特定技能の在留資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つのカテゴリーが存在します。
今までの在留資格の取得経験や、持っている技能レベルによってどちらの在留資格を取得できるかが決まります。

この記事では特定技能1号と2号の違いや、1号を取得したあとに2号へ移行する方法について解説します。

そもそも在留資格「特定技能」とは?

「特定技能」とは2019年4月に創設された在留資格です。日本の少子高齢化などにより人手不足となっている特定産業分野(2024年1月時点で12分野)において、即戦力となる外国人材を受け入れることを目的としています。

特定産業分野 一覧
1. 介護・・・身体介護(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助など)、身体介護に付随する支援業務 ※訪問系サービスは対象外
2. ビルクリーニング・・・建築物内部の清掃
3. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業・・・機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理
4. 建設・・・土木、建築、ライフライン、設備
5. 造船・舶用工業・・・溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て
6. 自動車整備・・・自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務
7. 航空・・・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務など)、航空機整備(機体、装備品等の整備業務など)
8. 宿泊・・・宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供
9. 農業・・・耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別など)、畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別など)
10. 漁業・・・漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保など)、養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収獲・処理、安全衛生の確保など)
11. 飲食料品製造業・・・飲食料品製造業全般(酒類以外の飲食料品の製造・加工、安全衛生)
12. 外食業・・・外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)

https://guidablejobs.jp/contents/visa/1774/

「特定技能1号」と「特定技能2号」の違い

1号と2号をひとまとめに「特定技能」と呼ぶことも多いですが、在留資格の取得要件には違いがあります。
それぞれのポイントを以下の表で比較してみましょう。

 特定技能1号特定技能2号
技能レベル産業分野において最低限の知識や技術が必要な業務をこなせる
※技能試験あり
※技能実習2号を修了した外国人は試験なし
産業分野において熟練した技能が必要な業務をこなせる
※技能試験あり
日本語レベル基本的な日本語が理解できる
※言語試験あり
※技能実習2号を修了した外国人は試験なし
確認不要
※試験なし
受入れ機関・登録支援機関の支援必要不要
対象となる産業分野12分野介護を除く11分野
在留期間通算5年
(1年・6か月・4か月いずれかの付与された在留期間ごとに更新手続きが必要)
上限なし
(3年・1年・6か月いずれかの付与された在留期間ごとに更新手続きが必要)
家族の帯同基本不可要件を満たせば可能(配偶者・子)

技能レベルの違い

特定技能1号は、最低限の知識や技術が必要な業務をこなせるレベルが求められます。
即戦力となりつつも、ある程度の指導やサポートをおこなうことでより業務レベルを高めることができるため、伸びしろが大きいと言えます。

特定技能2号は、熟練した技能が必要な業務をこなせるレベルが求められます。
1号よりも高度なスキルや経験を持つ外国人のため、自律的に業務に取り組むことが期待できます。

どちらも産業分野ごとに規定されている技能試験を受けることで技能レベルを証明します。
また特定技能2号は、後ほど紹介する「実務経験」も必要になります。

参考:出入国在留管理庁 特定技能に関する試験情報

日本語レベルの違い

特定技能1号は、基本的な日本語が理解できるレベルが求められます。
仕事中はもちろん、私生活においても基本的なコミュニケーションの中で行き違いを起こさないよう、最低限の日本語レベルは必要とされています。

具体的には、日本語能力試験 N4レベル以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テスト A2レベル以上が基準となっています。
また、介護分野の場合は上記に加えて介護日本語評価試験に合格する必要があります。

特定技能2号においても基本的な日本語が理解できるレベルは求められますが、その確認として試験を受ける必要はありません。
理由は、特定技能2号を取得するには特定技能1号の取得が前提となっているからです。すでに試験に合格していることがわかるため、改めて試験を受けなくて良いとされています。

受入れ機関・登録支援機関による支援の有無

受入れ機関とは、実際に外国人を雇用する企業のことです。

特定技能1号を受け入れる企業は「外国人の職業生活・日常生活・社会生活上の支援をおこなうこと」が省令で定められています。

また、定められている10項目の支援内容やその方法を書面にして提出する必要があります。

外国人の職業生活・日常生活・社会生活上の支援内容
1. 事前ガイダンス(労働条件の説明など)
2. 出入国する際の送迎
3. 住居確保・生活に必要な契約支援
4. 生活オリエンテーション
5. 公的手続などへの同行
6. 日本語学習の機会の提供
7. 相談・苦情への対応
8. 日本人との交流促進
9. 転職支援(人員整理などの場合)
10. 定期的な面談・行政機関への通報

特定技能2号を受け入れる場合「支援は不要」とされていますが、実際に外国人が生活するときにサポートを求められる可能性があります。
こういった時も慌てずに対応できるよう、基本的な支援内容は頭に入れておきましょう。

ただし、これらの支援について全てを受入れ機関だけで完結させる必要はありません。
出入国在留管理庁に認められている「登録支援機関」を活用すると、支援に係る業務を外部に委託することが可能になります。

