【フィリピン人特定技能採用】なぜあの会社はフィリピン人を即戦力として採用できたのか? MWO、DMWの手続きについても解説!
人手不足が深刻化する日本国内において、即戦力となる外国人材の確保は多くの企業にとって喫緊の課題です。中でも「特定技能」制度は、一定の専門性・技能を持つ外国人材の受け入れを促進する重要な仕組みです。
数ある国籍の中でも、なぜ今「特定技能」でフィリピン人材が注目されているのでしょうか。
本記事では、客観的なデータに基づきフィリピン人材を採用する優位性を解説するとともに、採用担当者が知るべき具体的な手続き、費用、期間の全てを網羅的かつ簡潔に解説します。
目次
【データで比較】他国籍と比べてわかるフィリピン人材の優位性

特定技能制度においてフィリピン人材を選ぶべき理由は、情緒的なものではなく、客観的なデータによって裏付けられています。出入国在留管理庁の最新データによると、2025年6月末時点での特定技能1号在留外国人数は333,123人にのぼり、過去最高を記録しました。国籍別に見ると、ベトナムが最も多く、次いでインドネシア、そしてミャンマー、フィリピンが続きます。
【国籍・地域別】特定技能在留外国人数(令和7年6月末現在)
フィリピンは人数で4位ですが、他の国と比較して特筆すべき強みがあります。
- 高い英語力: フィリピンの公用語は英語であり、多くの国民が堪能です。これにより、現場でのコミュニケーションやマニュアルの理解がスムーズに進むという大きな利点があります。
- ホスピタリティと学習意欲: 国民性としてホスピタリティが高く、介護や飲食サービスといった分野でその特性が活かされます。また、親日的で日本語学習への意欲が高い人材が多いことも特徴です。
- 政府による厳格な管理: 後述するフィリピン政府の海外雇用に関する厳格な手続きは、労働者の保護と同時に、送り出す人材の質を一定水準以上に保つ役割も担っています。
これらの点から、特にコミュニケーションとサービスの質を重視する企業にとって、フィリピン人材は極めて有力な選択肢といえます。
特定技能フィリピン人採用前に知っておかなければならない知識

特定技能フィリピン人採用に関わる主要政府機関
フィリピン人を特定技能人材として採用する際、日本の入管(出入国在留管理庁)以外にも、フィリピン本国の政府機関が重要な役割を担います。
採用ロードマップで登場する主要機関の役割は以下の通りです。
| 略称 | 正式名称(日本語) | 採用プロセスにおける主な役割 |
| MWO | 移住労働者事務所 (Migrant Workers Office) | 日本国内での手続き窓口。雇用契約がフィリピン人保護の観点から適正であるかを審査し、契約を認証する。 |
| DMW | 移住労働者省 (Department of Migrant Workers) | フィリピン本国での最終承認機関。送出機関を監督し、新規入国者に対し海外就労許可証(OEC)の発行を管理する。 |
| 送出機関 | フィリピン政府認定の海外人材紹介機関 | 採用活動の代行、フィリピン人応募者の募集・選抜、DMW/MWOへの申請サポートを行う。 |
MWOとDMWの違い
MWOは、日本国内にあるフィリピン政府の出先機関として機能します。主な役割は、日本の受入れ企業とフィリピン人労働者の間で結ばれた雇用契約を認証(Authentication)することです。これは、労働者の権利を保護するための最初の関門となります。
一方、DMWはフィリピン本国に存在する親機関であり、すべてのフィリピン人出稼ぎ労働者(OFW)の海外就労を最終的に監督・許可します。新規入国者が日本で働くためには、DMWの手続きを経て、海外就労許可証(OEC)を取得する必要があります。つまり、MWOの認証は、DMWによる最終的な出国許可を得るための重要なステップと位置づけられます。
(参照:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ)
特定技能フィリピン人採用の費用と期間がわかる全ロードマップ

