人材流出に悩む前に知っておきたい! 平均賃上げ率5.1%時代、採用成功のポイントと地域別の傾向をわかりやすく解説

近年、さまざまな業界で「従業員が会社をやめてしまうこと」が大きな問題になっています。とくに、仕事に慣れてきて、これからもっと活躍してくれそうな人がやめてしまうと、会社の力が弱くなったり仕事がスムーズに進まなくなったりすることがあるでしょう。
この記事では、なぜ人が会社を離れていくのか、その影響はどんなものか、そしてどうすればそれを防げるのかをわかりやすく説明します。さらに、外国人を雇うという新しい考え方についても取り上げています。
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人材流出の背景と最近のデータについて
会社をやめる人が増えている今、その背景や数字を知ることはとても大切です。ここでは、人がなぜやめてしまうのかと、その変化について説明します。
社会の変化が人の流れに影響している
人材流出とは、会社で育てた従業員が別の会社へ移ることをいいます。
昔のように一つの会社で長く働くという考え方が少なくなり、今ではよくある経営上の課題になっています。
厚生労働省の調査によると、令和5年の1年間で会社をやめた人の割合は15.4%にのぼりました。とくに女性やパートタイム、サービス業で働く人の割合が高くなっています。正社員よりもパートのほうが約2倍も多くの人が辞めており、今の時代では人が仕事を変えるのが当たり前になっていることがわかります。
また、働き方や生き方が多様になったことで、能力のある人ほど「もっと自分らしく働ける場所」を選ぶようになってきました。
終身雇用が終わり、働き方が変わってきている
2019年には、経団連が「終身雇用を続けるのはむずかしい」と発表しました。これをきっかけに、雇い方や働き方は大きく変わりました。ひとつの仕事にしばられない「ジョブ型」や、チームごとに仕事を進める「プロジェクト型」が広がり、副業やリモートワークもよく見られるようになりました。
つまり、もう会社が一人ひとりの働き方をずっと支える時代ではなくなったのです。今は、働く人が自分に合った職場を自分で選ぶようになってきました。
企業は、そんな人たちに「ここで働きたい」と思ってもらえるような環境を作ることが大切になっています。
人が会社をやめてしまう主な理由とは?
人材流出の理由は1つだけではありません。ここでは、よくある原因を4つに分けて説明します。
お金や働き方に対する不満と、不公平な評価
給料や働く条件に不満を感じることは、会社をやめる大きなきっかけになります。とくに、まわりの会社と比べて給料が低かったり、最低賃金の引き上げに会社が対応できていなかったりすると、「ほかの会社のほうがいいかもしれない」と思う人が増えていきます。
また、どれだけがんばっても、それに見合った報酬がもらえないと、やる気がなくなり、会社を離れたくなる人もいるでしょう。
さらに、人の働きぶりを評価するルールがあいまいだったり、上司の好き嫌いで評価が決まっていたりすると、不満がたまりやすくなります。とくに年齢で決まるような評価制度では、がんばっている若い人ほど不公平に感じることが多いです。
職場の人間関係や会話の少なさによるストレス
職場での人間関係がうまくいかないことも、会社をやめる理由のひとつです。上司や同じチームの人とうまく合わなかったり、みんなで協力する雰囲気がなかったりすると、ストレスを感じてしまいます。
また、必要なことが話し合えなかったり、意見が言いにくい職場では、安心して働くことができません。最近では、リモートワークが広がってきたことで、顔を合わせる機会が減り、人とのつながりを作るのがむずかしくなっていることも影響しています。
自分の成長や将来が見えないことへの不安
今の仕事で成長できないと感じたとき、人は「このままでいいのか」と不安になります。たとえば、昇進のチャンスが少なかったり、新しい仕事に挑戦できる場がなかったりすると、将来が見えなくなってしまうでしょう。
また、スキルアップのための研修が少ない会社や、キャリアの進み方がわからない会社では、とくに成長意欲の高い人が不満を感じやすくなります。会社が働く人のキャリアを応援していないと感じたとき、ほかの会社を目指す人が増えていきます。
働き方や会社の考え方が合わない
長時間働かなければならなかったり、休みが取りにくかったりする環境では、心や体に負担がかかります。こうした働き方が続くと、健康を保つのがむずかしくなり、生活とのバランスも崩れてしまいます。
さらに、会社の考え方や大切にしていることが自分と合わないと、「この会社ではがんばれない」と感じるようになるでしょう。とくに、入社前に聞いていた話と実際の職場の雰囲気がちがうと、早くやめたくなることもあります。
だからこそ、会社は自分たちの考えをきちんと伝え、働く人と価値観を共有していくことが大切です。
人材流出で起こる影響は?
