小売業で外国人雇用をするには? 在留資格や外国人を雇用するメリット・ポイントについて解説!
少子高齢化が進むなか、小売業では人手不足が深刻化しています。
こうしたなかで、外国人採用を始めたいと考えている企業は少なくありません。
本記事では小売業で外国人を雇用するメリットや、外国人が小売業で働くのに必要な在留資格を解説します。
目次
日本の小売業は常に人材が不足している
はじめに、小売業の人手不足の現状について簡単におさらいしておきましょう。
令和6年の7月発表によると、小売業では51%の企業が「正社員不足」を感じています。
令和6年上半期には人手不足を原因とする倒産数が全業界で182件に達し、過去最多を更新し続けています。
人手不足の原因は「休暇の取りづらさ」「低賃金」「人間関係のトラブル」などが挙げられます。
こうしたなか、政府は労働環境の改善に加えて「外国人労働者の受け入れ」を推進しています。
小売業で雇用可能な在留資格
小売業で雇用できる外国人の在留資格は以下になります。
「身分系」
「資格外活動許可」
「特定活動ビザ」
「技術・人文知識・国際業務」
それぞれくわしく解説します。
① 身分系
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者
身分系と呼ばれるこれら4つの在留資格は就労制限がないため、日本人と同じように雇用が可能です。
つまり、単純労働を含めた小売業すべての業務において就労ができます。
② 資格外活動許可
留学・家族滞在
これら3つの在留資格は、就労により収入を得ることは原則認められていません。
ただし出入国在留管理局で「資格外活動許可証」を取得している場合は、条件付きでアルバイト雇用が可能になります。
たとえば「1週間の労働時間が28時間以下であること」という労働時間の制限がありますが、これを守れば接客・レジ・商品陳列などの単純労働を含めた小売業全般の業務に従事できます。
③ 特定活動ビザ
ワーキングホリデー・外交官等の家事使用人・EPAに基づく看護師、介護福祉士候補者
2020年2月に改定された、日本の大卒で高度な日本語能力を有する外国人が取得可能なビザです。
小売業においては、仕入れ、商品企画や通訳を兼ねた接客販売業務が可能です。
商品の陳列や品出し作業、店舗の清掃も付随業務として認められていますが、これらの業務にのみ従事するのは認められていないので注意が必要です。
就労の可否や詳細は在留カードに記載されているので、必ず確認するようにしましょう。
④ 技術・人文知識・国際業務
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で小売業に従事する外国人は、専門的な知識や技術が求められる職種(マーケティング、経営企画、IT管理、貿易業務など)である必要があります。
単純労働とみなされる業務は許可がおりないので、注意しましょう。
通常は大学卒業者が対象であり、学歴がない場合は10年以上の実務経験が必要とされます。給与や労働条件は日本人と同等以上とし、雇用契約内容が明確であることが求められます。
申請には業務内容の説明書、履歴書、学歴証明書などの書類が必要です。
小売業で外国人を雇用するメリット
観光客が急増し、小売業におけるターゲットの中心となっている今、外国人を雇用するメリットは豊富です。
以下でいくつかご紹介します。
メリット① 多様な言語・観光客対応
外国人スタッフを雇用することで、英語や中国語、韓国語など複数の言語に対応でき、訪日外国人観光客に対するサービスが向上します。
実際に外国人が日本でお店を選ぶときに、外国語に対応しているかどうかを基準にすることがほとんどです。
とくに、観光地や都市部では、外国人観光客が急増しており、こうしたニーズに応えることで、店舗の利用頻度や売上の拡大が見込まれます。
さらに、言葉の壁が低くなることで、観光客が安心して商品を購入でき、サービスの満足度も向上します。訪日客に対するおもてなしを強化することで、リピーターの増加や口コミ効果も期待できます。
メリット② 若い労働力を確保して離職率を下げられる
最近では小売業でもDXが進み、スタッフがロボットや管理システムを活用する機会が増えています。
そのため、新しい技術やその応用方法への理解がはやい若者を採用したいと考える企業が増加中です。
少子高齢化により若い日本人労働者数は減少し、とくに小売業界の企業求人への応募者は高齢化しています。
