多くの外国人に利用されています。

本記事では「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の内容や具体的な職種、取得要件について説明します。

在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」とは

「技術・人文知識・国際業務」とは日本の就労ビザのひとつであり、略して「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれている在留資格です。
以前の在留資格「技術」と「人文知識・国際業務」が2015年に統合され、代わりになる在留資格として新たに「技人国」が誕生しました。

この在留資格は外国人労働者の専門性を活かすことを目的としており、取得する外国人はホワイトカラーの職業に従事することが多いのが​​特徴です。

技人国の「技術」に該当する業務

理学や工学などの理系の専門知識を活かす業務に従事する場合は、技人国の「技術」に該当します。
機械系・電気系のエンジニア、システムエンジニア、プログラマーなど自身の持つスキルと同分野の仕事に就くことができます。

【具体例】「技術」の職業・業務

  • 工学部を卒業した外国人が、システム開発会社でプログラマーとして従事する
    (ソフトウェアについての仕様書作成、顧客折衝など)
  • 情報工学科でマンガ・アニメーション制作技術を履修した外国人が、コンピューター関連会社でゲーム開発担当者として従事する
    (CGデザイン、ゲーム理論、プログラミングなど)
  • 自動車整備科を卒業した外国人が、自動車メーカーでサービスエンジニアとして従事する
    (自動車の点検、整備、分解など)

技人国の「人文知識」に該当する業務

経済学や社会学、法学などの文系の専門知識を活かす業務に従事する場合は、技人国の「人文知識」に該当します。
営業、経理、マーケティングなど自身の持つスキルと同分野の仕事に就くことができます。

【具体例】「人文知識」の職業・業務

  • 美容科を卒業した外国人が、化粧品販売会社でビューティーアドバイザーとして従事する
    (営業、商品開発、ブランディングなど)
  • 栄養管理学に係る学科を卒業した外国人が、食品会社の研究開発担当として従事する
    (新商品の企画、品質分析、技術開発など)
  • 海外のレストランでマネジメント業務に10年間従事していた外国人が、日本でレストランの企画・開発担当として従事する
    (コンセプトデザイン、宣伝・広報、マーケティングなど)

技人国の「国際業務」に該当する業務

語学力や国際経験を活かす業務に従事する場合は、技人国の「国際業務」に該当します。
通訳・翻訳、語学教師、海外向け広報など自身の持つスキルと同分野の仕事に就くことができます。

【具体例】「国際業務」の職業・業務

  • 日本の大学を卒業した後、語学学校で教師として従事する
  • 経済学や国際関係の学部を卒業した外国人が、日本のメーカーで海外進出業務の担当者として従事する
    (市場調査、販売管理、現地店舗との連携強化など)
  • 異文化コミュニケーションに係る学科を卒業した外国人が、人材派遣会社で外国人スタッフのマネジメント担当として従事する
    (外国人スタッフの採用、教育、説明資料作成、管理など)

参考:出入国在留管理庁 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について

技人国ビザを取得できる外国人の条件

ここからは「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格を取得するためには、どのような条件が必要なのかを説明します。

学歴・職歴が実際の業務と関連している

学歴・職歴に関する条件は、「技術」「人文知識」の2つと「国際業務」で若干異なっています。

「技術」「人文知識」での学歴・職歴の条件

以下のいずれかを満たしていることが取得条件となります。

  • 従事予定の業務に関連する分野を専攻し、日本または海外の大学(短大)を卒業している
  • 従事予定の業務に関連する分野を専攻し、日本の専門学校を卒業している
  • 従事予定の業務に関連する内容で、10年以上の実務経験がある

国際業務における学歴・職歴要件

  • 日本または海外の大学(短大)を卒業している
  • 日本の専門学校を卒業している
  • 従事予定の業務に関連する内容で、3年以上の実務経験がある

外国人労働者の給与が日本人と同等水準以上である

外国人に支払う給与は「技術」「人文知識」「国際業務」のいずれでも、日本人と同等でなければいけません。
同一労働同一賃金は、国籍に関係なく全ての労働者に適用されます。

