日本の人口は減少傾向で、どこの業界においても人手不足は深刻な問題となっています。

そこで、外国人の雇用を促進するために今年の4月から新しい在留資格「特定技能」が設けられました。特定技能とはどのような在留資格なのか、その対象業種と特定技能の種類まで徹底解説していきましょう。

新たな外国人雇用の切り札”特定技能”とは?

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「特定技能」とは、特定の産業分野における深刻な人手不足を解消するために新たに導入された在留資格で、就労ビザの一種です。これまでは、いわゆる単純労働を目的とした外国人が日本でビザを取得することは難しい状況でした。

今回設けられた在留資格の「特定技能」は人手不足が深刻であると認められた14の業種において、これまで単純労働とみなされていた就労のためのビザを解禁したもので、画期的な制度改正であるとして各界から注目されています。

”特定技能1号”と”特定技能2号”の違いとは?

在留資格名「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。

「特定技能1号」とは、「特定産業分野」に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、「特定産業分野」として介護、ビルクリーニング、農業、漁業、外食業など14種類の業種が指定されています。

一方、「特定技能2号」とは、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格とされており、建設と造船・舶工業の2業種のみに認められているものです。

この1号と2号では在留期間に大きな差があります。特定技能1号は1年、6カ月、または4か月ごとに更新が必要で通算滞在期間の最長は5年となっていますが、特定技能2号は3年、または1年、または6カ月ごとの更新が必要で在留期間の上限はなく、条件を満たせば永住申請や家族の帯同も可能です。

特定技能と技能実習生の違いとは

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特定技能の在留資格は、目的が「就労」ですので、受け入れ国にも制限がなく、雇用にいたるまでの手続きもそれぞれ条件を満たした外国人労働者と受け入れ企業のみで進められるため、人手不足に悩む中小企業が利用しやすい制度になっているといえます。

一方、「技能実習生」は受け入れ目的が「国際貢献」なので、受け入れることができる国が15カ国に限られていたり、相手国の送り出し機関や日本の技能実習機構が関係してきて手続きが非常に複雑であったり、3年の実習後には一旦帰国しなければならないといった条件があり、労働者を雇用する目的では使いやすいものではありません。

特定技能1号を取得する条件とは?

特定技能1号の在留資格を取得するには、つぎの2要件のいずれかをクリアすることが条件となっています。

  • 技能実習2号を良好に終了していること
  • 特定技能評価試験(日本語能力試験を含む)に合格していること

また1つ目の条件の“技能実習2号を終了していること”の条件を満たすには、次の過程が必要です。

  1. 外国人技能実習制度のもと、技能実習生として入国し技能実習を開始する。
  2. 技能実習1号として1年の研修うける。
  3. 技能評価試験(学科と実技)に合格して技能実習2号の資格を得る。
  4. そこから、2年目と3年目の実習を受け、技能実習2号を修了する。

この基準からみてもわかるように「しっかりと日本で3年間実習を行って、知識や技能が身についている」人を、就労ビザの資格取得者と認めているのです。よって、技能実習2号修了時に実施される技能試験に不合格でも良好に3年を終了していれば良いということになります。

ところが、技能実習の受け入れ国でなかったり、技能実習の履修の経験がなかった場合には、もう1つの条件“特定技能評価試験に合格している”という条件を満たす必要があるということになっています。これは次のような試験です。

  • 14分野共通の日本語基礎テスト(独立行政法人 国際交流基金作成)
  • 各業種の所管省庁が定める試験。宿泊業の場合は60分30問マークシート式と5分程度3問の口頭判断試験

※2019年4月に宿泊・介護・外食の3分野についてはすでに始まっていますが、ほかの分野については内容の検討中となっています。(2019年7月現在)

※日本語の試験のうち、介護分野だけは別の介護に関する日本語試験の合格も必要となります。

特定技能2号を取得する条件とは?

特定技能2号は、「熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」なので、すでに特定技能1号を修了していることが条件となるので注意しましょう。つまり日本国内で特定技能に熟練していることが前提となるので1号の取得の時のような日本語試験は実施しません。仕事の技能水準は「試験等で確認」することとされています。この試験は建設業・造船・舶業の2業種のみで2021年度から実施されることになっているのです。

特定技能外国人を雇用するには?

