「特定技能ってよく聞くけど、どんな職種が該当するの?」「特定技能制度で外国人が採用しやすくなるの?」「受け入れに必要な条件ってなに?」

本記事ではこのような疑問を解消するために、在留資格「特定技能」の基本的な内容から受け入れに関してより深く掘り下げた内容までくわしく解説します。

在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の概要

「特定技能」とは2019年4月に創設された在留資格です。日本の少子高齢化などにより人手不足となっている特定産業分野(2024年1月時点で12分野)において、即戦力となる外国人材を受け入れることを目的としています。

在留資格は「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類があり、本人が持つ技能レベルなどによってわけられます。この2つをひとまとめで「特定技能」とよぶことが多いです。

日本に在留している特定技能外国人の推移

出典:出入国在留管理庁 特定技能制度運用状況

日本政府の発表からわかるように「特定技能」の在留資格を持って日本で働く外国人は年々増加しています。
とくにコロナ禍が収束してからは「留学」や「技能実習」などの在留資格から、特定技能への変更が活発化しています。この数値をみると特定技能制度の活用範囲は今後も拡大し、5年後10年後の労働市場において重要な枠を占めることが予測されます。

特定産業に設定されている12分野

近年はどのような業界においても人手不足が深刻です。
生産性の向上・国内人材の確保などの取り組みを充分におこなってもなお、人材を確保することが困難だと判断された分野は以下の12分野です。

  1. 介護・・・身体介護(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助など)、身体介護に付随する支援業務 ※訪問系サービスは対象外
  2. ビルクリーニング・・・建築物内部の清掃
  3. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業・・・機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理
  4. 建設・・・土木、建築、ライフライン、設備
  5. 造船・舶用工業・・・溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て
  6. 自動車整備・・・自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務
  7. 航空・・・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務など)、航空機整備(機体、装備品等の整備業務など)
  8. 宿泊・・・宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供
  9. 農業・・・耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別など)、畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別など)
  10. 漁業・・・漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保など)、養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収獲・処理、安全衛生の確保など)
  11. 飲食料品製造業・・・飲食料品製造業全般(酒類以外の飲食料品の製造・加工、安全衛生)
  12. 外食業・・・外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)

「特定技能1号」「特定技能2号」を取得できる外国人

特定産業分野において「即戦力」と認められるには、一定の専門性や技能をもっている必要があります。
専門性や技能レベルは在留資格を申請する前に「産業分野別の技能試験」「日本語試験」などで測ります。

分野によっては実務経験がなくても、試験に合格して一定の基準を満たすことで在留資格の取得と日本での就労が可能です。

特定技能1号と2号は何が違うの? 就業できる業種や取得要件の違い、1号から2号への移行についてをくわしく解説

「特定技能」と「技能実習」の違い

特定技能とよく混同しがちなのが「技能実習」という在留資格です。名前が似ていますが、特定技能と技能実習はまったく別の在留資格になるため注意が必要です。

「特定技能」は日本国内の労働力を確保するための在留資格ですが、「技能実習」は雇用した外国人が祖国の発展に貢献するために、日本国内で技術や知識を身につけることを目的とした在留資格です。
日本企業が労働力の確保を目的として、技能実習を持つ外国人を雇用することは認められていません。

「技能実習」は実態と制度の名称が合っていないため、新たな制度へと移行されることが決まっています。

特定技能外国人を受け入れるまでの流れ

出典:出入国在留管理庁 外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組

特定技能の外国人を受け入れる流れは、つぎのとおりです。

STEP1. 技能試験と日本語試験

日本語能力と、働きたい分野の技能を測るためにテストを受けます。
それぞれ国内開催・海外開催があり、公式ウェブサイトから受験の申し込みができます。(※すでに技能実習2号を良好に修了している場合は、試験が免除されます。)

参考:出入国在留管理庁 特定技能に関する試験情報

STEP2. 就職先の決定

企業が募集する特定技能外国人の求人に対して、本人が直接申し込むか、民間の職業紹介事業者やハローワークなどを通して求職活動をおこない雇用契約を締結します。

STEP3. 在留資格の取得(変更)申請

申請に必要な書類をそろえて、管轄の出入国在留管理庁に申請します。

申請者本人が日本に在留している場合は、在留資格変更の許可がおりると同時に「在留カード」が交付されます。

申請者が海外在住中の場合は「在留資格認定証明書」が交付されます。受入れ機関が在留資格認定証明書を用いて査証申請することでビザ(査証)が発給され、入国が可能になります。

