外国人材の活躍が企業成長のカギとなる現代において、優秀な人材にいかに長く定着してもらうかは、人事の重要な課題です。

その定着を考える上で、外国籍従業員にとって大きな関心事となるのが「永住権の取得」になっています。永住権は、在留期間の制限なく日本(あるいは当該国)に居住できる権利であり、生活基盤の安定に直結します。採用担当者として永住権制度への理解を深めることは、外国人従業員のキャリアプランやモチベーションを理解する上で役立ちます。

この記事では、日本の永住権取得の難易度について、ほかの5か国と比較しながら解説し、永住権を持つ人材が評価される理由についても触れていきます。

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日本の永住権取得難易度

結論から述べると、日本の永住権取得は、特定の要件を満たす必要があり、一般的に「難しい」とされています。ただし、条件が明確に定められており、それらを着実に満たすことで取得は可能です。

日本の永住許可(永住権)を得るためには、出入国在留管理庁が定める複数の要件を満たす必要があります。主なものは以下の3つになります。

素行が善良であること

法律を遵守し、日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることが求められます。納税義務(所得税、住民税、年金、医療保険料など)を適正に履行しているかどうかも厳しく審査されます。

独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

公共の負担にならず、その有する資産や技能などから見て将来において安定した生活が見込まれることが必要です。世帯単位で判断され、安定した収入が継続しているかが重視されます。

その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

原則10年以上継続して日本に在留している必要があります。この期間のうち、就労資格(「技術・人文知識・国際業務」など)または居住資格をもって継続して5年以上在留していなければなりません。

また、罰金刑や懲役刑などを受けていないこと、納税などの公的義務を履行していること、現に有している在留資格について、最長の在留期間(多くの場合3年または5年)をもって在留していること、公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないことが求められます。

特に「原則10年の在留期間」は、他国と比較して長い要件とされることがあります。ただし、日本人・永住者の配偶者等や定住者、難民認定を受けている者、そして「高度専門職」のポイントが一定以上の者などについては、この10年の期間が緩和される特例があります(例:高度専門職ポイント70点以上で3年、80点以上で1年)。

参照:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン

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5か国との比較:永住権取得要件と難易度

カナダ

カナダは移民受け入れに積極的な国として知られ、永住権取得の主要な方法として「エクスプレス・エントリー(Express Entry)」というポイント制度を導入しています。

年齢、学歴、職務経験、英語またはフランス語の能力などがポイント化され、高得点者が永住権申請に招待されます。特定の技能や経験を持つ人材にとっては、取得までの道筋が比較的明確で、計画的に準備を進めやすいシステムと言えます。

アメリカ

アメリカの永住権(グリーンカード)取得方法は多岐にわたります。家族呼び寄せ、雇用ベース(EBカテゴリ)、投資、DVプログラム(抽選永住権)などがありますが、雇用ベースの永住権は、職種や学歴に応じてカテゴリが分かれ、申請枠の制限や長い待機期間が発生することも少なくありません。

全体的にプロセスが複雑で、取得までの期間も予測しにくい側面があります。

オーストラリア

オーストラリアもカナダ同様、ポイント制度(SkillSelect)が永住権取得の主要なルートの一つです。

特に国内で不足しているとされる職業リスト(Skilled Occupation List)に該当するスキルを持つ人材や、特定の地域への移住を希望する人材を優先する傾向があります。年齢、英語能力、学歴、職務経験などが評価され、ポイントが高い候補者から招待されます。

求められるスキルレベルや英語能力の基準は高く、競争も激しいとされています。

ニュージーランド

ニュージーランドもポイントに基づく技能移民カテゴリー(Skilled Migrant Category Resident Visa)が主な永住権取得方法です。年齢、学歴、職務経験、そしてニュージーランド国内での熟練技能職のジョブオファーなどがポイント評価の対象となります。

国内での就労実績や雇用主からのサポートが有利に働くことが多いのが特徴です。

比較のポイント

各国の方針により、重視される点が異なります。

カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、国の発展に必要なスキルや能力を持つ人材をポイント制で評価し、積極的に受け入れる傾向が見られます。一方、アメリカは多様なルートがありますが、プロセスが複雑で時間がかかる場合があります。

日本は、一定期間日本に滞在し、社会に貢献し安定した生活を送っていることを重視する傾向があると言えるでしょう。

参照:Government of Canada「Immigration, Refugees and Citizenship Canada」、USCIS「U.S. Citizenship and Immigration Services」ほか

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永住権を取得している人は優秀?

日本の永住許可の審査が厳格であることは、逆に言えば、永住権を持つ外国人材が一定の基準を満たしていることの証明ともとらえられます。永住権を取得しているという事実は、その人物が持つ資質や日本社会への適合性を示す一つの指標となるのです。

長期的な安定性と日本への貢献

原則10年(高度人材等の特例を除く)という長期の在留要件を満たしていることは、その人物が腰を据えて日本で生活し、キャリアを築いてきた証です。これは、短期的な視点ではなく、長期的に日本社会へ貢献する意思と実績があることを示しています。

経済的な自立と安定性

生計を営んでいることは、安定した職業に就き、継続的に収入を得て、公的な支援に頼らず生活できる経済基盤があることを意味します。これは、経済的な信頼性や将来の安定性を示す要素となります。

高い規範意識と社会への適合

素行が善良であることは、納税や社会保険料納付といった公的義務をきちんと果たし、日本の法律や社会ルールを遵守してきたことを証明します。これは、社会の一員としての責任感や規範意識の高さを示しています。

日本社会への適合性と貢献

この要件は、その人物の永住が日本国の利益になる、と公的に認められたことを意味します。これは、その人物が日本社会に受け入れられ、貢献している(あるいは将来的に貢献することが期待される)ことの客観的な評価と言えるでしょう。

もちろん、「優秀さ」の定義は多岐にわたり、永住権の有無だけで人材の能力や価値の全てを測ることはできません。

しかし、日本の厳格な永住許可要件をクリアしたということは、その人物が「長期間日本社会に貢献し、経済的に安定し、法律を遵守する、信頼性の高い人材」であることを示す、客観的な要素の一つと評価することは可能でしょう。

採用活動において、永住権を持つ候補者は、そのような信頼性の高さを期待できる側面があると言えます。

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おわりに

日本の永住権取得は、長期の在留実績や安定した経済基盤、法令遵守などが求められ、他国の制度と比較しても一定のハードルがあります。しかし、その厳格さゆえに、永住権を持つ人材は、日本社会への適合性や貢献度、そして信頼性といった点で、一定の評価がなされていると考えることができます。

外国人採用においては、候補者のスキルや経験だけでなく、長期的な定着や日本社会への貢献意欲も重要な要素となります。永住権制度への理解は、そうした多角的な視点から人材を見極める上で、一つの助けとなるでしょう。

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