外国人雇用状況届出書とは? 記入する項目やオンライン申請方法、提出を忘れた場合の対処法についてわかりやすく解説

外国人を雇用したとき、または雇用していた外国人が離職したときには「外国人雇用状況届出書」を提出する必要があります。この届出は、雇用対策法第28条で決められていて、事業主が必ず行わなければならないものです。
外国人雇用状況届出書を作成するにあたって、必要な情報、方法、注意すべき点はあるのでしょうか? 今回はこのあたりに焦点を当てて解説します。
目次
外国人雇用状況届出書とは、何のための書類?
外国人雇用状況届出書は、外国人労働者の雇用管理に必要な書類です。
この届出書は、すべての事業主が「外国人を雇うとき」と「外国人が辞めるとき」にハローワークへ提出する義務があります。届出のおもな目的は、以下の4つです。
1. 労働環境を改善するため
ハローワークは届出内容をもとに、外国人労働者が働きやすい環境を作るために、事業主に指導やアドバイスを行います。
働きやすい環境を整えることは、外国人労働者が長く働き続けるためにも大切です。適切なサポートがあれば、労働者は安心して長期間働けるようになり、企業の生産性向上にもつながります。
外国人労働者が日本の職場にスムーズに適応できるよう支援することは、企業と労働者双方にとって大切なことです。
2. 外国人労働者の不法就労を防ぐため
外国人は在留資格の範囲内で働くことが決められています。事業主は、外国人を雇う際に在留カードを確認し、不法就労を防がなければなりません。
外国人雇用状況届出書をきちんと作成することで、事業主は不法就労助長罪に問われるリスクを避けることができます。
3. 離職した外国人の再就職を支援するため
外国人雇用状況の届出を通じて、ハローワークは外国人労働者が仕事を辞めた状況を把握し、その人の在留資格やスキルに合った再就職をサポートします。
離職した外国人に対して、職業訓練やキャリアカウンセリングを行うことで再就職を支援し、雇用の安定に繋げています。
とくに、日本での仕事経験が豊富な外国人は、高いスキルを持っていることが多いため、企業にとっては再び優れた人材を活用するチャンスとなります。
再就職支援がしっかりしていれば、離職後もスムーズに次の仕事を見つけやすくなり、労働市場で安定した活動が期待できます。
4. 受け入れ状況を把握するため
厚生労働省は、外国人雇用状況の届出内容を集めて、日本で外国人労働者がどれくらい働いているかを毎年発表しています。
この情報は、外国人がどんな仕事をしているかを示し、今後の雇用政策を決めるためにとても大切なデータになります。企業が届出書を正しく出すことで、現実に合った政策が実行され、外国人労働者が働きやすい社会を作る手助けになります。
また、このデータをもとに政府は外国人労働者をサポートする方法を見直し、労働市場がよりスムーズに動くように改善点を見つけます。
厚生労働省は毎年10月末時点で外国人雇用状況届出の集計結果を取りまとめ、その結果を翌年に発表しています。令和5年10月末時点の集計結果は以下のとおりです。
- 外国人労働者数:2,048,675人(前年比225,950人増加、過去最高)
- 外国人を雇用する事業所数:318,775所(前年比19,985所増加、過去最高)
- 国籍別:1位 ベトナム(518,364人)、2位 中国(397,918人)、3位 フィリピン(226,846人)
このように、外国人労働者の数や職種、国籍などの情報を集めて、労働市場を分析したり、政策を考えるときに活用しています。
参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)
外国人雇用状況届出の対象となる人は?
外国人雇用状況届出書は、日本で外国人を雇うすべての事業主が提出しなければなりません。(※派遣社員の場合は、派遣元が届出をおこないます)
雇用形態には制限がなく、正社員、契約社員、アルバイトなど、どのような雇用形態でも提出が必要です。留学生やワーキングホリデー中のアルバイトも含まれます。
ただし「外交」「公用」の在留資格を持っている外国人、もしくは「特別永住者」を雇う場合にはこの書類を提出する必要はありません。
外国人雇用状況届出書に記載する内容は?
外国人雇用状況届出書は、外国人労働者が「雇用保険の被保険者となる場合」「被保険者とならない場合」で内容にちがいがあります。
【見本】雇用保険の被保険者となる場合(雇用保険に加入する外国人)
雇用保険の被保険者となる外国人の場合は「雇用保険被保険者資格取得(喪失)届」が外国人雇用状況届出書の代わりになります。通常の内容(日本人の雇用)にくわえて、以下の項目が必要です。
- 氏名(ローマ字)
- 在留カード番号
- 在留資格(特定技能の場合は分野も記載、特定活動の場合は活動類型も記入)
- 在留期間
- 国籍・地域
- 資格外活動許可の有無 ※雇用時のみ
- 住所 ※離職時のみ
雇用時には「雇用保険被保険者資格取得届」、離職時には「雇用保険被保険者資格喪失届」に、これらの内容を追加して届け出をします。
【見本】雇用保険の被保険者ではない場合(雇用保険に加入しない外国人)
雇用保険の被保険者ではない外国人の場合は「外国人雇用状況届出書」に以下の内容を記入します。
- 氏名(ローマ字)
- 在留資格(特定技能の場合は分野も記載、特定活動の場合は活動類型も記入)
- 在留期間
- 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 資格外活動許可の有無 ※雇用時のみ
- 在留カード番号
- 雇入れ(離職)年月日
- 外国人が就労する事業所の情報(名称・所在地・電話番号・雇用保険適用事業者番号)
- 本社の情報(就労する事業所が支店や店舗、工場などの場合)
外国人雇用状況届出書(様式第3号)は、雇用時も離職時も同じフォーマットを使用します。
「在留カード」を見ながら記載しましょう
外国人雇用状況届出書や、雇用保険被保険者資格取得(喪失)届は、外国人労働者の「在留カード」を見ながら記載しましょう。
在留カードは日本に住む外国人に発行される身分証明書で、顔写真、氏名、住所、在留資格などが書かれています。
在留カードを手元に置いて、間違いのないよう記載事項を写していくだけの作業です。難しくはありませんので安心してください。
また、記載内容が正しいかどうか確認する責任は事業主にあります。まちがった情報を記入しないように注意しましょう。
偽造カードではないかを確認することも、非常に重要です。
くわしくは、以下の記事を参考にしてください。
外国人雇用状況届出書は、Webからダウンロードできます!
