【特定技能】「雇用契約書」の作り方 完全ステップガイド
特定技能外国人の受け入れで、雇用契約書と雇用条件書の作成は極めて重要です。この書類が不適切だと、在留資格(ビザ)の申請が不許可になり、後のトラブルにもつながりかねません。
日本人従業員との契約とは違い、特定技能制度には特有のルールがあります。
この記事は、公式情報を基に、契約書を作成するためのステップと不備をゼロにする実務上の注意点を徹底解説します。
実際に使用する参考様式のダウンロードができますのでぜひご活用ください。
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目次
特定技能の契約で必要な「2つの書類」

特定技能の雇用では、「雇用契約書」と「労働条件通知書(雇用条件書)」の2種類が登場します。
役割をしっかり分けて理解しましょう。
- 雇用契約書:企業と外国人の双方が合意した条件を証明する法的文書です。
- 労働条件通知書(雇用条件書):労働基準法に基づき、労働条件を明示するための書類です。
多くの場合、出入国在留管理庁の参考様式は「雇用契約書 兼 労働条件通知書」として一体化しています。
この様式を使うと、作成がスムーズです。
通常の雇用契約書との決定的な違い
特定技能の契約は、普通の契約より厳しい要件が求められます。
- 母国語での説明・交付:本人が理解できる言語での説明と書類の交付が義務です。
- 報酬の「日本人と同等以上」:同等の業務を行う日本人従業員と比べて、報酬額が同等以上である必要があります。
- 支援計画との整合性:契約内容が、外国人への支援計画と一致していなければなりません。
契約書に記載すべき重要項目と注意点
入管審査をクリアするために、特に重要な項目と、その記載のポイントを確認しましょう。
| 項目 | 記載のポイント |
| 報酬(賃金) | 基本給、諸手当、支払方法を明記。「日本人と同等以上」であることを証明できる記載が必須です。 |
| 業務内容・就業場所 | 在留資格で許可された業務範囲内を具体的に。複数の勤務地がある場合はすべて記載しましょう。 |
| 契約期間 | 特定技能1号の上限である通算5年以内で設定します。 |
| 労働時間・休日 | 原則としてフルタイム勤務です。有給休暇の付与は労基法通りに記載します。 |
| 帰国費用負担 | 企業側の責による解雇の場合、企業が帰国費用を負担する義務があることを明記します。 |
報酬設定の最大の注意点
「日本人と同等以上」の報酬設定は、入管審査で最も厳しくチェックされます。
- 比較対象:同等の業務に従事する日本人従業員の賃金水準を基準にする必要があります。
- 証明準備:日本人従業員の賃金台帳や給与規定をいつでも提出できるよう準備しておきましょう。
雇用契約書作成の7ステップ
ステップ1:労働条件を確定し、証明書類を準備
外国人本人の労働条件(業務内容、賃金、労働時間など)を決めます。
再三になりますが、かならずその条件が「日本人と同等以上」であることを証明するための給与規定や賃金台帳を準備しましょう。
比較対象となる日本人社員の選定理由や、賃金規定、就業規則などをチェックしておきましょう。
参照: 出入国在留管理庁ウェブサイト内 「特定技能 雇用契約書」
ステップ2:契約書・就業条件明示書の様式をダウンロード
出入国在留管理庁のウェブサイトから、公式の参考様式をダウンロードします。

特定技能外国人の母国語併記の様式を使うのが最も確実です。
・多言語対応:外国人本人が理解できる言語(通常は母国語)で、日本語と併記されている様式を選びましょう。これが、後の「母国語での説明・交付」の基礎となります。
・兼用の活用:「雇用契約書 兼 労働条件通知書」の様式を活用すると、労基法上の要件も同時に満たせます。
| 言語 | 様式 |
| 英語 | (WORD) (EXCEL)(※2) |
| ベトナム語 | (WORD) (EXCEL)(※3) |
| タガログ語 | (WORD) (EXCEL)(※3) |
| インドネシア語 | (WORD) (EXCEL)(※3) |
| タイ語 | (WORD) (EXCEL)(※3) |
| ミャンマー語 | (WORD) (EXCEL)(※3) |
| カンボジア語 | (WORD) (EXCEL)(※3) |
