外国人従業員のモチベーションを確保するには?

外国人従業員にとって文化が違う日本の就業環境は特殊な職場であり、きちんと説明して理解してもらわなければ、モチベーションを保つのが難しくなってしまいます。労働に対する価値観も勤務時間も国ごとに違うため、日本の勤務スタイルを当てはめてしまうとトラブルの原因にもなりかねません。
そこでこの記事では、外国人のモチベーションを低下させてしまう主な原因や、維持するために必要なことを解説します。意識が高い外国人労働者に、気持ち良く勤務してもらうためのイロハとしてお役立てください。
目次
外国人従業員のモチベーションが上がらない?
文化が違う外国人労働者にとって日本の就業環境は特殊であり、合意のないまま勤務を続けると、モチベーションの低下を招きかねません。出身国ごとに国民性が違うことへの理解や、歩み寄る気持ちを持ちましょう。
その原因とは
勉強でも仕事でも、いい成果を修めるためには欠かすことができない「モチベーション」。しかしアイデンティティーが違う外国人労働者にとって、日本ならではの就業環境を理解するのは難しく、モチベーションを低下させる要因となっています。日本国際化推進協会が独自で調査した「日本における就職の不満」に関するアンケート結果を元に、モチベーションを阻害する主な原因をまとめました。
<モチベーションを阻害する原因>
- 長時間労働
- 評価システムの不透明さ
- 昇進の遅さ
- 日本人ならではのコミュニケーションの難しさ
特に深刻なのが「長時間労働」で、なんと7割近くもの外国人が不満を感じていることが明らかになりました。実際に日本の労働生産性は、OECDに加盟する36カ国の中で20位と低水準であり、世界的にみても長時間労働なことが伺えます。
では、中国と並び外国人労働者としての受け入れが多いベトナムの労働規則がどうなっているのかというと、1日の労働時間を8時間とする点は日本と同じですが、残業に関しての規則と習慣に大きな違いがあります。ベトナムでは労働法上、1日の残業時間は通常勤務時間の50%を超えてはいけないと定められており、実際にも既定時間を超えて残業をするケースは稀です。一般的にベトナム人は日本人と比べて残業を好まない傾向があるので、日本の勤務スタイルに当てはめようとするのは無理があるといえるでしょう。
外国人労働者にとって、慣れない異国で勤務することに加えて何の説明もなしに日本特有の就業環境で働くことは、精神的にも肉体的にもストレスになりかねません。もともとは意欲が高いとされる外国人ですから、高い意識を上手に維持してあげることは生産性の向上にも繋がります。彼らにとって「日本の就労環境は特殊である」ことを改めて認識し、ノー残業デーを設けるなどして文化の違いを尊重する姿勢が大切です。
日本人とは文化が違う!を前提に
コミュニケーション方法と価値観の違いから、せっかく採用した外国人労働者のモチベーションが下がってしまい、思ったような成果を上げられないことに頭を悩ませている採用担当者は多いです。
優秀な外国人労働者のモチベーションを保ち、長く就業してもらうためには、まず日本人とは文化が違うということを前提に接すること、日本の就労意識を押し付けないことが大切になってきます。
そこで、現在日本国内で就業している外国人の割合が高い国を中心に、国民性による傾向の違いをまとめました。外国人労働者の内訳は、中国とベトナムで約半数を占めており、フィリピン、ブラジルが続いて多くなっています。確率的にこれらの出身国の外国人が求人に応募してくる可能性が高くなるので、それぞれの国民性を把握すれば採用や教育をスムーズに行うことができます。
<各国の国民性>
- 中国…合理主義
- ベトナム…仕事に比べて個人や家族を大切にする
- フィリピン…外国への出稼ぎの傾向が強い
- ブラジル…賃金を最も重視する
日本の人事に関しても適材適所に人材を配置するのと同じように、外国人労働者もそれぞれの適正にあう職種に配置する方がお互いにとっていい関係を築けます。例えば合理的な考え方をする中国人労働者には、営業や販売の仕事を任せるといいでしょう。
なぜなら、買うか分からない人よりも、購入意思がはっきりしている人に熱心に接客をするため、成果にコミットしやすい特徴があるからです。目に見える成果はモチベーションを維持するための大きな要素となるので、適正に見合う仕事を与えてあげるようにしましょう。
また、コミュニケーションに関しても文化の違いが大きく影響します。日本には「空気を読む」「相手の意を察する」という文化がありますが、「イエス・ノーをはっきりと口にする」欧米人には、この表現方法では物事の真意は伝わりません。
日本式のコミュニケーションで一方的に接してしまうと、認識の違いや後々のトラブルの原因となってしまう恐れもあります。そのような混乱を避けるために、外国人労働者には日本独特の遠回しな言い方ではなく、ストレートに物事を伝えるようにしましょう。
外国人従業員もモチベーションはこう確保する!
