永住権なしでも住宅ローンは組める? 在留資格ごとの審査の基準と対応している銀行を紹介!

日本企業で活躍する外国人従業員が、生活基盤をより強固なものにしたいと考えたとき、マイホームの購入は大きな選択肢の一つとなります。
採用担当者として、従業員から住宅ローンに関する相談を受けた際、あるいは福利厚生の一環として住宅購入支援を検討する際に、正確な情報を持っていることは、従業員の定着支援やモチベーションUPにもつながります。
そのようなとき、高い壁となるのがローンを組むための審査です。日本の永住権を持っていなくても融資を受けることはできますが、日本人や永住権を持っている人に比べると審査が厳しくなります。
この記事では、永住権を持たない外国人従業員の住宅ローン申請における、採用担当者が知っておくべき基本的な情報や審査のポイント、そして企業としてできるサポートについて解説します。
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住宅ローン審査における永住権の重要性とは?
日本の多くの金融機関は、住宅ローンの基本的な申込条件として、申請者が「日本国籍を有する者」または「永住許可(永住者または特別永住者の在留資格)を受けている外国籍の者」であることを明記しています。
永住権を保有している外国人は、原則として日本人と同様の基準で住宅ローンの審査を受けることが可能です。これは、収入の安定性、勤続年数、信用情報、健康状態などの返済能力に関する項目が、日本人と同じ基準で評価されることを意味します。
また、広く利用されている公的支援の住宅ローン「フラット35」についても、利用対象者は原則として永住権または特別永住者の資格を持つ外国人に限定されています。
なぜここまで永住権の有無を重視するのでしょうか。主な理由として、返済能力の継続性と日本での定住意思を確認する点が挙げられます。住宅ローンは長期にわたる返済が必要となるため、金融機関としては、申込者が安定して日本に居住し、継続的に収入を得て返済を続けられるかを慎重に判断する必要があります。
なので、日本に長期滞在する意志が明確にわかる永住者・定住者以外は、ローン返済期間中に日本を離れてしまう可能性があるとみなされ、審査が厳しくなったり、場所によっては断られたりします。
参照:PLAZA HOMES「Can a foreigner purchase property in Japan?」、リーガルエステート「外国人でも住宅ローンは組める?永住権の有無など審査の基準を解説」
永住権を持たない申請者に対する主要な審査基準
安定した収入
継続的かつ十分な収入があることの証明は最重要です。金融機関によっては、具体的な最低年収基準(例:300万円、400万円、500万円、700万円など)を設けている場合があります。特に永住権がない場合、収入の安定性はより慎重に見られます。
雇用形態・勤続年数
正社員としての雇用がベストです。通常、同一勤務先での最低勤続年数が設定され、多くの場合1年から3年以上とされています。自営業者や会社役員の場合、2年から3年以上の事業実績や決算書の提出が必要となることがあります。勤続年数が短い、あるいは契約社員や派遣社員などの非正規雇用は、審査上の不利な要因となることがあります。
年齢
申込時の最低年齢(多くは18歳または20歳以上)と、最終返済時の最高年齢(多くは75歳または80歳まで)が設定されています。
健康状態
団体信用生命保険(団体信用生命保険、通称「団信」)への加入が、多くの標準的な住宅ローンで必須条件となっています。感染症や健康上のリスクがあると加入できず、ローン利用の障壁となる可能性があります。ただし、セゾンファンデックスのような一部のノンバンク系金融機関では、団信加入が必須でない場合もあります。
しかし、永住権を持たない申請者は利用できる金融機関の選択肢が元々少ないため、団信に加入できない場合の影響はより深刻になる可能性があります。
信用情報
過去のローンやクレジットカードの返済遅延・延滞履歴は、審査に不利な影響を与えます。日本国内での信用情報が乏しいことも、審査の通過が難しくなります。
永住権を持たない申請者に対する特有の追加要件・ハードル
日本語能力
ローン契約書の内容を理解し、金融機関担当者と日本語で円滑なコミュニケーションが取れる能力が、多くの金融機関で求められます。契約は法的拘束力を持ち、内容も複雑なためです。
SMBC信託銀行プレスティアのように英語対応が可能な金融機関もありますが、審査担当者とコミュニケーションが取れないと、その時点で断られることがあります。日本語を十分に理解することができれば、選択肢は広がると言えるでしょう。
日本での居住期間
安定性と日本への定着度を示すため、一定期間(例:3年以上、5年以上など)の日本国内での居住実績を要件とする金融機関があります。居住期間が短い場合は不利になる可能性があります。
頭金・自己資金
永住権を持たない申請者に対しては、金融機関のリスクを軽減し、申請者の資金力を示すために、より多くの頭金(物件価格の10%~30%以上、加えて諸費用分)が求められることが一般的です。急な送金ではなく、継続的な貯蓄による資金であることを求められる場合もあります。
連帯保証人
永住権を持たない申請者への融資条件として、日本国籍または永住権を持つ配偶者(場合によっては他の親族や個人)を連帯保証人または連帯債務者とすることが多くの金融機関で求められています。これは、主たる債務者が返済不能になったり日本を離れたりした場合に、金融機関が保証人に返済を求めることができるようにするためです。
融資条件(金利・期間)
永住権を持たない申請者は、永住権保持者や日本人と比較して、金利が高めに設定されたり、最長返済期間が短縮されたりするなど、不利な条件を提示される可能性があります。例えば、イオン銀行の非永住者向け商品は、最長返済期間が15年に制限され、基準金利に年1.0%が上乗せされます。
