外国人労働者の推移|過去最高の230万人超【厚労省データ最新】
はじめて外国人の採用に取り組むと、「何から確認すればいいのだろう」と迷う場面が多いと思います。
応募が集まらなかったり、在留資格の見分け方が分からなかったり、社内説明に必要な情報が足りなかったりと、悩みは尽きません。そんなときに役立つのが、最新のデータを手がかりに“今”の状況を正しく知ることです。
この記事では、厚生労働省が公表している公式データをもとに、外国人労働者の人数の推移や国籍別の特徴、地域ごとの傾向、在留資格の違いなどを分かりやすく整理しました。
読み終えたときには、日本で働く外国人の姿がイメージでき、「これなら採用の一歩を踏み出せそうだ」と感じられるでしょう。
目次
最新の外国人労働者数と前年比(230万人/+12.4%)

まず知っておきたいのは、いま外国人労働者がどれくらい働いているかという数字です。
2024年(令和6年)10月末の時点で、外国人労働者は2,302,587人となりました。前年より約25万人増えており、伸び率は12.4%。過去最高を更新しています。
長い期間で見ても人数は右肩上がりに増えており、人手不足のなかで外国人の力がますます必要とされていることがうかがえます。実際に外国人を雇っている事業所数も増えていて、全国で34万か所を超えました。
くわしい規模ごとの内訳は後ほど紹介しますが、大企業だけでなく、中小企業や地域のサービス業でも広がっているのが特徴です。
参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(2025年1月31日公表)
外国人労働者と在留外国人、どこが違う?
ここで知っておきたいのが、「外国人労働者」と「在留外国人」は同じ意味ではないという点です。
- 外国人労働者:企業がハローワークに届け出た雇用状況(厚生労働省データ)
- 在留外国人:日本に住んでいるすべての外国人(出入国在留管理庁データ)
たとえば、留学生や家族滞在の人は「在留外国人」に含まれますが、実際に働いていなければ「外国人労働者」には数えられません。
この違いを理解しておくと、採用の場面で「このデータはどこからのものか」と聞かれたときに、自信を持って答えられるでしょう。
年ごとの推移(2009〜2024)
ここからは、外国人労働者の人数がどのように増えてきたのかを年ごとの流れで見ていきましょう。
長期的な変化を押さえておくと、景気や制度の影響がどれほど大きいかが分かり、採用計画を立てるときの説得力にもつながります。
年ごとの推移グラフ

引用:厚生労働省「在留資格別外国人労働者数の推移」
厚生労働省のデータによると、2009年から2024年まで外国人労働者は右肩上がりで増えてきました。
2012年におよそ68万人だった数は、2024年には230万人を突破。15年間で約3.4倍に増えた計算です。
推移の主なポイント
- 2009年:562,818人(リーマンショック後の底)
- 2012年:682,450人(増加が加速し始める)
- 2019年:1,658,804人(コロナ前のピーク)
- 2021年:1,727,221人(コロナで伸びが鈍化)
- 2024年:2,302,587人(前年比+12.4%で過去最高)
この数字からも分かるように、外国人労働者の数は景気や社会状況の影響を受けながらも、全体としては増え続けてきました。
どの年に増減が大きかった?
最も大きな変化があったのは、2020年から2021年のコロナ期です。入国や渡航の制限で、増加がほとんど止まりました。
しかし、その後の2022年からは再び増加に転じ、2023年・2024年は大幅な伸びを記録。とくに2024年は前年より25万人以上増えており、V字回復を象徴する年といえるでしょう。
採用をはじめたばかりの人にとって大切なのは「短期的に減ることがあっても、長期的には増加傾向にある」という事実です。
これは外国人雇用が一時的な流行ではなく、日本の人手不足に直結した大きな流れであることを示しています。
就業者全体の増減との関係
2024年の日本全体の就業者数は6,781万人で、前年より34万人増えました。そのうち25万人が外国人労働者です。割合にすると、増加分のおよそ7割を外国人が占めています。
つまり「働き手が増えている」といっても、その中心は外国人労働者です。国内の人材だけでは人手不足を埋めきれない現実が、この数字からはっきりと見えてきます。
だからこそ、外国人労働者の推移を追うことは、単なる統計の確認にとどまらず、自社の人材戦略を考えるうえで欠かせない視点になるのです。
在留資格別の内訳

