日本国内の多くの企業にとって、労働力不足は喫緊の課題であり、その解決策の一つとして外国人材の採用が注目されています。外国人採用を推進するにあたり、国や地方自治体が提供する様々な助成金・補助金制度は、企業の負担を軽減し、より円滑な受け入れ体制の構築を後押しするものです。

しかしながら、「どの助成金が自社に適しているのか分からない」「申請手続きが複雑で難しそう」といった声も少なくありません。

また、制度の概要は理解していても、具体的な申請準備や採択後の注意点まで把握している企業はまだ多くないのが現状です。

当サイトでは既に、外国人採用に活用できる助成金の種類や、外国人採用全体の基本的な流れについて解説した記事を公開しています。

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本記事では、こちらの既存記事からさらに一歩踏み込み、外国人採用における助成金申請の具体的な手順、そして見落としがちな注意点に焦点を当て、貴社が助成金をより効果的に活用するための実践的な情報を提供いたします。

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第1章:助成金申請の前に押さえるべき最重要ポイント

助成金の申請を検討する前に、いくつかの重要な前提条件を確認し、準備を整えることが成功の鍵となります。

1. 自社の課題と助成金の目的を明確に紐付ける

まず、なぜ外国人採用において助成金を活用したいのか、その目的を明確にする必要があります。例えば、「専門知識を持つ人材を採用し、新規事業を立ち上げたい」「外国人従業員が働きやすい環境を整備し、定着率を向上させたい」「多言語対応を進め、インバウンド需要を取り込みたい」など、具体的な課題と、それを解決するための手段として助成金がどう役立つのかを明確にしましょう。

多くの助成金には、それぞれ設定された目的があります。自社の課題解決と助成金の目的が合致しているかを確認することが、適切な助成金を選定し、審査を通過するための第一歩となります。目的が曖昧なまま申請を進めると、計画の具体性に欠け、不採択となるリスクや、仮に採択されても期待した効果が得られない可能性があります。

2. 対象となる外国人の「在留資格」を再確認!助成金ごとの詳細条件

外国人採用で活用できる助成金は、対象となる外国人の在留資格によって利用できるものとできないもの、あるいは要件が異なる場合があります。自社が採用を検討している、または既に雇用している外国人の在留資格が、検討中の助成金の対象となっているか、必ず事前に確認してください。

例えば、厚生労働省が管轄する「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」では、雇用保険の被保険者となる外国人労働者(在留資格「外交」「公用」「特別永住者」を除く)を対象としています。一方、「キャリアアップ助成金」の正社員化コースなどでは、対象となる労働者が外国人の場合、就労に制限のない在留資格(例:「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」)や、特定の活動内容に基づく在留資格(例:「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」など、ただし帰国を前提とした「技能実習」などは対象外となる場合が多い)であることが求められます。

各助成金の詳細ページやパンフレット、申請要領には対象となる在留資格が明記されていますので、細部まで確認することが不可欠です。不明な点は、管轄の労働局やハローワークに問い合わせましょう。

3. 社内体制の構築と情報共有の重要性

助成金の申請準備から、採択後の計画実行、そして実績報告に至るまでの一連のプロセスは、多くの時間と労力を要します。そのため、社内で誰が中心となってこの業務を担当するのかを明確にし、必要な権限を与えることが重要です。人事担当者だけでなく、経理担当者や事業部門の責任者など、関連部署との連携も不可欠となります。

また、申請内容や進捗状況、助成金の目的などを社内で共有し、全社的な理解と協力を得ることも、計画のスムーズな実行と助成金の効果的な活用に繋がります。場合によっては、社会保険労務士など、外国人雇用や助成金申請に詳しい専門家への相談も有効な選択肢ですが、まずは社内での体制整備と情報共有を徹底することが基本となります。

参照:厚生労働省 「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

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第2章:【詳細ステップ解説】外国人採用助成金 申請から受給までの完全ロードマップ

助成金の申請から受給までは、一般的にいくつかのステップがあります。ここでは、その詳細な流れと各段階でのポイントを解説します。

ステップ1:徹底的な情報収集と最適な助成金の選定

まず、どのような助成金が存在し、自社のニーズに合致するものはどれか、情報を収集することから始めます。

  • 主な情報源:
    • 厚生労働省のウェブサイト: 「事業主の方のための雇用関係助成金」のページには、各種助成金の概要やパンフレット、申請様式などが掲載されています。
    • 都道府県労働局、ハローワークのウェブサイトおよび窓口: 地域ごとの情報や、より詳細な説明を受けることができます。
    • 地方自治体のウェブサイト: 都道府県や市区町村が独自に設けている助成金・補助金制度もあります。本社や事業所の所在地に応じて確認しましょう。
    • 中小企業基盤整備機構のウェブサイト「J-Net21」: 資金調達や助成金情報などがまとめられています。

