外国人の派遣に必要なビザは取得が難しい?!

派遣業界でも広がりつつある外国人労働者の雇用ですが、外国人を雇用する際には「不法滞在」「オーバーステイ」を避ける必要があります。不法滞在は適切なビザを持っていないためにおこり、オーバーステイはビザの期限が切れたまま滞在することを指しますが、業務で外国人を雇用しようとするときには、どのような業種であれ雇用予定者と協力しながら適切な就労ビザの取得が必要です。
ここでは人材派遣業において外国人労働者を適切に受け入れるためのビザ申請の基礎知識及び注意点について紹介します。
目次
外国人の派遣にビザは必要?!
旅行で来日するのであれば「ビザ不要」というケースはありますが、日本での就労を目的とする場合には、基本的に自国を出国する前にビザを申請するのがベストです。ビザを申請せずに来日してからビザ申請をする方法もありますが、ビザが発行されるまでに時間がかかり、もしその期間に就労をはじめると違法になります。賃金の発生する就労をするならば、どのような短期間であってもビザが必要なので、どのタイミングでとるかはよく見極めましょう。
もちろん配偶者ビザなどの特殊な要件で発行されるビザもあります。しかし、多くの場合はどのような業務に就いてもらうかをはっきりさせたうえで、就労ビザを取得することになります。特に「派遣業」の場合は特定の業務・取引先に長期間就労してもらうケースもあれば、様々な職種や業種を転々とすることもあるでしょう。
ビザを取得しようとする際には入国管理局での審査の際に「どんな仕事につくのか」や「万が一の際の責任の所在」を詳しく説明する必要があります。そのため、派遣業で外国人労働者を採用したい場合、派遣のシステムをよく理解しておかなければなりません。
そもそも派遣ってなに?
「派遣」という言葉は私たち日本人の雇用の際にも使われていますが、法的な意味合いをご存じでしょうか。
派遣のシステムは「派遣元」「派遣先」「労働者」の関係で構成されています。派遣元と労働者の間で『雇用契約』を結び、派遣元と派遣先の間で『労働者派遣契約』を取り交わしています。派遣元の指示によって労働者が派遣先で就労し、派遣元から賃金を受け取るという形で成り立っているのが「派遣」と呼ばれる就業形態です。
一般派遣ってなに?!
一般派遣は「登録型派遣」が主流の派遣で、特定のスキルがない人でも派遣先を見つけられるというものです。派遣元の登録者リストに登録することで、スキルや能力に見合った派遣先を紹介されるという派遣の形態で、業種を問わないあらゆる派遣先に対応しています。
これまで専業主婦をしていた人がパート先を探す際や、学生がアルバイトを探す際などにも利用されることも多く、同じ派遣先に続けて就業できる期間は派遣法により「3年間」と決まっています。
特定派遣ってなに?!
エンジニアや研究職など、特定の高いスキルを持った人たちを対象にした派遣業務で、派遣元と労働者の間で無期限の雇用契約を結んでいるケースを「特定派遣」と呼んでいます。労働者としての立場は「派遣元の正社員」ですが、就業場所は「派遣先」という形態です。一般派遣よりもさらに専門性の高い仕事ができるのが特定派遣です。
たとえば、システムエンジニアとして高い技術・経験を持っている人が特定派遣業者に派遣として登録し、派遣先企業で「システムエンジニア業」を行うために派遣されるというケースです。一部の派遣業者においては、どの企業にも派遣されていない期間にはさらに技術を磨くために、派遣元からの補助などを受けて技術研修を受けたり自主的に資格勉強を進めたりすることができるシステムを採用している企業もあります。
平成27年以前は特定派遣の場合は「無期限で同じ会社への継続派遣」が可能でしたが、法改正によって現在では一般派遣同様「3年」という期限付きの派遣となっています。
就労ビザをとればいいって本当?!
