【特定技能オンライン申請】担当者向け実践マニュアル
特定技能の申請手続きは、その複雑さから多くの採用担当者様を悩ませています。
しかし、近年導入された「在留申請オンラインシステム」を活用することで、手続きの負担を大幅に軽減できる可能性があります。
この記事は特定技能申請ガイドの【後編】として、「オンライン申請」に特化し、そのメリット・デメリットから利用準備、そして具体的な申請手順までを詳しく解説します。
まだ前編の【特定技能の申請】基本ステップと書類を解説 をお読みでない方は、まずそちらで申請全体の流れをご確認いただくことをお勧めします。
オンライン申請を活用すれば、申請業務の効率化や利便性向上が期待できます。
この記事を通じて、オンライン申請のメリット・デメリット、必要な準備、具体的な申請手順を理解し、スムーズな手続きの実現にお役立てください。
目次
特定技能申請を効率化!「在留申請オンラインシステム」とは?

在留申請オンラインシステムは、これまで原則として地方出入国在留管理庁の窓口で行う必要があった在留資格関連の申請手続きの一部を、インターネット経由で行えるようにしたシステムです。行政手続きのデジタル化推進の一環として導入されました。
特定技能に関しても、以下の主要な手続きがオンライン申請の対象となっています。
- 在留資格認定証明書交付申請: 海外から新たに特定技能外国人を呼び寄せる場合
- 在留資格変更許可申請: 国内にいる留学生などを特定技能に変更する場合
- 在留期間更新許可申請: 特定技能の在留期間を更新する場合
このシステムの活用により、申請にかかる時間や手間を削減し、より効率的に手続きを進めることが可能になります。
参照: 出入国在留管理庁: 在留申請のオンライン手続
なぜオンライン申請を選ぶべき?メリット・デメリットを徹底比較

オンライン申請には多くの利点がありますが、注意すべき点も存在します。導入を検討する際は、メリットとデメリット双方を理解しておくことが重要です。
【オンライン申請のメリット】
- 時間と場所を選ばない: 原則24時間365日、インターネット環境があればどこからでも申請が可能です。(システムのメンテナンス時を除く)
- 窓口での待ち時間ゼロ: 地方出入国在留管理庁の窓口に出向く必要がなくなり、長時間の待ち時間から解放されます。
- コスト削減: 窓口への交通費や、書類を郵送する場合の費用が不要になります。
- 申請状況の確認が容易: システム上で申請の処理状況を確認できます。
- 複数人の一括申請: 利用者(例: 承認を受けた企業の担当者)によっては、複数の申請をまとめて処理できる場合があります。
- 在留カードの郵送受取: 許可後、簡易書留で新しい在留カードを受け取れるオプションがあります。(手数料の納付が別途必要です)
【オンライン申請のデメリット・注意点】
- 事前準備が必要: マイナンバーカードやICカードリーダライタの準備、利用者情報登録など、利用開始までにいくつかの準備が必要です。
- PC・システム操作への慣れ: パソコンやシステムの操作に不慣れな場合は、最初は戸惑う可能性があります。
- 企業による申請取次には承認が必要: 受入れ機関(企業)の職員が本人に代わって申請(申請取次)を行う場合、事前に地方出入国在留管理庁から「申請等取次申出に係る承認」を受ける必要があります。
- 原本提出の可能性: 申請内容によっては、審査の過程で別途、書類の原本提出を求められる場合があります。
- システムメンテナンス: 定期または不定期のシステムメンテナンス中は、システムを利用できません。
オンライン申請 利用資格と事前準備パーフェクトガイド

在留申請オンラインシステムは誰でも利用できるわけではありません。
利用対象者と、利用開始前に必要な準備を確認しましょう。
【オンライン申請を利用できる人(申請者または申請取次者)】
- 申請を行う外国人本人
- 申請人の法定代理人(親権者、未成年後見人、成年後見人)
- 申請人から依頼を受けた弁護士または行政書士(地方出入国在留管理庁への届出が必要)
- 申請人から依頼を受け、地方出入国在留管理庁長官から申請等取次申出に係る承認を受けた「受入れ機関(所属機関)」の職員
- 申請人から依頼を受け、地方出入国在留管理庁長官から申請等取次申出に係る承認を受けた「登録支援機関」の職員
※企業(受入れ機関)がオンライン申請を利用したい場合: 上記の通り、企業の職員が申請取次を行うには、事前に地方出入国在留管理庁へ「申請等取次者に係る承認申出」を行い、承認を得る必要があります。
承認要件や手続きについては、出入国在留管理庁のウェブサイトをご確認ください。
【オンライン申請に必要なものリスト】
- パソコン: 対応するOS、ブラウザがインストールされていること。(スマートフォンやタブレットは不可)
- マイナンバーカード: 電子証明書が格納されたもの。
- 外国人本人が申請する場合:本人のマイナンバーカード
- 企業の職員等が申請取次を行う場合:その担当職員個人のマイナンバーカード
- ICカードリーダライタ: マイナンバーカードを読み取るための機器。(マイナンバーカード読取対応のスマートフォンをリーダライタとして利用できる場合もあります)
- (必要な場合)電子証明書: 利用する認証局から取得。
- 連絡可能なメールアドレス: 申請に関する通知等を受け取るために必要。
- 利用者ID・パスワード: 事前に「在留申請オンラインシステム」で利用者情報登録を行い、取得しておく必要があります。
参照:
- 出入国在留管理庁:在留申請のオンライン手続
- 地方公共団体情報システム機構: マイナンバーカードに対応したICカードリーダライタ一覧
【実践】特定技能オンライン申請 完全ステップ解説

