外国人採用で、日本人と同じ雇用契約書をそのまま使っていませんか?
外国人を雇用する場合、労働基準法だけでなく「出入国管理法(入管法)」への適合が不可欠です。不適切な契約書は、ビザ不許可や不法就労助長罪につながるリスクをはらんでいます。

この記事では、外国人雇用に特有の必須条項やトラブル防止策、労働条件通知書との違いについて、実務目線でわかりやすく解説します。

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外国人の雇用契約書で必ず押さえるべき「3つの鉄則」

外国人との雇用契約書は、働く条件をはっきりさせてトラブルを防ぐための書類です。
さらに、ビザの申請で内容を確認される大切な書類でもあり、会社がルールを守っているかどうかを示す役割も持っています。

外国人採用をスムーズに進めるため、まずは次の3点を最優先で確認しましょう。

  1. 「停止条件付」の条項を入れる:ビザが不許可になった場合、契約を白紙に戻せるようにします。
  2. 「職務内容」をビザの要件に合わせて具体的に書く:どんな仕事をするのかをはっきり書き、単純な作業だけの仕事だと誤解されないようにします。
  3. 「母国語(または英語)」を併記する:内容の思いちがいを防ぎ、手続きへの信頼を高めます。

雇用契約書には「会社」と「労働者」双方の署名(サイン)が必要

契約書にサインしている人の画像

雇用契約書は、会社と働く人の双方が内容に同意していることを示す書類です。
とくに外国人雇用では、本人が内容を理解し、納得したうえでサインしているかどうかが重視されます。

入管の審査でも、両方の署名があることで、きちんと合意している契約だと判断されやすくなります。そのため、雇用契約書は外国人採用に欠かせない書類なのです。

雇用契約書と「労働条件通知書」のちがいとは?

外国人雇用では、雇用契約書と労働条件通知書をセット、または一体にして作成するケースが多くなっています。

項目労働条件通知書雇用契約書
役割会社が労働条件を伝える書類会社と労働者が合意したことを示す書類
作成義務あり(労働基準法第15条)任意(ただし実務上は必須)
入管での見られ方内容の確認に使われる署名があるため、合意の証拠として重視される

雇用契約書に必ず記載する14の項目

契約書を作成するために関連書類を集めている画像

雇用契約書には、法律にもとづき、必ず書かなければならない項目があります。

内容は、大きく分けて「必ず記載する項目(絶対的明示事項)」と、「制度がある場合に記載する項目(相対的明示事項)」の2種類です。

区分主な内容
絶対的明示事項1. 労働契約の期間
2. 働く場所と仕事内容
3. 勤務時間、休憩、休日、休暇
4. 給料の決め方と支払い方法
5. 退職や解雇のルール
6. 昇給のしくみ
相対的明示事項7. 退職金の有無
8. 賞与(ボーナス)の有無
9. 食費や仕事道具の負担
10. 安全と健康に関する決まり
11. 研修や仕事のトレーニング
12. 仕事中のけがや事故への補償
13. 表彰や注意・処分のルール
14. 休職のルール

1. 労働契約の期間

働く期間を定める「有期契約」か、期間を定めない「無期契約」かを明確にします。
期間の定めがある場合は、更新の有無や判断の基準まで含めて記載が必要です。

記載のポイント

  • 契約期間の有無を明記する
  • 更新の有無と判断基準を書く
  • ビザの期限切れによる不法就労を防ぐ配慮を盛り込む

2. 働く場所と仕事内容

実際に働く場所と、どのような仕事を行うのかを具体的に記載します。ビザの申請で最も重視される項目の一つです。

記載のポイント

  • ビザの許可範囲に合った職務内容を書く
  • 単純作業と誤解されないよう、具体的な業務内容を示す
  • 使用するツールや業務の頻度にも触れる

3. 勤務時間、休憩、休日、休暇

1日の勤務時間、休憩時間、休日や休暇のルールを記載します。

記載のポイント

  • 勤務時間と休憩時間を明確にする
  • シフト制や変形労働時間制の場合は、その仕組みを書く
  • 休日や有給休暇の考え方を示す

4. 給料の決め方と支払い方法

給料袋に入ったお金の画像

給料の金額、計算方法、締め日や支払日などを記載します。

記載のポイント

5. 退職や解雇のルール

定年や自己都合退職の手続き、解雇となる場合のルールを記載します。

記載のポイント

  • 解雇となる理由を具体的に定める
  • 就業規則との整合性を取る
  • ビザ更新ができなかった場合の扱いを明記する

6. 昇給のしくみ

給料が見直される時期や、判断の基準を記載します。

記載のポイント

  • 見直しの時期を書く
  • 評価の基準を示す

7. 退職金の有無

退職金制度がある場合は、その内容を記載します。

記載のポイント

  • 対象者や計算方法を書く
  • 帰国時の受け取り方法を想定する
  • 制度がない場合は「なし」と明記する

8. 賞与(ボーナス)の有無

賞与の支給有無や考え方を記載します。

記載のポイント

  • 支給の有無を書く
  • 業績や評価によって決まることを示す
  • 必ず支給されるものではないと伝える

9. 食費や仕事道具の負担

寮費、水道光熱費、制服代など、本人が負担する費用がある場合に書きます。

記載のポイント

  • 寮費・食費・制服代など、負担する費用の内容を書く
  • 給料から差し引く場合は、金額と方法を明記する
  • 実費相当額であることを示し、不当に高くならないよう配慮する

