近年、深刻な労働力不足と、急速に進展するビジネスのグローバル化によって、海外支店から外国人従業員を呼ぶことを検討している企業が増加傾向にあります。しかし、「海外支店から外国人従業員を呼ぶたいけれど…手続きが難しそう」「他の業務でなかなか調べられない」といった不安を抱き、なかなか踏み出せない企業様も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、海外支店から外国人従業員を呼ぶ方法の概要や必要なビザの種類及び、海外支店から外国人従業員を呼ぶ際の注意点について解説します。

海外支店から外国人従業員を呼ぶ2つの方法とは

海外支店 女性

海外支店から外国人従業員を呼ぶ方法は大きく分けて2つあり、1つは直接雇用した外国人従業員を海外支店から呼ぶ方法です。

海外支店から外国人従業員を呼ぶもう1つの方法としては、転勤辞令や出向契約によって、企業内転勤という形式で呼ぶ方法があげられます。

この2つの海外支店から外国人従業員を呼ぶ方法には、それぞれ特徴があるので、よく吟味しベストな方法を選択しましょう。ここからは、直接雇用のかたちと企業内転勤のかたちの2つの方法について解説します。

直接雇用のかたち

海外支店から外国人従業員を呼ぶ方法の1つめの方法は直接雇用です。

直接雇用では外国人従業員に「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得が必要です。「技術・人文知識・国際業務」に当てはまる業務にはデザイン、プログラミング、設計、マーケティング、コンサルティング、貿易、通訳・翻訳などがあげられます。

「技術・人文知識・国際業務ビザ」で海外支店の外国人従業員を直接雇用する場合は、在籍要件や雇用期間の要件がありません。しかし、大学や専門学校などで従事する業務について専門的に学んでいたか、もしくは10年以上(国際業務は3年以上)の実務経験があるかが要件となります。また、雇用する企業の経営に問題があるとみなされた場合、直接雇用で海外支店から外国人従業員を呼ぶことはできないので注意しましょう。

企業内転勤のかたち

引っ越し 段ボール

企業内転勤とは、日本に本店や支店、及びその他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の外国人従業員が、日本にある事業所に期間を定めて転勤し就労することをいいます。企業内転勤で海外支店から外国人従業員を呼べる異動の定義は幅広く、以下で示す通りです。

  • 親会社・子会社間の異動
  • 本店(本社)・支店(支社)・営業所間の異動
  • 親会社・孫会社間の異動、及び子会社・孫会社間の異動
  • 子会社間の異動
  • 孫会社間の異動
  • 関連会社間の異動

「関連会社」とは、役員の派遣や資本参加によって20%以上の議決権を保有している会社をいいます。単に業務提携をしているというだけでは企業内転勤で海外支店から外国人従業員を呼ぶことはできないので留意しておきましょう。

また、企業内転勤で海外支店から外国人従業員を呼ぶときは、ビザの要件や申請の流れに特徴があるので、あらかじめ概要を理解しておくことが必要です。

海外支店から企業内転勤て呼ぶときのビザとは

ビザ

海外支店から外国人従業員を企業内転勤で呼ぶときには、就労ビザのうち「企業内転勤ビザ」の取得が必要となります。「企業内転勤ビザ」の取得には、独特の要件があるため、しっかりと理解しておきましょう。また、企業のカテゴリーによって申請に必要な書類も違うので、必ず確認し、遺漏のないように準備して多くことも重要です。

ここでは、企業内転勤のかたちで海外支店から外国人従業員を呼ぶ際に必要な「企業内転勤」ビザの取得要件と申請の流れ、必要書類について解説します。

要件は?