ここでは、在留申請オンラインシステムを利用した申請の基本的な流れを解説します。実際の画面や詳細な操作方法については、必ず出入国在留管理庁が提供する最新のマニュアルをご確認ください。
STEP1:利用準備と利用者情報登録
まず、上記「オンライン申請に必要なものリスト」を準備します。特に、マイナンバーカードとICカードリーダライタがPCで正常に認識されるか確認が必要です。 その後、「在留申請オンラインシステム」にアクセスし、「利用者情報登録」を行います。画面の指示に従い、氏名、メールアドレス、パスワードなどを設定し、利用者IDを取得します。
STEP2:システムへのログイン
利用者情報登録が完了したら、システムのログイン画面から利用者IDとパスワードを入力します。次に、ICカードリーダライタにマイナンバーカードをセットし、画面の指示に従ってマイナンバーカードの電子証明書のパスワード(署名用電子証明書パスワード等)を入力して認証を行い、ログインします。
STEP3:申請情報の入力(例:在留資格変更許可申請)
ログイン後、申請の種類を選択します(例:「在留資格変更」)。画面の指示に従い、申請者(外国人本人)の氏名、国籍、生年月日、在留カード番号などの基本情報、受入れ機関(企業)の情報、現在の在留資格、変更を希望する在留資格(特定技能)、活動内容、申請理由などを正確に入力していきます。
※入力項目は多岐にわたります。入力途中で一時保存することも可能です。こまめに保存しながら進めると安心です。
STEP4:必要書類データの準備とアップロード
後述の必要書類を、あらかじめスキャナ等で読み取り、PDFなどの指定されたファイル形式で準備しておきます。ファイルサイズの上限(例:1ファイルあたり10MB以下など)や、ファイル名の付け方にも注意が必要です。 システムの画面上で、各書類に対応する項目に準備したデータをアップロードしていきます。全ての必要書類を漏れなくアップロードしてください。
【受入れ機関(企業側)が準備する書類】
| 書類名 | 内容とポイント |
| 登記事項証明書 | 法人の場合に必要。最新の情報であることを確認してください。 |
| 役員の住民票の写し | 日本に住所を有する役員全員分が必要です。 |
| 特定技能所属機関概要書 | 法務省が定める所定の様式で作成します。 |
| 直近2年分の決算文書の写し | 損益計算書および貸借対照表。新規設立などの場合は事業計画書などを準備します。 |
| 労働保険関係成立届等の写し | または労働保険料等納入通知書の写しなど、労働保険に加入していることを証明します。 |
| 社会保険料納入状況照会回答票 | または健康保険・厚生年金保険料領収証書の写しなど、社会保険料を適正に納付していることを証明します。 |
| 税に関する証明書 | 法人税、消費税、源泉所得税、地方税(法人住民税・事業税)などの納税証明書。未納がないことを証明する必要があります。 |
| ※提出を省略できる書類について | 過去の申請から内容に変更がない場合など、一部提出を省略できる書類があります。詳細は出入国在留管理庁の公式サイトをご確認ください。 |
◾️ 雇用契約・労働条件に関する書類
| 書類名 | 内容とポイント |
| 特定技能雇用契約書の写し | 省令で定められた基準(日本人と同等以上の報酬など)に適合していることが必須です。 |
| 雇用条件書の写し | 労働基準法第15条に基づく書面です。特定技能雇用契約書と一体として作成することも可能です。 |
【関連】【特定技能】「雇用契約書」の作り方 完全ステップガイド
◾️ 支援体制に関する書類
| 書類名 | 内容とポイント |
| 1号特定技能外国人支援計画書 | 省令で定められた基準に適合し、適切な支援を実施することを明記します。 |
| 支援責任者・支援担当者の書類 | 支援責任者と支援担当者それぞれの履歴書、就任承諾書、役職員であることの証明書が必要です。 |
| (登録支援機関に全部委託する場合) | 登録支援機関登録通知書の写し、特定技能外国人支援委託契約書の写しを提出します。 |
◾️ 事前ガイダンス・費用説明に関する書類
| 書類名 | 内容とポイント |
| 事前ガイダンスの確認書 | 所定の様式を使用し、ガイダンスを実施した事実を確認します。 |
| 支払費用の説明書 | 外国人本人が日本に来るまでに負担する費用がある場合に作成します。 |
| 徴収費用の説明書 | 保証金などを徴収する場合に必要です(原則禁止されています)。 |
◾️ 分野別書類(該当する場合)
| 書類名 | 内容とポイント |
| 分野別追加書類 | 例:建設分野では「建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録証明書」など。 申請する分野の所管省庁の指示を必ず確認してください。 |
STEP5:入力内容の確認と電子署名・申請実行
全ての情報入力と書類データのアップロードが完了したら、申請内容全体が表示されます。誤りがないか最終確認を行いましょう。問題がなければ、マイナンバーカードを用いて電子署名を行います。ICカードリーダライタにマイナンバーカードをセットし、署名用電子証明書のパスワードを入力して署名を実行します。電子署名後、「申請」ボタンをクリックすると、申請データが出入国在留管理庁に送信されます。
STEP6:申請後の対応(手数料納付・結果確認・在留カード受領)
申請が完了すると、申請受付番号が発行されるので、必ず控えておきましょう。
- 審査状況確認: システムにログインすれば、申請の審査状況を確認できます。
- 手数料納付: 審査が完了し、許可となった場合、システム上で手数料納付の案内があります。クレジットカードによるオンライン決済、またはPay-easy(ペイジー)を利用したインターネットバンキング・ATMでの納付が可能です。(在留資格変更許可申請の場合は4,000円)
- 結果通知: 審査結果(許可・不許可)は、登録したメールアドレスにも通知されます。
- 在留カード受領: 許可され、手数料を納付した後、新しい在留カードの受領方法を選択します。郵送(簡易書留)での受け取り、または従来通り地方出入国在留管理庁の窓口での受け取りが可能です。(郵送受取には別途郵送料が必要です)
参照:
- 出入国在留管理庁: 在留申請のオンライン手続>利用マニュアル等
(こちらから最新のマニュアルをダウンロードし、詳細な操作方法をご確認ください)
オンライン申請「困った!」を解決

