近年は次第にさまざまな業界で労働不足が深刻化し、外国人採用は多くの企業さまにとって身近なものになってきました。しかし実際に外国人を採用するとなると、就労ビザの申請手続きなどの点で不安になる採用担当の方も多いでしょう。

そこで今回は、外国人の就労ビザ申請について、全体の流れや必要な書類などを解説いたします。

外国人の就労ビザ申請の流れは?

外国人を採用する際には「海外から外国人を招く場合」と「すでに日本にいる外国人を採用する場合」とで手続きが異なります。しかし大まかな流れとしては、以下の通りです。

<外国人採用の手続きの流れ>

  1. 在留資格の確認
  2. 雇用契約締結
  3. 出入国在留管理局へ「就労ビザ」の申請
  4. 申請が承認され次第、正式雇用

① 在留資格の確認

外国人を採用する際、まず行うのが「在留資格」の確認です。
在留資格は外国人が持つ「在留カード」を提示してもらえば確認できます。特別永住者を除いて、在留カードを所持しない外国人を雇い入れることは原則できないので注意しましょう。

在留資格をすでに所持している場合でも、「雇用後の業務が在留資格の範囲内の業務か」「在留期間を過ぎていないか」も確認する必要があります。
業務内容が異なる場合は、雇用後の業務に適した資格を取得するため「在留資格変更許可申請」が必要になることもあります。
また海外在住の外国人が新たに在留資格を取得する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」をします。

② 雇用契約締結

出入国在留管理局(以下「入管」)へ就労ビザを申請するまえに、当該外国人と雇用契約を締結します。なぜなら申請時に、当該外国人との「雇用契約書」あるいは「労働条件通知書」などを提出するためです。

外国人が日本で就労する際、日本人と同様に労働関連の法律が適用されます。法令に従って、外国人が理解できる言語で作られた雇用契約書で契約を交わす必要性があることも、ぜひ知っておきましょう。

③ 入管へ「就労ビザ」の申請

雇用契約締結後は、企業の所在地を管轄する入管に「在留資格変更許可申請」あるいは「在留資格認定証明書交付申請」をしましょう。
出入国在留管理局では、申請した在留資格の要件を満たしているかが審査されるため、当該外国人の学歴・実務経験などが申請した在留資格に合致していなければなりません。

また雇用主である企業も、事業内容や規模などがわかる書類を提出し、外国人採用が可能なことを証明する場合もあります。

④ 申請が承認され次第、正式に雇用

就労ビザの申請が承認されて許可されれば、企業は当該外国人を正式に雇用できます。
正式に雇用が決まったら、早めに外国人に通達しましょう。その後も外国人は住所を変更したり、働き先を届け出る必要があります。通達を早めに行うことで、早期に働き始めることが可能になります。

また雇用後に制作する「雇用契約書」に関しては、日本語のみならず英語で作成しましょう。一緒に日本語の雇用契約書をゆっくり読んで、内容を確認している会社もあります。

【海外から雇用する外国人】の就労ビザ申請は?

外国人を海外から招いて雇用する場合には、どんな手続きが必要なのでしょうか。

外国人を海外から招いて雇用する場合の流れ

  1. 就労ビザ取得の可能性を確認
  2. 雇用契約締結
  3. 企業側が「在留資格認定証明書」の交付を申請
  4. 在留資格認定証明書を海外在住の外国人に送付
  5. 当該外国人が在外公館で査証を申請
  6. 査証発行後、当該外国人が来日

❶ 就労ビザ取得の可能性を確認

入管法にて定められた19種の就労ビザの取得条件を確認して、ビザ取得の可能性を検討しましょう。
ここで確認を怠ると取得できなかったり、申請が長引く可能性がでます。外国人労働者といっしょに確認することをおすすめいたします。

就労ビザ取得の基準はあるの? 学歴、学業で学んだ科目との関連性、安定的な雇用契約などについて解説します!

❷ 雇用契約締結

雇用後の賃金をはじめとする労働条件などを当該外国人と相談のうえ、就労ビザ申請に必要となる雇用契約を書面により締結します。日本語の契約書だけでなく、外国人が理解できる言語の契約書も作成しましょう。

実際に外国人が考えていた労働内容と雇用側が考えていた労働内容が異なり、相互確認が取れていなかったために外国人が離職したという例もあります。
この契約書は外国人との相互確認のタイミングでもあるため、契約書を渡してから不明点などを聞きだしてみましょう。

❸ 企業側が「在留資格認定証明書」の交付を申請

企業担当者の所在地を管轄する入管に「在留資格認定証明書」の交付を申請します。
海外在住者を招くために必要な書類で、入管から日本への上陸許可が審査されたことを証明するものです。
就労ビザ取得がスムーズになるので、多くの企業が同証明書の交付を申請し、就労ビザを取得しています。

