外国人労働者を雇う上での税金知識を知ろう!

企業の人手不足は年々深刻化する一方で、人手不足による倒産も増えています。そこで近年人手不足問題を解消するために、外国人の労働者の受け入れを拡大している取り組みが活発的に行われているのです。特に人事の方であれば「自社でも外国人の方を雇う機会が増えてきた」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
とはいえ、外国人労働者を採用する際には、
- 「そもそも外国人労働者の税金知識が乏しい」
- 「雇う側が知っておくべきことを押さえておきたい」
といった不安は付き物です。そこで今回は、人事採用者のために「外国人労働者に関する税金問題」を的確にまとめてご紹介していきます。
目次
外国人労働者の税金:人事が知っておくべきことは?
現在日本に在留する外国人は2017年時で約256万人と増えてきており、外国人労働者の数も前年比較で約155増加し、いずれも過去最高を更新しています。
増加している要因として、
- 新たな高度外国人材の受け入れが進んでいる
- 雇用情勢の改善と並行して、新たな在留資格の創設が進んでいる
など、政府が推進している改革が影響しております。
税金面では、外国人労働者も所得税、住民税ともに日本人同様に源泉徴収の取り扱いを受けるのです。もちろん外国人労働者の母国が申告納税制度を採用する場合には、源泉徴収によって税金が控除されます。
そこで、ここでは外国人労働者を自社で雇う際に税金・給与について知っておくべきことをご紹介します。
給与支払いとは何が違うの?源泉所得税の取り扱いは?
日本では給料から税金が天引きされるシステムは一般的ですが、外国人にとってはそのようなシステムを聞いたことがない方もいらっしゃいます。後々トラブルにならないためにも、事前に給与支給について(手取り額や控除されるもの)の説明はしっかりおこなう方が良いでしょう。
そして、外国人労働者を雇用して源泉徴収をする場合には、「居住者か非居住者か」によって大きく異なります。
居住者の場合
一般的に所得税法が定める居住者とは、以下条件を満たす人のことをいいます。
- 日本国内に住所がある
- 1年以上居住している(現在まで)
国籍関係なく上記条件を満たせていれば外国人であっても所得税の支払い義務が発生します。
源泉徴収の手順に関しては、日本人同様の課税方法で源泉徴収が行われていきます。
- 給与所得者の扶養控除等申告書を提出してもらう
- 給与を支払う毎に所得税の源泉徴収を行う
- 年末調整によって年税額を清算する
非居住者の場合
所得税法が定める非居住者とは、居住者以外の人が該当します。
非居住者であっても、日本国内で得た所得に従い所得税の納付義務があります。
居住者とは年末調整の処理が異なり、非居住者の場合には原則20.42%の税率で源泉徴収を行います。
租税条約の特例がある場合には注意が必要で、非居住者が属している国と日本が租税条約によって、所得税が一定額までを免税としている場合は、外国人労働者本人が「租税条約に関する届出」を税務署へ提出する必要があります。
また、外国人労働者を雇う際には、
- 「どの国から来たのか」
- 「どんな条件で来たのか(居住者か非居住者か)」
を事前に認識しておかないと、後々トラブルに巻き込まれる可能性もあるのでしっかり把握しておきましょう。
住民税の手続きは?
住民税も「居住者か非居住者か」によって扱いが大きく異なります。結論、所得税説明時に前述した内容と同様で、
- 居住者の住民税は課税対象
- 非居住者の住民税は非課税対象
となります。
居住者の場合
外国人労働者であっても、当該市町村に住所がある個人(居住者)に課税対象となります。取り扱いは、その年の1月1日時点で日本国内の住所となっていれば住民税納税義務者となり、前年の所得に応じて税額が決まるのです。
外国人労働者を雇用している事業者は、通常の日本人社員同様に住民税を毎月の給与から天引きし、翌月10日までに市町村に納める義務があります。天引きする金額は市町村で計算してくれるので、特別な対応は不要となり年末調整も行う必要はありません。
非居住者の場合
非居住者の外国人労働者は、日本に居住をしていないので住民税は非課税となります。とはいえ、非居住者でも日本国内に事務所や家宅を所有している場合は一部納税対象(住民税のうち「均等割」)となるので要注意です。また、年度途中で帰国し「非居住者」になる場合は、転出手続きを取る必要がありるので注意しましょう。
外国人労働者の税金:労働者側が知っておくべきことは?
日本と海外では、税金の仕組みそのものが異なり戸惑ってしまう部分が多々あると思います。実際に日本で働いてみて、「自国ではこんなに税金は掛からないはずなのに…」と混乱してしまうなんてことも出てきます。ここでは、外国人労働者側が日本で働くために、知っておくと良い知識についてご紹介していきます。
日本の税金とは何が違うの?
国によって税金の制度や税率は異なり、自国に比べて他国の方が税が安いこともあれば、逆に税が高いなんてこともあり得ます。例えば、所得税と消費税を見比べてみましょう。
所得税
まず日本では「累進課税」が適用されており、税率は所得に応じて7段階あります。対して、労働者数の多いアメリカでは「独身者」「夫婦合算申告」「夫婦別個申告」の3つの申告方法があり、所得区分が日本とは異なるのです。日本では近年、法改正が行われたこともあり、高額所得者の負担がさらに重くなりました。
消費税
日本の消費税は2019年10月から10%となりました。一方アメリカでは消費税という税金は存在せず、「Sales Tax」という扱いをしています。州によって異なりますが0%の州もあれば、計10%近いSales Taxを取っている州もあるので、日本とは制度が全く異なるのです。
このように日本とアメリカのような労働者の多い国では、制度自体が違うので比較は難しいですが、働く上では、その国の税制についてしっかり理解しておきましょう。
わかりやすいマニュアルを!
市町村が行なった調査によると、外国人労働者が日常生活で困っていること上位3項目が
- 日本語が難しい
- 仕事探し
- 外国語を喋る人が少ない
であったそうです。外国人が働きやすい環境を整えるには、統一したマニュアルを用意しておくと、外国人労働者も受け入れやすくスムーズに働くことができます。例えば、画像や動画・英語を利用し、日本語の理解に乏しくても仕事内容がわかるようなマニュアルがあると良いでしょう。
そして受け入れる企業側が、各国の異文化を理解しようとする姿勢や柔軟な経営をしていくことも重要です。外国人労働者をただ採用するだけでなく育成にも力を入れることで、グローバル企業として発展が見込め、会社全体のレベルアップにも繋がっていきます。
外国人労働者の税金について詳しくなりましたか?
人手不足が深刻化している現代において、外国人労働者は必要不可欠な存在です。言語や文化が違う外国人労働者を受け入れるには、相応の環境作りや知識を蓄えなければなりません。
日本人社員とは異なる税金知識をしっかり理解しておき、双方の言葉と文化の違いを理解し合えるようになれれば、会社のグローバル化とともにさらなる成長に繋がっていくのではないでしょうか。