日本における労働力不足は深刻な問題となっており、特に少子高齢化によってこの問題がさらに顕著になっています。その結果、多くの企業が外国人労働者の採用を視野に入れ始めています。外国人を雇用する際には、在留資格を正しく理解し、外国人が日本でどのような活動や仕事を行うことができるかを把握することが重要です。

中でも「定住者」という在留資格は、幅広い活動が可能で、日本に長期間滞在し、生活する外国人にとって重要な資格です。企業が外国人を採用する際、定住者を雇うメリットは大きく、特定の業種や職種に制限がないため、さまざまな分野で活躍が期待できます。

本記事では、定住者の在留資格について詳しく解説し、定住者が企業でどのような仕事に就けるか、またその制限や更新手続きについてもご説明します。

定住者とは?

「定住者」とは、日本に長期間滞在し、比較的自由に生活できる在留資格を持つ外国人のことを指します。定住者の在留資格は、特定の職業や活動に制限がないため、企業にとっては幅広い職種で採用できることが特徴です。ただし、永住権とは異なり、在留期間の延長手続きが必要です。定住者の在留資格が認められるおもなケースとして、以下のようなものが挙げられます。

日系人:日本人の血を引く外国人(例:日系二世・三世)は、定住者の在留資格を取得することが多いです。

日本人や永住者の配偶者:日本人や永住者の配偶者・子供である外国人がこの資格を取得するケースもあります。

難民・特例的な事情を持つ人:難民認定を受けた人や、特別な事情がある外国人(例:日本に長期間居住しているが、永住資格をまだ持っていない場合)も対象になることがあります。

永住権との違い

定住者とよく比較されるのが永住者の在留資格です。両者は似ている部分もありますが、いくつかの重要な違いがあります。

まず、永住者は無期限で日本に滞在することができるのに対し、定住者は一定期間(通常1年から5年)の在留が認められており、期限が来るたびに更新手続きを行う必要があります。また、永住者は永住権が付与されるため、ビザ更新の煩雑な手続きを避けることができる一方、定住者は滞在期間に対する審査を受けることが求められます。

しかし、定住者の資格でも永住者同様、特定の職業や活動に縛られることなく、幅広い就労が可能です。特に中小企業やサービス業、製造業など幅広い分野で外国人労働者を必要としている企業にとっては、定住者の雇用が有効な手段となります。

定住者ができる仕事

定住者の在留資格を持つ外国人は、基本的に日本国内のどの職種でも就業することができます。これは、他の就労ビザと比べて大きな利点です。例えば、技術・人文知識・国際業務の在留資格では、特定の専門職に限定されるため、飲食業や介護業などでは採用が難しいことがありますが、定住者はそのような制限がありません。具体的には、以下のような仕事に従事することが可能です。

飲食業:レストランや居酒屋などの調理、接客、管理業務

介護業:高齢者施設や障がい者施設での介護職

製造業:工場でのライン作業や製品の組み立て、品質管理

サービス業:清掃、警備、ホテルスタッフ、販売業など

このように、幅広い職種での就業が認められているため、人手不足が深刻な業界では非常に貴重な存在となっています。

定住者の制限

定住者の在留資格は多くの自由を持つ一方で、いくつかの制限も存在します。最も大きな制限は、在留期間が定められており、定期的に更新手続きを行わなければならない点です。この更新が認められない場合、日本から退去しなければならないリスクがあります。

また、定住者は日本国内で自由に就労できる一方、ビザの更新時には過去の労働状況や生活環境、税金の支払い状況などが審査されます。そのため、安定した収入を得ていること、適切な生活をしていることが確認されない限り、ビザの更新が難しくなる可能性があります。

定住者のビザ更新手続き

定住者の在留資格は、1年から5年の期限付きで付与され、その後、更新手続きを行う必要があります。この更新手続きには、企業の協力が重要です。特に就労している場合、会社が労働者としての評価を適切に行い、必要な書類を準備することが求められます。具体的な手続きとしては、次のようなステップが含まれます。

