特定活動ビザは就労できる? 見分け方と採用のポイントを解説
「応募者の在留カードに”特定活動”と書かれているけれど、本当に働けるのだろうか」と迷うことはありませんか?
人手不足が続く今、外国人を採用することは選択肢を広げる有効な方法といえるでしょう。ただし、就労できるかどうかを誤って判断すると、思わぬトラブルにつながる危険もあります。
この記事では、特定活動ビザと就労の関係を取り上げ、在留カードや指定書の確認方法をわかりやすく紹介します。
目次
特定活動ビザとは? 基本と種類を確認しよう

「特定活動」とは、どの在留資格にも当てはまらない特別な活動をする人に与えられる在留資格です。
同じ枠組みでも、活動内容や働けるかどうかは「号」や指定内容によって違ってきます。
つまり、特定活動の中には自由に働ける場合もあれば、一部だけ働ける場合や、まったく働けない場合もあるのです。
特定活動の種類(入管法/告示/告示外)
特定活動は、大きく3つに分けられます。その基準は、どの法律や規定に基づいているかです。
- 出入国管理及び難民認定法に定められている特定活動
- 告示特定活動
- 告示外特定活動
ここからさらに細かく分類され、活動の内容によって「働けるもの」と「働けないもの」が決まります。
「就労ビザ」「身分系ビザ」との違い
特定活動の特徴は、活動内容が個別に指定されることです。
たとえば就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)は、職務内容が在留資格のルールに合っていれば働けます。
一方で身分系ビザ(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者など)は、家族関係や身分に基づく資格のため、基本的に職種の制限はありません。
特定活動はそのどちらとも異なり、「この活動なら働ける」「この条件ならアルバイトが可能」といった細かい指定が入ります。
職種名だけで判断するのは難しいため、採用時には在留カードの就労制限欄と、場合によってはパスポートの指定書まで確認する必要があります。
区分ごとの整理
| 区分 | 在留資格の考え方 | 就労の範囲 |
| 就労ビザ | 職務内容にもとづく資格 | 専門分野や実務に合う範囲で就労可 |
| 身分系ビザ | 家族関係・身分にもとづく資格 | 原則制限なし(法律は守る必要あり) |
| 特定活動 | 個別の活動を指定 | 号・指定書の内容により可否が分かれる |
「出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動」とは?
ここでいう特定活動とは、法務大臣の個別の判断ではなく、入管法そのものに定められている在留資格を指します。
現在は「特定研究活動」「特定情報処理活動」「特定研究等活動等の親・特定研究等活動等の家族」の3種類があります。
特定研究活動
高度な知識を持つ外国人が、日本で専門的な研究を行うためのビザです。
特定研究活動の外国人を採用するには、研究を行う機関に必要な設備や資金が整っていなければなりません。さらに、研究成果が実際に社会で活用される、あるいは将来活用される見込みがあることも条件になります。
くわえて、外国人研究者を適切に管理できる体制があることも求められます。対象となる分野は幅広く、たとえばナノテクノロジーやバイオテクノロジーなども含まれます。
参考:出入国在留管理庁 在留資格「特定活動」(特定研究等活動)について
特定情報処理活動
自然科学や人文科学の知識を応用し、情報処理の仕事を行うためのビザです。
申請する外国人には人工知能やデータサイエンスといった高度な情報処理の技術が必要です。
勤務先となる機関は、十分な設備や資金を持っていることが前提になります。また、外国人が日本で安心して働けるよう、きちんとした管理体制が整っていることも条件に含まれます。
認められる活動は幅広く、医療データの分析や歴史資料のデジタル化なども対象です。
参考:出入国在留管理庁 在留資格「特定活動」(特定情報処理活動)
特定研究等活動等の親・特定研究等活動等の家族
「特定活動(特定研究活動)」または「特定活動(特定情報処理活動)」を持つ外国人の家族が、日本に一緒に滞在できるビザです。
高度な研究や情報処理の分野で活躍する外国人にとって、家族の支えは欠かせません。
この在留資格は、家族がともに暮らせるようにすることで、研究や仕事に集中できる環境を整えることを目的としています。
「告示特定活動」とは? 全種類を一覧で紹介!
