外国人が日本で働くためには、就労ビザ(就労を目的とした在留資格)が必要です。

本記事では、就労系の在留資格17種類の「新規取得」「更新」「変更」にかかる日数をデータを用いて紹介します。

就労ビザの取得期間とは

まず前提として、就労ビザの取得には以下の手続きがあります。
取得要件の確認〜雇用契約の締結〜外国人本人および企業による必要書類の作成〜申請書類の提出〜審査〜許可通知〜交付(在留カードの受け取り)です。

今回は、申請書類の提出から許可通知までの期間を「取得期間」とし、出入国在留管理庁の公表データをもとに解説します。

在留資格の申請手続きの全体的な流れについては、以下の記事を参考にしてください

外国人雇用で必要な「就労ビザ申請」の流れを解説! 【海外から雇用する場合】と【国内に住んでいる場合】の違いは?

過去7年の就労ビザ取得期間の変化

厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ出入国在留管理庁 在留審査処理期間をもとに作成

就労ビザの取得期間は、申請者数の増加にともない長くなる傾向があります。

実際に過去7年間でもこの傾向は見られ、多くの申請がおこなわれる中で審査期間が延びています。※
さらに、今後は外国人労働者の受け入れを拡大する方針があるため、ビザ取得期間が一層長くなる可能性があります。このような状況を踏まえると、外国人雇用をおこなう企業は早めの申請準備が重要といえます。

※コロナ禍は新規取得の審査期間に影響があったため、例外としています

取得期間は季節で変動する

就労ビザの取得期間は、一般的に1〜2ヶ月とされています。
しかし、実際には季節によって期間が短縮されたり延長されたりすることがあります。

たとえば、学校の学期開始や企業の採用時期には、申請数が増加する傾向があります。
最短で許可を得たいと思っても、実際には申請の混雑状況により期間が変動することを考慮しておく必要があります。

就労ビザの取得期間

ここからは「新規」「更新」「変更」それぞれの取得期間について説明します。

新規(認定・呼び寄せ)の取得期間

海外から外国人を呼び寄せる際に就労ビザを新規取得する場合、過去の職務経験や履修内容が厳格に確認されます。

たとえば、過去7年間で最長4ヶ月かかったケースもあります。このように、新規取得の場合は更新や変更よりも取得期間が長くなる傾向が見られます。
また、新しく創設された在留資格も取得期間が長くなる傾向があります。

最短最長
教授15.3日31.9日 ※54.4日
芸術16日50.4日
宗教23.1日 ※15.9日93.5日
報道7.3日81.3日
高度専門職14.2日 ※12.5日64.6日 ※85.2日
経営・管理65.5日 ※49.0日122.2日
法律・会計業務8.5日46日
医療18.4日 ※16.6日55.6日 ※106.0日
研究13.3日63.8日
教育14.7日41.5日 ※59.0日
技術・人文知識・国際業務33.4日59.8日 ※82.6日
企業内転勤21.4日40.2日 ※71.2日
介護7日103.0日
興行19.5日 ※19.0日30.6日 ※90.3日
技能52.1日 ※33.6日92.7日
特定技能43.7日70.0日 ※100.7日
技能実習14.4日 ※13.0日44.0日 ※77.0日

※コロナ禍の日数(2020年4月〜2023年6月まで)

更新時の取得期間

全体的に就労ビザの更新にかかる期間は、新規取得に比べて短いです。
これは既に日本での活動実績があるため、審査がスムーズに進むことが要因と考えられます。
たとえば、「経営・管理」ビザの最長期間は新規取得で122.2日ですが、更新では43.4日です。

最短最長
教授22.3日30.6日 ※30.8日
芸術26.5日52.6日
宗教24.2日35.4日
報道23日53.5日
高度専門職23.6日 ※15.5日47.0日 ※64.0日
経営・管理28.1日43.4日
法律・会計業務22.4日41.5日 ※43.8日
医療23.0日44.3日
研究23.4日 ※22.5日30.2日 ※30.8日
教育23.7日35.3日
技術・人文知識・国際業務25.3日33.8日 ※37.0日
企業内転勤25.6日35.3日 ※37.6日
介護18.0日 ※17.9日34.1日 ※38.7日
興行22.0日34.8日 ※39.1日
技能25.1日43.4日
特定技能40.1日 ※33.5日57.0日 ※58.0日
技能実習3.0日42.8日 ※56.1日

※コロナ禍の日数(2020年4月〜2023年6月まで)

変更時の取得期間

就労ビザの種類を変更する際は、最短期間と最長期間の差が大きいことが分かります。これは申請者の背景や書類の完全性などによるものです。
過去の在留資格の申請書類とは異なる書類が必要な場合が多く、書類に不備があった場合には審査が停止することもあります。
ですのでビザを変更する場合は、書類の準備を十分におこなうことが大切です。

最短最長
教授22.1日30.9日 ※33.5日
芸術22.3日 ※21.0日57.7日 ※64.8日
宗教10.3日45.0日
報道13.0日 ※12.4日71.0日 ※79.0日
高度専門職17.9日68.8日
経営・管理43.6日79.5日
法律・会計業務20.3日64.0日
医療19.3日61.5日 ※96.3日
研究22.8日40.2日 ※41.9日
教育23.3日43.0日
技術・人文知識・国際業務31.1日55.8日
企業内転勤8.3日26.3日 ※29.9日
介護16.5日59.9日
興行4.0日25.9日 ※41.3日
技能22.0日50.3日 ※59.2日
特定技能42.9日 ※43.7日63.7日 ※88.8日
技能実習4.0日 ※1.0日87.0日

※コロナ禍の日数(2020年4月〜2023年6月まで)

許可がおりる前に在留期限が切れてしまった場合

更新・変更申請はしたものの想定よりも取得期間が長くかかってしまい、在留期間内に許可がおりなかった場合でも出国する必要はありません。

これは入管法(出入国管理及び難民認定法)の特例措置によるもので、在留期間満了後も「処分がされるとき」または「在留期間の満了日から2ヶ月を経過する日」のいずれか早い日まで、引きつづきこれまでの在留資格で在留できるからです。
要するに「ビザの更新あるいは変更の申請をしていれば、不法残留になることはなく満了日が過ぎても心配する必要はない」ということ。

ただし申請が許可されなかった場合には、直ちに出国しなければなりません。
このような事態を招かないためにも、在留期間内に許可を受けられるよう早めに申請した方が良いでしょう。

また更新・変更の申請した時点で、在留カードに「在留資格更新/変更許可申請中」と押印されるので、申請後にスタンプが押されているかを確認してください。
もちろん許可がおりる前に働かせると「不法就労」になるので、企業担当者はこの点に注意が必要となります。

外国人採用における企業のリスク|不法就労助長罪・労働関係法令違反による意図せぬ逮捕を防ぐ方法

さいごに

就労ビザの取得期間は、資格の種類や申請時期によって異なります。
外国人を雇用している企業や今後採用を検討している企業は、今回説明した取得期間を把握して期限に間に合うように準備を進めましょう。