これらの情報源から、自社の業種、企業規模、採用したい外国人の職種や在留資格、実施したい取り組み(例:研修、設備投資、就労環境整備など)に合致する助成金を選定します。複数の助成金が候補に挙がった場合は、支給額、支給要件、申請期間、手続きの煩雑さなどを比較検討し、最も効果的かつ現実的に活用できるものを選びましょう。併給が可能かどうかも重要な確認ポイントです。多くの助成金では、同一の経費に対して複数の助成金を重複して受給することはできません。

ステップ2:申請書類作成の極意 – 審査を通過するためのポイントとNG例

適切な助成金を選定したら、申請書類の作成に取り掛かります。これは審査の根幹となる非常に重要なプロセスです。

  • 共通して求められる主な書類(例):
    • 支給申請書
    • 事業計画書(または実施計画書、改善計画書など)
    • 登記事項証明書(法人の場合)
    • 雇用保険適用事業所設置届事業主控
    • 労働条件通知書、雇用契約書
    • 賃金台帳、出勤簿
    • 経費の支出を証明する書類(領収書、契約書など)

これらに加え、各助成金特有の書類が必要となります。必ず最新の申請要領を確認し、全ての必要書類を漏れなく準備してください。

事業計画書作成のポイント:

  • 具体性: 誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように行うのかを明確に記載します。抽象的な表現は避け、具体的な数値目標(例:離職率〇%削減、生産性〇%向上など)を盛り込むと説得力が増します。
  • 実現可能性: 計画が現実的で、実行可能であることを示す必要があります。無理な目標や、リソースを度外視した計画は評価されません。
  • 助成金の趣旨との整合性: 計画内容が、その助成金の目的や趣旨に合致していることを明確に示します。
  • 法令遵守: 労働関係法令や入管法など、関連法規を遵守した計画であることが大前提です。

よくあるNG例:

  • 記載漏れ、押印漏れ、添付書類の不足
  • 誤字脱字、判読しにくい手書き文字
  • 計画内容の矛盾、具体性の欠如
  • 助成金の対象とならない経費の計上
  • 虚偽の記載や事実と異なる内容

これらの不備は、審査の遅延や不採択に繋がるため、提出前に複数人で入念にチェックすることが重要です。

ステップ3:申請手続きの流れと期間 – オンライン申請の活用法

申請書類が整ったら、指定された窓口に提出します。提出先は助成金の種類によって異なり、主に都道府県労働局、ハローワーク、または地方自治体の担当課となります。

近年では、一部の助成金において電子申請システム(例:厚生労働省の「jGrants(Jグランツ)」や「雇用関係助成金ポータル」)を利用したオンライン申請が可能になっています。オンライン申請は、窓口への移動時間や郵送コストの削減、24時間申請可能といったメリットがあります。利用可能な場合は積極的に活用を検討しましょう。

申請から採択(または不採択)の通知までの期間は、助成金の種類や申請時期、審査状況によって異なりますが、数週間から数ヶ月程度かかるのが一般的です。大規模な助成金や申請が集中する時期は、さらに時間がかかることもあります。事業計画に影響が出ないよう、余裕を持ったスケジュールで申請準備を進めることが肝心です。

ステップ4:審査のポイントと面談・ヒアリング対策(該当する場合)

提出された申請書類は、管轄機関によって審査されます。審査では主に以下の点が確認されます。

  • 申請要件を満たしているか
  • 事業計画の妥当性、実現可能性、効果
  • 法令を遵守しているか
  • 過去に不正受給がないか

助成金の種類や申請内容によっては、書類審査に加えて、担当者による面談やヒアリング、実地調査が行われる場合があります。その際は、申請内容について具体的かつ論理的に説明できるよう、事前に準備しておく必要があります。想定される質問をリストアップし、回答を準備しておくと良いでしょう。誠実かつ協力的な姿勢で対応することが重要です。