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では、実際に特定技能1号、2号の在留資格を取得した外国人を雇用するにはどうしたらよいのでしょうか。普通の雇用と違うところはどのような点なのか注意しながらその流れについてみていきましょう。

特定技能に変更可能な外国人

特定技能で雇用できる外国人は、次の2つ条件を両方とも満たす人です。

  • 18歳以上であること
  • 技能実習2号を良好に修了しているもしくは、技能試験および日本語試験に合格していること

過去に技能実習2号を良好に修了していれば技能試験および日本語試験を受験することなく特定技能1号の在留資格を申請することができます。日本に技能実習生としてきたことのある人で3年の期間をきちんと終了した人ということになるのです。

技能実習2号を履修していない人の場合は、技能試験および日本語試験に合格していることが条件になります。この場合は日本国内の学校を卒業した人などが想定できるでしょう。雇用しようとする場合は、技能実習2号の修了証か、技能試験および日本語試験の合格証を確認することとなります。なお、技能実習中の人が技能試験および日本語試験を受験することはできません。

特定技能雇用契約の締結

特定技能の在留資格を持つ外国人と結ぶ雇用契約を「特定技能雇用契約」といいます。

特定技能雇用契約には次のようにいくつか定めなければならないことがあります。

  • 従事する業務を明確にすること
  • 労働時間は同業の日本人と同等にすること
  • 報酬は同業の日本人と同等以上にすること
  • 教育訓練や福利厚生などの待遇で差別をしないこと
  • 一時帰国を希望した場合、必要な日数の有給休暇を取得させること
  • 雇用契約終了時の帰国の旅費を労働者が支出できない場合は雇用主が負担すること
  • 健康状態その他生活の状況を把握するために必要な措置を講ずること

このように、外国人労働者に日本人の労働者と比べて不利にならないような配慮が必要となります。

外国人支援計画の策定

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特定技能の外国人を雇用する場合、「1号特定外国人支援計画」を策定しなければなりません。特定技能外国人に対して、職業生活だけではなく、日常生活や社会生活での支援をどのように行うかの支援計画です。これは雇用された外国人が十分理解できる様日本語及び理解可能な言語で作成して、本人に交付しなければなりません。これは次のような内容を定めることになっています。

  • 外国人が入国する前にテレビ電話等で面談を行い必要な情報を提供すること。
  • 入国した時は空港又は港に送迎すること。
  • 生活に必要な賃貸住宅、銀行口座開設等の契約締結の支援をすること。
  • 入国後の国内生活に必要な情報提供をおこなうこと。医療、防犯、防災、相談窓口など。
  • 日本語学習支援を行うこと。
  • 苦情・相談の対応。
  • 外国人と日本人との交流支援。
  • 本人の責でない理由で雇用契約が終了する場合の特定技能雇用支援をすること。
  • 定期的に面談をすること。

以上のように、来日した特定技能外国人労働者が生活に困り、生活上、法律上の問題が発生しないように雇用主が配慮する計画を立て、それを明らかにする必要があります。

在留資格変更申請

既に日本に滞在している外国人の場合は、特定技能雇用契約の締結が終わったら出入国在留管理庁に在留資格の変更申請をします。

特定技能の在留資格を得る条件はそろっているか、再度確認をしましょう。

  • 18歳以上であること。
  • 技能実習2号を修了しているもしくは、技能試験および日本語試験に合格していること。
  • 特定技能1号で通算5年以上在留していないこと。
  • 保証金を徴収されていないこと又は違約金を定める契約を締結していないこと。
  • 自らが負担する費用がある場合、内容を十分理解していること。

在留資格の変更申請は原則として本人が行います。受け入れ機関の職員は地方局長に取次者として承認を受けた場合に限って取り次ぐことができるとされています。

特定技能外国人の雇用開始

これらの手続きが終わったらいよいよ雇用開始となります。雇用の期間中も報酬支払など雇用契約の確実な履行や外国人支援の適切な実行、出入国在留管理庁への届出等を確実に遵守しなければなりません。

もし怠った場合には、出入国在留管理庁から指導や改善命令が出ることもあります。将来にわたって重要な労働力として雇用するのであれば、法律の遵守と外国人本人に対する生活支援をきちんと行っていくことが重要でしょう。

特定技能外国人の雇用について詳しくなりましたか?

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特定技能という新たに設けられた在留資格を活用した外国人雇用の方法について解説してきました。ずいぶん間口は広がり、本格的な外国人雇用の活性化はこれからどんどん進んでいくと予想されます。彼らを「安価な労働力」などと考えずに重要な戦力として大事にし、「共に働く」スタンスをもって、日本の労働人口減少の危機を乗り切っていきましょう。