会社で働く人が次々にやめてしまうと、さまざまな問題が起こります。ここでは、主な影響を3つにまとめて紹介します。
お金がかかり、仕事の効率も下がる
人がやめると、新しく人を入れるためにたくさんの費用がかかります。たとえば、求人の広告代や紹介手数料、仕事を教えるための時間とお金などが必要になり、1人採用するために100万円以上かかることもあります。
また、急に人が足りなくなると、残っている社員にしわ寄せがきます。ひとりにたくさんの仕事が集中してしまうと、残業が増えたり、仕事の質が下がったりして、全体の効率が悪くなります。
納期に間に合わなくなったり、お客さんからのクレームが増えたりすることもあり、社員のやる気や会社の評判に悪い影響を与えてしまいます。
組織が弱くなり、会社の評判も下がる
長年働いてきた人が辞めると、その人が持っていた知識やお客さんとの信頼関係が失われてしまいます。とくに営業や技術の仕事では、やめる人によって大きな損失が出ることもあります。
また、後継者が育っていないと、とくに中小企業では事業の継続が難しくなることもあります。
さらに、人がよく辞める会社だと知られてしまうと、「働きづらい職場だ」という印象を持たれるおそれがあります。その結果、採用活動がうまくいかなくなることもあるでしょう。今はSNSなどを通じて会社の評判がすぐに広まる時代なので、イメージが悪くならないよう注意が必要です。
参考:帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2024年)
優秀な人が他社や海外に流れ、競争力が弱まる
最近では、日本の給料が他の国と比べてあまり高くないことが問題になっています。とくに、ITや技術系の仕事では、北米やシンガポールなど給料の高い国に人が流れていくことが増えているのが現状です。
たとえば、アメリカのシリコンバレーでは、日本の2〜3倍の給料をもらっているエンジニアもいます。
このように、優秀な人がどんどん海外に行ってしまうことを防ぐには、ただ給料を上げるだけでは足りません。給料の仕組みそのものを、世界の水準に合わせて見直す必要があります。
人材流出を防ぐには、どんな対策が必要?
会社で働き続けてもらうには、働く人の気持ちや環境をしっかり考えることが大切です。ここでは、具体的な対策を紹介します。
給料や評価のしかたを見直す
物の値段が上がったり、円の価値が下がったりしている今、給料や待遇を見直すことは急いで対応すべき課題です。少なくとも平均で5%以上の昇給を目安にして、他の会社と比べながら職種ごとの給料も考えていく必要があります。
また、公平な評価制度をつくることも大切です。目標に向けた努力や結果をバランスよく見て評価し、その流れをきちんと見えるようにすることで、納得して働けるようになります。
評価の基準や給料の決まり方を社員にわかるように示すことで、やる気を保ちやすくなり、会社を辞めたいと感じにくくなるでしょう。
働きながら成長できる仕組みをつくる
人が成長できる場を社内に用意することは、会社に長くいてもらうためにとても大事です。社内で新しい仕事に挑戦できる仕組みや、学びを支える制度、他の会社と関わる研修など、いろいろな経験を積める機会があるとよいでしょう。
また、在宅勤務やフルフレックス、副業を認めるなど、働き方の選択肢を広げることで、生活スタイルが変わっても働き続けやすくなります。
将来のキャリアがイメージしやすいように、どんなスキルや経験が必要かを示すことも役立ちます。
働きやすい環境づくりと、気持ちのつながりを大切にする
長時間働きすぎたり、仕事量が多すぎたりすると、健康や気持ちに悪い影響が出ることがあります。働きすぎていないかをチェックするツールを使えば、問題が大きくなる前に気づけます。
また、オフィスを使いやすくしたり、相談しやすい窓口をつくったりすることも効果的です。1対1の面談や社内SNSなど、気軽に話せる場をつくることで、社員どうしのつながりも強くなります。
休みを取りやすくしたり、柔軟な勤務時間を取り入れたりすることで、仕事と生活のバランスが取れる状態を保つことも大切です。
辞めにくい会社を戦略的につくる
人が長く働きたくなる会社をつくるには、前述したように給料や休みの取りやすさ、成長の機会、人との関係などをバランスよく考える必要があります。「この会社で働き続けたい」と思える理由を、明確にすることが大切です。
まずは、自社でどんな人がなぜ辞めているのかを詳しく調べます。そして、会社にとって大切な人材をしっかりと見つけ、その人たちが辞めないような対策を優先して行いましょう。
