グローバル化が進み、日常で外国人と接する機会が多くなったことから「そろそろ自分の店にも外国人スタッフが欲しい」と感じる方が増えています。

本記事では「飲食店」の外国人雇用について、受け入れできる在留資格や雇用するメリット、採用の流れについて紹介します。

外国人を雇用する飲食店は年々増加している!

引用:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)

厚生労働省の発表では、2023年10月末時点の日本における外国人労働者の数(全体)は2,048,675人で過去最高となりました。

本記事のテーマである「飲食店」が含まれる業界は、上のグラフでは「宿泊業、飲食サービス業」に当たりますが、この労働者数も全体に比例して増加傾向にあります。

飲食店で雇用できる外国人の在留資格は10種類

外国人を雇用するにあたって、雇用主側が理解しておかなければならない「在留資格」について説明します。

在留資格とは?

在留資格とは、外国人が日本で暮らすためにさまざまな目的で取得している資格です。
観光客以外の「中長期日本に滞在する外国人」は全ての人が何らかの在留資格を持っています。

在留資格の種類は29種類あり、滞在の目的によって取得する在留資格が決まります。
たとえば日本での就労が滞在目的の場合は「飲食業での就労」なのか「建設業での就労」なのか、といった業種・職種の違いや、その業務内容によっても取得する在留資格が異なります。

外国人採用に必須知識!在留資格完全ガイド

この29種類のなかで、飲食店で働くことができる在留資格は以下の10種類です。

【飲食店で働くことができる在留資格】
・技術・人文知識・国際業務
・技能
・特定技能
・特定活動
・永住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
・定住者
・留学
・家族滞在

上記の在留資格それぞれに、従事できる業務内容の制限があります。(詳細は次項に記載します)
そのため「実際の業務内容に適した在留資格」を持つ外国人を対象に採用活動をおこなう必要があります。

引用:農林水産省 食品産業における労働力確保について

実際に飲食店で雇用されている外国人は、上のグラフからわかるように「留学」や「家族滞在」などの在留資格を持っていることが多く、ついで「永住者」や「日本人の配偶者等」などが多くなっています。

10種類の在留資格それぞれの、飲食店での業務範囲は?

ここからは前項に記載した「飲食店で働ける10種類の在留資格」それぞれが従事できる業務内容について解説します。

「技術・人文知識・国際業務」の外国人

「技術・人文知識・国際業務」の外国人は「大学等で学び習得した内容」や「一定の水準以上の実務経験に関連した内容」に関連する業務に従事することが可能です。

たとえば、エリアマネージャーやスーパーバイザー、人事総務や会計の仕事、マーケティング、営業の仕事などが当てはまります。
ホールでの配膳や調理補助などの単純労働はできません。※ただし、本来の業務をおこなうために実店舗での研修が必要な場合は、短期間であれば可能とされています

いわゆる本社業務を任せたい場合は「技術・人文知識・国際業務」の外国人雇用が適しているといえます。

「技能」の外国人

「技能」の在留資格では「外国料理の料理人(コックやパティシエなど)」がそのスキルを生かす業務に従事することが可能です。

つまり、外国の料理を提供する専門店の料理人や調理師のことです。この在留資格も、ホールでの配膳や調理補助などの単純労働はできません。
日本発祥の料理ではなく外国の料理であることが前提のため、居酒屋や日本料理店の料理人として雇用することはできませんので注意しましょう。

「特定技能」の外国人

「特定技能」は調理工程の理解、食品などの衛生面に関する理解、接客力(調理・配膳や日本語能力)などがあり、即戦力になれると判断された外国人です。この在留資格を取得している外国人は、飲食店の運営に必要な業務に幅広く従事できます。
つまりレストランやカフェ、ファストフード店などにおいて、店舗管理はもちろん調理や接客、配達なども可能です。

単純労働のみに従事することはできませんが飲食店の運営に必要な業務の一部として、一時的に特定の業務をおこなうことは可能なため、比較的汎用性が高い在留資格といえます。

「特定活動」の外国人

「特定活動」の在留資格はひとくくりではなく、さらに詳細な活動目的が決められています。この活動目的ごとに設定されている就労制限については、在留カードや指定書で確認ができます。

