昨今のメディアを賑わせる「クールジャパン」という言葉。一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。クールジャパンとは、海外の人々に人気がある日本文化のことをさしています。

近年では、日本好きが高じて外国人自らがクールジャパン産業の担い手として活躍している方もいるほどの人気ぶり。そこでこの記事では、クールジャパン産業に就労する外国人について解説します。

クールジャパンとは

女性 着物

クールジャパンとは、世界から「クール=かっこいい」と関心を集める日本の魅力的な産業や文化のことを言い表したものです。具体的な例としては、「食・アニメ・ポップカルチャー」などが代表的。政府が掲げる成長戦略の一環としての役割も担っており、日本へ愛着をもつ外国人(日本ファン)を増やすことで、日本の経済成長を促すことを目的としています。

また、世界のトレンドに寄り添って柔軟に拡大していくものとされているため、今後は益々、多くの分野がクールジャパンの対象となるでしょう。世界の「共感」を得ることを通して、日本のブランド力向上と、ソフトパワーの強化を目指しています。

日本文化は海外で人気なのか

一口に「クールジャパン」と言われてピンとこない方でも、「外国人は日本のアニメが大好き!」ということはご存知の方も多いのではないでしょうか。特に最近は、モノを消費することよりも文化などを体験することに関心が集まっています。外国人の間で人気を博している日本文化は、その象徴的存在と言えるでしょう。海外で人気がある日本文化をまとめました。

<クールジャパンの例>

  • アニメ
  • 和食
  • 柔道

好きな日本文化といえば、やはりアニメが№.1。「ANIME」と言われる日本のアニメーションは、海外でどんどん人気を高めており、そのマニアぶりには私たち日本人でも驚くほど。イギリスやアメリカ、ブラジルなど世界中でアニメエキスポが行われているくらいに人気が過熱しています。見事、好きな日本の文化№.1に輝いたアニメですが、どのような作品が観られているのかを以下にまとめました。

<人気のアニメ>

  • エヴァンゲリオン
  • ガンダム
  • ドラゴンボール
  • ナルト
  • 美少女戦士セーラームーン

リストに上がったタイトルは、どれも私たち日本人に馴染みのあるものが多い印象です。また、「美少女戦士セーラームーン」はロシアのフィギュアスケーター、メドベージェワ選手がコスプレをしていることでもご存知の方は多いはず。日本が発信するアニメ文化は世界中の人々に受け入れられ、さらにはアレンジをされながらその国独自の文化を築き親しまれています。

そのほか意外なものとしてあげられるのがJ-pop。宇多田ヒカルや初音ミク、坂本龍一やONE OK ROCKが有名どころのようです。和食に関しては、独特の風味が特徴の納豆と寿司(生魚)が好き嫌いを二分する結果に。外国でも「SUSHI」と呼ばれるほど広く親しまれていますが、やはり生魚を苦手とする外国人は少なくありません。一方で人気があるのは、そば・うどんなど麺類。特にうどんは外国人にも食べやすいそうで、「四国のうどんを食べてみたい!」など、うどんに種類があることを知っている人もいるほど親しまれています。

クールジャパン産業の外国人受け入れ状況は?

オフィス

日本は現在、国をあげてクールジャパン産業を推進しており、日本ファンの外国人がクールジャパン産業に就労しようとするケースも増えています。そこで政府は、外国人がクールジャパン産業に従事する際にネックとなる在留資格を是正すべく、在留資格に幅をもたせるなどの施策を実施。ここでは、クールジャパン産業の外国人受け入れ状況についてみていきましょう。

日本食分野の外国人受け入れは?

農林水産省では、日本料理の海外普及を目的に「日本の食文化海外普及人材育成事業」を実施しています。調理の専門学校を卒業した外国人留学生が、日本国内の日本料理店で働きながら技術を学べる制度で、在留期間は最長で5年。これらの政府支援を受けて和食を学ぶ外国人留学生が増えています。

その背景には、世界的な和食ブームが影響しており、海外の日本食レストランは10年前と比べて約5倍に増加。その一方で和食の料理人は不足している状況で、日本で高度な技術を身につけると好待遇を得られることを理由に、和食を学ぶ外国人留学生が増えています。

漫画・アニメ分野の外国人の受け入れは?

