『特定技能』で林業の未来を守る。採用担当者・経営者が知っておくべき外国人材活用の全貌
林業分野における深刻な人手不足は、多くの事業者様にとって喫緊の課題ではないでしょうか。後継者不足や従業員の高齢化が進むなか、安定的な労働力の確保は事業継続の生命線です。
その有効な解決策の一つとして、今、在留資格「特定技能」による外国人材の活用が注目されています。
本記事では、林業分野で特定技能外国人の採用を検討されている企業の採用担当者様に向けて、制度の基本から採用手続きの流れ、費用までを網羅的に、そして分かりやすく解説します。
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目次
特定技能「林業」分野の制度概要

特定技能は、国内で深刻な人手不足が認められる産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人材の受け入れを目的とした在留資格です。即戦力として活躍が期待できる点が、他の在留資格との大きな違いです。(参照:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」 )
対象となる業務内容
林業分野の特定技能外国人が従事できる業務は、以下の3つに定められています。これらに付随する関連業務(例:作業道の作設・修繕、機械の整備・点検など)への従事も可能です。
造林: 地ごしらえ、植栽、下刈り、つる切りなど
育林: 除伐、間伐、枝打ちなど
木材の伐出・搬出等(素材生産):伐木、集材、運材、はい積みなど
(参照:農林水産省「特定技能外国人材の受入れ(林業分野)について)
採用できる外国人の要件
特定技能外国人として認められるためには、下記の「技能要件」と「日本語能力要件」の両方を満たす必要があります。
技能要件 :「林業技能測定試験」に合格することが求められます。この試験は、林業の現場で求められる判断力や労働安全衛生に関する知識を測るものです。 ※技能実習2号を良好に修了した外国人は、この試験が免除されます。
日本語能力要件: 以下のいずれかの試験に合格する必要があります。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
- 日本語能力試験(JLPT)のN4以上
(参照:林業分野における特定技能外国人材受入れの手引き) (参照:出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」)
技能実習との主な違い
特定技能と技能実習は、目的や制度設計が異なります。特に、特定技能は「労働力」として扱われ、一定の条件下での転職も可能です。
【メリット】
1. 即戦力人材の確保:作業効率の劇的な向上
特定技能の外国人は、林業に関する技能試験と日本語能力試験をクリアしています。つまり、採用したその日から、簡単な指導だけで現場に入ってもらえる準備ができているのです。
- 得られる未来→経験のない新人を一から育てる必要がなく、ベテラン社員が技術指導に割いていた時間を、より重要な作業に振り向けられます。結果として、全体の作業効率が上がり、これまで人手不足で断っていた仕事も受注できるようになるかもしれません。
2. 長期的な雇用:安定した事業計画の実現
特定技能1号の在留期間は最長5年間。これは、彼らが短期で辞める可能性が低いことを意味します。
- 得られる未来→労働力が安定することで、長期的な視点での事業計画を立てられるようになります。例えば、3年後の大規模な伐採計画や、新たな機材導入のタイミングなどを、人員配置の心配なく計画できます。
3. フルタイムでの直接雇用:チームの一員としての成長
派遣やアルバイトとは違い、特定技能の外国人はあなたの会社の直接雇用となります。
- 得られる未来→会社の社員として、計画的な業務指示や育成が可能になります。定期的な面談や評価を通じて、技術や日本語能力の向上を促すことで、彼らは会社の重要な戦力へと育ち、チームの一員として長く貢献してくれるでしょう。
【デメリット】
1. 受入企業の義務:確実な支援体制の構築という壁
特定技能の外国人を雇用する企業には、彼らが日本で安心して生活できるよう、さまざまな支援を行う義務があります。
- 現れる壁→支援計画の策定・実施には、行政手続きの知識や、外国人の生活習慣への理解が必要です。これを怠ると、最悪の場合、在留資格の取り消しにつながるリスクもあります。
- 乗り越えるための対策→支援業務のノウハウがない場合は、国の登録を受けた「登録支援機関」に委託するのがおすすめです。専門家が代行してくれるため、安心して事業に集中できます。
2. 手続きの煩雑さ:専門知識を要する申請手続きという壁
在留資格の申請には、多くの書類を準備し、複雑な手続きを経る必要があります。
- 現れる壁→提出書類の不備や記載ミスがあると、審査が長引いたり、最悪の場合は不許可になったりする可能性があります。
- 乗り越えるための対策→この手続きは、専門家である行政書士に依頼することで、スムーズに進められます。費用はかかりますが、不許可のリスクを避け、採用までの時間を短縮できる大きなメリットがあります。
3. 支援コストの発生:新たな経費の発生という壁
自社で支援業務を行うのが難しい場合、登録支援機関に委託することになり、その分の費用が発生します。
- 現れる壁→毎月の支援費用は、会社の経費として計上する必要があります。
- 乗り越えるための対策→支援費用は、外国人材がもたらす生産性向上や売上増加と天秤にかけるべき投資です。彼らがもたらす利益は、この支援コストを十分に上回る可能性があります。
【5ステップで解説】特定技能「林業」の採用フローと費用

