特定技能制度を活用して外国人材の採用を進める上で、避けては通れないのが「義務的支援」です。この支援体制を自社で構築すべきか、あるいは専門の登録支援機関に委託すべきか、多くの採用担当者様が頭を悩ませるポイントではないでしょうか。

コスト、担当者の負担、法令遵守のリスクなど、考慮すべき点は多岐にわたります。判断を誤ると、安定した雇用や人材の定着が難しくなるばかりか、行政指導の対象となる可能性も否定できません。

本記事では、特定技能外国人の雇用に必須である「義務的支援」について、「自社支援」と「登録支援機関への委託」のどちらを選択すべきか、双方のメリット・デメリット、費用感を徹底的に比較・解説します。この記事を読めば、貴社にとって最適な支援体制を判断するための、明確な指針を得ることができます。

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まずは確認!特定技能で必須の「義務的支援」とは?

特定技能における「支援」とは、特定技能外国人が日本で安定的かつ円滑に活動できるよう、受入れ機関(企業)が実施すべきサポート全般を指します。

この支援は任意ではなく、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)で定められた企業の義務です。受入れ機関は、作成した「1号特定技能外国人支援計画」に基づき、下記の10項目にわたる支援を実施しなければなりません。

【義務的支援 全10項目】

  1. 事前ガイダンスの提供
  2. 出入国する際の送迎
  3. 住居確保・生活に必要な契約の支援
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 公的手続等への同行
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 相談・苦情への対応
  8. 日本人との交流促進の支援
  9. 転職支援(受入れ側の都合で雇用契約を解除する場合)
  10. 定期的な面談の実施、行政機関への通報

(参照:1号特定技能外国人支援・登録支援機関について | 出入国在留管理庁

これらの支援を全て、あるいは一部を外部に委託できるのが「登録支援機関」制度です。

【比較表】自社支援 vs 登録支援機関への委託

自社で支援を行う場合と、登録支援機関へ委託する場合の主な違いを以下の表にまとめました。一目で比較できるよう整理していますので、ご検討の材料としてお役立てください。

比較項目自社支援(特定技能所属機関)登録支援機関への委託
外部コストなし(直接的な委託費用は発生しない)発生(月額費用などがかかる)
内部コスト高い(支援担当者の人件費、業務工数)低い(担当者の負担は連絡・調整業務が主)
担当者の負担大きい(計画作成、多岐にわたる支援実施、記録)小さい(コア業務に集中できる)
専門性・ノウハウ社内での蓄積が必要高い(専門家による安定した支援が可能)
法令遵守のリスク自社で負う(法改正のキャッチアップが必須)低い(専門家が最新情報に基づき対応)
言語対応自社で対応可能な範囲に限られる複数の言語に対応可能な場合が多い
社内への情報共有スムーズに行いやすい連携の仕組みづくりが必要
支援の質担当者のスキルや経験に依存する契約する機関の質に依存する

[自社で] or [登録支援機関に委託する]義務的支援を行うメリット・デメリット

比較表の内容を基に、自社で支援体制を構築する場合の具体的なメリットとデメリットを掘り下げて解説します。

メリット

  • 外部委託コストの削減:登録支援機関へ支払う月々の委託費用が発生しないため、直接的な外部コストを抑えることができます。
  • 外国人材との密な関係構築:自社の社員が直接、生活面の相談や手続きのサポートを行うことで、外国人材とのコミュニケーションが活発化します。信頼関係が深まり、職場定着への好影響が期待できます。
  • 支援ノウハウの社内蓄積: 支援を自社で完結させる過程で、外国人材の受け入れに関する知見やノウハウが社内に蓄積されます。将来的に受け入れ人数を拡大していく上での大きな資産となり得ます。