クールジャパン産業の中のアニメ分野においては、「技術・人文知識・国際業務」ビザで、就職が認められています。具体的な就業例をまとめました。

<アニメ分野のクールジャパン産業>

  • キャラクターデザイン等のゲーム開発業務
  • 絵コンテ等の構成や原画の作成

日本は現在、国をあげてクールジャパン産業(アニメ・漫画・ゲーム・日本料理等)の推進に力を入れています。そのため、今後日本のアニメーション分野に携わる外国人は益々増加することが予想されています。

伝統芸能にも外国人はいるのか

歌舞伎「和の芸こそワタシノジンセイ」と言わんばかりに能楽や落語、邦楽器、舞踊などの伝統芸能に魅了され、その道を究めようと励みプロになる外国人も続々と現れています。例えばニューヨーク、マンハッタンの劇場では、カナダ人落語家が古典「ちりとてちん」などを英語で熱演し、大入りの約350席の観客は爆笑の渦に包まれるほどの大盛況。

13年からは海外公演を開始し、英語とフランス語を用いてアジアや欧州、アフリカなどの国々で上演しています。「国が違っても笑いが起きる箇所は同じで、落語の伝統は時代も国境も超える」のだそう。外国人が日本の伝統芸能を学び、得意の語学を用いて世界へとその魅力を普及・発信しています。

クールジャパン枠とは?

パスポート

法務省は在留資格の条件を緩和することで、外国人がクールジャパン産業に就労するための間口を広げようと検討しています。ここでは在留資格や政府方針についてみていきます。

特定活動とは

新たな外国人材の雇用に向け、アニメーション製作や日本料理といった「クールジャパン」関連の仕事に就く外国人や、日本の大学を卒業した外国人に一律で、法務省は「特定活動」の在留資格を与えることを認めています。外国人が日本で就業したいと考えた場合、入管法に定められたいずれかの在留資格を取得しなければなりません。しかし日本のアニメを見て、「アニメーターとして製作に関わりたい」と考えても、未経験者ではどの在留資格にも該当しないため、実現が困難になってしまいます。

そこで、法務省は日本の大学を卒業した外国人の就職機会を幅広く設けることや、海外で人気の高いクールジャパン関連産業での外国人材を雇用するため、特定活動の在留資格に「クールジャパン」と「本邦大学卒業者」を新たに加えることを検討しています。法務省は日本の大学を卒業した優秀な外国人材の国内定着や、海外での日本文化の発信・普及につながるとして期待を寄せています。

政府の発表によれば…

外国人採用 上昇

政府は2017年7月、クールジャパン政策課を創設しました。日本の魅力を世界へと発信し、海外需要を獲得するとともに関連産業の雇用を創出することを狙いとしています。特定活動の在留資格に「クールジャパン」と「本邦大学卒業者」を新たに新設することに加えて、210億円もの予算をクールジャパン関連の事業に割り当てています。

最も予算取りが大きいのはコンテンツグローバル需要創出基盤整備事業(J-LOP)です。日本の優れたコンテンツの海外展開を促進するとともに、コンテンツを通じて海外における日本ファンや訪日観光客等による国内外需要の創出・拡大を行うことを目的としています。政府目標としては2025年度までに、文化GDP(映画、アニメ、音楽、ゲーム等をはじめとする文化芸術資源の活用によるGDP)を18兆円 (GDP比3%程度)に拡大することを掲げています。

クールジャパンについて詳しくなりましたか?

クールジャパンとは、世界の人々に日本の良さを知ってもらうと同時に、日本のブランド力向上とソフトパワーを強化する狙いもあります。

日本ファンの外国人が日本の伝統芸能を会得し自国で普及してくれることは、国際親善やクールジャパン戦略の推進においても成果を期待できるでしょう。在留資格に関する制度の緩和も検討されるなど、クールジャパン産業における外国人の雇用が注目されています。