近年、永住許可の審査は厳格化する傾向にあり、特に納税や公的年金・医療保険料の納付状況に関する確認が強化されています 。2019年7月以降、提出書類が増加し、審査基準が厳しくなったとの指摘もあります。また、2021年10月からは「了解書」の提出が必須となるなど 、要件は変化しています。

したがって、申請にあたっては、常に最新の情報を確認し、細心の注意を払って書類を準備することが不可欠です。

この記事では、外国人採用に携わるご担当者様に向けて、永住権申請に必要な書類、特に企業が関与する可能性のある書類や、申請が有利になる書類について、分かりやすく解説していきます。

在留資格完全ガイド バナー

 

永住権とは

永住権とは、在留期間の制限なく日本に滞在できる権利であり、活動内容にも原則として制限がなくなります。外国人従業員にとっては、身分の安定による安心感や社会的信用の向上、住宅ローンの申請が通りやすくなるというメリットがあります。

企業にとっても、従業員が永住権を取得することで、在留資格更新の手続きが不要となり、より長期的な視点での人材育成や活躍を期待できるようになります。採用担当者が永住権申請の概要や必要書類を把握しておくことは、従業員からの相談に的確に対応し、スムーズな申請をサポートするために重要です。

永住権とは? 取得できる外国人の条件、帰化や特別永住者との違い、採用するメリットなどをくわしく解説

✔︎ 関連コンテンツ

永住権申請に必要な書類

永住許可申請においては、申請者の在留資格に関わらず、原則として提出が必要となる基本的な書類があります。このような書類を確実に準備することが、申請の第一歩となります。

提出必須な書類と提出期限は以下のようになっています。

必要書類提出期限・有効期間
1,永住許可申請書申請時に提出(入管庁ウェブサイトまたは窓口で入手)
2,写真(縦4cm×横3cm)申請前3ヶ月以内に撮影したもの
3,住民票(同一世帯全員分)発行日から3ヶ月以内、有効期限内のもの
4,パスポート及び在留カード申請時点で有効な原本を提示
5,身元保証に関する資料申請時に有効なもの(運転免許証写し・住民票等は発行から3ヶ月以内)
6,了解書申請時に提出(申請者本人または法定代理人が署名)

1,永住許可申請書

申請者の氏名、生年月日、国籍、住所、職業、家族構成、日本への入国・在留歴、申請理由などを記載する公式な申請用紙です。入管庁のウェブサイトからExcel形式またはPDF形式でダウンロードできます。地方出入国在留管理官署の窓口でも入手します。

用紙はA4サイズで片面印刷(両面印刷不可)し、全ての項目を正確に記入する必要があります。虚偽の記載は許可の取り消し事由にもなり得るため、絶対に避けてください。

2,写真

縦4cm×横3cmの大きさで、申請前3ヶ月以内に撮影されたものが必要です。帽子などを身につけておらず、無背景で撮影した鮮明な画質の写真を用意しましょう。裏面には申請者の氏名を記入します。規格外の写真は撮り直しを求められる可能性があります。

(16歳未満の申請者は写真の提出は不要です。)

3,住民票

内容: 申請人を含む、同一世帯の家族全員の情報が記載されたものが必要です。マイナンバーは省略し、それ以外の項目(続柄、在留資格、在留カード番号等)は記載されたものを取得してください 。発行日から3ヶ月以内のものが有効です。

申請時に、申請人本人の有効なパスポート(または在留資格証明書)と在留カードの原本を窓口で提示する必要があります。提示できない場合は、その理由を記載した理由書が必要です。資格外活動許可を受けている場合は、その許可書も提示します。

5,身元保証に関する資料

永住許可申請においては、身元保証人の存在が求められます。提出が必要なのは、「身元保証書」と「身元保証人の身分事項を明らかにする書類」です。入管庁指定の様式を使用します。身元保証人が申請者の日本における滞在費、帰国費用、法令遵守について保証する旨が記載されています。