10. 安全・衛生に関する決まり

仕事中のけがを防ぐためのルールや、健康管理についての取り決めを記載します。

記載のポイント

  • 定期健康診断の実施について書く
  • 安全教育や作業時のルールを示す
  • 保護具の着用など、現場での決まりを明確にする

11. 研修や仕事のトレーニング

仕事に必要な知識や技術を身につけるための、研修や教育制度について記載します。

記載のポイント

  • 研修の有無や内容を書く
  • 試用期間がある場合は、その条件を反映する
  • 仕事を通じたスキル向上の流れを示す

12. 仕事中のけがや事故への補償

仕事中に起きたけがや事故に対する補償について記載します。

記載のポイント

  • 労災保険による補償があることを書く
  • 会社独自の見舞金や支援制度があれば記載する
  • 業務外の病気やけがへの対応があれば触れる

13. 表彰や注意・処分のルール

表彰式の画像

成果を出した場合の表彰や、ルール違反があった場合の処分について記載します。

記載のポイント

  • 表彰の対象となる行動を書く
  • 注意や処分の対象となる行為を具体的に示す
  • 法律の範囲内で行うことを前提にする

14. 休職のルール

病気などで長期間休む場合の取り扱いについて記載します。

記載のポイント

  • 休職できる理由や期間を書く
  • 復職時の手続きを示す
  • 休職中の賃金の有無や、社会保険料の自己負担について触れる

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外国人雇用で実務上必須の「特有条項」とは?

ポイントを紹介する女性の画像

日本人向けの契約書には出てこない、「在留資格」に関わるリスクを抑えるため、外国人雇用ではいくつか特有の条項を盛り込む必要があります。

ここでは、実務上とくに重要な4つの条項を紹介します。

特有条項主な目的メリット
停止条件付契約ビザ不許可時のリスク回避不要な給与支払い義務をなくす
各種届出義務不法就労の未然防止会社のコンプライアンス維持
多言語併記相互理解の徹底言った・言わないのトラブル防止
帰国費用の取扱い離職時の金銭トラブル防止コスト負担の範囲を明確化

停止条件付契約の導入

採用が決まり契約を結んだあとでも、入管からビザが不許可とされる可能性はゼロではありません。
この条項がない場合、就労できない状態でも雇用契約が有効なままとなり、不法就労とみなされるリスクや、会社に給与支払い義務が生じるなど、法的トラブルにつながるおそれがあります。

条文例

「本契約は、労働者が日本国において就労可能な在留資格を有効に取得、または更新することを停止条件とする。万が一不許可となった場合、本契約は遡及して無効となる。」

在留資格の確認と届出義務

外国人労働者に対し、住所変更や在留カードの更新、在留資格の変更があった場合は、速やかに会社へ報告する義務を定めます。

実務のポイント

  • 在留カードのコピーを会社で保管する
  • 有効期限をシステムで管理する
  • 期限切れの1〜3か月前から更新を促す体制を作る

これにより、不法就労助長罪のリスクを現実的に回避しやすくなります。

多言語併記

「契約内容を理解していなかった」という主張を防ぐため、契約書は日本語と母国語(または英語)を併記します。

重要ポイント

  • 言語優先条項(日本語と翻訳文で解釈が分かれた場合は、日本語を優先する)と明記する
  • 専門的な翻訳が難しいときは、厚生労働省の対訳サンプルを活用する

帰国費用の取扱い

とくに特定技能などの制度では、本人が帰国費用を用意できない場合、会社が負担する義務が生じるケースがあります。

実務のポイント

  • 会社負担となるケースを明確にする
  • 自己都合の早期退職など、本人負担とするケースを切り分ける
  • いずれも法令の範囲内で具体的に記載する

離職時の不要な金銭トラブルを防ぐための、重要なリスクヘッジです。

外国人の雇用契約書に関するQ&A

Q. 日本語の契約書だけで契約しても、法的有効性はありますか?

A. 法的には有効ですが、推奨されません。

労働者が契約内容を正しく理解していない場合、あとから「不利益な契約を強制された」と主張されるおそれがあります。また、入管から本人同意の有無を疑問視されるケースも見られます。
トラブルを防ぐためにも、翻訳文を添えるか、二か国語併記の契約書にしておくことが望ましいでしょう。

Q. 契約書に記載した業務と違う仕事をさせても大丈夫ですか?

A. いいえ、認められていません。法律違反になります。

在留資格は「許可された業務内容で働くこと」を前提に与えられています。
契約書に記載した専門業務以外の仕事を継続的に行わせることはできません。
たとえば、通訳として雇用したにもかかわらず、継続して清掃やレジ打ちを行わせている場合、不法就労と判断され、会社と本人の双方が処分を受ける可能性があります。

Q. スマホやパソコンでサイン(電子署名)してもいいですか?

A. はい、現在は認められるケースが一般的です。

ただし、本人が契約内容を確認したうえで同意したことが、客観的に確認できる必要があります。
同意の日時や操作履歴が記録として残る、信頼性の高い電子署名システムを利用するようにしましょう。

さいごに

外国人との雇用契約書は、単なる事務手続きではありません。会社と労働者の双方を守るための盾としての役割があります。

ここまでのポイントをふりかえり、次の点をおさえましょう。

  1. 労働基準法にもとづく明示事項を網羅し、法令を遵守する
  2. ビザの要件に合った職務内容を具体的に記載する
  3. 停止条件条項を入れ、不許可のリスクに備える
  4. 多言語併記により、相互理解とコンプライアンスを徹底する

作成にあたっては、厚生労働省の多言語テンプレートや、出入国在留管理庁の特定技能向けフォーマットを参考にするとスムーズです。

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