ここでは、海外にいる外国人を新たに採用する場合の基本的な流れを解説します。
Step1:求人と人材探し
ハローワークや人材紹介会社などを通じて、採用要件に合う人材を探します。
Step2:採用内定と雇用契約の締結
面接等を経て内定を出したら、労働条件などを明示した雇用契約を締結します。
Step3:1号特定技能外国人支援計画の策定
採用する外国人が日本で安定して生活し、働くための支援計画を作成します。この計画は、住居の確保や日本語学習の機会提供、相談・苦情への対応など10項目について定める必要があります。 (参照:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」 )
Step4:在留資格認定証明書の交付申請
必要な書類を揃え、地方出入国在留管理局に在留資格「特定技能」の認定証明書交付を申請します。
Step5:査証(ビザ)発給と入国、就業開始
証明書が交付されたら、現地の日本国大使館・領事館で査証(ビザ)の発給を受け、入国。その後、就業開始となります。
※国内に在住している技能実習修了者などを採用する場合、手続きが一部異なります。
採用にかかる費用内訳
特定技能の外国人材を採用する際の合計費用は、利用するサービスによって大きく変わります。自社ですべて行うか、専門の機関に委託するかで、必要な費用は変わってきます。
パターン1:外部サービスを一切使わない場合
この場合、手続きや支援をすべて自社で行うため、0円に抑えることも可能です。ただし、入国や生活のサポートのために、企業が渡航費や住居費用を負担する場合、その分の費用が発生します。
例:
企業が渡航費(約5万~10万円)と住居初期費用(約10万~20万円)を負担する場合、合計約15万~30万円。
パターン2:外部サービスを一部利用する場合
手続きを行政書士に、人材探しを人材紹介会社に任せる場合です。多くの企業がこのパターンを選びます。
例:
人材紹介手数料:約30万~60万円
在留資格申請費用:約10万~15万円
渡航費+住居初期費用:約15万~30万円(企業負担の場合)
合計:約55万~105万円
パターン3:すべて外部サービスに任せる場合
人材探しから手続き、入国後の支援まで、すべてを専門機関に任せる場合です。手間はかかりませんが、費用は最も高くなります。
例:
初期費用(人材紹介料+申請費用など):約40万~80万円
月額支援料(初月分):約2.5万~5万円
合計:約42.5万~85万円(さらに渡航費や住居初期費用が加わる)
これらの費用はあくまで目安です。正確な費用は、依頼する機関や採用する人数によって変わります。複数のサービスを比較し、自社の予算とニーズに合ったプランを選ぶことが大切です。
よくある質問

特定技能「林業」の採用に関して、企業の採用担当者様から多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1. 特定技能外国人の受け入れ人数に上限はありますか?
A1. 林業分野において、企業一社あたりの受け入れ人数に上限はありません。 ただし、受け入れる外国人全員に対して、支援計画の適切な履行や、日本人従業員と同等以上の報酬を支払うといった義務を果たす必要があります。
※なお、建設分野と介護分野については、別途人数枠が設定されています。
(参照:特定技能制度に関するQ&A | 出入国在留管理庁)
Q2. 特定技能外国人の社会保険や労働保険の加入は必要ですか?
A2. はい、必要です。 特定技能外国人も日本人従業員と同様に、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険といった各種保険の適用対象となります。国籍を理由に加入させないことは法律で認められていません。
(参照:厚生労働省「外国人雇用はルールを守って適正に」 )
Q3. 賃金(給与)の水準は、どのように設定すればよいですか?
A3. 特定技能外国人の報酬額は、同じ業務に従事する日本人従業員の報酬額と同等以上であることが法律で定められています。経験や技能が同程度である日本人と比較し、同等以上の給与水準に設定してください。外国人であることを理由に、不当に低い賃金を設定することは認められません。
(参照:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」 )
Q4. 複数の事業所や現場で作業させることは可能ですか?
A4. はい、可能です。 ただし、その場合は雇用契約書(または雇用条件書)に、就業場所として作業の可能性がある全ての事業所や現場を明記しておく必要があります。契約書に記載のない場所で就業させることはできませんので、ご注意ください。
まとめ

特定技能「林業」は、人手不足に直面する事業者様にとって、事業の維持・発展を支える強力な一手となり得ます。
採用を成功させる鍵は、制度を正しく理解し、受入れ後の支援体制を確実に構築することです。本記事で解説した内容を基に、まずは信頼できる人材紹介会社や登録支援機関に相談し、自社の状況に合った採用計画の検討から始めてみてはいかがでしょうか。
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