外国人観光客の増加やオンラインビジネスの広がりにより、国をまたいだ取引が私たちの身近なものになってきました。そんな中で今、世界中の人材から注目されているのは「外国人が働きやすい企業」です。

こうした企業には共通点があります。単に海外とのつながりがあるだけでなく、国籍や文化の違いに関係なく、多様な人たちが長く働き続けられる仕組みを持っているのです。
いわゆる「グローバル企業」と呼ばれる企業は、こうした環境づくりにしっかりと取り組んでいます。

この記事では、外国人から「ここで働きたい」と思ってもらえる会社になるために、採用担当者が持つべき視点や、取り組むべき体制づくりのヒントをわかりやすく紹介していきます。

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グローバル企業ってなに?

グローバル企業が集まる都心部の画像

グローバル企業とは、自分の国だけでなく海外にも目を向け、複数の国で共通したブランドや考え方をもとに活動している会社のことをいいます。ただ海外に進出しているだけではなく「どの国でも同じような働き方ができること」や「世界全体を見ながら会社の方針を決めていること」が特徴です。

たとえば、商品やサービスの質、ブランドの見せ方、社内でのルールなどが日本でもアメリカでも変わらないように統一されていることがあります。国によって方針がバラバラにならないよう、全体をうまくまとめていることも、グローバル企業の大きなポイントといえるでしょう。

外資系企業・多国籍企業・国際企業との違い

グローバル企業に似た言葉として「外資系企業」「多国籍企業」「国際企業」などがあります。それぞれの違いを見ていきましょう。

外資系企業

本社が海外にあり、日本にも拠点を持っている会社のことを「外資系企業」と呼びます。
会社全体でグローバルな戦略を共有しているかどうかに関係なく、お金の出どころ(出資元)が外国なら、外資系とみなされます。
ただし、必ずしも日本の会社(現地法人)が経営の中心になっているとは限りません。

多国籍企業

いくつかの国に法人を持ち、それぞれの国で別々に事業を行っている会社が「多国籍企業」です。
国ごとに異なる方針ややり方を取ることが多く、本社がすべてをまとめているとは限りません。グローバル企業とは運営のスタイルが少し違います。

国際企業

海外との取り引きや輸出入を行っている会社を「国際企業」といいます。
まだ海外に拠点がない場合も多く、グローバル企業ほど全体のつながりは強くありません。いわば、海外展開のスタート段階にある企業です。

これらと比べて、グローバル企業の最大の特徴は「どの国でも同じクオリティとルールで事業を行い、会社全体が連動して動いている」点にあります。
つまり、海外との関わりがあるだけでなく、世界中の拠点がひとつのチームのようにまとまっているかどうかが、グローバル企業かどうかを見分けるカギになります。

「過酷」と思われがちな日本企業とのちがいは?

残業する日本人の画像

「日本の職場は働きすぎ」という印象を持っている外国人は少なくありません。残業が多く、休みも取りづらいというイメージから「日本では安心して働けないのでは」と心配されることもあります。

一方でグローバル企業は、どこの国でも同じように働けるよう、労働時間や休暇制度、評価のルールなどをしっかり整えています。
無理なく働ける環境づくりに力を入れている企業が多く「安心して働けそう」と感じてもらえる点が、日本の一般的な職場との大きな違いです。

なぜ外国人を採用するの?