告示特定活動は、入管法で定めた在留資格に当てはまらない場合に、法務大臣が「告示」で特定の活動を認める仕組みです。採用の現場で出会う機会が多い在留資格でもあります。
2025年8月時点では57種類が告示されていますが、状況により増減することがあります。なお、「1号」「2号」のように番号で呼ばれるのが一般的です。
具体的には、次のような外国人が告示特定活動の対象になります。
| 告示 | 対象 |
| 1号 | 外交官・領事官の家事使用人 |
| 2号 | 高度専門職ビザ、経営・管理ビザなどを持つ外国人の家事使用人 |
| 3号 | 台湾日本関係協会の在日事務所職員、またはその家族 |
| 4号 | 駐日パレスチナ総代表部の職員、またはそのその家族 |
| 5号 | ワーキングホリデーで来日する外国人 |
| 6号 | アマチュアスポーツ選手 |
| 7号 | 6号の家族 |
| 8号 | 弁護士 |
| 9号 | インターンシップ |
| 10号 | イギリス人ボランティア |
| 11号 | 現在は削除されています |
| 12号 | サマージョブ(3か月未満の短期インターンシップ) |
| 13号 | 2025年大阪万博の関係者 |
| 14号 | 13号の家族 |
| 15号 | 国際文化交流学生 |
| 16号 | EPA(経済連携協定)を利用するインドネシア出身の看護師、またはその候補者 |
| 17号 | EPA(経済連携協定)を利用するインドネシア出身の介護福祉士、またはその候補者 |
| 18号 | 16号の家族 |
| 19号 | 17号の家族 |
| 20号 | EPA(経済連携協定)を利用するフィリピン出身の看護師、またはその候補者 |
| 21号 | EPA(経済連携協定)を利用するフィリピン出身の介護福祉士、またはその候補者 |
| 22号 | EPA(経済連携協定)を利用して就学する、フィリピン出身の介護福祉士候補者 |
| 23号 | 20号の家族 |
| 24号 | 21号の家族 |
| 25号 | 入院または入院前後の治療のために滞在する外国人 |
| 26号 | 25号の日常生活を世話する人 |
| 27号 | EPA(経済連携協定)を利用するベトナム出身の看護師、またはその候補者 |
| 28号 | EPA(経済連携協定)を利用するベトナム出身の介護福祉士、またはその候補者 |
| 29号 | EPA(経済連携協定)を利用して就学する、ベトナム出身の介護福祉士候補者 |
| 30号 | 27号の家族 |
| 31号 | 28号の家族 |
| 32号 | 現在は削除されています |
| 33号 | 高度専門職外国人の配偶者で、日本で就労する外国人 |
| 34号 | 高度専門職外国人(またはその配偶者)の親 |
| 35号 | 現在は削除されています |
| 36号 | 研究・教育に関する指導者または経営者 |
| 37号 | 情報技術処理者 |
| 38号 | 36号、37号の家族 |
| 39号 | 36号、37号(またはその配偶者)の親 |
| 40号 | 1年以内の観光・保養を目的とする、特定の国出身の外国人 |
| 41号 | 40号の家族 |
| 42号 | 製造業の従事者 |
| 43号 | 日系4世 |
| 44号 | 起業家 |
| 45号 | 44号の家族 |
| 46号 | 日本の大学の卒業者 |
| 47号 | 46号の家族 |
| 48号 | 現在は削除されています |
| 49号 | 現在は削除されています |
| 50号 | スキーインストラクター |
| 51号 | 未来創造人材(J-Find) |
| 52号 | 51号の家族 |
| 53号 | 国際的なリモートワーカー(デジタルノマド) |
| 54号 | 53号の家族 |
| 55号 | 自動車運送業分野で特定技能1号を目指す人 |
| 56号 | 2027年国際園芸博覧会の関係者 |
| 57号 | 56号の家族 |
ここからは、企業からの問い合わせが多い号や、比較的新しく注目されている号について、概要・在留期間・就労可否の順に紹介します。
【告示5号】ワーキングホリデー

日本と協定を結ぶ国の若者に、一定期間の滞在と就労を認める在留資格です。文化交流の促進や若者の国際経験の拡大を目的としています。
- 在留期間:6か月または1年(更新不可)
- 就労可否:旅行資金を補う範囲で可(業務内容や時間の制限は基本なし)