たとえば「日本の大学を卒業していて、日本語レベルが高い外国人(特定活動46号)」は正社員として雇用できます。店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務が可能ですが、単純労働のみに従事することはできません。
その反面「ワーキングホリデー(特定活動5号)」などの場合は、アルバイトでの雇用や単純労働が可能です

「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の外国人

「身分系」と言われる上記4つの在留資格には、就労活動の制限がありません。そのため雇用形態(正社員・アルバイトなど)に縛りはなく、単純労働も可能です。
雇用する側にとっては、一番雇用しやすい外国人といえます。

「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説

「留学」「家族滞在」の外国人

「留学」「家族滞在」の2つは、本人が「資格外活動許可」を受けている場合はアルバイトが可能です。
在留カードに資格外活動許可の記載があれば、1週間に28時間以内という制限付きで単純労働もできます

これらの在留資格を持つ外国人は単純労働のアルバイトを希望することが多く、ホールスタッフやレジ係、調理補助などの需要が多い飲食店では採用実績が最も多い在留資格です。

飲食店で外国人を雇用するメリット

メリット1. 慢性的な人手不足の解消

日本国内での労働者不足が深刻化している飲食業界においては、外国人の雇用が貴重な解決策となります。
またインバウンド需要が高まるなか、母国語や外国語を話せる外国人を雇用することで観光客とのコミュニケーションがスムーズになります。

メリット2. マニュアル化の促進と効率化

外国人を雇用する場合、ジャパンナイズされた業務を覚えてもらうために徹底したトレーニングや明確な指示が求められます。
普段の業務を棚卸ししてマニュアル化することで、店舗の運営が効率的になり日本人従業員とも一貫性のあるサービスが提供できるようになります。

メリット3. 多様性から生まれる新たなビジネスチャンス

外国人が持つ視点は、飲食店でのサービスにおいて日本人と異なるアイデアを生み出すことがあります。たとえば、母国の料理や文化を取り入れたメニューやイベントを企画することで、新たな顧客を開拓し、集客や売上の向上に繋げることも可能になります。

飲食店で外国人を雇用するまでの流れ

外国人労働者を採用する際の採用フローは以下の通りです。

STEP1. 求人票の作成・掲載

採用するポジションに必要な要件や要求を明確化し、在留資格や勤務条件なども含めた求人票を作成します。
求人を広く公開するために、ハローワークや人材紹介会社、外国人向け求人サイトなどを活用することをおすすめします。

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STEP2. 書類選考

応募者の基本情報や経歴、資格などと業務内容の関連性を確認し、労働条件に関する基本情報をチェックします。

STEP3. 面接

面接を通じて応募者の条件や資格をさらに確認し、条件をすり合わせます。

STEP4. 内定・雇用契約を締結

合格の場合は採用通知を送り、雇用契約を締結します。
雇用にあたって在留資格の新規取得や変更が発生する場合は、この段階で書類を準備し申請しましょう。

【雇用形態別】外国人採用の必要書類ガイド|面接・入社前・入社後のタイミングで確認や作成・提出が必須の書類を解説

STEP5. 受け入れ準備

マニュアルの作成や他の社員への共有など、受け入れ体制を整えます。
とくに言語的なサポートを強化し、外国人労働者がスムーズに業務をおこなえるように準備しましょう。

STEP6. 入社

入社日までの連絡を取り、本人に不安や疑問がある場合は適切に応えましょう。
入社日に近くなったら必要な事務連絡をおこない、入社を歓迎しましょう。

採用フローの詳細については、以下の記事を参考にしてください。

外国人採用の始め方|外国人材を初めて雇用する企業が知っておくべき知識・採用フロー・手続き・注意点を解説

さいごに

少子高齢化やインバウンド需要の増加といった現代の状況を考慮すると、飲食店を含めサービス業における人材確保がますます重要視されます。
外国人の雇用は、最初は戸惑うことがあるかもしれませんが、店舗の繁栄において大きなメリットがあります。

この機会にぜひ、店舗の競争力向上やビジネスの拡大を見据えて外国人採用を検討してみてください。