採用する理由を考える人の画像

グローバル企業を目指すうえで、外国人の採用はもはや特別な取り組みではありません。むしろ、いろいろな国の人たちが安心して働ける環境を整えられるかどうかが、企業の未来を左右するといっても大げさではない時代になっています。

ここでは、今なぜ日本企業が外国人の採用に力を入れているのかを、いくつかの視点から説明していきます。

人手不足を補い、組織の活性化につなげる

日本では少子高齢化の影響で、働く人の数が年々減っています。とくに情報サービスや警備、建設などの分野では人手が足りず、外国人の力を借りることが多くなっています。
2025年4月の調査によると、正社員が「足りない」と感じている企業は全体の51.4%にのぼり、非正社員についても深刻な状況が続いているようです。

参考:帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)

とはいえ、外国人の採用は単に人数を増やすだけではありません。異なる価値観や経験を持った人が加わることで、新しい視点が社内に広がり、今までのやり方を見直すきっかけにもなります。
仕事の進め方やコミュニケーションの形も少しずつ変わっていき、職場全体がより活気づくことが期待できるでしょう。

実際に、外国人労働者を受け入れる企業は年々増えています。厚生労働省の発表によると、2024年10月時点で日本国内で働く外国人は約230万人にのぼり、前年より25万人も増えました。
このような流れの中で、外国人の採用は組織の多様性を広げるだけでなく、新しいアイデアや工夫が生まれるきっかけにもなっているのです。

参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)

多言語・多文化への対応が求められている

訪日外国人の増加や、ネット通販の海外対応などにより、企業には外国語でのやりとりができる力が求められるようになってきました。たとえば、中国語や英語、ベトナム語などを話せるスタッフがいれば、外国のお客様ともスムーズにコミュニケーションがとれます。

さらに、社内で英語を使った仕事の仕組みを整えることで、外国人だけでなく日本人スタッフの語学力や対応力も自然と高まっていきます。こうした取り組みは、会社全体の成長にもつながっていくでしょう。

グローバル展開を加速させるために必要

新しい海外市場に進出する際には、その国の文化や商習慣をしっかり理解している人が必要です。そうでないと、思わぬトラブルが起きたり、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。
外国人社員がいれば、現地の目線に近い感覚で情報を集めることができ、その土地に合った商品づくりや販売の工夫に活かすことができます。
たとえば、現地向けの広告やプロモーションの方法、商品の使い方や言語対応などについても外国人社員の意見を取り入れることで、より現実的で効果的な対応が可能になります。

このように、外国人の採用は企業が海外に向けて成長していくうえで、強力なサポートとなっていきます。これからの時代に欠かせない取り組みのひとつと言えるでしょう。

グローバル企業に求められる条件とは?

グローバル企業で働く人たちの画像

「グローバル企業」と呼ばれるためには、ただ海外に拠点があるだけでは足りません。文化や言葉の異なる人たちが一緒に働くなかで、共通の価値観に基づいて全体がまとまり、どこの国の社員でも安心して働ける環境が整っていることが大切です。

ここでは、外国人が活躍しやすいグローバル企業に共通する5つのポイントを紹介します。

世界中で「この会社らしさ」を伝える工夫

グローバル企業には、どの国でも一貫したブランド体験を届けることが求められます。
ただし、それは「すべてを同じにする」という意味ではありません。大切なのは、現地の文化や習慣を尊重しながらも、企業としての芯となる価値をしっかり保つことです。

たとえば、言語・宗教・食文化が大きく異なる地域に進出する場合、商品やサービスの内容、広告の出し方、接客の仕方などを現地に合わせて工夫する必要があります。そのうえで、「この会社らしさ」をきちんと伝え続けることが、グローバルブランドとしての信頼につながっていくのです。

どこの国でも安心して働けるルールづくり

どこの国の社員も同じルールのもとで働けるようにすることも、グローバル企業に欠かせない条件のひとつです。とくに、評価や昇進のルール、働く時間や福利厚生の考え方がはっきりしていると、外国人にとっても将来の働き方をイメージしやすくなります。

また、ハラスメント防止法令順守(コンプライアンス)に関する仕組みがしっかりしていると、より安心して働けると感じてもらえるでしょう。国ごとの法律を守りながら、企業全体で統一された方針を持つことが信頼につながります。

外国人も使いやすい仕事の仕組み

言葉の壁を取りのぞく工夫や、情報をスムーズに共有できる環境づくりも大切です。
最近では、社内の共通言語として英語を使う企業も増えてきました。文書や会議、マニュアルを英語で対応できるようにすれば、外国人社員も仕事に参加しやすくなります。