ステップ5:採択決定後の手続きと計画実行、報告業務の注意点

審査の結果、採択(交付決定)となった場合は、交付決定通知書が送付されます。しかし、これで終わりではありません。

  • 交付申請・契約締結: 採択後、改めて交付申請手続きや、助成事業に関する契約を締結する必要がある場合があります。
  • 計画の実行: 承認された事業計画に基づいて、計画期間内に事業を実施します。この際、助成金の対象となる経費については、支払いの事実を証明する書類(領収書、振込控、契約書など)を適切に保管・管理することが極めて重要です。これらの書類は、後の実績報告時に提出を求められます。
  • 計画変更時の手続き: やむを得ない理由で事業計画に変更が生じる場合は、事前に管轄機関に相談し、必要な変更承認手続きを行う必要があります。無断での計画変更は、助成金の減額や取消しの対象となる可能性があります。
  • 実績報告: 事業計画期間が終了したら、定められた期限内に実績報告書を作成し、経費の証拠書類とともに提出します。実績報告書に基づき、助成金の支給額が最終的に確定されます。
  • 助成金の受給: 実績報告が承認されると、指定した口座に助成金が振り込まれます。多くの場合、助成金は後払いです。

これらの手続きを適切に行うことが、助成金を確実に受給するために不可欠です。

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第3章:見落とすと大損害も!外国人採用助成金活用の落とし穴と対策

助成金は非常に有用な制度ですが、いくつかの注意点や落とし穴も存在します。これらを理解し、対策を講じることが重要です。

「とりあえず申請」は危険!目的と手段の履き違えが招く失敗

助成金を受給すること自体が目的となってしまい、本来の事業目的や採用計画が疎かになってしまうケースが見受けられます。助成金はあくまで事業を支援する手段であり、その活用が企業の成長や課題解決に繋がらなければ意味がありません。自社の経営戦略や人事戦略に基づき、本当に必要な取り組みに対して助成金を活用するという意識が重要です。

不正受給のペナルティは想像以上に重い – 具体的な不正事例と防止策

意図的であるか否かにかかわらず、申請書類に虚偽の記載をしたり、事実と異なる報告をしたりして助成金を不正に受給した場合、厳しいペナルティが科されます。

  • ペナルティの例:
    • 助成金の全額または一部返還
    • 返還額に対する延滞金・加算金(違約金)の支払い
    • 企業名の公表
    • 将来の助成金申請資格の停止
    • 悪質な場合は刑事告発

不正受給とみなされるケースには、労働時間の改ざん、実際には行っていない研修の報告、対象外経費の不正請求などがあります。このような事態を避けるためにも、申請内容や報告内容は常に正確であること、そして関連書類は適切に保管することを徹底してください。社内でのチェック体制を強化することも有効な防止策です。

助成金ありきの採用計画が引き起こすミスマッチと早期離職

助成金の支給要件を満たすために、自社が本当に必要としている人材像からかけ離れた条件で採用を進めてしまうと、採用後のミスマッチや早期離職に繋がるリスクがあります。例えば、特定の在留資格を持つ外国人を採用することが助成金の要件である場合、その要件に固執するあまり、業務スキルや企業文化への適性が二の次になってしまうケースです。

採用はあくまで企業の成長戦略の一環であり、助成金はそのサポートツールです。自社の事業に必要なスキル、経験、価値観を持つ人材を採用するという本質を見失わないようにしましょう。

申請期間や要件変更の見落とし – 情報収集を怠るリスク

助成金制度は、国の政策や経済状況の変化に伴い、内容や要件、申請期間が変更されたり、廃止されたりすることがあります。特に年度の変わり目には注意が必要です。古い情報のまま準備を進めてしまうと、申請が無駄になる可能性があります。

常に最新の情報を公式サイトで確認する習慣をつけ、不明な点は管轄機関に問い合わせるようにしましょう。メールマガジンに登録したり、関連省庁のSNSをフォローしたりすることも有効です。

助成金以外のコストも考慮する – トータルコストの把握

助成金は、対象となる経費の一部または全部を補助するものですが、全ての費用がカバーされるわけではありません。例えば、採用コンサルタントへの依頼費用、一部の高度な専門研修の費用、外国人従業員の生活サポートにかかる間接的な費用などは、助成金の対象外となる場合があります。

助成金を活用する際も、事業全体のトータルコストを算出し、自己負担額を正確に把握した上で、資金計画を立てることが重要です。

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まとめ

外国人採用における助成金の活用は、企業の経済的負担を軽減し、外国人従業員が能力を発揮しやすい環境を整備するための有効な手段です。本記事では、外国人採用における助成金申請の基本的な考え方から具体的なステップ、そして活用時の注意点について解説しました。

重要なのは、助成金を受給すること自体を目的とするのではなく、あくまで企業の成長戦略や人材戦略の一環として、計画的かつ適切に活用することです。

そのためには、事前の情報収集、綿密な計画策定、正確な手続き、そして法令遵守の徹底が不可欠となります。

この記事が、貴社における外国人採用と助成金活用の取り組みの一助となれば幸いです。

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