外国人雇用契約書の作成ガイド|10のポイントをおさえてトラブルを未然に防ぎ、安心な雇用関係を築く方法を解説
国人が日本で働くためには、就労ビザを申請するときに、仕事の条件を書いた書類を提出しなければなりません。
申請後、入国審査官から本人に内容の確認があることがあるので、外国人本人がしっかり理解できていることが大切です。
この記事では、外国人が分かりやすい雇用契約書の書き方を説明します。
外国人と日本人、雇用契約書は同じ内容で大丈夫?
雇用契約書は、雇用主が労働者に仕事の条件を伝えるための書類です。これは日本の労働基準法に基づいて作られています。
基本的に、外国人と日本人の契約書の内容は同じですが、外国人労働者には次のような点を考える必要があります。
- 言葉や文化の違いに配慮すること
- 在留資格の就労制限に間違いがないように、条件を作成すること
それでは、雇用契約書の基本について、もう少し詳しく見ていきましょう。
雇用契約書には、会社と外国人労働者のサインが必要
雇用契約書には、会社と外国人労働者が仕事の条件に同意した証として、それぞれサインをする必要があります。
日本語があまり得意でない外国人の場合、内容を理解しているように見えても、実際には違う解釈をしていることがあります。このような行き違いを防ぐためにも、契約内容をはっきりさせて、お互いが納得していることを確認するのが大事です。
とくに海外では、契約書がとても大事にされています。もし契約書にお互いのサインがないと、その契約が無効になることもあります。あとでトラブルを防ぐためにも、契約書をしっかり交わしておきましょう。
また、日本人は印鑑を使うことが多いですが、外国人労働者の場合は自筆のサインが一般的です。印鑑を用意させるのは負担になることもありますし、多くの国ではサインを使う文化があるため、契約書にはサインで十分であることを伝えると話がスムーズに進みます。
労働条件通知書との違い
日本人を雇う場合、「雇用契約書」の代わりに「労働条件通知書」を使うことがあります。
労働条件通知書は、働く条件を明確にして、サインなしでただ通知するだけの書類です。
日本では、会社が仕事の条件をきちんと説明することは義務ですが、サインまでは求められていないため、労働条件通知書だけを渡しても問題はありません。
しかし、外国人を雇う場合は、労働条件通知書だけでは後からトラブルになることがあります。ですので、外国人を採用する場合は、基本的に「雇用契約書」を作るようにしましょう。
絶対的明示事項と相対的明示事項ってなに?
労働条件には「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」があります。
絶対的明示事項とは、すべての企業が必ず明示しなければならない労働条件です。具体的には、次の項目があります。
- 労働契約の期間について
- 期間の定めがある場合、契約更新の基準について
- 就業場所や仕事内容について
- 始業・終業の時刻、労働時間、休憩時間、休日、休暇、二組以上での勤務時間の転換について
- 賃金の決定方法、計算方法、支払い方法、締切・支払時期、昇給について
- 退職に関すること(解雇の理由も含む)
相対的明示事項とは、企業に定めがある場合には明示する必要がある労働条件です。具体的には、次の項目があります。
- 退職手当に関する範囲や支払い方法、支払い時期
- 臨時の賃金、賞与、最低賃金について
- 食費や作業用品など、労働者に負担させるものについて
- 安全や衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償や傷病扶助について
- 表彰や制裁について
- 休職に関すること
外国人労働者のための雇用契約書作成のポイント10選!
