日本のビルクリーニング業界では、人手不足が大きな問題になっています。この問題を解決し、業界を続けていくためには、新しい人材を確保することが大切です。
その方法として、外国人の力を活用することが注目されています。
この記事では、外国人を雇うときに必要な「特定技能」ビザについて、また、採用するときに押さえておきたいポイントについてわかりやすく説明していきます。

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ビルクリーニング業界で増える外国人労働者

ビルクリーニング業界では、人手不足が大きな問題となっています。
全国ビルメンテナンス協会の調査によると、調査対象となった企業の90%以上が現場で働く従業員を確保するのが難しいと答えています。さらに、75%近くの企業が若い人材の採用や育成に苦労している、ということもわかりました。
また、賃金が上がることで企業の経営に負担がかかり、業界全体で人手を確保することが大きな課題となっています。

こうした問題に対処するために、政府は外国人労働者を受け入れる方針を進めています。現在、約3,500人の外国人がビルクリーニング業界で働いており、2024年度からの5年間で最大37,000人の外国人労働者を受け入れる予定です。
これにより、労働力不足が解消され、業界の人手不足が緩和されることが期待されています。

参考:全国ビルメンテナンス協会 ビルメンテナンス情報年鑑2024(第54回実態調査結果)

参考:出入国在留管理庁 特定技能制度の受入れ見込数の再設定(令和6年3月29日閣議決定)

ビルクリーニング業界で働く外国人の「特定技能」とは?

ビルクリーニングの仕事をしている特定技能外国人の画像

ビルクリーニング業界で働く外国人には、いくつかの在留資格があります。たとえば「特定技能」や「技能実習」、またアルバイトとして「留学」や「家族滞在」などがあります。

その中でも最も多く使われているのが「特定技能」という在留資格です。
ここからは、ビルクリーニング業界での特定技能ビザについて詳しく説明します。

在留資格「特定技能1号・2号」とは?

特定技能とは、人手不足が深刻な業界で、即戦力となる外国人を受け入れやすくするために作られた在留資格です。
この資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、それぞれ異なる条件や業務内容があります。

「特定技能1号」は、ビルクリーニングなど特定の産業分野で必要な知識や経験を持つ外国人が最初に取得する在留資格です。
在留期間は最長5年で、更新ごとに最長1年の在留期間が与えられます。また、家族を日本に呼ぶことはできず、このビザから直接永住権に進むこともできません。
ただし、必要な条件を満たせば、後に「特定技能2号」に移行することが可能です。

「特定技能2号」は、特定技能1号よりもさらに高度な技術や経験が必要な仕事をする外国人のためのビザです。
このビザには在留期間の制限がなく、家族も一緒に日本に呼ぶことができます。そのため、外国人労働者が長期間日本で働きながらキャリアを積むことができます。

どんな人が特定技能ビザを取得できるの?

特定技能のj評価試験を受ける外国人の画像

特定技能ビザを取得するためには、ビルクリーニング業務に必要な専門知識や技術を証明する「技能評価試験」に合格することが必要です。
また、仕事に必要な日本語のスキルを証明するために、「日本語能力試験」に合格することも求められます。

特定技能1号の技能評価試験

この試験は日本語で実施され、実技試験の内容は次のとおりです。

  • 清掃対象となる建物:住宅を除いた多くの人が使う建物(たとえば、オフィスビル、商業施設、病院、宿泊施設など)
  • 清掃する場所:床や壁、窓、天井、トイレ、厨房など

試験の評価基準は次のとおりです。

  • 清掃する場所や部位に合わせて、適切な清掃方法を選べるかどうか
  • 清掃作業の手順を正確に実行できるかどうか
  • 汚れに応じて、最適な洗剤や道具を選べるかどうか

また、特例として「ビルクリーニング分野の技能実習2号」を修了している場合、この技能評価試験は免除されます。

特定技能1号の日本語試験

この試験では、日常的な業務指示を理解し、職場でスムーズにコミュニケーションができることが求められます。そのため、日本語能力試験(JLPT)のN4レベルに合格する必要があります。
また、日本語能力試験の代わりに、国際交流基金の日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格することでも、同じレベルを証明することができます。

特定技能2号の技能評価試験

この試験は日本語で実施され、学科試験と実技試験の内容は次のとおりです。

  • 清掃対象となる建物:住宅を除いた多くの人が使う建物(たとえば、オフィスビル、商業施設、病院、宿泊施設など)
  • 清掃する場所:床や壁、窓、天井、トイレ、厨房など

試験の評価基準は次のとおりです。

  • 清掃作業を自らの判断適切な方法で実施できるかどうか
  • 複数の作業員を指導しながら、現場を管理し、効率的に作業を進行できるかどうか
  • 清掃業務に関する計画作成や進行管理など、マネジメント業務を適切に実行できるかどうか

また、特定技能2号には日本語試験はありません。

参考:法務省 「ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領

参考:全国ビルメンテナンス協会 ビルクリーニング分野特定技能1号・2号評価試験

特定技能ビザでできる業務の範囲

特定技能1号・2号のおもな業務について説明します。

特定技能1号の業務範囲

特定技能1号では、ビルクリーニング分野での建物内部の清掃がおもな仕事です。具体的には、次のような作業が含まれています。

  • 床、壁、浴室、トイレ、洗面台などの清掃
  • アメニティの補充やベッドメイク作業(ホテルなど)
  • 客室の清掃業務(清潔で美しい客室を提供するための作業)