また、国をまたいで情報を共有しやすくなるよう、オンライン会議のツールやクラウド型の業務システム、社内チャットなどを活用することも有効です。こうした仕組みがあることで、遠く離れたチームとも自然に連携できるようになります。

誰もが気持ちよく働けるための工夫

国籍・性別・年齢などに関係なく、すべての社員がいきいきと働ける職場にするためには、多様性(ダイバーシティ)と包みこむ姿勢(インクルージョン)の意識が欠かせません。
たとえば、無意識の偏見をなくすための研修を行ったり、母国語で気軽に相談できる窓口をつくったりすることがあげられます。また、宗教や文化に合わせた食事や休暇制度を取り入れることも、安心して働ける環境づくりにつながっていきます。

こうした取り組みが積み重なることで、外国人社員にとっても「ここで長く働きたい」と思える職場になっていくはずです。

外国人が働きたくなる日本の職場とは?

職場環境に期待を膨らませる人の画像

外国人が日本で働くことを考えるとき、企業の知名度や待遇だけでなく「安心して働けるかどうか」という点も重視されます。
ただその一方で、日本企業に対して誤解や不安を抱いている人も少なくありません。だからこそ、企業側がきちんと情報を発信し、働く環境を整えることがとても大切です。

ここでは、外国人が日本企業に対してどんなことを期待しているのか、代表的な4つのポイントを紹介します。

「働きすぎ」のイメージを変えるには?

日本は治安が良いと評価される一方で、「日本の職場=働きすぎ」というイメージを持つ外国人も多いようです。たとえば「残業が当たり前」「休みが取りづらい」「いつも忙しそう」といった印象があり、中には過労死のニュースを見て心配している人もいます。

ただし、こうしたイメージの多くはネットニュースやSNSなどを通じて得たもので、実際の職場の様子とは少し違うこともあります。とはいえ、外国人が日本の職場の実態を知る方法は限られているのが現状です。
不安をやわらげるためには、実際の労働時間や有給取得率、休日数といったデータをわかりやすく伝えることが効果的です。あわせて、働き方改革の取り組みや改善の実例を紹介すれば「日本の職場はきつい」という先入観をやわらげるきっかけになります。

英語でのやりとりができること

外国人が日本の職場に求めるものとして、まず挙げられるのが「英語が通じるかどうか」です。日本語だけでなく、やさしい英語を交えてコミュニケーションがとれる職場は、それだけで安心感があります。
また、日本で働きたいと思っていても「日本語ができないと無理なのでは」と思い込み、あきらめてしまう人も少なくありません。どんなに優れたスキルを持っていても、言葉の壁が原因で就職を断念するケースは多いようです。

こうした状況に対して、日本企業としてできることはたくさんあります。たとえば、必要な日本語レベルを明確にしつつも、一部を英語で対応したり、業務マニュアルを英語と併記にしたりすることが挙げられます。
また、バイリンガルのスタッフを配置し、質問しやすい雰囲気をつくる工夫も有効です。
実際にそうした取り組みを行っている会社では、外国人社員の定着率が高くなる傾向があります。

入社後に日本語を学べる制度があること

英語でのサポートを求める一方で、日本語をもっと上達させたいと考えている外国人も多くいます。とくに留学生や海外に住む人の中には、学校で基礎的な日本語は学んでいても、ビジネスの場で使えるレベルまで自力で伸ばすのが難しいと感じている人が少なくありません。
採用時にある程度の日本語力が求められることは理解されていても「入社後も日本語を学び続けられる環境があるかどうか」は、就職先を選ぶうえで大きなポイントになります。

たとえば、社内で日本語の研修を行っていたり、語学学校の費用を補助していたりすると「ここなら言葉の面でも安心できそう」と前向きにとらえてもらえます。
語学力が伸びれば仕事の正確さやスピードもアップするため、企業にとってもメリットが大きい取り組みです。