意識が高い外国人労働者がそのままモチベーションを維持して就労するためには、日本の「評価システムへの理解」と「何でも話せる相談相手」が欠かせません。外国人が順調にキャリアアップするためのポイントをまとめました。
キャリア計画をシェアしよう
キャリアアップ志向が強い外国人にとって、ただやみくもに目の前の仕事をこなすことは本意ではないですし、モチベーションも下がってしまいます。目標を見失わないように、入社後のキャリアプランをイメージしやすい職種に採用することはモチベーションを維持する上で効果的です。また一見すると単純作業で無意味と思える仕事でも、下積みとして必要な作業であることやその後のキャリアプランにどう繋がるかといったことは、きちんと説明してあげましょう。そうすることで漠然とした不安や迷いは解消し、定めたゴールに向かって正しく進むことができるようになります。特に中国人労働者は合理的な判断をする気質があるため、曖昧な指示で仕事を依頼することはやめましょう。
評価方法はしっかり説明しよう
自分が会社から何を期待されているかということや、仕事に対しての自身の「評価」について、外国人は日本人以上に関心を持つようです。正当な評価がなされているのか、昇給や昇格はあるのかといったことも含んでいるのでしょうが、分かりづらい評価制度は、外国人社員のモチベーションを低下させる一因です。
また、日本語が不得意な外国人の場合、評価内容が充分に伝わっていない可能性もあります。そういった認識のズレを防ぐために、日本語が堪能な外国人労働者を抜擢し、間を取り持ってもらうなどの対策は有用です。評価が不透明であると、モチベーションの低下だけでなく早期退職の原因にもなりかねないので、評価方法とその内容はしっかりと説明しましょう。
コミュニケーションを活発に
外国人が異国で働くことは、私たちが想像している以上に大きな不安とストレスを感じるものです。例えばベトナム人には、枕や毛布を持参してお昼休憩に仮眠を取る習慣がありますが、もちろん日本にはそのような習慣はありません。
環境に馴染めず、誰にも相談しないまま一人で悩みを抱え込んでいる可能性もあります。そのため、仕事やプライベートなどの悩みを話せる「相談相手」を作れるように、コミュニケーションを活発にするような取り組みをしましょう。具体的には、SUSを活用して出身国同士のコミュニティを作ることや、日本人社員と外国人労働者の交流会を定期的に設けるなど、よりボーダレスな職場環境を築くことが大切になります。
メンターは上司以外で探す
メンター制度とは、直属の上司ではなく年齢の近い年上の先輩社員や、社歴が近い先輩社員が若手社員をサポートする制度です。新入社員にとっては身近な存在ができることで、ささいなことでも相談しやすくなり、会社への居心地がよくなることにも繋がります。
慣れない環境で孤立しかねない外国人労働者にとって、このメンター制度は大いに活用すべきものであり、仕事に関わらず何か困っていることはないかなど、こまめにサポートしてあげられるといいですね。職場に理解者がいてくれることは心の支えであり、頑張ろうというモチベーションの向上にもいい影響を与えてくれます。
外国人従業員のモチベーションは確保できそうですか?
日本で就労する外国人にとって、「不透明な評価システム」や「昇進が遅いこと」は不満を感じる要因となります。優秀な外国人を雇用し、高いモチベーションを維持して仕事に取り組んでもらうためには、外国人が働きやすい就労環境を整えることが重要です。
コミュニケーションを活発にして、気軽に相談できる雰囲気作りをしましょう。文化が違うということを理解して、お互いに歩み寄る姿勢が大切となります。