ただし、機器や設備の内部清掃は対象外となっています。

特定技能2号の業務範囲

特定技能2号では、1号の業務に加えて、さらに高度な業務が求められます。具体的には、次のような作業が含まれています。

  • 作業計画の立案
  • 作業の進行管理
  • 複数の作業員の指導や現場管理

特定技能2号では、1号よりも責任のある業務を担当し、複数の作業員を指導しながら現場を管理します。

特定技能1号と2号は何がちがう? 就業できる業種や取得要件の違い、1号から2号への移行について

特定技能の外国人を採用する流れ

採用の流れをわかりやすくまとめたイラスト

1.事前準備

まず会社の体制をしっかり整えることが大切です。とくに、日本人社員とのコミュニケーションを円滑にし、協力し合える体制を作ることが成功のポイントです。
外国人労働者が安心して働けるように、日本人社員に対して、海外の文化についての理解を深める研修を行うことも効果的です。これにより、日本人社員が外国人労働者と上手に協力できるようになります。
また、労働環境勤務条件が適切かどうかを見直し、外国人が働きやすい職場作りを進めましょう。

ビルクリーニング業務では体力が必要な仕事もあるため、安全管理や健康管理の体制を整えることも大事です。
こうした準備をすることで、外国人労働者が長く安定して働ける環境を作ることができます。

2. 求人と応募者の選定

採用活動では、現地の候補者を企業とつなげるサービスを使うと便利です。
こうしたサービスを活用することで、ビルクリーニング業務に必要なスキルを持った人を簡単に見つけられます。
面接では、求人情報に掲載した必須の技術や知識を応募者が持っているかどうかをしっかり確認しましょう。
また、入社後に業務指示や安全指導がスムーズに行えるよう、基本的な日本語の理解があるかどうかも確認しておくことが大切です。

3. 試験と在留資格の取得

採用が決まったら、まずは前述の特定技能試験を受ける必要があります。
一般的には、技能試験と日本語試験に合格した後に雇用契約を結ぶことが多いですが、試験に合格する前に内定を出すこと自体は法律で禁止されていません。

試験に合格したら、次に在留資格の申請をおこないます。
企業は、在留資格を取得するために必要な書類を準備し提出します。
在留資格を取得するには時間がかかることがあるため、採用が決まった時点で早めに申請手続きを始めるようにしましょう。

特定技能外国人を受け入れる方法|制度の概要、受け入れまでの流れ、支援計画10項目を作成するコツや注意点を解説

4. 入社とオリエンテーション

特定技能外国人が日本で働き始める前に、まず入社手続きを行い、その後オリエンテーションを実施しましょう。
入社手続きでは、必要な書類を提出してもらい、労働条件をお互いに確認します。
オリエンテーションでは、日本での生活に必要な情報を伝えたり、業務の基本的な流れを説明したりします。とくに、言語や文化の違いを理解するための研修を行うことで、外国人労働者が職場に早く馴染むことができます。

外国人雇用契約書の作成ガイド|10のポイントをおさえてトラブルを未然に防ぎ、安心な雇用関係を築く方法を解説

5. サポートとフォローアップ

採用後は、特定技能外国人のサポートとフォローアップがとても大切です。仕事や生活に関して困っていることがあれば、すぐに対応できる体制を整えておくことが必要です。
たとえば、日本語のサポートや生活面でのアドバイスを提供することで、外国人労働者のモチベーションを保ち、長く働いてもらうことができます。
また、定期的に面談を行い、業務の進捗や困っていることを確認して、必要なサポートをしっかりと提供することが重要です。

ビルクリーニング業界で外国人を雇うときの大切なポイント

これから、外国人を雇いたいと考えている企業が知っておくべきポイントについて、わかりやすく説明していきます。

在留資格の更新をサポートすること

特定技能外国人が日本で働き続けるためには、在留資格の更新が必要です。
企業は、外国人労働者の在留期間がいつまでなのかをしっかりと把握しておきましょう。
更新の手続きには、必要書類の準備や申請など企業のサポートが必要になるため、期限を守って適切に手続きを進められるようにしておくことが大切です。

外国人の支援体制が整っていること

「特定技能1号」の外国人を受け入れる企業は、外国人が日本で安心して働けるように、支援を行う必要があります。
その内容には、「日本語学習のサポート」「住む場所の手配」「日本人との交流の機会をつくる」など10の項目があります。これらは、企業が計画を立てて実施します。

自社で対応が難しい場合は、登録支援機関という専門のサポート機関に依頼することもできます。詳しい方法や手順については、以下の記事をご覧ください。

登録支援機関とは? 特定技能1号の外国人雇用で利用できる、政府認定機関による労働者支援「10項目」を解説

ビルクリーニング業者として登録されていること

特定技能外国人をビルクリーニング分野で受け入れるためには、働く先の企業が以下のどちらかに登録されている必要があります。

  • 建築物清掃業
  • 建築物環境衛生総合管理業

これらの登録がないと、外国人を受け入れることができません。
また、在留資格を申請する際には、登録証明書を提出する必要があるので、登録状況を事前にしっかり確認しておきましょう。

参考:厚生労働省 ビルクリーニング分野特定技能外国人が従事できる業務について

ビルクリーニング分野の特定技能協議会に加入していること

外国人労働者が安心して働ける環境を整えるために、「特定技能協議会」に加入している必要があります。

ビルクリーニング分野の特定技能協議会は、外国人労働者を適切に受け入れ、守ることを目的に設立されています。
協議会では「特定技能制度や優良事例の共有」「人権問題への対応」「法令を守るための啓発」などが行われ、企業が適切に対応できるようサポートを受けることができます。

参考:厚生労働省 ビルクリーニング分野特定技能協議会

さいごに

ビルクリーニング業における外国人労働者の役割は、これからますます重要になっていくでしょう。
特定技能ビザを活用することで、企業は安定した人手を確保でき、外国人労働者も日本でのキャリアを築くチャンスを得ることができます。

ぜひ、この機会に外国人労働者の雇用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

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