申請書の提出:更新を希望する定住者は、入国管理局に申請書を提出します。

書類の準備:過去の就労状況や所得、税金の納付証明書、住民票などが必要です。

審査:審査には数週間から数カ月かかることがありますが、適切な書類が揃っていれば更新される可能性が高いです。

このような更新手続きをしっかりサポートすることで、定住者が安心して長期間働き続ける環境を整えることができます。

定住者を採用する企業へのメリット

長期的な雇用が期待できる

外国人定住者は日本に長期間滞在することを希望しているため、企業にとっては長期的な雇用が期待できます。他の在留資格(例えば技能実習生など)と比べて、定住者は日本に安定して生活基盤を築いていることが多く、転職や帰国するリスクが比較的低いです。これにより、企業は長期間にわたって優秀な人材を確保することができ、頻繁な人材の入れ替えによる負担を軽減できます。

幅広い職種での就労が可能

定住者の在留資格は、特定の職業に制限されていません。そのため、製造業、飲食業、介護業、サービス業など、さまざまな業界で雇用することが可能です。特に、外国人労働者を必要としている業界では、柔軟に雇用できる点が大きなメリットとなります。

職種に制限がある他のビザ(例えば技術・人文知識・国際業務など)とは異なり、定住者は企業のニーズに応じた多様な仕事に従事できます。

文化の多様性を促進

外国人定住者を雇用することで、企業内での文化的多様性が促進されます。異なる文化やバックグラウンドを持つ従業員が集まることで、イノベーションや新しいアイデアの創出が期待できます。また、外国人の視点や知識を活用することで、企業は新たなマーケットやサービス展開においても競争力を高めることができます。

外国語能力の活用

定住者の中には、日本語だけでなく、英語やその他の母国語を話せる人も多くいます。特に観光業や国際的なビジネスにおいて、複数の言語を扱える従業員は非常に貴重です。外国語を活用できる定住者を雇うことで、外国人観光客へのサービス向上や、海外との取引・交渉において優位に立つことができます。

社会的責任の果たし方

日本の少子高齢化による労働力不足は深刻な問題です。外国人定住者の雇用は、労働力不足を補うだけでなく、社会的な多様性を受け入れ、地域社会に貢献することにもつながります。企業が外国人を積極的に採用することで、持続可能な社会構築や地域経済の発展に寄与することができます。

スムーズなビザ手続き

定住者は在留資格の範囲内で自由に仕事ができるため、他のビザを取得する必要がなく、企業が追加のビザ手続きをサポートする負担が少ないです。また、定住者は在留資格の更新は必要ですが、永住者に比べると比較的簡単に更新手続きが行われるため、雇用管理がしやすい点もメリットです。

即戦力としての活用

日本にすでに定住している外国人は、日本の文化や習慣にある程度慣れているため、即戦力として活躍しやすいです。新たに外国から来日した労働者に比べ、日本の生活に対する適応が進んでおり、企業における職場環境にも早期に慣れる傾向があります。これにより、企業は労働者のトレーニングや適応支援にかかるコストや時間を削減できます。

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おわりに

日本の労働力不足が深刻化する中で、外国人労働者を採用することは企業にとって重要な選択肢です。中でも「定住者」の在留資格を持つ外国人は、特定の職業に制限がなく、多様な業界での就業が可能なため、非常に有力な労働力となります。

この記事では、定住者の在留資格や永住権との違い、定住者ができる仕事、制限、更新手続きについて詳しく解説しました。定住者を採用することで、企業は長期的かつ安定した労働力を確保し、人手不足を解消するための効果的な手段を得ることができます。

外国人採用を考える際、定住者という在留資格を理解し、適切にサポートすることで、外国人労働者が日本の企業にとって貴重な戦力となるでしょう。ぜひ、定住者の採用を視野に入れて、企業の人手不足解消に役立ててください。