フィリピン人採用の手続きは、採用する人材が既に日本に在住しているか(ケース1)、フィリピン本国から新規で呼び寄せるか(ケース2)で大きく異なります。ここではそれぞれの流れを簡潔に説明していきます。
ロードマップ全体像(期間の目安)
| ケース | 在留状況 | 期間の目安 | MWO/DMWの主な関与のタイミング |
| ケース1 | 国内在住者(在留資格変更) | 約2〜4ヶ月 | 在留資格変更後(主にMWOへの認証手続き) |
| ケース2 | 海外在住者(新規入国) | 約6〜10ヶ月 | 採用活動前とCOE交付後(MWO/DMWの両方) |
ケース1:国内在住者(在留資格変更)を採用する場合
主に、技能実習や留学など、別の在留資格で日本に滞在している人材を特定技能に切り替える際の手順です。このケースは、すでに日本での生活や文化に適応済みの人材であるため、即戦力として期待でき、海外からの新規採用(ケース2)に比べて採用期間を大幅に短縮できるという大きなメリットがあります。
| ステップ | 期間の目安 | 主な流れとポイント |
| 1 | 1ヶ月 | 求人・面接・内定:自社求人や人材紹介を利用し、候補者と面接。特定技能の技能・日本語レベルを満たしているか確認します。 |
| 2 | 締結時 | 各種契約締結:候補者と雇用契約を、日本の登録支援機関と支援委託契約を締結します。 |
| 3 | 約1〜3ヶ月 | 在留資格変更許可申請(日本側):企業の所在地を管轄する出入国在留管理庁に対し、「特定技能」への在留資格変更許可を申請します。 |
| 4 | 随時 | MWOへの手続き(フィリピン独自):在留資格の変更が許可された後、雇用契約書などをMWO(駐日事務所)に提出し、フィリピン政府の認証を受けます。 |
| 5 | 就労開始:全ての手続きが完了し、在留カードに「特定技能」が記載された後、就労を開始できます。 |
ケース2:海外在住者(新規入国)を採用する場合
フィリピン本国から新たに人材を呼び寄せる手順です。このケースは、国内では見つけにくい若年層を含め、特定技能の資格を持つ大規模な候補者層から人材を募集できるというメリットがあります。ただし、フィリピン政府側の手続き(DMW)が追加されるため、採用期間は長くなります。
| ステップ | 期間の目安 | 主な流れとポイント |
| 1 | 締結時 | 送出機関・登録支援機関との契約:DMW認定の送出機関(フィリピン側)と、日本の登録支援機関(日本側)の両方と契約を結びます。 |
| 2 | 約1ヶ月 | MWOへの手続き(契約の認証):MWO(駐日事務所)に対し、求人情報や雇用契約書などを提出し、フィリピン側の審査・認証を受けます。(新規入国の場合は原則、COE申請前に実施が必要です) |
| 3 | 約1~2ヶ月 | **求人・面接・内定**:送出機関を通じて候補者の募集・選定を行い、面接を経て内定を出します。 |
| 4 | 約1~3ヶ月 | 在留資格認定証明書(COE)交付申請(日本側):MWOの認証後、日本の出入国在留管理庁にCOEの交付を申請します。 |
| 5 | 約1ヶ月 | フィリピン本国での手続き(DMW):COEが交付されたら、フィリピンのDMW(移住労働者省)で手続きを行い、海外就労許可証(OEC)を取得します。 |
| 6 | 随時 | 来日・就労開始:現地の日本大使館・領事館でビザを取得し、来日。空港で在留カードの交付を受け、就労開始となります。 |
【概算一覧】特定技能フィリピン人採用にかかる全費用

採用費用は、依頼する機関や採用形態によって大きく変動します。以下はあくまで一般的な目安としてご参照ください。
採用担当者が押さえるべき3つの最新注意点

注意点1:OECの取得に注意
OEC(海外就労許可証)は新たにフィリピン人を現地から受け入れる際にはもちろん必要ですが、すでに日本で就労していても、フィリピンへ一時帰国後に再度出国する際には、新たなOECが必要になる場合があります。「一時帰国したら、日本の職場に戻って来れなくなった」ということがないように、事前に覚えておきましょう。
注意点2:「特定技能2号」への移行で長期雇用が可能に
特定技能1号の修了者は、より熟練した技能が求められる「特定技能2号」へ移行できる可能性があります。2号になると在留期間の更新に上限がなくなり、要件を満たせば家族の帯同も可能です。これにより、人材の長期的な定着と、将来的な現場リーダーとしての活躍が期待できます。
(参照:出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について」 )
注意点3:フィリピン人材の採用・定着に強い登録支援機関を選ぶ
フィリピン独自のルールに対応するため、登録支援機関選びは極めて重要です。選定の際は、以下の点を確認することをお勧めします。
- フィリピン政府認定の送出機関と正式な提携があるか
- MWOへの申請代行実績が豊富か
- 英語やタガログ語に対応できるスタッフが在籍しているか
まとめ:計画的な準備で、質の高いフィリピン人材の採用を成功させる

本記事では、特定技能制度におけるフィリピン人材採用の優位性から、具体的な手続き、費用までを解説しました。
フィリピン人材の採用は、他国籍とは異なる独自の手続きが必要であり、時間とコストを要するのは事実です。しかし、そのプロセスを経て採用に至る人材は、質の高い労働力として貴社の事業に大きく貢献する可能性を秘めています。
成功のカギは、正確な情報に基づいた計画的な準備と、フィリピンの制度に精通した信頼できるパートナー(登録支援機関)選びにあります。
この記事が、貴社の外国人採用戦略の一助となれば幸いです。
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