新設された特定技能ビザにより外食業における外国人の雇用環境は変わり始めています。実際、外食業は人手不足なところが多く、さらに訪日観光客対応のためにも、外国人採用に力を入れている企業は少なくありません。

そこで今回は、「外食業の現状」「特定技能ビザ」などについての最新情報をまとめつつ、雇用の方法や注意点について紹介していきます。特に、外食業に従事されている方はぜひ参考にしてください。

外食業の現状は…悪い?

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人手不足や生産年齢人口の減少など、外食業を取り巻く環境は変わりつつあるのです。以下では、「外食業にどのような変化が起き、どのような点が変更になったか」ということについて解説していきます。

人手不足が進んでいる?

外食業は今、深刻な人手不足が問題になっています。便利で扱いやすい最新の機器や、時代と環境に合ったオペレーションシステムの導入など、働きやすさの改善が進むなか、どうして人手不足が進むのでしょうか。

それは、外食業ならではの特徴からくるものです。外食業では、「飲食の調理」「状況に応じた接客」など、現代の機器でも対応できない仕事が多くあります。システム化・機械化による省力化には、限界があるということの裏付けでもあるでしょう。

また、法務省も「外食業の人手不足は深刻な問題である」と述べています。

(参考:法務省『外食業』)

他にも、「和食」をはじめとする、日本文化人気による訪日外国人の増加も考えられます。

外国人に人気って本当?

外食業は、外国人からの人気が非常に高いです。特にアジア圏では特に高くなっています。外国人から人気が高いのは、「手軽に働けるのに給料が高いから」「外国人が多いから働きやすい」といった理由が多いようです。

農林水産省が発表したデータでは、外食業における外国人労働者数は約16.7%であることが分かっています。また、日本での永住者を除くと、ほとんどが「専門的・技術的分野」「留学生」のアルバイトであるとのことです。東京都内の店舗で若い外国人を見かけるのが多いことにも頷けます。

(参考:農林水産省『外国人材の受入れ状況』

しかし、外国人アルバイトを雇用したことがある方はご存知かもしれませんが、留学生は「資格外活動許可」を得なくてはなりませんし、週28時間以内の労働時間しか認められていません。これを超えてしまうと、雇用側が国から指導を受けることになり、会社や店舗の信用を落としかねない事態を招いてしまうこともありますので注意が必要です。

外食業に関わる特定技能とは?

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日本は外食業の人手不足に伴い、「特定技能ビザ」を発行することで対応を図ろうとしています。それでは、特定技能ビザは、就労ビザとはどのように違うのか、さらに、その取得方法についても見ていきましょう。

特定技能ビザとは?

特定技能ビザとは、2019年4月の入管法改正によって新設された在留資格「特定技能1号」のことをさします。特定技能1号の導入より、外食業における外国人雇用の現状が大きく変化するとされているため、各飲食店が対応に迫られているのです。

この特定技能ビザの導入によって、外国人の雇用方法も大きく変わるでしょう。例えば、特定技能ビザを持っていれば、労働時間の制限なく働くことが可能となるので、現時点で制限がある外国人などが切り替えに踏み切るといったケースも増えていくでしょう。

しかし、就労ビザは、定年まで雇用することが可能なのに対し、特定技能ビザには「通算5年であること」という制限があります。長期にわたっての雇用は難しいということになるので、飲食店経営者は5年ごとに雇用する人物を見直す必要がでてくるということになるのです。

また、外食業はこれから更なる人手不足が予想されているため、「特定技能2号」の対象となる可能性もあるかもしれません。そうなれば、滞在の制限が無くなるので、長期にわたっての雇用が可能になります。

必要な試験は?

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「特定技能1号」を取得するための試験は、下記の2つの試験のどちらかに合格しなければなりません。それぞれの内容についても簡単に紹介していきます。

1. 技能水準及び業務上必要な日本語能力「外食業技能測定試験」……試験内容は、「食品衛生に配慮した飲食物の取り扱い」「調理及び給仕に至る一連の業務」などの知識・技能を確認するというもの。試験科目は、「衛生管理」「飲食物調理」「接客全般」。これらを測定する筆記試験となっており、すべての科目をそれぞれ受験する必要があります。

2.日本語能力試験(N4以上)……日本語能力試験は5段階(N1~N5)あり、N4は下から2番目のレベルに位置付けされています。N4は、「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」レベルだとされており、日本語学校に通う学生であれば、比較的容易に取得できるでしょう。

また、上記の2つの試験のいずれかを受験せずとも、「医療・福祉施設給食製 造」の第2号技能を修了している場合、特定技能1号を取得することが可能です。

外食業の特定技能ビザを持つ外国人を雇いたい!

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以下では、外食産業で外国人を雇うための条件や注意点について紹介していきます。

雇用方法はこれ!

まず前提として、外食分野で特定技能1号の外国人を受け入れる事業者は、「日本標準産業分類の飲食店または、お持ち帰り・配達飲食サービス業に分類される事業所」に就労させなければいけません。

具体例は、下記の通りです。

  • ファーストフード店
  • レストラン
  • 食堂
  • 料理店
  • 喫茶店
  • 仕出し料理店
  • テイクアウト専門店
  • 宅配専門店(ピザーラ、ドミノピザなど)

上記が一般的な範囲になります。また、上記のレストランや喫茶店といった店舗で従事することが許されている業務は下記の通りです。

  • 接客
  • 飲食料理
  • 店舗管理
  • 原料の調達
  • 配達作業

など、外食業における業務の全般が従事可能となっています。業務面において、特にダメであるというものはありません。

ここに注意!

注意 表記

外食業に求められる条件に留意しておく必要があります。下記をご覧ください。

  • 食品産業特定技能協議会(仮称)」の構成員になること。
  • 食品産業特定技能協議会(仮称)」に対し、必要な協力を行うこと。
  • 農林水産省又はその委託を受けた者が行う調査等に対し、必要な協力を行うこと。
  • 登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託すること。
  • 1号特定技能外国人に対して、「接待飲食等営業」を営む営業所で就労させないこと。
  • 1号特定技能外国人に対して、「接待」を行わせないこと。

(引用元:法務省『外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針』)

基本的には、普通に雇用していれば問題はありません。農林水産省からの調査協力にしっかりと応じ、風営法に触れたりしなければ問題はない、という認識で大丈夫です。

外食産業の外国人について掴めましたか?

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この記事では、外食産業の現状と外国人の雇用について紹介してきました。まだ制度自体が新しく、特定技能ビザにも年数の制限があることなどから、人手不足の大部分を改善することは難しいでしょう。

しかし、国は「これから5年以内で、約5万人以上の外国人が新しく日本で就労する」という予測のもと動いているため、雇用に関する環境もこれから目まぐるしく変化していくことが予想されます。

外食産業に従事する経営者の方は、この動向を見逃さないようにしていきましょう。