みなさん、ジョブクラフティングという行動についてご存じでしょうか? 労働者のジョブクラフティング行動は企業にとって極めて重要であるため、外国人労働者のジョブクラフティング行動を理解する必要があります。

ジョブクラフティング行動とは?

ョブクラフティングは「働く人たち一人ひとりが、主体的に仕事や職場の人間関係に変化を加えることで与えられた職務から自らの仕事の経験を創り上げていくこと」を意味しています。ジョブクラフティングには、積極型クラフティングと回避型クラフティングという行動の種類が存在します。

積極型クラフティング(アプローチクラフティング)は、自信、献身、責任感、高品質の仕事を行うための意識を持つことを指します。また、職務満足度と仕事への関与を向上させます。

この種のジョブクラフティングでは、従業員が構造的な職務リソース、社会的な職務リソース、およびチャレンジングな職務要求を増やそうとしています。つまり、積極型クラフティングは従業員だけでなく企業にもプラスの効果があることを意味します。

回避クラフティングは、個人が仕事の要求を減らしたり、仕事の責任の一部から離れようとする一連の行動を指します。これには、特定のタスクや仕事の側面に関連する認識されたストレスや努力を最小限に抑えるための戦略が含まれます。その結果、これは企業にとって、生産性の低下や仕事のパフォーマンスの低下など、いくつかの方法で否定的な影響をもたらす可能性があります。

ジョブクラフティング行動を理解することで、ジョブクラフティングを促進しサポートするための方法や外国人労働者の職場満足度を向上させるための手段について理解することができます。

ジョブクラフティングのメリット

ジョブクラフティングが効果的に機能すれば、従業員の離職率が低下することが期待されます。自身の業務に魅力を感じられない場合、より魅力的な収入や待遇を提供する企業が見つかれば、転職を決断する可能性が高まります。

しかし、担当業務に確かなやりがいを見出してもらえれば、待遇や給与だけでなく、自社ならではの魅力を感じてもらえるようになります。その結果、従業員の定着率が向上することが期待されます。

各従業員が業務との接し方を見直す過程で、仕事への意欲が自然と高まります。ジョブクラフティングの過程では、自社ビジョンの共有や目標の具現化などを丁寧に行うことで、業務が会社や社会にどのような影響を与えるのかを深く理解してもらえます。

また、従業員の意見を積極的に取り入れたり、部署外の従業員とのつながりを促進したりすることも、従業員のモチベーション向上につながります。仕事への満足度が高まれば、企業や組織に貢献したいという意欲も生まれるため、自然と自社への帰属意識も向上していくでしょう。

社内コミュニケーションの活性化も、ジョブ・クラフティングをのひとつのメリットです。

ジョブ・クラフティングを実践すれば、社員は自発的に行動できるようになります。

社員の自主性を促進すれば、「自分で必要な情報を収集する」態度を従業員に定着させることが可能です。
その結果、社内のコミュニケーションが活発化し、業務がよりスムーズに進行する効果が期待されます。

日本国内の外国人労働者を対象にしてアンケートを実施

日本国内の外国人労働者を対象としたアンケート調査の回答数は、合計で105件でした。回答者の主な情報を以下のテーブルにまとめています。

性別については、男性が52.4%、女性が42.9%となっています。回答者の国籍は主にアジアの国であり、その中でももっとも多かったのは46.7%がフィリピンでした。回答者の64.8%が仕事に満足をしています

満足している理由は「働く環境が良い」や「同僚との関係が良い」という答えがもっとも多かったです。仕事に満足している方が多いですが、残りの35.2%は満足していない理由は「給料が良くないから」や「スキルアップやキャリア開発の機会がない」などでした。

外国人労働者の多くは積極型クラフティングを行っている

外国人労働者からは、積極型クラフティングを測定するためのいくつかの質問に対してポジティブな回答が多かったことがわかりました。

例えば「仕事で新しいことを学ぼうとしていますか?」という質問に対して、回答者の85.7%が「はい」と答えました。「上司があなたの仕事に満足しているかどうかを尋ねていますか?」という質問には、54.3%が「はい」と答えました。

また、回答者の70.5%が同僚からアドバイスを求めており、66.7%が定期的に追加の仕事を引き受けています(それに対して追加の給与をもらえなくても)。

これらの回答から、外国人労働者の多くがアプローチラフティングを行っていることが明らかです。

回避クラフティングを行っている外国人労働者の割合はどうなっている?

