外国人労働者の永住権が取り消される?再入国許可は?

日本における外国人の在留資格「永住者」(以下、「永住権」)取得は右肩上がりですが、それと同時に問題となるのが永住権の取消です。永住権は一度取得すれば無条件で在留できると思われがちですが、取り消されてしまうこともあるので注意が必要です。
そこで今回は、永住権の取消をケース別にご紹介。また、永住権が取り消されてしまった後に再取得できるのかを解説します。
目次
【意外?】こんなときに永住権は取り消される!ケース別に紹介!
永住権取得の最大のメリットは、在留資格更新手続きが不要となり、在留期間も制限されなくなることです。そのため、永住権取消は在留外国人にとって一大事と言えるでしょう。どんなときに永住権が取り消されてしまうのか、ケース別にご紹介していきます。
そもそも永住権はとるのが難しい?!
<永住権取得のための条件>
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- その者の永住が日本国の利益になると認められること
条件を満たすのは、日本の法律を守り、地域住民として社会に迷惑をかけない生活をし、有する資産や技能から将来的に安定した生活が見込める人です。また、10年以上在留していること、刑罰を受けていないことなども含まれます。さらに、現在の在留資格が最長の在留期間(法務省ガイドランでは3年)であることも条件のひとつ。ただし、永住者や特別永住者の配偶者、定住者、難民認定を受けた人、日本での功績が認められた人などは、原則10年在留の例外となりますので注意しましょう。
では次に、永住権の取消をケース別にご紹介していきます。
ケース①日本国外へ出国した!
再入国許可(みなし再入国許可を含)を得ずに永住権を持つ人が日本国外へ出国すると、その権利は無効となります。なぜなら、永住権は日本に在留するための資格のひとつで、国外へ出てしまえば必要がなくなるからです。このケースはかなり多くなっているので注意しましょう。
日本国外へ出てしまった場合、再入国するには入国審査等を経て、再び在留資格を取得する必要があるのです。しかし、毎回この手続きをするのは外国人だけでなく出入国在留管理庁にとっても大きな負担となるため、「みなし再入国許可」と「再入国許可」の制度を設けています。
みなし再入国許可とは、永住権保持者が1年以内に再入国する際に、再入国許可の取得を省くもの。再入国出国用EDカードにチェックを入れるだけです。ただし、1年以内に再入国しないと永住権は消滅します。
出典元:法務省 入国管理局
一方、再入国許可は1年以上再入国の予定がない人が受けるもので、事前に住居地を管轄する出入国在留管理庁で申請しなければなりません。こちらも再入国許可の期間に再入国しないと永住権は消滅します。
ケース②引っ越したのに届け出を忘れた!
永住権取得後に引っ越しをする場合、転居後14日以内に新住居地の届け出をしなければなりません。14日を超えても転出・転入届が出されなかったり、虚偽の届けが出されたりした場合、在留資格の取消事由に該当するため永住権取消になる可能性があります。引っ越しをする際には、事前にする必要があることをリスト化しておくようにしましょう。
ケース③虚偽の申告してしまった!
在留資格取得から現在に至るまでに、虚偽の申請や書類の偽造等が判明した場合、永住権取消の可能性は高くなるでしょう。これは在留資格の取得や変更、在留期間などの更新、永住権取得など、在留資格に関するすべてが含まれるため、学歴・経歴詐称などが後に発覚すると永住権が取り消されてしまうのです。また、虚偽の申請は、永住権取消だけでなく「在留資格等不正取得罪」となる場合もあるので注意しましょう。
ケース④罪を犯してしまった!
永住権保持者が日本で大きな罪を犯した場合、退去強制の可能性があります。退去強制とは強制的に日本国外に出国されることで、大きな罪とは刑罰法令違反や暴力主義的破壊活動などです。もちろん、永住権も取り消されます。
退去強制に該当する可能性があるのは、以下の通りです。
- 刑事罰で懲役または禁錮に処せられた
- 麻薬及び向精神薬取締役法違反
- 売春防止法違反
飲酒運転や速度違反などの行政処分は永住権取消の対象外です。しかし、飲酒運転による事故で死傷させた場合などは、起訴・裁判から罰金や懲役、禁錮刑などに処されるため、退去強制になる可能性があります。
ケース⑤永住権をとった後に離婚してしまった!
日本人と結婚した外国人は「日本人の配偶者等」という在留資格になりますが、この在留資格は日本人との結婚の継続が条件となるため、離婚あるいは死別した場合には在留資格の更新はできません。一方、永住権は、日本人の配偶者と離婚したり死別したりしても取り消されることはありません。ただし、先述したケースに当てはまる場合は取消になるので注意しましょう。
永住権が取り消されたらどうすればいいの?
では、実際に永住権が取り消された場合はどうすればいいのかを解説していきます。
永住権が取り消されるまでの流れをおさえよう!
<永住権が取り消されるまでの流れ>
- 法務大臣が在留資格の取消を行う場合、まず出入国在留管理庁から「意見聴取通知書」が送付される(緊急の場合は口頭の場合もあり)
- 本人あるいは代理人が「意見聴取通知書」に記載された日時に指定場所に出頭。陳述・証拠提出を行う。正当な理由がなく欠席した場合、在留資格が取り消されることがある。出頭日は調整可能。
- 取消決定後、「在留資格取消通知書」が送付される
- 取消通知書には、30日以内で出国日が指定され、行動範囲等の制限や条件が提示される
- 指定の期間内に出国する
「意見聴取通知書」が送られてきたときには記載された取消事由を確認し、心当たりがない場合は該当しないことを説明・立証しなければなりません。また、事由に該当しても必ず在留資格が取り消されるわけではありません。事由に該当するに至った理由や反省の弁、日本に在留する必要性等が記された資料を提出し、資格を取り消さないように要望したり在留特別許可を要望したりする必要があります。
永住権の再取得は可能なの?
永住権を取り消された後、再取得することは可能です。ただし、特例に該当しない限り、再び在留資格を取得し、10年在留などの要件をクリアする必要があります。また、退去強制や出国命令によって出国した人は、一定期間日本へ再入国できません。さらに、日本国内外で懲役・禁錮刑を受けたり違法薬物に関する罪等に処されたりした人は、日本への再上陸が拒否されます。従って、このような人たちは永住権の再取得は不可能になるでしょう。
永住権の取消について詳しくなりましたか?
永住権の申請が増える一方、永住権の取消も問題となりつつあります。永住権は取得要件も厳しい上、時間もかかります。一度永住権を取り消されてしまうと簡単には再取得できないため、申請の際はもちろん、取得後も十分に注意して生活するようにしましょう。
また永住権を持っている外国人労働者を雇っている企業も、彼らが間違って資格を失わないよう気を配っていきましょう。