- ポイント:在留カードや指定書で滞在目的と期間を確認しましょう。正社員登用は制度上は可能ですが、制度趣旨から外れないよう配慮が必要です。
【ワーキングホリデー制度の対象国】オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツ、英国、アイルランド、デンマーク、台湾、香港、ノルウェー、ポルトガル、ポーランド、スロバキア、オーストリア、ハンガリー、スペイン、アルゼンチン、チリ、アイスランド、チェコ、リトアニア、スウェーデン、エストニア、オランダ、ウルグアイ、フィンランド、ラトビア、ルクセンブルク
【告示9号】インターンシップ

外国の大学に在籍する学生が、専攻に関連する実習を日本の企業などで行うための在留資格です。実務を通じて学び、日本との教育・文化交流を深めることも期待されています。
- 在留期間:原則1年以内(修学期間の半分が上限、延長は原則不可)
- 就労可否:教育目的に沿う範囲で可(単純労働は不可)
- ポイント:大学との協定や受入計画が前提になります。指導体制や労働条件通知書を整え、教育的な位置づけを明確にしましょう。
【告示46号】大学等卒業者
日本の大学や専門学校などを卒業した外国人が、日本語を用いた幅広い業務に従事するための在留資格です。外国人のキャリア活用を促し、企業の人材確保にも役立ちます。
- 在留期間:6か月または1年(更新可)
- 就労可否:フルタイムで可(業務に日本語使用を含むことが条件)
- ポイント:雇用契約書に日本語使用業務を明記しましょう。採用職種の幅は広いものの、個別要件の充足は事前確認が必要です。
【告示51号】未来創造人材(J-Find)
海外の優秀な大学を卒業した外国人が、日本で就職活動や起業準備を行うための在留資格です。高度人材の呼び込みを想定し、日本でのキャリア形成を後押しします。
- 在留期間:6か月または1年(更新可、通算最長2年)
- 就労可否:フルタイムで可
- ポイント:正規雇用に進む際は、内定後に就労系ビザへの変更が必要です。活動記録を残し、更新要件に備えておくと安心です。
【告示53号】デジタルノマド
海外に拠点(雇用先やクライアント)を持つ外国人が、日本に一時滞在しながらリモートワークを行うための在留資格です。人材確保が主目的ではなく、滞在中の消費による経済効果が狙いになります。
- 在留期間:6か月(更新不可)
- 就労可否:日本企業での雇用は不可(海外の業務継続のみ可)
- ポイント:年収要件(1,000万円以上)、対象国の限定、民間保険加入など、条件は比較的厳格です。
「告示外特定活動」とは?
告示外特定活動は、法務大臣が公式に定めてはいないものの、運用上の取り扱いとして入国・滞在が認められる特定活動を指します。
ここでは、外国人雇用に関係する代表例を取り上げます。
例1. 内定者のための特定活動ビザ
内定から就労開始までの準備期間に滞在を認めるタイプです。
就労は原則不可ですが、資格外活動許可があれば週28時間までのアルバイトが可能になります。まずは指定書に就労可否の記載があるか確認しましょう。
企業側は入社日と在留期限の整合をとり、就労系ビザへの変更時期を計画しておくと安全です。
例2. 特定技能1号に移行するための特定活動ビザ
「特定技能1号」を取得する前に、技能測定試験や日本語試験の受験、企業選考のために滞在するケースです。就労は基本的に不可となります。
採用を検討する場合は、移行後の職務内容が分野要件に合うかを早めに確認しましょう。職務記述書の整備も先に進めておくと、手続きを円滑にしやすくなります。
例3. 出国準備のための特定活動ビザ
在留不許可や退職などの事情により、出国までの準備期間を認めるタイプです。就労はできません。
企業側は就労継続の打診や延長の期待を避け、社会保険・給与の締め処理、貸与物の回収など退職手続きを進めます。人道的配慮は忘れずに、法令遵守を最優先にしましょう。
特定活動ビザの就労OK・NGを判断するコツ

採用現場で役立つ確認のステップを紹介します。
書類の読み間違いを防ぎ、早めに採用可否を判断できるようにしましょう。
在留カードの就労制限の見方(5パターン)
在留カードの表面には「在留資格」と「就労制限の有無」、裏面には「資格外活動許可」の欄があります。まずはこれらを丁寧に確認してください。
代表的な表記は次のとおりです。
| チェックする欄 | 記載例 | ポイント |
| 在留資格 | 「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「留学」「家族滞在」「特定活動」など | どの資格かによって、就労の基本ルールが異なります |