引用:厚生労働省「在留資格別外国人労働者の割合」
ここからは、外国人労働者がどのような在留資格で働いているのかを見ていきましょう。資格の種類によって仕事内容や働ける条件が異なるため、採用できる範囲も変わってきます。
まずは大きな分類を押さえておくと理解しやすいです。
専門・技術系の在留資格
2024年10月末時点では、718,812人(全体の31.2%)が「専門的・技術的分野の在留資格」で働いていました。前年から20.6%増えており、大きな伸びを示しています。
この枠には、以下の在留資格が含まれます。
教授/芸術/宗教/報道/高度専門職/経営・管理/法律・会計業務/医療/研究/教育/技術・人文知識・国際業務/企業内転勤/介護/興行/技能/特定技能1号・2号
高度な専門知識を持つ人材から、現場ですぐ力を発揮できる人材まで幅広く含まれているのが特徴です。企業にとっては即戦力が多い在留資格といえます。
特定技能はどれくらい増えた?
特定技能の人数は2024年10月末時点で206,995人(全体の約8%)。前年比49.4%と急増し、制度開始から数年で主要な在留資格に成長しました。
外食・介護・製造など、人手不足が深刻な分野で多く活躍しており、日本語力や試験をクリアした人材が現場で即戦力になっています。
採用を考える人にとっては、制度の理解が必要ですが、選択肢として注目度は高まっているといえるでしょう。
身分系の在留資格
629,117人(全体の27.3%)は「身分に基づく在留資格」で働いています。永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者などが代表例です。
この層は就労制限がほとんどなく、長く働けるため安定性が高いのが特長。正社員としての雇用やキャリア形成を見込みやすく、定着を重視する採用に向いています。
技能実習
470,725人(全体の20.4%)が「技能実習生」として働いています。これまで技能の移転を支える役割を担ってきましたが、課題も多く指摘されてきました。
そのため今後は「育成就労」という新しい制度に移行する予定です。
従来の「短期労働」から「教育や育成を重視する仕組み」に変わるため、受け入れる企業には研修やキャリア支援の体制がより求められるでしょう。
資格外活動(留学生アルバイト)
398,167人(全体の17.3%)が資格外活動、おもに留学生のアルバイトです。飲食店や小売業で多く見られます。
ただし「週28時間まで」という上限があるため、長時間シフトを組むことはできません。採用の入口としては有効ですが、長期的な戦力というよりは短期的なサポート役として考えるのが現実的です。
産業別の比率

引用:厚生労働省「産業別外国人労働者の割合」
外国人労働者は、どの産業で多く働いているのでしょうか。業種ごとの特徴を知ることで、自社の分野と照らし合わせる参考になります。
産業別の主な数値(2024年10月末)
- 製造業:598,314人(26.0%)
- サービス業(他に分類されないもの):354,418人(15.4%)
- 卸売業・小売業:298,348人(13.0%)
- 宿泊業・飲食サービス業:273,333人(11.9%)
- 建設業:177,902人(7.7%)
- 医療・福祉:116,350人(5.1%)
- 情報通信業:90,546人(3.9%)
- 教育・学習支援業:82,902人(3.6%)
- その他:310,474人(13.5%)
製造業
最も多いのは製造業で26.0%(598,314人)を占めています。
食品・金属・機械・電気機器など、幅広い分野で活躍しており、技能実習や特定技能の人材が中心です。ライン作業から検査まで、多様な工程を支えていることが分かります。
採用ポイント:作業手順をやさしい日本語や図で示すと定着率が高まり、評価制度を伝えることで長期雇用にもつながりやすいです。
サービス関連(宿泊・外食など)
宿泊業・飲食サービス業は11.9%(273,333人)、サービス業(他分類)は15.4%(354,418人)、卸売業・小売業は13.0%(298,348人)。接客や調理補助などで多くの外国人が働いています。
採用ポイント:シフト調整を柔軟にしたり、研修を短い動画で伝えたりすると立ち上がりがスムーズです。特定技能(外食分野)を活用すれば長期雇用につながる可能性もあります。
建設業
建設業では全体の7.7%(177,902人)が働いています。
都市部の大型プロジェクトやインフラ整備で受け入れが進み、技能実習や特定技能の人材が中心です。現場では安全教育が欠かせない分野といえるでしょう。
採用ポイント:危険予知や安全ルールを多言語で共有すると安心感が高まります。資格取得支援を打ち出すと応募者の関心も集めやすいです。
医療・福祉
医療・福祉分野では5.1%(116,350人)が働いており、その多くが介護職です。高齢化で慢性的に人手不足が続いており、外国人労働者が現場を支えている状況です。
採用ポイント:メンター制度や段階的な研修を取り入れると安心して働きやすくなります。専門資格の取得支援を行えば、応募の増加にもつながるでしょう。
賃金とスキルの現状
制度上は「同一労働同一賃金」が原則であり、国籍に関係なく同じ仕事なら同じ待遇が求められます。ただし実際には、雇用形態や日本語力、資格の有無によってスタート時点の賃金に差が出やすいのが現状です。
たとえば技能実習や留学生アルバイトは非正規雇用が多く、正社員と比べて水準が低めに始まります。
しかし近年では、技能試験の合格や日本語力の向上に合わせて賃金を引き上げる企業も増えてきました。単純作業だけでなく、改善提案や後輩指導を担う外国人も少しずつ増えています。
国籍別の特徴