外国人を派遣業務で雇いたい場合には、就労ビザを取得することになります。
就労ビザを取得できる外国人の前提条件(人的要件)には大きく分けて2つあります。
- 業務と関連した学部で学位以上(大卒以上)を取得していること
※ただし通訳・語学教師業務のみ通訳に関連した学部を卒業していなくてもよい。
※最終学歴が専門学校の場合には通訳・語学教師であっても業務との関連性が必要。
- 就業しようとしている職業で10年以上の業務経験があること
海外の大学は日本の大学と分類が異なります。学位があるなら日本の専門学校卒でもいいのですが、「カレッジ」といっても「コミュニティーカレッジ」では、国によっては学位が出なかったり、職業訓練所として分類されているケースがありますので確認が必要です。学歴確認の際には終了証で「bachelor(学士・大学卒)」「master(修士・大学院修士課程修了)」「doctor(博士・大学院博士課程修了)」のであるかどうかを確認したほうが良いでしょう。
また、10年以上の業務経験があることで就労ビザを取得しようとする場合には、在職証明書を発行してもらう必要があります。在職証明書が手元にない場合は勤めていた会社に相談して発行してもらうのが基本です。もしすでに会社が倒産している、会社との折り合いが悪くコンタクトを取りたくない場合は、雇用契約書や内定承諾書、給与明細書、異動通知書などで在職期間や業務内容が分かる書類をそろえることになります。本人の証言だけでなく、提出可能な目に見える証拠が必要です。
なお人的条件を確認する前に、就業してもらおうとしている業種が外国人の就労ビザがとれる範囲の職務(職務要件)なのか、また企業自体が就労ビザを取得するうえで障害がないかどうか(会社要件)も併せて確認する必要があります。
外国人派遣のビザ取得は簡単って本当?!
外国人の就労ビザを取得するには「人的要件」「職種要件」「会社要件」を満たす必要があります。3つの要件を満たすのであれば、外国人派遣の就労ビザを取得するのは比較的難易度が低いのですが、一般派遣よりも特定派遣のほうが就労ビザの取得が容易であるともいわれています。
一般より特定派遣のほうが取りやすい?!
就労ビザを取れない職業や業種があることも頭に入れておく必要があります。就労を目的とした来日においては「技術・人文知識・国際業務」というビザを取得することになりますが、このビザでは肉体労働、単純作業、サービス業では取得できません。また期間が極端に短く、専門性の低い業務内容で契約を繰り返す傾向がある一般派遣の場合「安定的・継続的」といえないという理由から、仕事の継続性について十分な説明ができないとビザの要件を満たさないと判断されてしまう可能性もあります。
「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザは「システムエンジニア(SE)」や「通訳」、「デザイナー」といった、特定の技術を必要とする職業において与えられる在留資格です。そのため特定の高いスキルを持った人たちを対象にした派遣業務である「特定派遣」のほうが、「安定的・継続的」と見られやすく、就業ビザの取得に際しては条件を満たしやすいといえるでしょう。
なお給与体系(月給制か時給制かなど)や雇用期間の更新期間の短さ(3か月ごとに更新など)によってビザがとれないということはありません。
外国人派遣のビザ取得で企業が気を付ける事って??
どんなに「人的要件」「職種要件」を満たしていても、受け入れ先の企業が条件を満たしていなければビザは発行されません。職種要件の一部でもある「安定的・継続的」という要素が企業要件の審査で確認されますが、赤字や債務超過になっているような場合でもビザの取得が可能なこともあります。
雇用側の協力は不可欠?!
雇用者側では外国人労働者の受け入れができるよう、受け入れ態勢を整備しなければなりませんが、さらにその証明を書類上でできるようにしておく必要があります。
外国人労働者であっても日本人と同等かそれ以上の給与を支払うことや、社会保険についても必要があれば加入させる準備をする必要があります。労働基準法に違反するような契約内容は禁止ですので、しっかりと確認しておきましょう。
なお外国人労働者を派遣業務に就かせる場合には「派遣元」の経営がしっかりしている必要があります。もし派遣先の業績が悪くても派遣元の業績が悪くなければビザの審査で不利になることはありません。ビザ申請の際には雇用先企業のサインや決算関係の書類が必要なので、雇用者側の協力は必須であるといえるでしょう。
さらに就労ビザを取得してからも企業の協力は必要です。忙しく働くあまり更新時期を逃してしまうとオーバーステイ・不法滞在となってしまいます。また就業先が変わった時には申請している職務(許可が出ている仕事)と合致しているかどうかを確認しなければなりません。
外国人の派遣に必要なビザについては掴めましたか?
能力が高く意欲もある外国人労働者を雇用することには日本人労働者にはない大きなメリットもあります。受け入れをするためのビザの審査はややこしいように見えますが、しっかりと事前に準備をしていれば恐れることは全くありません。もし不許可になってしまった場合でも、不許可の理由を確認してそれを充足させるだけの資料や情報さえあれば許可が出ることも多いのです。
雇用条件及び書類の整備はビザ申請への第一歩です。派遣業務で外国人労働者の雇用を考えている場合には、入国管理局の情報を見ながら、分からないことをその都度確認して進めていくことをおすすめします。