登録支援機関では「支援計画書の作成補助」や「支援計画すべての実施」「出入国在留管理庁への定期的な届出」など、多くのサポートが受けられます。

対象となる産業分野の違い

2024年1月時点で、特定技能1号の取得対象となる産業は冒頭に書いた「12分野」です。

特定技能2号は介護分野をのぞいた「11分野」となっています。
その理由は、特定技能1号で在留できる5年間のうちに介護福祉士国家試験に合格することで在留資格「介護」への移行が可能になるからです。

在留期間の違い

特定技能1号の在留期間は通算5年ですが、特定技能2号には上限がありません。
そのため特定技能2号は定期的な更新によって、何年でも日本に滞在することができます。

家族帯同の可否

特定技能1号は、家族の帯同は基本的に認められないとされています。

特定技能2号は在留年数に上限がないため、要件を満たせば家族の帯同が可能です。
ただし、帯同できる(在留資格「家族滞在」が取得できる)のは「配偶者」と「子」までとなっています。

特定技能の取得は「1号」からスタート

在留資格を新規取得する場合は原則「特定技能1号」からスタートになります。
特定技能1号で実務経験を積み、熟練した技能を身につけたり管理業務などを経ることで特定技能2号へ移行できるようになります。

特定技能2号に移行する段階で必要な実務経験

特定技能2号へ移行する際は、特定技能1号で在留している間に以下の経験を経て「経歴を証明」する必要があります。

業種内容
ビルクリーニング

2年以上の現場管理者としての実務経験

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業

3年以上の現場での実務経験

建設指導・管理者としての実務経験(年数は試験区分ごとに定められる)
参考:国土交通省 建設分野の2号特定技能外国人に求める実務経験について
造船・舶用工業2年以上の監督者としての実務経験
自動車整備3年以上の事業場での実務経験
航空空港グランドハンドリング業務・・・指導者としての実務経験航空機整備業務・・・3年以上の現場での実務経験
宿泊2年以上の指導を含めた実務経験
農業2年以上の指導・管理者としての実務経験 もしくは 3年以上の現場での実務経験
漁業2年以上の監督補佐・指導・管理者としての実務経験
飲食料品製造業2年以上の管理者としての実務経験
外食業2年以上の店舗管理補助者(副店長など)としての実務経験

自身の業務だけでなく、周囲のチームや同僚をサポート・管理する経験は「リーダーシップスキル」や「協調性」の向上に繋がります。
在留資格の取得要件として重視される「企業・社会へ貢献できる人材かどうか」を上記の実務経験から判断されるということです。

参考:出入国在留管理庁 特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針に係る運用要領

特定技能外国人に長期間働いてもらうには

受け入れた外国人に長く働いてもらうには、まず特定技能1号から2号に移行することが必要です。
それにむけて、労働環境の整備や従業員の日常生活も含めたサポートを充実させることが欠かせません。

最近は外国人採用専門の求人媒体の中にも「特定技能」に特化したサービスがあります。
日本の登録支援機関が、国内・海外の「特定技能を取得して日本で働きたい外国人」と「人手不足の日本企業」をつなぎ、採用活動から支援実施まで一括サポートすることで企業への定着率を向上させる仕組みになっています。

こういったサービスにより「特定技能外国人を採用したいけど、方法がわからない」「人手不足で手続きや支援にかける時間がない」といった企業も外国人採用がより身近なものとなってきました。

▼Guidable Jobs for 特定技能について詳しくはこちら▼

登録支援機関とは? 特定技能1号の外国人雇用で利用できる、政府認定機関による労働者支援「10項目」を解説

「特定技能制度」今後の動きに注目

日本政府は外国人に「日本で働くことを選んでもらう」ために、特定技能制度の見直しを進めています。

2024年3月現在、関係省庁は以下の実現に向けて動き出しています。

「特定産業」の対象に4分野の追加

特定産業分野に「自動車運送業」「鉄道業」「林業」「木材産業」の4業種が追加されることになりました。
これらの追加により、慢性的な人手不足となっているバス・タクシーやトラックの運転手、駅係員や車両製造、木材加工などの素材生産において外国人労働者の雇用が可能になります。

既存分野における対象業務の追加

すでに特定産業に指定されている分野においても、特定技能制度の対象となる業務の追加が検討されています。

具体的には飲食料品製造業に「スーパーでの総菜調理業務」の追加、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業に「繊維に関する業務」や「印刷に関する業務」などを加えるために動き始めています。

これらの追加が実現することにより、新規就労者は万単位で増加すると予想されています。
特定技能外国人の受け入れを通じて、永続的な人材確保や日本全体のグローバル化の加速が期待できます。

さいごに

「特定技能1号」「特定技能2号」それぞれの特徴と違いについて紹介しました。

就労人口が減っていくとされる日本では、外国人を雇用することが当然のようになっていくと言われています。
特定技能外国人の受け入れを検討している企業担当者の方は、在留資格の違いや移行の要件など、知見を深めておきましょう。