引用:厚生労働省「国籍別外国人労働者の割合」
ここでは、外国人労働者がどの国から来ているのかを見ていきましょう。
最新の国籍ランキング(2024年10月末)
厚生労働省の統計によると、外国人労働者は次のような国籍が中心です。
- ベトナム:570,708人(24.8%)
- 中国(香港・マカオ含む):408,805人(17.8%)
- フィリピン:245,565人(10.7%)
- ネパール:187,657人(8.1%)
- インドネシア:169,539人(7.4%)
- ブラジル:136,173人(5.9%)
- ミャンマー:114,618人(5.0%)
- 韓国:75,003人(3.3%)
- タイ:39,806人(1.7%)
- スリランカ:39,136人(1.7%)
- ペルー:31,574人(1.4%)
- G7等:84,173人(3.7%)
- その他:199,830人(8.7%)
2024年のデータを見ると、ベトナム・中国・フィリピン・ネパール・インドネシアの上位5か国で全体の約7割を占めています。
つまり、特定の国に偏っている構造といえます。この集中度は採用リスクにもつながるため「国籍を分散させる視点」を持つことが今後の課題になるでしょう。
伸びが大きい国は?
2023年から2024年にかけて、とくに増加が目立ったのは以下の国々です。
- インドネシア:121,507人 → 169,539人(+39.5%)
- ネパール:145,587人 → 187,657人(+28.9%)
- ベトナム:518,364人 → 570,708人(+10.1%)
- フィリピン:226,846人 → 245,565人(+8.2%)
いずれも人手不足の分野で需要が高まっており、今後も伸びが続くと考えられます。
国ごとの在留資格の特徴
国ごとに見ると、働き方の傾向にも違いがあります。
たとえばインドネシアは「特定技能」の伸びが大きく、介護や製造分野で活躍する人が増えています。技能試験を通過して来日するケースが増えており、制度が定着してきた証拠ともいえるでしょう。
一方、ネパールは留学から「技術・人文知識・国際業務(技人国)」へ移行する人が多いのが特徴です。
日本の専門学校や大学を卒業し、そのまま就職につながる流れが強まっています。そのため、サービス業やオフィス業務でも存在感が大きくなってきました。
このように、同じ「外国人労働者の推移」でも、国によって強い在留資格や業種は異なります。
採用を考える企業にとっては、自社の業種と相性の良い国籍や資格を意識することが重要といえるでしょう。
※ここで紹介したのは「働いている人」の国籍別データです。生活者全体の特徴を知りたい場合は、以下の記事も参考になります。
都道府県別の動き

引用:厚生労働省「都道府県別外国人労働者数」
ここからは地域ごとの特徴を見ていきましょう。外国人労働者は全国に広がっていますが、人数が多い地域と、伸び率が高い地域とでは傾向に少し違いがあります。
人数が多い地域はどこ?
2024年10月末時点で最も多いのは東京で、およそ58万人が働いています。続いて愛知が約23万人、大阪が約17万人となり、三大都市圏に集中している様子がうかがえます。
製造業の盛んな愛知や、サービス業が多い東京・大阪では、外国人労働者の存在感がとくに強く、都市部の人手不足を補う大きな力になっています。
また都市部では、働く側も「外国人が当たり前の職場」に慣れている傾向があります。そのため教育体制やキャリアパスを示すと、他社との差別化につながりやすいでしょう。
伸び率が高い地域はどこ?
前年比の伸びで目立ったのは地方圏です。長崎は+28%、北海道は+24%、福井は+22%と急増しており、京都・大分・和歌山・宮崎などでも20%前後の伸びを記録しました。
地方の企業担当者にとって、外国人採用はまだ新しい取り組みに感じられることもあります。
そのため、採用を進める際には仕事の環境整備だけでなく、生活支援や地域社会とのつながりを意識して準備しておくことが大切です。
事業所数と雇用全体に占める割合

引用:厚生労働省「産業別外国人雇用事業所の割合」
外国人を雇用している事業所は全国で342,087か所にのぼり、前年より7.3%増えました。
大企業に限らず、中小企業や地域のサービス業にも広がりが見られ、受け入れが定着しつつあるのが特徴です。
どんな規模の事業所が多い?