参照:横浜銀行「住宅ローン(新築・購入)」、東京都住宅政策本部「Guidelines for Preventing Tenant-Landlord Disputes」ほか
在留資格の種類が住宅ローン審査に与える影響
就労制限のない在留資格
「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」といった在留資格は、一般的な就労ビザと比較して、より審査に通りやすい傾向があります。これらの資格は、日本に定住するという姿勢を示し、職種変更に関する制限が少ないためです。一部の金融機関では、これらの資格に関連する特定の条件(配偶者を連帯保証人とすることなど)を設けている場合があります。
また、永住権申請のガイドラインにおいても、これらの資格保持者に対しては、通常より短い在留期間で申請が可能となる特例が設けられています。金融機関は、在留資格による社会的地位だけでなく、申請者の将来的な日本での生活の見通しを示す指標としています。
そのため、家族に関連する在留資格(配偶者ビザ、定住者)は、就労ビザよりも将来日本に滞在している可能性が高いと考えることもあります。
就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」など)
この種のビザを持つ申請者は、前述の審査基準にもとづいて評価されます。「高度専門職」の在留資格は、永住権取得までの期間を短縮する優遇措置があるため、高い能力や安定した雇用を示すと見なされる可能性があります。しかし、あくまで永住権の有無によって審査の基準が考慮されるため、依然として通過する可能性は低めです。
在留期間の残りが短い場合
現在保有する在留カードに記載されている在留期間の残りが短い場合、在留資格の更新見込みなどに対する懸念から、審査において不利となる可能性があります。金融機関は、より長い在留期間が残っている、あるいは永住権申請をする予定があるなど、更新や資格変更への明確な道筋が見える申請者を優先して通過させる傾向があります。
永住権申請のガイドラインでも、現在保有する在留資格について最長の在留期間を持っていることが、ポジティブな要素としてあげられています。
参照:Real Estate Japan「How to Buy a Home in Japan as a Foreigner」
永住権(PR)なしで住宅ローンを提供する金融機関
永住権を持たない外国籍居住者への住宅ローン提供は、いくつかの金融機関が取り組んでいます。金融機関の種類によって、取り組み姿勢や条件は大きく異なります。
銀行 | 融資条件 |
スルガ銀行 | ・日本に居住している外国籍の人 ・日本語が堪能な人 ・団体信用生命保険に加入できる人 ・借入れ時点の年齢が18歳以上65歳未満、かつ最終返済時の年齢が82歳未満の方 ・自己資金:要問い合わせ ※原則、保証人不要 |
SMBC信託銀行プレスティア | ・日本に居住している外国籍の人 ・日本語もしくは英語で話せる人 ・借入時満20歳以上かつ完済時満80歳未満であること ・所定の団体信用生命保険に加入すること ・前年度の年収500万円以上 |
SBI新生銀行 | ・日本国内に居住している外国籍の人 ・新生総合口座を開設すること ・借入申込時20歳以上65歳以下完済時80歳未満であること ・団体信用保険に加入すること ・日本国籍を有する、または永住許可のある外国籍の配偶者が連帯保証人となること ・勤続2年以上の正社員または契約社員で、かつ前年度年収が税込300万円以上であること。自営業は業歴2年以上、かつ2年平均300万円以上の所得があること |
イオン銀行 | ・日本国内に居住している外国籍の人 ・就労に制限のない在留資格を持っていること ・借入時満20歳以上満71歳未満かつ完済時満80歳未満 ・所定の団体信用生命保険に加入すること ・勤続6カ月以上、会社経営者、個人事業主は事業開始後3年以上 ・給与所得者および会社経営者は前年度年収100万円以上、個人事業主は前年度所得が100万円以上であること ・日本語が理解できること ・住宅購入金額の20%以上の自己資金が用意できること |
東京スター銀行 | ・日本国内に居住している外国籍の人 ・借入時25歳以上65歳以下かつ完済時に75歳以下 ・所定の団体信用保険に加入すること ・日本語の契約書を理解できる人(配偶者または法律専門家の助けを得て理解できる場合を含む) ・正社員として1年以上、または会社役員・自営業として3期以上の安定した収入があることを証明できる人 ・税込年収400万円以上の人 |
交通銀行(日本支店) | ・在留資格を有する外国籍の人 ・満20歳以上64歳以下 ・年収300万円以上 ・交通銀行の口座を持っている人 |
セゾンファンデックス | ・日本国内に居住している外国籍の人 ・申込時満20歳以上70歳以下かつ完済時85歳未満 ・安定した収入があること ・融資金額:100万~5億円 ・融資期間:5~30年 |
参照:スルガ銀行「外国人のお客さま向け住宅ローン」、イオン銀行「イオン銀行住宅ローン(永住権なし) 商品概要説明書 」ほか
おわりに
外国人従業員にとって、日本で住宅を購入することは、生活の安定と将来設計における大きな一歩です。永住権がない場合、住宅ローンの申請は確かにハードルが高いですが、決して不可能なわけではありません。勤続年数、年収、日本語能力、頭金の準備など、永住権以外の要素を総合的に評価する金融機関も存在します。
採用担当者としては、まず正確な情報を把握し、従業員が置かれている状況や希望を理解することが重要です。その上で、必要な情報提供や、企業としてできる範囲での書類準備の協力などを行うことが、従業員のエンゲージメントを高め、長期的な定着を促進する一助となるでしょう。
外国人従業員がいきいきと活躍できる環境づくりの一環として、住宅に関するサポート体制について検討してみてはいかがでしょうか。
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