外国人社員が会社を辞めたり、帰国するときには「在留カード」を返納する必要があることをご存じでしょうか?
本来は出国のときに空港などで返す決まりになっていますが、まちがってそのまま持ち帰ってしまうこともあります。そうなると、次に日本に来るときのビザ申請に悪い影響が出るかもしれません。

この記事では、カードを返すタイミングや手続きの方法、会社側がやっておくべきことなどを、実際の流れにそってわかりやすく紹介します。
外国人社員の退職時のチェックリストとして、参考にしてみてください。

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在留カードは返納しないといけないの?

結論から言うと、在留カードの返納は義務です。失効したカードの悪用を防いだり、正確な出入国記録を残したりするために必要とされています。
出入国管理及び難民認定法(入管法)では、中長期で在留している外国人はカードを持ち歩く義務があるだけでなく、その効力がなくなった際には速やかに返納しなければならないと定められています。たとえば、出国や死亡、日本国籍の取得などがその対象です。

通常は、空港での出国手続きの際に審査官へカードを渡せば、その場で手続きは完了します。ただし、混雑などで返しそびれた場合は、出国後14日以内に郵送で返納する必要があります。この14日間は、あくまで空港で返納できなかったときの猶予期間です。

なお、カードの返納義務は本人にあるため、企業側に直接の法的責任はありません。
とはいえ、返納を怠ると将来の在留資格の申請や再来日に影響するおそれがあるため、企業としても退職時に手続きの流れを丁寧に説明し、必要に応じてサポートするのが望ましい対応と言えるでしょう。

どんなときに在留カードを返納するの?

在留カードは、特定のタイミングで返す決まりがあります。ケース別に見ていきましょう。

退職して本国へ帰る場合

離陸する飛行機のイラスト

就労ビザを持つ外国人が会社を辞め、再就職せずに帰国するのはよくあるケースです。
原則として、出国の際に空港で審査官にカードを直接渡す必要があります。

企業側は、退職日と航空券の予約日を把握したうえで、「空港でカードを必ず返納するように」と本人へ確実に伝えましょう。
もし返し忘れて出国してしまうと、後から郵送で対応しなければならず、本人にも会社にも手間がかかります。

在留期間が満了し出国する場合

在留期間の満了に合わせて、延長や資格変更を行わずに帰国するケースでも、カードの返納が必要です。更新を希望しない意思が確認できた時点で、企業は出国日を早めに確認しておくのが望ましい対応です。

出発直前は、引っ越しや行政手続きなどで忙しくなりがちです。
そのため、最終出勤日が近づいたら返納手順を再度伝え、必要に応じて郵送方法も事前に案内しておくとよいでしょう。

再入国の予定を取りやめた場合(みなし再入国を含む)

「再入国許可」や「みなし再入国許可」を利用して一時的に出国したものの、結果的に日本へ戻らないことを決めた場合も、カードの返納が必要になります。この場合は、再入国許可の有効期限が切れた日から14日以内に、入管へ郵送で返してください。

本人が帰国中であっても、企業は「日本へ戻らない」との意思を確認できた段階で、返納先や提出書類を正しく伝え、期限内に対応できるようサポートしましょう。

日本国籍の取得や永住資格への変更があった場合

外国人社員が帰化して日本国籍を取得したり「永住者」へ在留資格を変更した場合も、それまでの在留カードは効力を失います。カードの返納期限は、帰化許可通知書を受け取った日や永住許可の交付日から14日以内とされています。

返却は出入国在留管理官署で行います。なお、記念として残したい場合は、穴を開けて無効化されたカードを返してもらうことも可能です。

本人が亡くなった場合など、代理で返納するケース

在留中に本人が亡くなった場合は、代理人が在留カードを返納する必要があります。原則として、同居していた家族や日本国内にいる親族が代理人となります。
ただし、家族全員が海外にいるなど、やむを得ない事情がある場合に限り、雇用主や信頼できる第三者が返納手続きを行うことも認められています。

返納の際には、在留カードの原本に加えて、死亡を証明する書類(死亡証明書や戸籍謄本など)を一緒に提出してください。また、代理で手続きする理由と本人との関係を簡単に書いた文書を加えておくと、入管の確認作業がスムーズになる場合があります。

在留カードはいつ、どこで返納するの?

出国審査場のイラスト

返納は、出国のタイミングか、出国後の郵送のいずれかで行います。状況によって対応が変わるため、あらかじめ確認しておきましょう。

空港や港で出国時に返納する

成田・羽田・関西などの主要空港では、出国審査のときに在留カードとパスポートを一緒に提示し「返納します」と伝えることで手続きが完了します。
通常は、その場でカードに穴が開けられて無効になり、審査官がそのまま回収しますが、場合によっては無効化されたカードが本人に返されることもあります。

ただし、空港の混雑や案内不足により返納の流れがわかりにくく、うっかり持ち帰ってしまうケースも見られます。
その場合は、出国の翌日から14日以内に、カードを郵送で返す必要があります。

企業としては、空港での返納がきちんと行われるように、事前に手順を文書で渡しておくと安心です。

出国後に郵送で返納する(14日以内)

空港で返納できなかった場合や、帰国後に在留カードが手元に残っていたことに気づいた場合は、出国の翌日から14日以内に入国管理局へ郵送で返納しなければなりません。
送付の際は、封筒の表に「在留カード等返納」と記載し、追跡可能な方法(簡易書留など)で送るようにしてください。

企業側は、郵送の方法を本人に説明したうえで、追跡番号の控えを提出してもらい、社内で記録として残しておくとよいでしょう。
将来的に本人が再び日本で働くことになった際「以前のカードをきちんと返納していたか」が在留資格審査で問われる可能性があります。そのため、証拠を残しておくことは、本人にも企業にもプラスになります。

郵送先

〒135‐0064
東京都江東区青海2-7-11 東京港湾合同庁舎9階
東京出入国在留管理局 おだいば分室

※封筒の左下に「在留カード等返納」と明記してください。

必要書類

  1. 在留カード本体
  2. 「在留カード等の返納について」(返納届)
  3. パスポートの出国スタンプや航空券のコピー(あれば)
  4. 本人が亡くなっている場合は、死亡証明書や戸籍謄本などの証明書類

参考:出入国在留管理庁 (参考書式)在留カード等の返納について

企業が準備しておくことは?