また、離職率だけでなく、アンケートや制度の利用率なども定期的に確認し、必要に応じて対策を見直していくことが求められます。
外国人の採用もひとつの方法
外国人を採用することは、人手不足の解消だけでなく、いろいろな価値観を取り入れるチャンスにもなります。とくに海外から来る人は、日本で働く意欲が高く、長く続けてくれる人が多い傾向にあります。
生活のサポートを手厚く行えば、日本での暮らしにも早く慣れることができます。
そのためには、文化や言葉のちがいに配慮することが欠かせません。たとえば、掲示物を多言語にしたり、相談しやすい窓口をつくったり、仕事の説明をわかりやすくしたりすることが有効です。こうした対応を進めることで、外国人社員も安心して働けるようになります。
【調査レポート】いま採用を始めるなら知っておきたい、転職市場の変化
「なかなか人が採用できない」と感じているなら、その原因は今の転職市場にあるかもしれません。
ここでは、転職を考える人の動きや最低賃金との関係、地域ごとの採用のしやすさなど、最新のデータをもとに紹介します。
1. 転職を考える人が増えるのは11月。とくに地方で目立つ
【POINT】7〜9月は静か、11月に急増
Googleで「転職」という言葉の検索数を調べたところ、7〜9月は全国的にあまり動きが見られませんでした。しかし11月になると、大きく増えていることがわかります。
【POINT】地方ほど動きが活発
中でも目立っていたのは北海道(132%)、広島県(121%)、宮城県(118%)などの地方都市です。一方、東京(102%)や愛知(102%)などの大都市では、回復しているものの、去年とあまり変わらない水準にとどまっていました。
2. 最低賃金のアップが転職の動きに影響している
【POINT】賃金が上がる10月頃から本格的に始動
2024年は最低賃金が過去最大の引き上げとなりました。この影響もあってか、7月ごろは転職を控える人が多く、10月に実際に賃金が上がったあたりから、転職の動きが一気に活発になっています。
【POINT】最低賃金が大きく上がった地域は転職希望も多い
6%以上の賃金アップがあった地域では、前年と比べて20%以上も転職希望者が増えた県がいくつもあります。たとえば、徳島県では最低賃金が9.4%上がり、転職希望は156%と大きく増加しています。
【POINT】最低賃金だけが理由ではないケースもある
熊本県のように最低賃金の伸びがそれほど大きくなくても、高年収の求人(TSMCの半導体工場など)が出てきたことで転職への関心が高まることがあります。給与に対する期待が、全体として高まってきていると考えられるでしょう。
3. 地域によって採用のしやすさは大きく違う
【POINT】首都圏や観光地では採用がますます難しくなっている
「有効求人倍率(1人あたりの求人数)」で見ると、全国的に採用の難しさが増しています。とくに以下の地域では顕著です。
- 沖縄県:1.44倍(観光・サービス業で人手不足)
- 東京都:1.26倍(いろいろな業種で求人が集中)
- 京都府:1.21倍(インバウンド再開の影響)
【POINT】地域ごとの傾向を知ることが大事
全国の平均だけでなく、自分の会社がある場所の求人倍率や給料の相場を知ることが、採用をうまく進めるための第一歩になります。
4. 給与は「去年よりどれくらい上がったか」が見られている
昔は「最低賃金を下回っていなければ問題ない」という考え方がありました。しかし今では「去年よりどのくらい給料が上がったか」が注目されるポイントになっています。
前述したように全国の平均では5.1%の賃上げが見られ、6%以上上がった地域では、転職希望者の数が大きく増えました。こうした傾向から、企業には新しく人を採用するだけでなく、今働いている社員の給与も見直す姿勢が求められるようになっています。
すぐに大きく上げるのが難しい場合は、採用計画や利益の見通しを考え直すことが大切です。
★Guidableでは各エリアの採用傾向データを調査しています。採用をご検討の方はぜひお問い合わせください。
さいごに
社員が次々に辞めてしまうことは、会社にとって大きな問題です。ですが、給料や評価のしかた、働き方、そして会社の考え方を見直していけば、辞める人を減らすことは十分に可能です。
さらに、外国人を採用したり、海外で働いていた日本人を呼び戻したりすることで、会社の力をより強くすることもできます。
「外国人採用に興味があるけれど、どう始めたらいいかわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。まずは自社の状況を知ることからスタートしてみましょう。