近年、労働力人口の減少を背景に、外国人材の採用は多くの企業にとって重要な経営戦略の一つとなっています。厚生労働省の発表によると、日本で働く外国人労働者数は2023年10月末時点で約204万人に達し、過去最高を更新しました。

しかし、採用した外国人社員が思うように定着・活躍できず、早期離職に至ってしまうケースも少なくありません。その大きな要因の一つが、言語や文化、労働慣行の違いから生じるミスコミュニケーションです。

この課題を解決し、外国人社員に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうために不可欠なのが「研修」です。本記事では、外国人採用を成功に導くための研修について、その目的から具体的な内容、成功のポイントまでを網羅的に解説します。

参考:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)

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ガイダブルジョブズ 外国人採用

外国人採用で研修が不可欠な3つの理由

①相互理解の促進と早期離職の防止

外国人社員が日本企業で働く上で直面する最も大きな壁は、独自のビジネス文化や慣行です。例えば、「報・連・相」の徹底や暗黙の了解、時間厳守の考え方などは、海外では一般的でない場合もあります。

こうした文化や価値観のギャップを放置すると、社員の孤立やモチベーションの低下を招き、最悪の場合、早期離職につながりかねません。研修を通じて日本企業の働き方への理解を促すことは、彼らが安心して働ける環境を整え、定着率を高める上で極めて重要です。

②業務スキルの向上と生産性の最大化

採用した人材を一日でも早く戦力化することは、企業にとって共通の願いです。研修は、業務に必要な知識やスキルを体系的にインプットし、即戦力化を加速させる効果があります。

特に、専門用語の理解や社内システムの操作方法など、業務に直結する内容を初期段階で学ぶことで、その後のOJT(On-the-Job Training)も円滑に進み、生産性の向上に大きく寄与します。

③コンプライアンス遵守とリスク管理

企業は、国籍を問わず、雇用するすべての労働者に対して日本の労働基準法や労働安全衛生法などの法令を遵守する義務を負います。また、外国人材の雇用においては、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、在留資格の範囲内で就労させなければなりません。

研修を通じて、こうした法的なルールや企業の就業規則、情報セキュリティに関する規定などを正しく理解してもらうことは、意図せぬ法令違反や労務トラブルを未然に防ぎ、企業のリスク管理を強化することにつながります。

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外国人社員向け研修の全体像と実施内容

研修は、一度行えば終わりというものではありません。社員の習熟度やキャリアに合わせて、継続的に実施することが効果的です。ここでは、研修を「入社前」「入社時」「配属後」の3つのフェーズに分けて、それぞれの目的と内容を解説します。

入社前研修

内定から入社までの期間を利用して行う研修です。主な目的は、入社への意欲を維持してもらうことと、日本での就労・生活をスムーズにスタートさせるための準備を支援することです。海外在住者であれば、ビザの申請手続きや来日の準備、住居の確保といった生活基盤の構築もサポートの対象となります。

また、基本的な日本語能力や、自社の事業内容について学ぶ機会を提供することも有効です。

入社時研修

入社直後に実施する、いわゆるオンボーディング研修です。ここでは、日本企業の一員として働く上で必須となる基礎知識を習得してもらいます。具体的には、企業の経営理念やビジョン、就業規則、人事評価制度といった社内ルールから、名刺交換や電話応対、ビジネスメールの書き方といった日本のビジネスマナー、さらにはコンプライアンスに関する教育などが含まれます。

この段階で共通の土台を築くことが、その後のスムーズな業務遂行につながります。

現場配属後の研修

現場に配属された後も、研修は続きます。OJTと並行して、業務で頻出する専門用語や業界知識を学ぶ研修や、より高度な日本語コミュニケーション能力を養うためのプログラムが考えられます。また、定期的に人事担当者や上長が面談を行い、業務上の悩みやキャリアプランについて話し合うフォローアップ研修も、社員のエンゲージメントを高める上で非常に効果的です。

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【業界別】特に重視すべき研修項目

製造業・建設業

これらの業界では、何よりも安全の確保が最優先です。労働災害を防止するため、現場で使われる機械の正しい操作方法や安全標識の意味、危険予知(KY)活動、そして「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」といった安全衛生に関する徹底した教育が不可欠です。

介護・福祉業界

利用者との円滑なコミュニケーションがサービスの質に直結するため、介護現場で使われる専門的な日本語や、敬語の正しい使い方を学ぶ必要があります。また、日本の介護保険制度に関する知識や、利用者のプライバシー保護、身体介助の技術などを標準化するための研修も重要です。

宿泊・飲食サービス業

お客様への「おもてなし」が求められるこの業界では、質の高い接客日本語の習得が必須です。それに加え、アレルギー表示の理解や、イスラム教徒の方向けのハラル対応など、多様化する顧客の文化的・宗教的背景に配慮した対応スキルを身につける研修が求められます。

IT業界

技術力が高くても、日本の商慣習に戸惑うITエンジニアは少なくありません。顧客との仕様調整やチーム内での円滑なプロジェクト進行のため、日本特有のコミュニケーションスタイルや報告・連絡・相談の文化を理解するための研修が有効です。また、個人情報保護法など情報セキュリティに関する知識も極めて重要となります。

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研修を成功に導くための重要なポイント

受け入れ側(日本人社員)への研修の重要性

外国人研修を成功させる鍵は、実は受け入れ側である日本人社員の意識と行動にあります。文化や価値観の違いを理解し、多様性を受け入れるための「異文化理解研修」を実施することが非常に重要です。

また、専門用語や曖昧な表現を避け、分かりやすい言葉で伝える「やさしい日本語」のスキルを身につけることも、円滑なコミュニケーションを促進します。

一方的な知識の押し付けはNG

研修は、日本のやり方を一方的に教え込む場ではありません。外国人社員が持つ母国の文化や価値観を尊重し、なぜ日本ではこのようなルールや慣習があるのか、その背景や理由を丁寧に説明することが大切です。

質問しやすい雰囲気を作り、対話を通じて相互理解を深める双方向のプログラムを心がけましょう。

外部専門機関や研修サービスの活用

自社のリソースだけで質の高い研修を継続的に実施するのは容易ではありません。必要に応じて、外国人材の教育を専門とする外部の研修会社や、公的機関が提供する支援サービスを活用することも有効な選択肢です。

専門家の知見を借りることで、より効果的で体系的な研修プログラムを構築できます。

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おわりに

外国人社員向けの研修は、単なるコストではありません。それは、多様な人材がその能力を最大限に発揮し、企業に新たな価値をもたらすための未来への「投資」です。

これからの時代、国籍の垣根を越えて社員一人ひとりが活躍できる環境を整えることこそが、企業の持続的な成長と、真の共生社会の実現につながっていくのではないでしょうか。

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