| 就労制限の有無 | ①就労制限なし ②在留資格に基づく就労活動のみ可 ③就労不可 ④指定書により指定された就労活動のみ可 | ①制限がなく、日本人と同じように雇用できます ②在留資格の範囲内の職種・業種・勤務内容に限り雇用できます ③原則雇用はできませんが、裏面の「資格外活動許可欄」を確認しましょう ④パスポートに添付された指定書を必ず確認してください |
| 資格外活動許可(裏面) | ①許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く) ②許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動) | ①アルバイトとして制限範囲内で雇用できます ②パスポートに添付された指定書を必ず確認してください |
裏面に「申請中」と表示されている場合
在留期間の更新や資格変更の手続き中は、裏面に「在留期間更新申請中」といったスタンプが押されることがあります。この間も働くことは可能ですが、あくまで現行の資格の範囲内であることが前提です。
企業側は、受領印や受付票のコピーを保管し、入管からの通知や控えで就労の可否を確認してください。判断に迷うときは、無理に業務を広げないことが安全策です。
パスポートの「指定書」で就労先・時間を確認
一部の特定活動や告示外特定活動では、パスポートに「指定書」が添付されています。そこには就労先の名称、仕事内容、勤務場所、期間、勤務時間などが記載されています。
雇用契約やシフトは、この内容に合わせて作成してください。もし変更が必要なら、先に入管への手続きが必要かどうか確認することが大切です。
偽造カードへの対策(IC読取アプリの活用)
在留カードには、見た目を真似た偽造カードが出回ることもあります。採用時に誤って受け入れると、企業にとって大きなリスクになりかねません。
基本的な対策は、ICチップを読み取るアプリで真正性を確認することです。表面の記載とIC内の情報が一致しているかをチェックすれば、不正利用を防ぎやすくなります。
詳しい操作方法や推奨アプリについては、以下の記事も参考にしてください。
特定活動ビザの採用で失敗しないための注意点

特定活動ビザは、人によって活動内容が異なるため、採用の際には通常の就労ビザ以上に丁寧な確認が必要です。
採用前に「就労できる特定活動」かを見きわめる
特定活動には、働けるものと働けないものがあります。たとえば「出国準備」では仕事に就けませんし、アルバイトが可能な場合でも活動目的に合わせた制限があります。
採用を検討する際には「この特定活動で本当に働けるのか」「どこまでの範囲なら可能なのか」を事前に確かめておくことが欠かせません。
採用後は許可内容を守ることが企業の責任
特定活動ビザでは、在留カードや指定書に「できる仕事」や「就労条件」が細かく書かれています。もし記載と異なる業務を任せると不法就労となり、企業側も処罰の対象になるおそれがあります。
採用後は、契約内容と在留資格が一致しているかを常に確認し、逸脱が起きないよう管理していく姿勢が重要です。
準備期間には余裕をもつ必要がある
特定活動の新規申請には多くの書類が必要で、確認や差し戻しがあれば想定以上に時間を取られることもあります。
勤務開始日から逆算して計画を立て、余裕を持ったスケジュールで準備を進めましょう。
許可が必ず下りるとは限らないことを理解しておく
特定活動への変更申請や在留期間の更新は、条件を満たさなければ不許可になる場合があります。
内定から入社までの間に不許可となる例もあるため、「必ず働ける」と決めつけず、採用フローにリスクを組み込んでおくと安心につながります。
さいごに
特定活動ビザは、一人ひとりの活動内容が個別に指定されるため、在留カードや指定書の見方を知っておくだけで判断の迷いを減らせます。
まずは就労の可否・勤務時間・職務内容の3点を押さえることから始めてみましょう。
最初は小さな取り組みでもかまいません。社内でチェックリストを少しずつ整えていけば、外国人採用を安心して進められるようになり、結果として成功につながっていくでしょう。
不安を抱えたまま外国人採用を続けていませんか?
外国人採用を始めたばかりの頃は、在留資格の種類や手続きの進め方に迷うことが少なくありません。
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