オンライン申請を利用する中で、疑問やトラブルに直面することもあるかもしれません。よくあるケースとその対処法をまとめました。
Q: システムにログインできません。
A: ID・パスワードが正しいか確認してください。大文字・小文字も区別されます。パスワードを忘れた場合は再設定が必要です。また、システムのメンテナンス中でないかも確認しましょう。マイナンバーカード認証でエラーが出る場合は、ICカードリーダライタの接続やドライバ、パスワード(ロックされていないか等)を確認してください。
Q: マイナンバーカードの電子署名でエラーが出ます。
A: 署名用電子証明書のパスワードが正しいか、有効期限が切れていないか確認してください。パスワードを連続で間違えるとロックがかかるため、市区町村窓口での解除手続きが必要になる場合があります。ICカードリーダライタの接続や設定も再確認しましょう。
Q: 必要書類のファイルがアップロードできません。
A: ファイル形式(PDFなど指定形式か)、ファイルサイズ(上限を超えていないか)を確認してください。ファイル名に特殊な文字が含まれているとエラーになる場合もあります。スキャンした際の解像度が高すぎるとサイズが大きくなるため、適切な解像度でスキャンし直すことも試してみてください。
Q: 手数料の支払い方法がわかりません。
A: 審査完了後、システム上で支払い方法(クレジットカードまたはPay-easy)を選択する案内が表示されます。画面の指示に従って手続きを進めてください。詳細はオンライン申請のマニュアルにも記載されています。
Q: 申請後の審査状況はどこで確認できますか?
A: 在留申請オンラインシステムにログインし、申請案件一覧などから確認できます。審査状況のステータス(例:「申請受付」「審査中」「手数料納付待ち」「許可」など)が表示されます。
上記以外で解決しない場合は、公式の「よくあるご質問」ページを参照するか、「在留申請オンラインシステムヘルプデスク」に問い合わせてみましょう。
参照: 出入国在留管理庁:オンラインでの申請手続に関するQ&A
まとめ:オンライン申請を活用し、効率的な特定技能採用を
今回は、特定技能申請ガイド【後編】として、「在留申請オンラインシステム」を利用した申請方法について、メリット・デメリットから準備、具体的な手順、トラブルシューティングまで解説しました。
オンライン申請は、窓口申請に比べて時間や場所の制約が少なく、手続きを効率化できる大きなメリットがあります。一方で、利用開始には準備が必要であり、システム操作に慣れも求められます。
【後編のポイント】
- オンライン申請は時間・コスト削減に繋がり、利便性が高い。
- 利用にはマイナンバーカード等の事前準備と、企業の場合は承認が必要。
- 手順を理解し、公式マニュアルも参照しながら正確に操作することが重要。
オンライン申請は非常に便利ですが、入力情報の正確性や必要書類の適切な準備が許可を得るための基本であることに変わりはありません。
手続きを進める中で不明な点や困ったことがあれば、ためらわずに公式サイトを確認したり、ヘルプデスクや専門家(行政書士など)に相談したりしましょう。
基本的な申請の流れや必要書類について再確認したい場合はぜひ【前編】もご参照ください。
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