参考:厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン

所属する企業の経営状況が安定している

外国人労働者の勤務先となる企業は、安定性や継続性が問われます。
雇用する外国人労働者に給与が十分支払えること、そして今後も継続の見込みがあることを企業側が証明する必要があります。

また十分な仕事量があることや、適切な勤務地・勤務時間などが確保されていることも重要です。

「技人国」申請前の行動が素行不良に該当していない

在留資格の取得・更新・変更などの手続きは、資格の種類にかかわらず「素行が善良であること」が必ず条件に含まれています。

素行が善良であると認められるためには、以下の項目(素行不良)に該当していないことが大切です。

  • 各種税金の未納
  • 犯罪を犯し懲役・禁錮・罰金に処せられたことがある
  • 少年法による保護処分が継続中
  • 暴力団と関係性

また以前在留資格を持っていた期間がある場合は、資格に適切な活動をしていたかどうかも重要です。
たとえば留学生は出席率や成績不振、資格外活動でオーバーワークをしていた場合は素行不良と判断されてしまう場合もあります。

「技人国」の外国人を雇用する際におさえるべき4つのポイント

続いて、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の外国人を雇用する際に企業側がとくに注意しておくべきポイントを紹介します。

ポイント① 専攻した学問と職業の一致

採用するポジションの業務内容と大学(短大)・専門学校での専攻内容が合致していることが必要です。卒業証明書や成績証明書などを発行してもらい、確認するようにしましょう。
また一定以上の実務経験がある場合は、在職証明書で職務内容を確認します。

もし一致していない場合には在留資格の取得や更新はできませんので、専攻とは異なる職種には就くことができません。

ポイント② 単純労働は禁止

技人国ビザは外国人労働者の専門性を活かすことを目的としているため、技術や知識が必要ではない単純作業は業務として認められません。
たとえば生産ラインでの反復的な作業や、ホテルやレストランでの清掃・ベッドメイクなどの特定作業だけをおこなう場合は単純労働にあたるため、在留資格の取得対象にはなりません。

ポイント③ 滞在年数が長いと永住権が取れる可能性がある

日本の在留資格のなかで、取得者が最も多いのは「永住者」です。永住権の取得を目標として、就労系のビザで在留実績を積む外国人は沢山います。
そのなかでも「技人国」から「永住者」へ在留資格変更することは多いため、雇用する外国人が永住権の取得を目指しているか確認しておくと良いでしょう。

永住者になると就労制限が無くなり、任せられる業務が増えるため企業側のメリットも大きいです。

参考:出入国在留管理庁 令和5年6月末現在における在留外国人数について

外国人「永住者」と「特別永住者」の違いは? 在留資格の要件、雇用手続きの注意点を解説

ポイント④ 高度専門職(高度人材ポイント制)への移行が可能

「技人国」とよく似た在留資格のひとつとして知られているのが「高度専門職」です。
どちらも申請者の学歴や関連する業務に基づいて就くことができる在留資格ですが、高度専門職は外国人の学歴や資格に応じて「ポイント」が与えられ、一定の総合ポイントを獲得した場合に取得できる仕組みになっています。

「入国・在留手続きの優先処理」や「複合的な在留活動の許容」といった優遇措置が受けられるため、在留資格の変更を希望する外国人も多いです。
人事担当の方は「高度専門職」の取得要件もおさえておくことをおすすめします。

参考:出入国在留管理庁 高度人材ポイント制とは?

外国人労働者を採用する流れ (採用フロー)については、以下の記事を参考にしてください。

外国人採用の始め方|外国人材を初めて雇用する企業が知っておくべき知識・採用フロー・手続き・注意点を解説

さいごに

今回紹介した「技術・人文知識・国際業務」は、取得数が多く非常にポピュラーな在留資格です。
専門性の高いスキルを持つ外国人の採用は、企業の発展に大きく貢献することになります。

外国人の雇用を検討している方は、技人国の外国人雇用を検討してみてはいかがでしょうか。