事務オフィスのイラスト

在留カードの返納をスムーズに進めるために、企業が確認しておくべきことがあります。退職・帰国が決まった段階で、しっかり対応しましょう。

退職・帰国予定の確認と返納の案内

退職願を受け取ったら、まずは本人が帰国するかどうかを確認してください。もし帰国する場合は、出国予定日や航空券の予約時期を聞き取り、空港で在留カードを返す必要があることを伝えましょう。

企業がカードを預かってしまうのではなく、退職面談や最終出勤日までに、返納に関する説明をきちんと行うことが大切です。
「出国時に返納すること」「返し忘れた場合は郵送になること」などを、口頭や書面で案内しておくと安心です。
また、本人が出国後に郵送で返納した場合は、追跡番号などの控えを提出してもらい、それを社内で保管しておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

返納届の準備と添付書類について

在留カードを郵送で返納する場合は、「在留カード等の返納について(返納届)」を一緒に送る必要があります。この書類は、入国管理局のホームページからPDFでダウンロードできます。
記入内容は、返納の理由や、誰が届出人かといった基本的な情報です。企業が代理で提出する場合は、会社名や担当者名、連絡先などを記載してください。
なお、委任状は法律上の必須書類ではありませんが、代理人の立場がわかりにくいケースでは、簡単な様式で用意しておくとスムーズに進むことがあります。

また、カードを郵送しても、入管から受け取りの通知は届きません。そのため、追跡できる方法(簡易書留など)で発送し、発送控えを本人または企業で保管しておくと、後日確認が必要になった際に役立つでしょう。

在留カードの返納手続きのポイント

在留カードの返納は本人の役割ですが、企業も基本的な流れを理解しておくことが大切です。ここでは、返納に関する注意点や、会社として知っておきたいポイントを紹介します。

返納を忘れた場合のリスク

在留カードを返納せずに放置していた場合、入管法第19条の22に違反する行為とみなされ、最大で20万円の罰金や1年以下の懲役が科される可能性があります。この罰則はあくまで本人に対して適用されるものです。

ただし、見落とされがちなのが「次の在留資格申請への影響」です。たとえば、以前働いていた外国人が再び日本で働こうとしても、前回のカード返納が確認できないと、審査に時間がかかったり、不許可になったりするケースがあります。
企業に法的な罰則はありませんが、トラブルが起きると「管理が不十分だった」と見なされ、今後の外国人採用活動に影響が出るおそれもあるでしょう。
そのため、退職・帰国の際には「なぜ返納が必要なのか」「返納できなかったときはどう対応すべきか」を丁寧に伝え、必要に応じてフォローできる体制を整えておくことが大切です。

帰国にともなって必要な手続き

外国人社員が母国に帰るときは、在留カードの返納だけでなく、いくつかの行政手続きや会社側の対応も求められます。

健康保険と厚生年金の手続き

社会保険(健康保険・厚生年金)に加入していた場合は、退職の翌日に資格を失います。
企業は「被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出し、健康保険証を忘れずに回収してください。

転出届と税金の精算

外国人も日本に住んでいれば、住民票があります。帰国の際は市区町村に「転出届」を出さなければなりません。また、住民税や国民健康保険(会社の保険に入っていなかった場合)に未納があるときは、出国前にきちんと精算しておく必要があります。

マイナンバーカードを持っている場合は、転出届と一緒に返却するよう案内しておくと安心です。返却しなかったとしても、転出届の提出によってカードの利用は停止されます。

退職証明書と源泉徴収票の発行

外国人本人が帰国後に、母国で税金や年金の手続きをすることもあります。その際、日本での収入や勤務実績を証明する書類が求められることがあります。
源泉徴収票は企業が発行する義務のある書類です。本人が帰国する前に必ず発行しておきましょう。
また、退職証明書や在職証明書については法律上の義務はありませんが、本人が希望する場合には柔軟に対応できるようにしておくと良いでしょう。再来日や就職の際に役立つことがあります。

脱退一時金の案内

厚生年金に加入していた外国人は、帰国後に一定の条件を満たすことで、納めた保険料の一部を「脱退一時金」として受け取れる制度があります。申請は帰国後に本人が行う必要がありますが、この制度を知らないまま帰国してしまうケースも少なくありません。

企業に案内義務はありませんが、希望があれば制度の存在を伝え、日本年金機構の英語ページや申請書類の情報を紹介しておくと親切です。

参考:日本年金機構 脱退一時金の制度

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さいごに

外国人社員の在留カード返納は、企業が直接対応する義務はありませんが、退職・帰国の際にしっかりと案内できているかどうかが信頼関係や今後の採用活動にも影響してきます。
この記事で紹介した内容をもとに、社内での対応体制を見直すきっかけにしていただければ幸いです。

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