デメリット

  • 支援担当者の大きな負担:義務的支援は多岐にわたるため、担当者には相応の業務負担がかかります。本来のコア業務と兼任する場合、業務過多に陥る可能性があります。
  • 専門知識と情報収集が必須 入管法をはじめとする関連法令は、改正されることがあります。常に最新情報を収集し、適切に対応し続ける必要があり、怠ると「支援計画の不履行」と見なされるリスクがあります。
  • 多言語対応の壁: 支援対象の外国人が話す言語で、生活や手続きに関する複雑な内容を正確に伝える必要があります。対応できる人材が社内にいない場合、円滑な支援は困難です。
  • 見えない内部コストの発生: 支援担当者の人件費や業務時間、各種手続きにかかる時間など、直接的な支払いではない「内部コスト」が発生することを忘れてはなりません。

次に、登録支援機関へ支援を委託する場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

  • 担当者の負担軽減とコア業務への集中:専門的かつ煩雑な支援業務を専門家に任せることで、採用担当者は本来の採用活動や労務管理といったコア業務に集中できます。
  • 法令を遵守した適正な支援の実施:登録支援機関は、出入国在留管理庁長官の登録を受けた専門機関です。法改正にも迅速に対応するため、コンプライアンスリスクを大幅に低減できます。
  • 専門家による安定した支援体制:多言語対応はもちろん、不動産契約や公的手続きなど、専門知識が必要な場面でもスムーズなサポートが期待できます。これにより、外国人材は安心して日本での生活をスタートできます。
  • 受入れにかかる事務手続きの代行:煩雑な支援計画の作成や各種届出書類の準備なども代行してくれる場合が多く、事務的な負担も軽減されます。

デメリット

  • 外部委託コストの発生:当然ながら、委託費用が発生します。費用は支援内容や機関によって様々ですが、外国人材1名あたり月額2万円~5万円程度が一般的な相場とされています。ただし、これは公的に定められた金額ではなく、あくまで目安です。
  • 支援の質が機関に依存する:委託する登録支援機関の質によって、支援のレベルが左右されます。安さだけで選ぶのではなく、支援内容や実績を慎重に見極める必要があります。
  • 社内にノウハウが蓄積されにくい:支援業務を外部に一任するため、自社に外国人材のサポートに関する具体的なノウハウが蓄積されにくいという側面があります。

結論:こんな企業は自社支援向き!こんな企業は委託向き!

これまで見てきたメリット・デメリットを踏まえ、どのような企業がどちらの選択肢に向いているか、具体的な指針を提示します。

【自社支援】が向いている企業

  • 既に外国人材の受入れ実績が豊富で、支援ノウハウや多言語対応可能な人材が社内にいる企業。
  • 支援を専門に行う担当部署や専任担当者を配置できる、人的リソースに余裕のある企業。
  • 受け入れ人数が数十名単位と非常に多く、スケールメリットを活かして内製化した方がトータルコストを抑えられる企業。

【登録支援機関への委託】が向いている企業

  • 初めて特定技能外国人を受け入れる企業。
  • 支援に割ける社内のリソース(人・時間・ノウハウ)が限られている企業。
  • 法令遵守を徹底し、コンプライアンスリスクを確実に低減したい企業。
  • 受け入れ人数が比較的少なく、専任担当者を置くと非効率になってしまう企業。

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まとめ

特定技能における義務的支援の体制構築は、「コスト」「社内リソース」「法令遵守」という3つの視点から、自社の状況を客観的に分析することが成功の鍵となります。

  • 自社支援は、コストを抑えつつ社内にノウハウを蓄積できる可能性がある一方、担当者の負担と責任が大きくなります。
  • 登録支援機関への委託は、コストがかかるものの、担当者の負担を軽減し、専門家による適正な支援でコンプライアンスリスクを低減できます。

どちらか一方に決めるだけでなく、例えば「住居確保や初期の生活オリエンテーションなど、専門性が高い部分だけを登録支援機関に委託する」といった一部委託も選択肢の一つです。

本記事が、貴社にとって最適な支援体制を構築し、外国人材の定着と活躍を実現するための一助となれば幸いです。

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