しかし日本人の現状とは異なり、外国人労働者の数は「20〜29歳」の割合が最も多いです。
そのため若い外国人労働者を採用することで長期的に働ける人材を確保でき、小売業の企業存続に良い影響を与えることが期待できます。
参考:厚生労働省 在留資格別×年齢別にみた外国人労働者数の推移
メリット③ 異文化理解によるサービス改善
異なる文化背景を持つ外国人スタッフの視点を取り入れることで、従来にはない消費者のニーズに応える商品やサービスを提供できます。
例えば、外国人観光客に人気のある商品や、現地文化に配慮したサービスの企画が可能になります。
文化の違いを理解することで、日本人顧客とは異なる価値観を持つ外国人顧客に対してもターゲティングを行い、より適切な接客が行えるでしょう。
また、外国人スタッフのフィードバックを通じて、店舗全体のサービスレベルが向上し、多様な顧客に支持される店舗づくりが進みます。
メリット④ 短期間で大量募集できる
日本で暮らす外国人の中には「働きたくても働き口が見つからない」という人が多くいます。
たとえば、外国人留学生の就職に関する調査によると、日本での就職を希望している人のうち2割が就職先を見つけられていません。
その理由として最も多かった回答が「外国人向けの求人が少ない」ということでした。
このような状況から、外国人向けの求人を出した企業には多くの応募者が集まる傾向があります。
限られた求人情報に対して応募者が集中している今のうちに、外国人採用を始めると大量採用のチャンスが広がります。
メリット⑤ 政府の支援プログラムが利用できる
外国人労働者の雇用には、政府の助成金や補助金を活用することができます。
これにより、雇用コストの削減や研修プログラムの充実が図られ、企業の経済的なメリットが生まれます。
また、政府との協力により、外国人労働者の雇用に関する法的な問題や手続きをスムーズに進めることもメリットとして挙げられます。
▼詳しくはこちら
小売業で外国人雇用を成功させるポイント
はじめての外国人雇用にはいくつか不安が浮かびますが、適切な準備や対応を行えば問題ありません。
以下で、外国人雇用を成功させるためのポイントをいくつかご紹介します。
ポイント① 長期的なキャリアパスの提示
日本で働く外国人の多くは、安定した長期的な勤務のできる仕事を探しています。
そのため、長期的なキャリアパスを提示するのは、外国人のモチベーション・定着率向上につながります。
具体的には、昇進制度や役職へのステップを示し、将来の成長を見据えたキャリアプランを提供します。
例えば、一般スタッフからリーダー、マネージャーへの昇進ルートなどを設けることで、自身の成長とやりがいを実感できる環境を整えます。
また、目標に対する評価やフィードバックも定期的に行い、成長を支援することで、長く働きたいと思える職場づくりに繋がります。
ポイント② 日本語能力・職場内コミュニケーションのサポート
日本語能力のサポートと職場内のコミュニケーションサポートは、外国人スタッフが働きやすい環境づくりに欠かせません。
日本語学習を支援するプログラムや、分かりやすいマニュアルを用意し、言語面での不安を軽減できます。
また、日本人スタッフと外国人スタッフが円滑に意思疎通できるよう、異文化理解の促進や職場での交流イベントなどを定期的に実施することが効果的です。
こうした取り組みにより、外国人スタッフが職場でのコミュニケーションに自信を持てるようになり、チームワークや業務効率も向上します。
ポイント③ 研修プログラムの充実
外国人スタッフがスムーズに業務を行えるようにするには、研修プログラムの充実が重要です。
とくに、日本独自の丁寧な接客スタイルや顧客対応の基本を教育するのは重要で、日本人の顧客による評価やサービス品質の向上が期待できます。
また、実践的なトレーニングやロールプレイングを取り入れ、スタッフが自信を持って顧客対応できるよう支援しましょう。多言語のマニュアルや分かりやすい資料を活用し、外国人スタッフが理解しやすい環境を整えることもポイントです。
さいごに
小売業で外国人を雇用するメリットは過去最大級にあり、今後も観光客がメインのターゲット層となるのは変わらないでしょう。
少子高齢化によって訪れる人手不足に備えるためにも、今のうちに若い外国人労働力を確保しておくのは良い対策となります。
ぜひ、本記事を参考として外国人採用を進めてください!