2022年6月1日から新様式となり、提出書類も簡素化されました。運転免許証の写し、住民票、在留カードの写し(保証人が外国籍の場合)などが該当します。

通常、日本人の配偶者、永住者の配偶者、あるいは申請者を雇用している会社の代表者や上司などがなります。身元保証人の責任は道義的なものであり、法的な強制力を持つものではありませんが、申請者の社会的な信用度を示す重要な要素とみなされます。

6,了解書

2021年10月1日から、全ての永住許可申請において提出が必須となりました。申請者1人につき1通必要で、未成年者の場合は親権者などの法定代理人が署名します。永住許可申請に関する注意事項や、申請後に状況変更があった場合の届出義務などを確認し、申請者がこれを理解・同意したことを示す書類です。

入管庁のウェブサイトからダウンロードできます。日本語のほか、やさしい日本語、英語、中国語、韓国語など多言語の様式が用意されています。

参照:出入国在留管理庁「永住許可申請1

永住権なしでも住宅ローンは組める? 在留資格ごとの審査の基準と対応している銀行を紹介!

✔︎ 関連コンテンツ

【保存版】外国人採用の事前準備ToDoリスト バナー

 

任意で用意する書類:審査を有利に進めるために

入管庁が必須としている書類以外にも、提出することで永住許可の審査において有利に働く可能性のある書類があります。これらは、申請者の日本社会への定着性、安定性、貢献度などを補強し、国益適合要件を満たしていることをより強く示すために役立ちます。

必須ではありませんが、該当するものがあれば積極的に提出を検討すべきです。

1,資産を証明する資料

預貯金通帳の写し:必須書類として提出するもの以外に、他の口座の残高を示すことで、より安定した経済基盤をアピールできます。

不動産の登記事項証明書:日本国内に不動産(土地・建物)を所有している場合、その証明書を提出することで、生活基盤の安定性を示すことができます。

有価証券等の残高証明書:株式や投資信託などの金融資産を保有している場合、その残高証明書も資産証明として有効です。

2,日本への貢献を示す資料

表彰状、感謝状、叙勲書等の写し:国や地方公共団体、公的機関などから受けた表彰や感謝状は、社会的な貢献を客観的に示す有力な資料です。

所属会社、大学、団体等の代表者等が作成した推薦状:勤務先の社長や上司、大学の指導教員、所属団体の代表者など、申請者の能力や人柄、日本社会への貢献度を評価する第三者からの推薦状は、審査官に好印象を与える可能性があります。身元保証人からの推薦状も有効です。

ボランティア活動等の証明:地域社会での清掃活動や国際交流活動への参加など、社会貢献活動の実績を示す資料(参加証明書、活動写真、関係者からの書簡など)。

学術・研究・文化・スポーツ等での実績:専門分野での論文発表、特許取得、受賞歴、著作物の出版、スポーツでの活躍など、各分野での顕著な実績を示す資料。

3,その他有利となり得る資料

日本語能力を証明する資料:日本語能力試験(JLPT)のN1またはN2などの合格証明書は、日本社会への適応度を示す上で有効です(高度人材ポイント計算で使用する場合以外でも提出可)。

業務に関連する資格証:専門性や技能を示す国家資格や公的資格の証明書。

履歴書:申請書の職歴欄などに書ききれない詳細な経歴を補足する場合に提出します。

源泉徴収票:必須書類ではありませんが、特に申請時期(1月~5月)によっては直近の年収を証明する補強資料となる可能性があります。

夫婦や家族の写真:特に「日本人の配偶者等」からの申請で、婚姻の実態や円満な家庭生活をアピールするために有効な場合があります。

会社の資料:会社経営者や自営業の場合、会社のパンフレットやウェブサイトのコピー、決算報告書などを提出することで、事業の安定性や将来性を示すことができます。

これらの任意書類は、申請者の状況に応じて、どの書類が自身の強みを最も効果的にアピールできるかを考慮して選択・提出することが重要です。

参照:出入国在留管理庁「永住許可申請2」、同庁「永住許可申請3

【2025年版】永住権の審査期間はどれくらい? 最新の目安と企業ができるサポート・短縮のコツをわかりやすく解説

✔︎ 関連コンテンツ

採用担当者のための永住権申請 Q&A

従業員の永住権申請において、企業のサポートは非常に重要です。ここでは、採用担当者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。従業員から相談を受けた際に、的確に対応するための知識としてお役立てください。

Q1. 従業員の永住権申請にあたり、会社として「必ず」準備すべき書類は何ですか?