この申請には時間がかかることもあります。後回しにはせず早めに行いましょう。複雑に感じるならば、申請代行サービスや行政書士に相談しましょう。

❹「在留資格認定証明書」を海外在住の外国人に送付

交付された「在留資格認定証明書」を、海外在住の外国人に送付します。その後は当該外国人側の作業です。外国人も日本に来てからは、ほかにもたくさんの作業に追われる可能性があります。在留資格認定証明書の送付後も、それで終わりにせず何度もリマインドしてあげるといいでしょう。

❺ 当該外国人が在外公館で査証を申請

記入した「在留資格認定証明書」と必要書類を持参し、当該外国人は自分が居住している国の日本の在外公館へ赴いて査証を申請する必要があります。
ここも詳しく説明をしてあげるといいですね。

❻ 査証発行後、当該外国人が来日

査証が発行されれば、当該外国人は来日して就労できます。
ただし「在留資格認定証明書」の有効期限は、発行から3ヶ月となっています。この期間内に来日しなければ、効力が失われ入国できなくなるので注意しましょう。

【国内にいる外国人】の就労ビザ申請は?

次に日本にいる外国人を雇用する場合の手続きを解説いたします。

国内にいる外国人を雇用する場合の流れ

  1. 「在留資格」の確認
  2. 雇用契約締結
  3. 必要に応じて「在留資格変更許可」申請
  4.  雇用後の各種届出

❶ 「在留資格」の確認

採用する外国人の「在留資格」が、採用後の職種や業務内容の範囲内であるかを確認します。ここで注意が必要なポイントは「制限付き就労可能ビザ」です。

たとえば「留学ビザ」ですと資格外活動許可が必要で、さらに労働可能時間が1週間に28時間以内という制限が付きます。

企業によってはこれを気づかぬうちに超えてしまい、人事担当の方が罰せられることもあります。ほかにも場合によっては「不法就労助長罪」として、会社全体が罰せられることもあります。充分に注意しましょう。

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❷ 雇用契約締結

(海外から雇う場合と、この部分は同じです。)

❸ 必要に応じた「在留資格変更許可」申請について

業務内容が保有する在留資格の範囲内でない場合、「在留資格変更許可」を申請しなければなりません。以下3つのケースにわけて解説します。

<ケース1>

当該外国人が所持する在留資格が、採用後の職種や業務内容の範囲内である場合、在留資格に関する申請はとくに必要ありません。しかし採用後は、入管やハローワークに届出をしなければなりません。

<ケース2>

当該外国人が所持する在留資格が、採用後の職種や業務内容の範囲外である場合、雇用する企業と当該外国人が協力して「在留資格変更許可」を申請します

<ケース3>

留学生を新卒採用する場合、「留学ビザ」から「就労ビザ」へ変更が必要です。このケースでは、採用予定の外国人学生が自身の住所地を管轄する入管に「在留資格変更許可」の申請をします。

❹ 雇用後の各種届出

企業は外国人採用後、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」をすることが義務づけられています。もし届出を怠ると30万円以下の罰金が科されます。
また当該外国人は契約終了と新契約締結について、入管に「契約機関に関する届出」を提出しなければなりません。企業側もこの点をしっかりと指導しましょう。

外国人の就労ビザ:申請から認可までの時間は?

入管に就労ビザ(就労可能な在留資格)を申請して認められるまでの期間は、おおよそ1ヶ月から3ヶ月ほど。すこし幅があるのは、時期や申請内容によるものです。

書類の不備や追加書類の提出などをもとめられれば、認められるまでの時間はさらに長くなってしまいます。しっかり書類を揃えることが重要です。

また在留資格は申請すれば、かならず審査を通過できるわけではありません。不許可の理由は、「書類の不備や要件を満たしていない」などさまざま。
もし不許可になった場合は、その理由を調べて修正し、再度申請しましょう。その際ビザ申請代行サービスなどは頼れる存在です。ぜひ相談してみましょう。

外国人の就労ビザについて詳しくなりましたか?

外国人の就労ビザについて、申請の流れにスポットを当てて解説しました。

国内にいる外国人と、海外にいる外国人では就労ビザの申請方法が異なり、すでに在留資格を有している外国人でも、資格外の業務につくことができないなど、留意点が多いのも事実です。

しかし今後ますます外国籍の人材に頼らざるを得ない日本の状況を考えると、なるべく早く就労ビザ申請の流れを把握しておくことが必要です。
就労ビザの申請に時間を費やせない、あるいは法律に抵触することが心配という方は、資格を持つ行政書士など専門家へ相談を検討しましょう。