特定技能、技能実習の外国人の税金と年末調整の流れや重要なポイントについて
外国人の雇用を考えている場合には、給与への課税や年末調整についての知識を持っておく必要があります。日本で「特定技能」「技能実習」の在留資格を持って働いている外国人には、もちろん税金は支払う義務があります。
今回の記事では外国人労働者に課される税金や、年末調整、扶養補助などについてくわしく記載しています。外国人の受け入れをすでに始めている、これから始める予定であるという企業の採用担当の方には、役立つ内容になっています。
目次
特定技能、技能実習でも税金は納めます
特定技能、技能実習の在留資格を持って日本で働く外国人は、日本人と同じように税金が課されており、これを支払う必要があります。ただ年末調整が必要になるかどうかは、この外国人の方が「居住者」と分類されるのか、「非居住者」と分類されるかで異なります。
居住者とは「日本に住所がある人」または「一年以上日本に住んでいる」人を指します。反対に非居住者とは、この上記の条件に当てはまらない人です。
年末調整が対象にするのは、居住者のみです。この点に注意する必要があるでしょう。
◆「居住者」であっても年末調整の対象外になるケースがある?
・年間での給与が、2,000万円以上になるケース
・災害減免法(※災害にあって住宅や家財に損害を受けたときの所得税軽減)によって、所得税の徴収猶予や還付を受けている場合
特定技能や技能実習で「非居住者」となるケース
日本で実際に働いていても、「居住者」ではなく「非居住者」となるのは、どのような場合でしょうか。
短期滞在の場合
たとえば特定技能や技能実習の資格で日本に来日していますが、滞在期間が一年未満である場合。
日本での滞在期間がまだ短いため、非居住者として扱われます。
帰国時の状況
帰国する時点で一年以上の継続的な滞在が見込まれていない場合、帰国後の生活の拠点が日本にないと見なされる場合などがあります。
特定技能、技能実習に課される税金は?
特定技能、技能実習の就労ビザを持って日本で働いている外国人に課される税金には、「所得税」と「住民税」があります。ここでは前述した「居住者」の場合と「非居住者」の場合にそれぞれわけて、税金がどのように徴収されるかをご紹介します。
所得税(国税)
所得税は給与所得や不動産所得など、個人の所得に対して課される税金です。特定技能、技能実習の外国人には、給与所得に対して所得税が発生します。
居住者の場合
居住者に該当する場合には、以下の流れで所得税が徴収されます。
- 給与を支払うたびに源泉徴収(※給与の支払者が支払いのときに、本人の代わりに納税をしてくれる仕組み)を行う
- 年末調整にて過不足額を精算
なお特定技能、技能実習の方が途中で母国に帰る場合には、一般に出国するまでに年末調整が必要です。
非居住者の場合
非居住者の場合は所得額にかかわらず、全員20.42%の税率が適用されます。給与が支払われるたびに、源泉徴収されます。
住民税(地方税)
所得税は「国税(課税主体が国)」であるのに対して、「住民税」は都道府県や市区町村など、自分が住んでいる場所に対して税を納めます。住まいがある地域の行政サービスはこれをリソースとして運営されるため、その都道府県・市区町村に住所がある個人・法人が税金を払います。
居住者の場合
居住者に分類される場合には、前年度の所得に応じた金額の住民税を支払います。ケースによって異なりますが、税率の目安は10パーセント程度です。
住民税は前年の所得から算出されるため、特定技能、技能実習の方が母国に帰国する場合には注意が必要です。予期せぬトラブルを避けるためにも、精算方法や精算時期について事前に知らせておきましょう。
非居住者の場合
日本に住んでいる期間が一年未満の方には前年の所得はないため、住民税は課税されません。
租税条件によって、税金が免除になることも?