| モンゴル語 | (WORD) (EXCEL)(※3) |
| ネパール語 | (WORD) (EXCEL)(※3) |
| 中国語 | (WORD) (EXCEL)(※3) |
参考様式第1-3号 健康診断個人票
参考様式第1-5号 特定技能雇用契約書
参考様式第1-6号 雇用条件書
参考様式第1-10号 技能移転に係る申告書
参考様式第1-13号 就業条件明示書(※2)(※3)
参考様式第1-16号 雇用の経緯に係る説明書
参考様式第1-17号 1号特定技能外国人支援計画書(※2)
参考様式第5-7号 報酬支払証明書
参考様式第5-8号 生活オリエンテーションの確認書
参考様式第5-9号 事前ガイダンスの確認書
(※2)可変データについて、EXCELは参考様式第1-13号及び1-17号のみ、それ以外の参考様式はWORDでご利用いただけます。
(※3)可変データについて、EXCELは参考様式第1-13号のみ、それ以外の参考様式はWORDでご利用いただけます。
引用:出入国在留管理庁 特定技能関係の申請・届出様式一覧
今回は「参考様式第1-5号 特定技能雇用契約書」 「参考様式第1-6号 雇用条件書」を使用するのでWORDファイルをダウンロードします。
◼️特定技能外国人の採用方法やコストについて知りたい方はこちら!
➡︎「育成就労制度」の創設と、特定技能制度を理解する
ステップ3:必須記載事項の入力と確認
様式に従って、契約内容を正確に入力します。特に以下の項目は、入管審査で厳しくチェックされます。
- 報酬(賃金):基本給、手当、計算方法、支払い方法を明確に。日本人と同等以上であることを裏付ける記載が必要です。
- 業務内容・就業場所:特定技能の許可された範囲内の業務内容を具体的に記載します。複数の勤務地がある場合はすべて記載が必要です。
- 帰国費用負担:企業の責によらない解雇等の場合、企業が帰国費用を負担する義務があることを明記します。
ステップ4:支援計画書との整合性の確保
雇用契約書を作成する際、別途作成する「1号特定技能外国人支援計画書」の内容と矛盾がないかを確認します。
特に注意:支援にかかる費用を外国人に負担させる場合の記載(支援計画書に明記されているか)や、一時帰国時の休暇付与に関する事項など、契約と支援内容が一致しているかをチェックしましょう。
ステップ5:【法的義務】母国語での十分な説明の実施
作成した雇用契約書の内容について、外国人本人が完全に理解できる言語(母国語)で、口頭で丁寧に説明します。
- 重要なプロセス:単に書面を渡すだけでは不十分です。特に報酬や労働時間、帰国に関する条件など、重要な事項について、質問に答えながら確認しましょう。
ステップ6:署名・捺印と交付
外国人本人が内容を理解・納得したことを確認した後、企業側と外国人本人の双方で署名(または記名押印)を行います。
・交付と保管:契約書(および就業条件明示書)は2部作成し、企業側と外国人本人がそれぞれ1部ずつ保管します。
ステップ 7: 在留資格申請書類への添付
完成し、双方で取り交わされた雇用契約書(写)は、特定技能外国人の在留資格申請(ビザ申請)時に必須の添付書類として使用されます。
- 関連書類:「特定技能外国人の報酬に関する説明書」など、契約内容を裏付ける書類と合わせて提出します。
- その後の届出:雇用開始後、契約内容に変更があった場合は、変更日から14日以内に出入国在留管理庁への届出が必要になるため、契約書の管理も重要です。
まとめ:正確な契約書作成が、特定技能人材活躍の第一歩
特定技能雇用契約書の作成は、細かなルールが多く、初めての場合は戸惑うこともあるかもしれません。
しかし、ここで紹介したステップと注意点を守り、公式の参考様式を活用すれば、不備なく作成を進めることができます。
正確でわかりやすい雇用契約書は、コンプライアンスを確保するだけでなく、特定技能外国人の方が安心して日本で働き、活躍するための基盤となります。
もし不明な点や判断に迷う点があれば、安易に自己判断せず、出入国在留管理庁や労働基準監督署、あるいは特定技能の受け入れに詳しい行政書士や弁護士、登録支援機関などの専門家に相談することをおすすめします。
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