A. 会社が発行を求められる必須書類は、主に①在職証明書と、②住民税の課税・納税証明書に関連する書類です。

  • ① 在職証明書: 申請者が現在、貴社に在籍し、安定した収入を得ていることを証明する書類です。特に決まったフォーマットはありませんが、**申請者の氏名、生年月日、入社年月日、役職、業務内容、月収(または年収)**などを明記し、会社の角印を押印して発行します。
  • ② 住民税の課税・納税証明書(直近5年分): これは申請者本人が市区町村役場で取得する書類です。しかし、給与から天引き(特別徴収)している住民税がきちんと納付されているかは、永住許可の最重要審査項目の一つです。会社として、給与計算や納税手続きが遅延なく適正に行われているかを日頃から確認しておくことが、間接的ながら最大のサポートとなります。

Q2. 従業員から「身元保証人」になってほしいと頼まれました。責任の範囲と、誰がなるべきかを教えてください。

A. 永住権申請の「身元保証人」が負う責任は、借金の連帯保証人のような**法的な強制力を持つものではなく、あくまで「道義的責任」**とされています。滞在費や法令遵守を保証するものですが、万が一の際に費用支払いを法的に強制されることはありません。

しかし、審査において申請者の社会的信用度を示す重要な役割を果たします。

  • 誰がなるべきか: 一般的には、申請者をよく知る日本国籍者または永住者がなります。企業においては、代表取締役や直属の上司がなるケースが多いです。
  • 企業の対応: 誰が保証人になるかについて、社内で特定のルールを設けておくと、依頼があった際にスムーズに対応できます。安易に引き受けるのではなく、従業員の日頃の勤務態度や素行を考慮した上で、総合的に判断することが望ましいでしょう。

Q3. 審査に有利になるという「推薦状」の作成を依頼されました。何を書けば効果的ですか?

A. 推薦状は、申請者の人柄や勤務状況、日本社会への貢献度を客観的な視点からアピールする絶好の機会です。以下の要素を盛り込むと、より効果的な推薦状になります。

記載すべきポイント

    • 申請者との関係と在籍状況: 推薦者の役職と、申請者の社内での役職、担当業務、在籍期間を記載。
    • 具体的な評価: 日頃の勤務態度、業務スキル、実績、会社への貢献度などを具体的なエピソードを交えて記述。
    • 人柄と日本社会への適応性: 日本語能力の高さ、同僚との協調性、真面目で誠実な人柄など。
    • 将来への期待: 今後も会社の中核人材として、また日本社会の一員として活躍を期待している旨を記述。

会社のレターヘッドを使用し、作成年月日、推薦者の署名または記名・押印を忘れないようにしてください。

おわりに

外国人従業員の永住権申請は、本人のキャリアだけでなく、企業の組織力強化にも関わる重要なプロセスです。採用担当者として必要書類や手続きの概要を理解し、特に在職証明書や、依頼があった場合の了解書・推薦状の作成に適切に対応することは、従業員との信頼関係を深め、長期的な活躍を後押しします。

正確な情報収集と丁寧な準備を心がけ、必要に応じて専門家の力も借りながら、従業員の永住権取得をサポートしていくことが望まれます。

外国人の採用・受け入れでお悩みならGuidable Jobsへ

外国人材の受け入れ準備や採用活動そのものに関して、「自社の要件に合う優秀な特定技能人材をどこで見つければよいか」「採用後の複雑な諸手続きや定着支援をどのように進めるべきか」といった具体的な課題に直面されている企業様もいらっしゃると思います。

Guidable株式会社では、日本最大級の外国人向け求人媒体「Guidable Jobs」の運営を通じ、様々な業界のニーズに合致する外国人材の採用活動を支援しております。

優秀な外国人材の採用にご関心をお持ちでしたら、以下よりお気軽にお問い合わせください。

資料DL バナー