在留カードを受け取ったあと「生活オリエンテーションの受講」「住民登録」「給与口座の開設」「住宅の確保」などを、就労開始までにおこなう義務があることも覚えておきましょう。

STEP4. 就労開始

入社後に「外国人労働者の支援」をつづけることも、受け入れの一環です。

特定技能外国人の「支援計画」に欠かせない10のポイントについて、詳細は後述します。

特定技能外国人の受け入れに関わる機関の役割・条件

出典:出入国在留管理庁 外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組

特定技能の在留資格で外国人を雇用する場合、受け入れ手続きはおもに「外国人本人」「受入れ機関(所属機関)」のほかに「登録支援機関」「送り出し機関」などがかかわります。

ここからは、それぞれの役割について紹介していきます。

外国人本人の条件

  • 18歳以上
  • 技能試験および日本語試験に合格している(技能実習2号を修了ている場合は試験免除)
  • 特定技能1号で通算5年以上在留していない
  • 保証金を徴収されていない、または違約金を定める契約を締結していない
  • 自らが負担する費用がある場合はその内容を十分に理解している
  • 在留資格の取得条件に含まれる素行などの基本事項に問題がない

参考:出入国在留管理庁 在留資格「特定技能」

受入れ機関(所属機関)の役割と条件

受入れ機関とは、実際に外国人を雇用する企業のことです。
以下の条件を満たし、支援責任者(担当者)を選任しておく必要があります。

  • 入管法や労働法などの法令を遵守している
  • 過去1年以内に特定技能外国人や同じ業務をおこなう日本人労働者を会社都合で退職させていない
  • 過去1年以内に支援計画の不履行や賃金の未払いなど、会社の不正行為によって行方不明になる外国人労働者を発生させていない
  • 給料支払いを預貯金口座振込でおこなえる
  • 特定技能協議会へ加入できる
  • 外国人が十分理解できる言語で支援が実施できる

特定技能1号を受け入れる場合は「支援計画」を作成し実施しなければなりません。

この支援計画は書類作成や各種申請・契約の支援など専門的な知識が必要で、受け入れの際にいちばん手のかかる作業になります。そのため登録支援機関へ業務委託する企業が多いのが実情です。
(※特定技能2号については支援義務がありません)

登録支援機関の役割と条件

登録支援機関は「支援計画」の作成・実施など外国人のサポートをおこなう機関です。

受入れ機関が支援計画のすべてを社内でおこなえる場合は必須ではありませんが、出入国在留管理庁に登録済みの専門機関のため、手続きを円滑におこなう上で力になります。

以下の条件を満たしている機関が、登録支援機関として認められます。

  • 入管法や労働法などの法令を遵守している
  • 支援責任者・支援担当者を選任する
  • 過去2年以内に中長期在留者(就労系の在留資格)の受入れ実績がある
    または、過去2年以内に事業として外国人に関する各種相談業務をおこなっている
    または、支援担当者が過去5年のうち2年以上、中長期在留者の生活相談業務をおこなっている
    または、上記と同じレベルで支援業務を適正に実施できると認められている
  • 外国人が十分理解できる言語で情報提供などの支援を実施する体制がある
  • 過去1年以内に、会社の不正行為によって特定技能外国人または技能実習生の行方不明者を発生させていない
  • 支援の費用を直接または間接的に外国人本人に負担させない

登録の期間は5年間で都度更新があります。登録支援機関の一覧は出入国在留管理庁ホームページから確認が可能なので、活用する場合は事業者名が登録されているかを確認しましょう。

参考:出入国在留管理庁 登録支援機関(Registered Support Organization)

送り出し機関の役割と条件

日本で働きたい外国人を募集し、日本へ送り出すまでの手続きを海外側でサポートする機関のことを送り出し機関といいます。※技能実習制度の送り出し機関の定義とは異なり、任意で利用可能な機関です

すでに日本に在住している外国人の在留資格(留学や技能実習など)を「技能実習」に変更して雇用する場合は関わることが少ないですが、海外在住の外国人を呼び寄せる場合はその国の行政機関と手続きをおこなう必要があるため、このような場合に有用な機関となっています。