海外支店から外国人従業員を企業内転勤で呼ぶための「企業内転勤ビザ」所得のための要件は以下の通りです。

  1. 「技術・人文知識・国際業務」に従事する
  2. 転勤前に1年以上継続して勤務していた
  3. 給与が、日本人が従事した場合に受ける報酬と同等以上
  4. 業務が「経営・管理」に従事しない
  5. 出向契約などでその出向・赴任期間が明記してある(5年、3年、1年または3ヶ月)

要件1の注意点

「技術・人文知識・国際業務」は直接雇用の際に説明したものと同様の業務です。単純や肉体労働や事務処理では「企業内転勤ビザ」の要件を満たせないので注意しましょう。一方で、海外支店から呼ぶ外国人従業員が「技術・人文知識・国際業務」に従事するのであれば、学歴を問わず「企業内転勤ビザ」を申請することが可能です。

要件3の注意点

給与は現地の通貨基準でなく、日本円で支給されなければなりません。海外支店から呼んだ外国人従業員に支払う給与額は定められていませんが、現在の日本の大卒初任給が20万円であることから、20万円程度が望ましいとされています。

要件4の注意点

「経営・管理」に従事する場合は「企業内転勤ビザ」ではなく「経営・管理ビザ」が必要なので注意しましょう。「企業内転勤ビザ」は転勤後無期限に日本に滞在することを想定していないため、海外支店から呼ぶ外国人従業員に対する人事発令等に、派遣期間を明記しなければなりません。とはいえ、在留状況等に問題がなければビザを更新することは可能です。

申請の流れは?

next stepの標識

海外支店から外国人従業員を呼ぶ際に必要な「企業内転勤ビザ」を申請する場合流れは以下の通りです。

  1. 申請書類の作成、その他必要書類を揃える
  2. 入国管理局へ申請
  3. パスポート(在留資格証明証)と外国人登録証明書、返信用はがきに住所・氏名を記入して入国管理局へ提出
  4. 申請時に提出したはがきにて結果の通知が届く
  5. 入国管理局へ行き収入印紙を購入
  6. 14日以内に居住する市町村の外国人登録窓口で変更手続き

「企業内転勤ビザ」を申請してから取得するまでの期間はおおむね1~3か月ですが、窓口の繁忙の度合などによってさらに長くなる場合があるので、早めに申請しておくとよいでしょう。

海外支店から呼ぶときの注意点

caution

海外支店から外国人従業員を呼ぶ方法である直接雇用と企業内転勤を利用する際には、それぞれのビザ申請の要件を満たすことや書類の不備に気をつけなければなりません。しかし、それに劣らずに注意しなければならいのは、外国人従業員をサポートすることです。

ここからは、そのサポートの重要性について解説します。

サポートはしっかりする!

海外支店から外国人従業員を呼ぶ際にはサポートが不可欠です。ビザの申請は外国人従業員本人が入国管理局へ赴いて手続きをしなければなりません。今まで述べてきたように、ビザの申請には多くの手続きがあるため、外国人従業員が独力で完璧に行うことは難しく、不安に思っている場合がほとんどです。そのため、この段階でサポートをおろそかにしてしまうと、海外支店から呼んだ後に信頼関係を築くことが難しくなります。

また、海外支店から日本に呼んだ後もサポートを継続して行いましょう。せっかく多くの手続きを重ねて、海外支店から呼んだ優秀な外国人従業員でも、慣れない土地で最初から実力を発揮するのは容易ではありません。

海外支店から外国人従業員を呼ぶ際には、事前にその外国人従業員についての理解を社内で共有しておき、スムーズにコミュニケーションを取れるようにしておきましょう。メンターをおくなど、外国人従業員が相談しやすい環境をつくることも大切です。

海外支店から従業員を呼ぶ方法はバッチリですか??

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海外支店から外国人従業員を呼ぶための2つの方法について解説しました。直接雇用と企業内転勤でビザ申請のための要件が違いますので、よく確認し最適な方法を選択しましょう。さらに、外国人従業員本人が手続きをする場面も出てくるため、手続き上のサポートも欠かせません。

手続きが不安であったり、他の業務が重なって難しいという場合は代行サービスに依頼するのもおすすめです。最近では、国専門のビザ取得代行サービスなどもあるので是非チェックしてみましょう!

海外支店から外国人従業員を呼ぶ方法について力点をおいて解説しましたが、本当のゴールは外国人従業員を呼ぶことではなく、戦力として活躍してもらうことです。手続きを踏んだ手間が無駄だったと思わないように、外国人従業員が来日した後も、公私にわたってサポートを継続していけば、従業員も雇用側も心地よく業務を進められます。