人手不足対策!留学生採用と「在留カード」完全ガイド

近年、多くの企業が人手不足という深刻な課題に直面しています。特に飲食業や建設業をはじめとする業種では、労働力の確保が喫緊の経営課題となっています。このような状況下で、日本で学ぶ意欲的な「留学生」の採用は、人手不足解消の有効な手段として、また、職場に新たな活力をもたらす存在として注目されています。
本記事では、留学生アルバイト採用が企業にもたらすメリットを明らかにし、採用活動において最も重要な「在留カード」の確認方法や法的注意点を、出入国在留管理庁などの行政情報を基に網羅的かつ分かりやすく解説します。企業の採用ご担当者様が、安心して留学生採用を進めるための一助となれば幸いです。
目次
1.留学生アルバイト採用が企業にもたらす「3つのメリット」
留学生の採用は、単なる労働力確保に留まらない、多様なメリットを企業にもたらします。
- 若く意欲的な労働力の確保
留学生は、日本で専門知識や技術を学ぶ意欲が高く、新しい環境や業務に対する適応力も期待できます。日本の文化や言語を実社会で学びたいという強い目的意識は、仕事への真摯な取り組みにも繋がるでしょう。 - 職場環境の活性化とダイバーシティの推進
異なる文化背景を持つ人材の受け入れは、既存の従業員にとって良い刺激となり、職場の活性化を促します。多様な価値観や視点が交わることで、新たなアイデアの創出や業務改善のヒントが生まれることも期待できます。 - 将来的なグローバル人材への育成とインバウンド需要への対応力強化
アルバイトとして活躍した留学生が、卒業後に正社員として定着するケースも少なくありません。また、母国語や堪能な外国語を活かし、増加するインバウンド顧客への対応力向上に貢献することも期待できます。(特に飲食業、小売業など)
これらのメリットを最大限に引き出すためには、外国人雇用の基本ルール、とりわけ「在留カード」に関する正確な知識が不可欠です。
2.「在留カード」と在留資格「留学」の基礎知識
留学生を採用する上で、まず理解しておくべきは「在留カード」と在留資格「留学」に関する基本的な知識です。
在留カードとは?
在留カードは、日本に中長期間在留する外国人に対し、上陸許可や在留資格の変更許可、在留期間の更新許可などの際に交付されるものです。氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否などが記載されており、日本に在留する外国人の身分証明書としての役割も持ちます。在留カードを所持する外国人は、常にこれを携帯し、入国審査官、入国警備官、警察官等から提示を求められた際には提示する義務があります。
(参照:在留カードとは? | 出入国在留管理庁)
在留カードの主な記載事項(例):
- 表面:
- 顔写真
- 氏名、生年月日、性別、国籍・地域
- 住居地(日本国内の主たる住居の所在地)
- 在留資格(例:「留学」)
- 在留期間(満了日)
- 就労制限の有無(例:「就労不可」または具体的な就労範囲が指定される場合もあります。「留学」の場合は原則「就労不可」と記載されます。)
- 在留カード番号 など
- 裏面:
- 住居地記載欄(変更があった場合)
- 資格外活動許可欄(留学生アルバイトの場合は特に重要)
- 在留期間更新等許可申請欄 など
在留資格「留学」とは?
在留資格「留学」は、日本の大学、高等専門学校、高等学校(専攻科・別科を含む)、専修学校(専門課程・一般課程)、各種学校または設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動をおこなうために付与される在留資格です。
重要なのは、本来の活動は「教育を受けること」であり、就労活動はその範囲外であるという点です。
(参照:在留資格「留学」 | 出入国在留管理庁)
資格外活動許可について
在留資格「留学」の外国人がアルバイトなどの就労活動をおこなうためには、原則として事前に「資格外活動許可」を受ける必要があります。この許可を得ることで、本来の在留資格の活動を阻害しない範囲で、かつ、一定の条件のもとで就労が認められます。
- 許可の原則: 1週について28時間以内(風俗営業等に従事することはできません)。
- 教育機関の長期休業期間中: 1日について8時間以内(1週について40時間以内)の活動が認められる場合があります。
(参照:資格外活動の許可(入管法第19条) | 出入国在留管理庁)
3.留学生採用における「在留カード」確認 5つの最重要ポイント
採用担当者が留学生の在留カードを確認する際には、以下の5つのポイントを必ず押さえてください。これらは、不法就労を防止し、適正な雇用管理をおこなう上で極めて重要です。
- 必ず「原本」で確認する
在留カードは、コピーや写真ではなく、必ず原本を提示してもらい確認しましょう。偽造・変造された在留カードのリスクを低減するためです。目視での確認に加え、出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」をスマートフォン等にインストールし、在留カードのICチップ情報を読み取ることで、真贋確認の補助とすることができます。