外国人雇用状況届出書は、ハローワークの事務所で用紙を受け取れるほか、厚生労働省のサイトからダウンロードすることも可能です。
ハローワークに直接行って、外国人雇用状況届出書をもらうときは、職員に質問して分からないことを聞くことができます。
そのため、初めて外国人を雇うときには、ハローワークに行くのが便利です。
Webから届出書のフォーマットをダウンロードすることも可能なので、書類の作成に慣れている方は、ハローワークに行かずに届出書を作成することもできます。
参考:厚生労働省 外国人雇用状況の届出について(ダウンロードページ)
また、書類を紙で作成せずに、オンラインで提出することもできます。これについては、次の項目で説明します。
外国人雇用状況届出書の提出方法と期限は?
外国人雇用状況届出書は「ハローワークに直接提出する」方法と、「オンラインで提出する」方法があります。
提出方法① ハローワークへ提出する
外国人雇用状況届出書や、雇用保険被保険者資格取得(喪失)届は、外国人労働者の勤務地を管轄するハローワークに届け出ます。
ハローワーク(公共職業安定所)は、届出をもとに雇用環境を改善するために、事業主にアドバイスや指導をおこなっています。
直接届け出ることで、外国人労働者が安心して働ける環境をつくれるようにサポートを受けられます。
提出方法② オンラインで提出する(電子申請)
オンラインで提出する場合は、外国人労働者が「雇用保険の被保険者となる場合」「被保険者ではない場合」で別のシステムを使います。
外国人雇用状況届出書は「外国人雇用状況届出システム」で提出
雇用する外国人が雇用保険に加入する場合は、厚生労働省の「外国人雇用状況届出システム」を使います。ユーザーIDを作成しておけば、すぐに使うことができるのでおすすめです。
また、以前にハローワークの窓口で届出をしたことがある事業者は、新規登録ボタンからIDを登録できないことがあります。
その場合は以前に届出を行ったハローワークに問い合わせましょう。ハローワークがオンライン提出に切りかえる手続きを教えてくれます。
雇用保険被保険者資格取得(喪失)届は「e-Gov電子申請」で提出
雇用する外国人が雇用保険に加入しない場合は、デジタル庁の「e-Gov電子申請」を使います。
e-Govでは、さまざまな省庁への電子申請が利用できるようになっています。この機会に登録して、便利に活用してみることをおすすめします。
提出期限
提出期限は、雇用保険に加入しているかどうかによって異なります。
雇用保険被保険者となる外国人の場合
- 雇用時:雇入れ日の翌月10日まで
- 離職時:離職日の翌日から10日以内
雇用保険被保険者とならない外国人の場合
- 雇用時:雇入れ日の翌月末日まで
- 離職時:離職日の翌月末日まで
外国人雇用状況提出書を出し忘れた場合
外国人雇用状況届出書は、外国人を雇用する際に必ず提出しなければならない書類です。
ここでは、うっかり忘れてしまった場合の対処法と注意点を紹介します。
すぐにハローワークに連絡しましょう
ハローワークに連絡すれば、未提出の届出について具体的な手続きや再提出の方法を確認できます。提出を忘れた場合の再提出期限についても、ハローワークから指示を受けることができるので、それに従って適切な対応をしましょう。
また、提出を怠った場合に罰金が課されることがありますが、ハローワークに相談すれば、罰則が適用されるかどうかを確認することもできます。
そのままにすると罰則を受ける可能性も
雇用対策法では、外国人雇用状況届出書を提出しなかった場合には、次のような罰則が定められています。
罰金
届出書を提出しなかったり、内容に嘘を書いたりすると、事業主は1人の外国人につき最大30万円の罰金を支払わなければならないことがあります。
指導・勧告
「労働施策総合推進法」にもとづいて指導や勧告を受けることもあります。もしこれに従わなければ、さらに厳しい対応がされることがあります。
再発防止措置
罰則を受けた場合、事業主は再発を防ぐための対策を取らなければならず、その後も監視されることがあります。
このように、提出を怠ったり、忘れて放置してしまうと、罰金を支払うだけでなく企業のイメージにも悪影響を与えることがあります。
もし期限を過ぎてしまった場合は、すぐにハローワークに連絡して、指示に従って手続きを進めましょう。
さいごに
外国人を雇い入れるとき、また離職するときに提出する必要のある書類、それが外国人雇用状況届出書です。
その外国人が雇用保険の対象となるかどうかで、提出する書類や期限などが変わってきます。
もし、手続きや外国人採用に不安がある場合は、弊社のような外国人採用専門の人材会社に相談してみてください。
専門的なサポートを受けることで、スムーズに手続きが進み、安心して外国人労働者を迎え入れることができます。