在留資格に係る申請や求職の申込みを適切に取り次ぐことができる者として「現地担当者の日本語能力レベルが高い」「適切な候補者の選定が可能」などの条件をクリアし、海外政府の推薦を受けている機関を選ぶことをおすすめします。

最近では、諸外国の送り出し機関と日本の登録支援機関が連携して、採用活動を一括サポートするサービスも人気です。

こういったサービスにより「特定技能外国人を採用したいけど、方法がわからない」「人手不足で手続きや支援にかける時間がない」といった企業も外国人採用がより身近なものとなってきています。

▼Guidable Jobs for 特定技能について詳しくはこちら

特定技能外国人の「支援計画」に欠かせない10のポイント 

特定技能外国人は、他の在留資格と比べて決められた支援内容が多いのが特徴です。
とくに前項で紹介した通り「特定技能1号」を受け入れる場合は、支援の内容やその方法を書面にして提出する必要があります。

ここからは、外国人の職業生活・日常生活・社会生活上の支援が必要だとして省令で定められた10項目の支援内容について説明します。

1. 事前ガイダンス

在留資格認定証明書の交付申請前もしくは在留資格変更許可申請前に、労働条件・活動内容・入国手続き・保証金徴収の有無等について対面・テレビ電話などで説明する。

2. 出入国する際の送迎

入国時に空港から事業所(または住居)へ送迎する。
帰国時に空港の保安検査場まで送迎・同行する。

3. 住居確保・生活に必要な契約支援

社宅を提供する(連帯保証人になるなど)。
銀行口座の開設・携帯電話やライフラインの契約など各手続きをサポートする。

4. 生活オリエンテーション

円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応などを説明する。

5. 公的手続などへの同行

必要に応じて住居地・社会保障・税などの手続きに同行する。
書類作成をサポートする。

6. 日本語学習の機会の提供

日本語教室などの入学案内。
日本語学習教材の情報を提供する。

7. 相談・苦情への対応

職場や生活上の相談・苦情などに対応する。
その際は外国人が十分に理解することができる言語で、内容に応じた必要な助言や指導をおこなう。

8. 日本人との交流促進

自治会などの地域住民との交流の場をもうける。
地域のお祭りなどの行事の案内や、参加をサポートする。

9. 転職支援(人員整理などの場合)

受入れ機関側の都合により雇用契約を解除する場合は、転職先を探す手伝いや推薦状を作成する。
求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続きの情報を提供する。

10. 定期的な面談・行政機関への通報

支援責任者が外国人とその上司などと定期的に(3か月に1回以上)面談する。
労働基準法違反などがあれば通報する。

特定技能2号を雇用する場合は計画書の提出が不要になりますが、上記の環境は整えておくことが理想です。
自社での支援を考えている場合は、必要なことを整理して最低限10項目の実施が可能かどうかの判断を慎重におこないましょう。

「特定技能制度」今後の動きに注目

日本政府は外国人に「日本で働くことを選んでもらう」ために、特定技能制度の見直しを進めています。

2024年2月現在、関係省庁は以下の実現に向けて動き出しています。

「特定産業」の対象に4分野の追加

追加を検討中の特定産業分野は「自動車運送業」「鉄道業」「林業」「木材産業」の4つです。
これらの追加が実現すると、慢性的な人手不足となっているバス・タクシーやトラックの運転手、駅係員や車両製造、木材加工などの素材生産において外国人労働者の雇用が可能になります。

既存分野における対象業務の追加

すでに特定産業に指定されている12分野においても、特定技能制度の対象となる業務の追加が検討されています。

具体的には飲食料品製造業に「スーパーでの総菜調理業務」の追加、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業に「繊維に関する業務」や「印刷に関する業務」などを加えるために動き始めています。

これらの追加が実現することにより、新規就労者は万単位で増加すると予想されています。
特定技能外国人の受け入れを通じて、永続的な人材確保や日本全体のグローバル化の加速が期待できます。

さいごに

外国人労働者を受け入れる企業は「労働者の適正な処遇」「社会・文化的な適応支援」が重要です。

とくに特定技能外国人に対しては、日本語教育や日常生活に関するサポートを積極的におこなって「彼らが日本の社会に溶け込みやすい環境を作る」ことが長く働いてもらうための足がかりとなります。

外国人労働者が安心して働けるように、特定技能制度や関連機関についての理解を深めていきましょう。