技能実習生は、所得税と住民税どちらもが免除されることもあります。技能実習生の出身国と、日本のあいだで租税条約(そぜいじょうやく)が結ばれている場合です。
租税条約とは、二国間または他国間で締結される条件で、租税に関する問題を解決して国際的な二重課税をふせぐためのものです。租税条約を理由として税金の免除を受ける場合には、所得税・住民税でそれぞれ事前に手続きをする必要があるため、忘れずに行いましょう。
「所得税」の免除を受ける場合には、最初の給与を支払う前日までに、「租税条約に関する届出書」を受け入れ企業の所在地を管轄する税務署に提出します。
一方で住民税の免除を受ける際には、以下の書類を管轄の役所に出します。
◆必要な書類
・租税条約に関する届出書の写し
・雇用契約書の写し
・本人確認書類の写し など
必要な書類は役所によって異なる場合がありますので、注意しましょう。
特定技能、技能実習の年末調整の流れ
ここまでの内容を踏まえて、あらためて年末調整(※所得税の過不足を精算する手続き)の流れを紹介します。大まかな流れは以下です。
- 外国人が「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」などの書類を提出
- 給与所得の源泉徴収税増額表にもとづいて源泉徴収をする
- 必要書類を作成、提出し、税金を精算
この基本的な流れは、日本人労働者の年末調整と変わりません。
特定技能、技能実習の年末調整は扶養控除に注意
特定技能、技能実習の在留資格を持って日本で暮らしている方が、母国にいる家族を扶養している場合には、年末調整で扶養控除を受けられます。
ここでは要件と、控除に必要となる書類をチェックしましょう。
扶養親族の要件
扶養親族になるには、その年の12月31日の時点、または納税者が出国するときに、以下の要件に該当する必要があります。
- 配偶者以外の6親等内の血族や、3親等内の姻族、都道府県知事から養育を委託された子ども、市町村長からの用語を委託された老人のいずれかであること
- 納税者と生計を一にしていること
- (1)に該当する人の、年間合計所得金額が48万円以下(給与収入が103万円以下)であること
- 青色申告者の事業専従者として、その年にいちども給与の支払いを受けてない。または白色申告者の事業専従者ではないこと
外国人労働者(納税者)と生計を一にしている、という2の要件については、かならずしも同じ場所に居住している必要はありません。技能実習、特定技能の方が母国の親族にある程度の生活費を送金していれば、この要件を満たします。
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注意しておきたい変更点
国外居住親族に対する扶養控除の適用については、2023年に変更が入ったので注意が必要です。
これまでは前述した扶養要件を満たしている「16歳以上」の非居者が扶養控除の対象でした。しかし2023年1月から、より適用されるケースが厳しくなりました。
ケース | 条件 |
16歳から29歳まで、または70歳以上の国外居住親族の場合 | 親族関係書類の提出をすれば扶養家族とみなされる |
30歳から69歳までの国外居住親族の場合 | 下記の条件に該当する場合に、扶養家族であるとみなされる ・留学 ・障がい者 ・納税者(特定技能、技能実習の方など)から、その年に38万円以上の生活費または教育費の送金を受けている |
扶養親族の必要書類
特定技能、技能実習の方が、国外居住親族について扶養控除を受けるためには、以下の書類が必要です。
ケース | 書類 |
16歳から29歳まで、または70歳以上の国外居住親族の場合 | 親族関係書類および送金関係書類 |
30歳から69歳までの国外居住親族の場合 | 親族関係書類および送金関係書類 (38万円送金書類) |
親族関係書類には、特定技能、技能実習の在留資格を持っている外国人の親族であることを証明できる、戸籍謄本、婚姻証明書、出生証明書、パスポートの写しなどが該当します。
外国語の書類である場合には、翻訳文もいっしょに用意して提出しましょう。
送金関係書類に該当するのは、クレジットカードの利用明細書や外国送金依頼書の控えなどです。国外の家族へ合計で38万円以上送金していることを証明できれば、「38万円送金書類」として扱うことができます。
まとめ
特定技能、技能実習に課される税金についてまとめてきました。
日本に働きに来ている場合でも、その期間によって、また帰国時にも多少イレギュラーな対応が企業として必要になるかもしれません。
基本的な部分については、日本人労働者に対応するのと同じであることもわかってもらえたのではないでしょうか。ぜひ、今回の内容を覚えておいて、特定技能、技能実習の方の税金対応を進めてください。