回避クラフティングを測定するためのいくつかの質問に対する結果はつぎの通りです。

「ときどき仕事を先延ばしにすることがありますか?」という質問に対して35.2%が「はい」と答えました。また「仕事の中で特定の責任を怠ったり、特定のタスクにあまり努力を払わなくなることがありますか?」という質問に対する「はい」の回答は36.2%でした。

これらの回答から、外国人労働者の約3割が回避型クラフティングを行っていることがわかりました。

積極型クラフティングをどのように促進できるのか?

調査の結果から、多くの外国人労働者が積極型クラフティングを行っていることがわかりましたが、約3-4割は回避型クラフティングも行っています。
では、企業側が労働者の積極型クラフティングをどのように促進し、回避クラフティング行動を減らせるでしょうか。

ジョブクラフティング研修

実はジョブ・クラフティングに向けて人事部ができる支援もあります。例えば、ジョブクラフティング研修の機会を設け、積極的な推進を行っていくことです。

従業員の自主性を尊重する

ジョブクラフティングにおいて、何よりも従業員の積極的な姿勢が重要です。組織や上司が強制的なアプローチをする上意下達型の組織構造では、自由な発想や取り組みが生まれず、ジョブクラフティングの目的を達成することが難しくなります。

従業員が「強制されている」と感じると、業務との向き合い方を改善しても、本当の意味でのやりがいやモチベーション向上が困難です。

企業側からメリットや実践方法を提示することは重要ですが、取り組みそのものは従業員が自発的に行えるようにする必要があります。

要するに、従業員の自主性を尊重することが重要です。

仕事が属人化しないようにフィードバックの機会をつくる

仕事が属人化しないようにフィードバックの機会をつくることで積極型クラフティングを促進することができます。ジョブクラフティングでは、従業員が自分のペースで進めることが基本であり、そのために取り組みが個人に焦点を当てがちです。この個人主義の傾向により、業務内容や進め方が個々の従業員に固有化してしまう「属人化」が起こります。
作業の属人化が進むと、「急な欠勤への対応が困難」「転職や離職による影響が大きい」といったデメリットが生じます。

したがって、企業は個人に依存せずに業務を遂行し、業務品質と生産性の向上を図るために「標準化」を目指す必要があります。
ジョブクラフティングを導入する際には、属人化を避けて標準化を実現する方法を考えることが重要です。たとえば、グループワークで意見を交換したり、定期的なフィードバックの機会を設けたりして、取り組みのプロセスを共有することが挙げられます。

チームワークが必要とされる業務を明確に区別する

ジョブクラフティングを導入する際には、「対象とする業務の選定」を慎重に行うことが大切です。基本的には個人がやりがいを見出すための手法であり、チームワークが必要とされる業務には向かないこともあります。

これまで見てきたように、ジョブクラフティングで効果を上げるには一定の時間が必要ですので、無闇に取り組むのは得策ではありません。
そのため、活用すべき業務や場面を見極め、適切な指導・運用をすること、チームワークが必要とされる業務と切り分けることも重要です。

終わりに

ジョブクラフティングは仕事に対するやりがいを引き出し、仕事の質の変容をもたらすことができる効果的な取り組みです。アンケートの回答から、外国人労働者の多くが自ら積極型クラフティングを行っていることが明らかだが、労働者の積極型クラフティングを企業側からも促進することができます。

労働者のジョブクラフティング行動を理解しながら、確かな効果が期待できるような実践方法を見つけていきましょう。