引用:厚生労働省「事業所規模別外国人雇用事業所の割合」
外国人労働者を受け入れている事業所のうち、最も多いのは従業員30人未満の小規模事業所で62.4%を占めています。次いで30〜99人規模が17.2%、100〜499人規模が9.9%と続きます。
500人以上の大企業は3.0%にとどまり、中小企業での採用が幅広く進んでいることが分かります。
つまり「大企業でなければ難しい」と考える必要はなく、小さな規模からでも始められる環境が整ってきているといえるでしょう。
雇用全体に占める割合は?
2024年の外国人労働者は約230万人で、日本の就業者数6,781万人のうち3.4%を占めます。2009年はわずか0.9%だったため、15年で比率はおよそ4倍に拡大しました。
「100人に1人未満」から「30人に1人以上」へと存在感が高まっており、とくに人手不足の業界では欠かせない存在になりつつあります。
割合はまだ数%に見えるかもしれませんが、今のうちから採用や育成の仕組みを整えることが、将来の安定につながっていくでしょう。
企業の取り組み事例もチェックしよう
数字を知るだけでなく、実際に外国人採用を進めて成果を上げている企業の工夫も参考になります。
どのような仕組みで成功しているのかを知ることで、自社に合った方法を見つけやすくなります。くわしくは、以下の記事もあわせてご覧ください。
制度変更と今後の見通し

ここからは、これから変わっていく制度や将来の見通しを確認していきましょう。制度のポイントを知っておくと、採用を考えるときにどの資格が使えるのかが分かりやすくなります。
育成就労で何が変わる?
2027年度から「技能実習」に代わって導入されるのが、育成就労制度です。
従来の技能実習は「国際貢献」の色が強く、実際の人手不足に十分対応できていないと指摘されてきました。育成就労では、受け入れ目的が「人材育成」と「労働力確保」の両立に変わります。
さらに、転籍(他の会社に移ること)がしやすくなり、労働者にとって働きやすい仕組みに変わるのも特徴です。
企業側には「育成計画」を立てる責任が求められるため、教育や定着への取り組みがこれまで以上に重要になるでしょう。
特定技能の拡大でどうなる?
特定技能制度は、対象分野が12分野から16分野に拡大し、受け入れの幅が広がりました。さらに、1号特定技能外国人の5年間の受け入れ見込み数は約34万5千人から82万人へと大幅に増え、今後の採用機会は格段に広がると見込まれています。
また、特定技能外国人を受け入れる企業には、原則として人数制限がありません。ただし、建設や介護の分野では企業や事業所ごとに上限が設けられているため注意が必要です。
今後は特定技能1号から2号への移行が進み、長期的に日本で働ける外国人労働者が増えていくと期待されます。
制度の拡大によって、企業にとっては安定して人材を確保できる可能性が高まり、人手不足への解決策としてますます重要な選択肢になっていくでしょう。
2030〜2040年はどう推移しそう?
公的データを用いた外部の推計によると、日本人の労働力人口は2030年に約6,757万人、2040年には6,283万人まで減少すると予測されています。
一方で、外国人労働者は2030年に342万人、2040年には591万人へ増える見込みです。
両者を合わせると、総労働力人口は2030年で約7,099万人、2040年で約6,874万人。その中で外国人が占める割合は2030年で約4.8%、2040年には約8.6%に拡大します。
つまり、2040年には働く人の12人に1人が外国人という時代が訪れると考えられます。人口減少が避けられない中で、外国人労働者の存在感はさらに大きくなっていくでしょう。
参考:JICA 2030/40 年の外国人との共生社会の実現に向けた調査研究
制度変更や採用コストで迷っていませんか?
外国人労働者の推移を踏まえた採用は、将来の人手不足を考えるうえで避けて通れません。とくに技能実習と育成就労の違いや、特定技能への移行方法は理解しておく必要があります。
ガイダブルジョブスでは、制度概要とあわせて採用コストや労働者の特徴を整理した無料資料をご用意しています。
最新動向を把握することで、不安を減らし一歩を踏み出せるはずです。ぜひ今のタイミングでチェックしてみてください。




