近年、多くの企業、特に人手不足が深刻化する飲食業、建設業、運輸業などの現場において、外国人材の活躍が不可欠となっています。

しかし、日本人採用とは異なる法的な規制や文化的な配慮が必要となるため、注意点を十分に理解しないまま採用を進めると、意図せず法令違反を犯してしまったり、採用後のミスマッチや早期離職に繋がったりする可能性があります。

この記事では、採用プロセスごとに押さえておくべき重要な注意点を、行政機関の情報をもとにわかりやすく解説します。適切な知識を身につけ、円滑で確実な外国人採用を実現するための一助となれば幸いです。

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【採用計画・募集段階】の注意点

在留資格と就労制限の基礎知識:雇い入れ可能な人材か?

まず最も重要なのは、採用候補者が日本で就労できる在留資格を持っているか、そしてその在留資格で認められている範囲内の業務内容・時間であるかを確認することです。特にアルバイト・派遣で採用するケースが多い「留学」や「特定活動(ワーキングホリデーなど)」、「永住者」、「定住者」などの在留資格について、就労の可否や条件を正しく理解しておく必要があります。

就労が原則認められない在留資格

「短期滞在」、「研修」、「文化活動」など。

就労に制限がない在留資格

「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の資格を持つ方は、原則として日本人と同様にどのような職種でも就労できます。また、労働時間の制限もありません。

定められた範囲内での就労が認められる在留資格

「技術・人文知識・国際業務」、「技能」、「特定技能」など。これらの資格は、許可された業務内容でのみ就労可能です。しかし、技能実習制度は2027年に育成就労が施行されるに伴って廃止されます。

資格外活動許可が必要な在留資格

「留学」、「家族滞在」など。これらの資格を持つ方をアルバイトとして雇用する場合、原則として資格外活動許可を得ていることが必須です。留学生の場合、原則週28時間以内(長期休暇中は1日8時間、週40時間以内)という時間制限があります。

募集要項作成時の注意点:差別のない、わかりやすい情報を

求人情報を出す際には、国籍などを理由とした差別的な取り扱いを行わないことが法律で定められています。また、外国人応募者が理解しやすいように、業務内容、労働条件、福利厚生などをやさしい日本語で記載することが重要です。必要に応じて、イラストや多言語での対応も検討しましょう。

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【選考・面接段階】の注意点

最重要!在留カード・パスポートの確認:不法就労を防ぐ

面接時には、必ず応募者本人に在留カードの提示を求め、その原本を確認してください。コピーの保管だけでは確認したことになりません。確認すべき主なポイントは以下の通りです。

  • 氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地
  • 在留資格、在留期間(満了日)
  • 就労制限の有無
  • 資格外活動許可欄(「留学」や「家族滞在」の場合)
  • 在留カードの有効期限

【注意】 在留カードには偽造・変造されたものが出回っています。不審な点があれば、出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」ウェブサイトで、提示された在留カード番号が有効かを確認することも有効な手段です。

面接時のコミュニケーション:言語や文化への配慮

面接では、応募者の日本語能力に応じて、話すスピードを調整したり、簡単な言葉を選んだりする配慮が求められます。必要であれば、事前に質問項目を伝えたり、通訳を用意することも検討しましょう。また、文化的な背景の違いから、日本的な面接の受け答えに慣れていない場合もあります。応募者の経歴やスキル、意欲を正確に把握できるよう、多角的な質問や具体的なエピソードを質問する工夫が必要です。

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【採用決定・入社手続き段階】の注意点:法に則った確実な手続きを

雇用契約書・労働条件通知書の作成・交付:明確な条件提示

外国人であることを理由に不利な条件を設定することはできません。日本人と同様に、労働基準法に基づき、賃金、労働時間、休日、就業場所、業務内容などを明記した労働条件通知書を必ず交付してください。その際、本人が内容を正確に理解できるよう、母国語での併記や、やさしい日本語を用いることが強く推奨されます。雇用契約書も同様です。

必要な行政手続き:ハローワークへの届出義務

外国人を雇用した場合(または離職した場合)、事業主は原則として、その氏名、在留資格、在留期間などをハローワークに届け出ることが義務付けられています(外国人雇用状況届出)。これは、雇用保険の加入対象とならないアルバイト(週20時間未満勤務など)の場合でも必要です。届出は、雇い入れ・離職の翌月の10日までに行う必要があります。

社会保険・労働保険の加入手続き:日本人と同様に

労働時間や日数などの加入要件を満たす場合は、日本人と同様に、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険への加入手続きが必要です。要件を満たすにも関わらず未加入の場合、罰則の対象となる可能性があります。

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【入社後・就労中】の注意点:定着と活躍を支援するために

初期研修・オリエンテーション:ルールと文化の理解促進

日本の労働慣行、職場のルール(勤怠管理、報告・連絡・相談など)、安全衛生に関する事項、社内設備の使い方などを丁寧に説明します。特に、日本の「時間厳守」の文化や、業務上の指示・報告の仕方などは、誤解が生じやすいため、具体的に伝えることが大切です。また、ゴミの分別など、日本の生活ルールについても情報提供すると親切でしょう。

コミュニケーション円滑化の工夫:言葉と心の壁をなくす

日常業務におけるコミュニケーションでは、「やさしい日本語」を心がけ、必要に応じて図や写真、ジェスチャーなどを活用しましょう。指示が正確に伝わっているか、都度確認することも重要です。また、日本人従業員に対しても、異文化理解研修などを行い、受け入れ側の意識を高めることも有効です。

労務管理上の注意点:文化的な配慮も忘れずに

勤怠管理や給与計算は、日本人従業員と同様に正確に行います。宗教上の理由による食事や礼拝への配慮、ラマダン(断食月)期間中の体調変化への気配りなど、可能な範囲での柔軟な対応が、信頼関係の構築に繋がります。ハラスメント防止に関する研修や相談窓口の設置も重要です。

定着支援のためにできること:孤立させない環境づくり

慣れない土地での生活や仕事には不安がつきものです。定期的な面談の実施、日本語学習の機会提供、社内イベントへの参加促進、地域の外国人支援団体や行政サービスの紹介など、孤立を防ぎ、安心して働き続けられる環境を整えることが、定着率の向上に繋がります。

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【要注意】不法就労助長罪のリスクと罰則:知らなかったでは済まされない

外国人採用において最も注意すべきことの一つが「不法就労助長罪」です。これは、以下のような場合に事業主が問われる可能性がある犯罪です。

  • 日本での就労が認められていない外国人を雇用した場合
  • 在留資格で認められた範囲を超えて働かせた場合(例:留学生を週28時間超えて働かせる)
  • 不法滞在者であることを知りながら雇用した場合

たとえ事業主が「知らなかった」としても、在留カードの確認を怠るなど、必要な注意を払わなかった場合には、過失であっても処罰の対象となりえます。罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金と非常に重く、企業の社会的信用にも大きなダメージを与えます。

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おわりに

外国人アルバイト・派遣の採用は、企業にとって大きな力となる可能性を秘めています。

しかし、その力を最大限に活かすためには、採用プロセス全体を通して、法律の遵守、手続きの確実な実施、そして文化や習慣の違いへの配慮が不可欠です。今回解説した注意点を一つひとつ確認し、適切な準備と対応を行うことで、法令違反のリスクを回避し、採用した外国人材が安心して能力を発揮できる環境を整えることができます。

もし、手続きや判断に不安がある場合は、ハローワーク、出入国在留管理庁、あるいは社会保険労務士や行政書士などの専門家、外国人材採用に詳しい支援機関へ相談することも効果的です。

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