(参照:在留カード等読取アプリケーション サポートページ | 出入国在留管理庁) - 「在留資格」が「留学」であることを確認
表面の「在留資格」欄が「留学」となっていることを確認してください。他の在留資格では、就労に関する条件が異なります。 - 「在留期間(満了日)」が有効期限内であることを確認
表面の「在留期間(満了日)」を確認し、有効期限内であることを確かめます。在留期間が過ぎている場合は不法滞在となり、就労させることはできません。採用時に有効期限が近い場合は、本人に更新手続きの状況を確認し、許可後に再度在留カードを確認するなどの対応が必要です。 - 裏面の「資格外活動許可欄」を必ず確認
留学生がアルバイトをするためには、この欄に資格外活動許可を受けている旨のスタンプ(またはシール)が必要です。 - 許可の有無: 「許可:原則週28時間以内、指定書により指定された活動の範囲内に限る」などの記載があるか確認します。
- 就労時間の制限: 「1週について28時間以内」の記載を確認します。
- 活動内容の制限: 風俗営業等での就労が禁止されている旨の記載を確認し、自社の業務がこれに抵触しないか確認します。
- 確認した内容を記録・保管する
確認した年月日、確認者氏名、留学生の氏名、在留カード番号、在留資格、在留期間満了日、資格外活動許可の有無とその内容(週28時間など)を記録し、在留カードのコピー(表裏両面)と共に保管しましょう。これは、企業が適正な確認をおこなったことの証拠となり、万が一のトラブルの際に重要となります。
(参照:外国人の雇用 |厚生労働省)
不法就労助長罪について
事業主が、不法就労である外国人や、就労が認められない外国人を雇用した場合、あるいは斡旋した場合には、「不法就労助長罪」に問われる可能性があります(出入国管理及び難民認定法 第73条の2)。これには、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(またはその両方)が科される場合があります。知らなかったでは済まされませんので、在留カードの確認は慎重におこなってください。
(参照:出入国在留管理庁「不法就労防止にご協力ください」 )
4.【業種別イメージ】留学生採用と在留カード管理のスムーズな進め方
ここでは、具体的な業種を例に、留学生採用と在留カード管理のポイントをご紹介します。
- 飲食業(例:カフェ、レストラン)
- シフト管理の徹底: 複数の留学生アルバイトを雇用する場合、各人の週28時間ルールを超過しないよう、勤怠管理システムなどを活用し、就労時間を正確に把握・管理することが重要です。
- 学業への配慮: テスト期間やレポート提出時期など、学業の状況をヒアリングし、無理のないシフト調整をおこなうことで、留学生が学業とアルバイトを両立しやすくなります。
- コミュニケーション: 資格外活動のルールや日本の労働慣行について、採用時に丁寧に説明し、相互理解を深めることが大切です。
- 建設業(例:現場作業員)
- 採用時の厳格な確認: 現場作業の安全管理の観点からも、採用時の在留カード確認は特に慎重におこないます。有効期限、資格外活動許可の有無・内容を確実にチェックします。
- 定期的な管理体制: 日雇いや短期契約の場合でも、在留カードの有効期限管理を徹底し、期限切れのまま就労させることがないよう注意が必要です。
- 現場での携帯指導: 在留カードの常時携帯義務について本人に指導し、現場責任者も必要に応じて確認できる体制を整えておくとよいでしょう。
5.まとめ:正しい知識と理解で、留学生と共に成長する企業へ
留学生アルバイトの採用は、企業にとって多くのメリットをもたらす可能性があります。しかし、その前提として、在留カードに関する正しい知識と、法律を遵守した適正な雇用管理が不可欠です。
安心・安全な留学生採用のための最終チェックリスト
□ 在留カードの「原本」を確認しましたか?(ICチップ読取アプリの活用も推奨)
□ 在留資格は「留学」ですか?
□ 在留期間(満了日)は有効期限内ですか?
□ 裏面の「資格外活動許可欄」に許可の記載はありますか?その内容は適切ですか?(原則週28時間以内、業種制限など)
□ 確認した内容を記録し、在留カードのコピー(両面)と共に適切に保管する準備はできていますか?
□ 留学生本人に、就労可能な時間や業務範囲について説明し、理解を得ましたか?
本記事で解説したポイントを確実に実行し、不明な点や判断に迷う場合は、自己判断せずに、出入国在留管理庁や労働局、あるいは行政書士などの専門家にご相談ください。
適切な知識と管理体制のもと、留学生が持つ能力や意欲を最大限に引き出し、企業と留学生双方が共に成長できるような、より良い雇用関係を築いていきましょう。
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