ここでは、外国人向けの雇用契約書を作るときに気をつけたいポイントを紹介します。
日本人と同じ内容で作成しても問題はありませんが、外国人に分かりやすいように書き方を工夫することが大切です。これから紹介するチェックリストをぜひ使ってみてください。
1. 仕事内容が在留資格の範囲内におさまっているか
外国人が持っている在留資格では、どんな仕事をしていいかが決まっています。
そのため、在留資格で許可されていない仕事をさせることはできません。外国人労働者の在留資格をしっかり確認して、仕事内容がその範囲内におさまるようにしましょう。
また、職場で「主任」や「係長」などの役職がある場合、その意味や責任を説明することも大切です。
外国人労働者がその役職の意味や責任の範囲を理解できるように、わかりやすく説明しましょう。もし外国人が日本の職場に慣れていない場合は、母国語での説明も役立ちます。
2. 就業場所は在留資格で許可された場所か
外国人は、在留資格を取得したときに届け出た場所でしか働くことができません。
もし転職や転勤で就業場所が変わる場合は、出入国在留管理庁に「所属機関の変更の届出」をする必要があります。
3. 契約期間は在留資格の期間と合っているか
外国人が日本で働く場合、永住権を持っていない限り、在留資格には期限があります。最短で15日、最長で5年です。
雇用契約書を作成する際は、外国人労働者の在留カードに記載されている在留期間を確認して、それに合わせて記載しましょう。
有期契約(期間が決まっている契約)の場合、在留資格を取得したり更新したりする際に、契約期間より長い期間の在留資格をもらうことが難しくなります。
長い期間働いてもらいたい場合は「契約期間に定めなし」と書くことで、在留期間を長く設定してもらえる可能性が高くなります。また、契約更新のルールもしっかり雇用契約書に書いておくことが大切です。
4. 給与水準は日本人と同じか、それ以上か
基本給だけでなく、手当や残業代、支払日などもできるだけ詳しく書きましょう。また、この金額は日本人労働者と同じか、それ以上であることが大切です。
もし外国人労働者が「思っていたより給料が低い」と感じると、すぐに辞めてしまうことがあります。お金に関することはトラブルの原因になりやすいので、しっかりと内容を説明することが大事です。
5. 賞与・昇給・退職手当について記載しているか
正社員の場合は、会社の規定があるときだけ記載する必要があります。しかし、契約社員やアルバイトの場合は、これらの項目も明確に記載しなければなりません。
お金に関することなので、規定を記載しておくことで後からトラブルを避けることができます。また、給与の金額だけでなく、賞与や昇給の回数や時期なども書いておくと、労働者のやる気を高めることにもつながります。
ちなみに、アメリカでは賞与は年に1回が多く、ヨーロッパでも日本ほど頻繁には支給されません。
6. 家賃や食費の負担について記載しているか
外国人労働者が負担する食費や寮の家賃などについても、契約書に書きましょう。たとえば、昼食の手当がもらえるのか、会社の食堂が使えるのかなども書いておくといいです。
もし寮が完備されていて、住み込みで働くことができる場合、家賃や光熱費が会社の負担なのか、どれくらいの割合を負担するのかも書くようにしましょう。
7. 安全・衛生の基準について伝わるか
国によって安全や衛生の基準が違うことがあります。
日本の安全や衛生のルールをしっかり説明し、外国人労働者が理解できるようにしましょう。安全教育や衛生管理の研修がある場合は、それも契約書に書いておくといいです。
また、文化や宗教の違いで食事制限がある場合や、休憩場所を配慮する必要がある場合もあります。外国人労働者が快適に働けるようにするために、そうした配慮がある場合も契約書に書いておくことをおすすめします。
8. 研修がある場合、アピールできているか
とくに、スキルを身につけたい外国人労働者を採用する場合、職業訓練があると大きな魅力です。こうした訓練があることは積極的に契約書に書きましょう。
たとえば、「働きながら資格を取得できる」といった内容です。
また、研修期間中に賃金が低くなる場合は、そのことをしっかり書いておく必要があります。この部分はトラブルになりやすいので注意が必要です。
9. 表彰や制裁について記載しているか
表彰は、社員のやる気を高め、会社に長く働いてもらうために大切なポイントです。
一方で、制裁は会社のルールを守らなかった場合の罰であり、日本ではしっかりとルールが定められています。これらの内容は、外国人労働者の雇用契約書に記載しておく必要があります。
外国人労働者は、日本での生活に慣れていないため、予期しないトラブルに巻き込まれることもあります。トラブルを防ぐためにも、懲戒についても契約書に書いておきましょう。
表彰や制裁については、日本人労働者と同じ条件にしましょう。差別されていないと感じることで、外国人労働者もモチベーション高く働くことができます。
10. 停止条件付契約になっているか
停止条件付き契約とは、ある条件が発生するまで契約が効力を持たない契約です。
外国人労働者との契約では、在留資格が取れなかった場合、雇用契約が無効になることを明確にしておく必要があります。なぜなら、在留資格がないのに働かせることは不法就労にあたるからです。
この内容はとても重要で、契約書に書くだけでは理解が難しいことが多いため、必ず口頭でも説明して、理解してもらうことが大切です。
さいごに
外国人労働者向けの雇用契約書は、文化の違いを考えながら作ることで、後々のトラブルを防ぐことができます。
この契約書は在留資格を申請する時にも必要で、もし書類に不備があると申請が通らず、採用できないことがあります。
外国人を採用することが決まったら、スムーズに雇用できるように、この記事を参考にして重要なポイントを押さえた雇用契約書を作りましょう。