キャリアアップの流れが見えること

日本企業について「年功序列が強い」「外国人は昇進しにくい」といったイメージを持たれていることもあります。そのため、どうすれば昇格できるのか、評価は何を基準にしているのかなどをはっきり伝えることが大切です。
たとえば、仕事内容を明示したジョブディスクリプション(職務記述書)を提示したり、評価の仕組みを説明したりすることで「ここでなら成長できそう」と感じてもらいやすくなります。

また、外国人社員が日本人社員と同じように評価・登用されている実例があると、さらに信頼されやすくなります。
将来の姿をイメージできることは、安心して長く働くための大きな支えになるでしょう。

急増中の外国人労働者、その国籍と特徴は?

来日に向けて勉強する外国人の画像

外国人の採用に関心はあっても「日本の社風に合うのか」「人間関係はうまくいくだろうか」といった不安を感じる企業は少なくありません。とくに、実際に雇うとなると慎重になるのも当然です。

ここでは、近年日本で働く人が増えている外国人材の中から、ネパール・インドネシア・バングラデシュ出身の方に注目し、それぞれの特徴や傾向を紹介していきます。

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ネパール人

ネパールの人は、一般的に穏やかで控えめな性格といわれています。相手を思いやる気持ちが強く、日本人と感覚が近いと感じる場面も多いようです。
言葉の面でも、ネパール語は日本語と同じ「主語→目的語→動詞」という語順のため、文法的にもなじみやすいとされています。

また、家族や親せきに仕送りをする習慣が根づいていることから、早く自立したいという意識を強く持つ人が多く見られます。目標に向かってまじめに働く姿勢が印象に残り、「勤勉な人が多い」と感じる日本人も少なくありません。

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インドネシア人

インドネシアの人は語学に強く、英語や中国語を話せる方が多いといわれています。
最近では日本のアニメやドラマの人気も高く、日本語を学ぶ人もどんどん増えているようです。全体として、学ぶ意欲の高い人材が多いのが特徴です。

ただし、時間の感覚については日本と少し違う点があります。インドネシアでは「多少遅れるのはふつう」とされる場面もあり、日本のように時間にきっちりした文化には驚くこともあるようです。
そのため日本での勤務経験が浅い場合は「時間を守ることの大切さ」をていねいに伝えていく必要があります。
とはいえ、インドネシアの人は柔軟に対応できる力を持っている方が多く、ルールや習慣をしっかり学ぼうという姿勢があれば、時間管理も次第に身についていく傾向があります。

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バングラデシュ人

バングラデシュは「親日国」として知られ、日本と似た価値観を持っている人が多いといわれています。たとえば「おもてなしの気持ち」が大切にされていて、職場でもまわりに気を配れる人が多い印象です。
また、年功序列を重んじる文化があり、先輩や上司に対して礼儀正しく接することが当たり前とされています。こうした姿勢は、日本の企業文化とも相性が良く、職場になじむのも早いケースがよく見られます。

バングラデシュではイスラム教を信仰している人が多いですが、食事や休憩時間などで配慮があれば、日本の働き方にもスムーズに慣れていく人が多いようです。
まじめに仕事に取り組む姿勢や「長く働きたい」という気持ちを持っている方が多い点も、大きな強みといえるでしょう。

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さいごに

グローバル企業とは、単に海外に進出している企業のことではありません。国籍や文化、言葉の違いをこえて、さまざまな人たちが協力しながら働ける環境を整えている企業のことを指します。
今回は、そうした企業が大切にしている「共通の価値観」や「安心して働ける仕組み」について紹介しました。

その環境づくりの大切なポイントが、「外国人が働きやすい職場」を目指すことです。採用して終わりではなく、長く活躍してもらうための制度やサポートがある会社こそ、これからの時代に選ばれていく存在になっていくでしょう。

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