高度人材ポイント制で永住権優遇あり?|自分でできる評価シミュレーションと基準点達成のコツ
近年、グローバル化の進展や国内の労働力不足を背景に、外国人材の活用は多くの企業にとって重要な経営課題となっています。特に、専門的な知識や技術を持つ優秀な外国人材の獲得競争は激しさを増しています。
このような状況において、注目すべき制度の一つが「高度人材ポイント制」です。これは、特定の分野で高い能力を持つ外国人材に対し、ポイント評価をおこない、基準を満たした場合に出入国在留管理上の優遇措置を与える制度です。
この制度を理解し活用することは、優秀な外国人材の採用を有利に進め、採用後の定着を促進するうえで役立ちます。
この記事では、外国人採用をご担当されている皆様に向けて、高度人材ポイント制の基本的な仕組みから、企業や外国人材本人にとってのメリット、ポイント計算の方法、永住権申請時の優遇措置まで、分かりやすく解説します。
目次
高度人材ポイント制とは

高度人材ポイント制は、日本経済の活性化を目的として、国内外から優秀な人材を呼び込むために2012年5月7日に創設されました。
申請者の学歴、職歴、年収、年齢などを項目別にポイント化し、その合計が70点以上に達した場合に「高度専門職」の在留資格が付与され、様々な優遇措置が受けられます。
対象となる活動
高度人材ポイント制の対象となる活動は、在留資格「高度専門職1号」のなかで、3つの類型に分かれます。従事する活動に対応するポイントで自分で計算し、認定を受ける必要があります。
(イ) 高度学術研究活動
日本の公私の機関との契約に基づき、研究、研究指導、または教育をおこなう活動を指します。大学教授や研究機関の研究者などが該当します。
(ロ) 高度専門・技術活動
日本の公私の機関との契約にもとづき、自然科学または人文科学分野の専門的な知識や技術を要する業務に従事する活動です。ITエンジニア、新技術開発者、国際法律専門家などが該当します。
(ハ) 高度経営・管理活動
日本の公私の機関において、事業の経営または管理に従事する活動です。企業の経営者、役員、上級管理職などが該当します。
高度人材の優遇措置
通常、永住権申請には原則10年以上の日本での継続的な在留が必要とされますが、高度人材ポイント制を利用することで、この期間が最短で3年または1年に短縮されます。
具体的には、合計ポイントが70点以上の場合は3年、80点以上の場合は1年の在留で永住権の申請資格を得ることが可能となります。
ただし、この在留期間の短縮は優遇措置の一つであり、永住権を取得するためには、善良な素行、独立した生計を維持できる能力、そして日本の国益に貢献していること(納税や社会保険料の納付義務の履行を含む)といった、一般的な永住許可要件も満たす必要があります。
この期間短縮のほかにも、年収によって、配偶者の就労や複合的な在留活動が許可されます。
(参照:出入国在留管理庁「高度人材ポイント制とは?」)
高度人材ポイントの計算法

高度人材として認定されるためには、合計で70点以上を獲得する必要があります 。さらに、永住権申請の在留期間を最短の1年に短縮するためには、80点以上が必要となります 。
ポイントは、「学歴」「職歴」「年収」「年齢」といった基本項目と、「研究実績」「資格」「日本語能力」などのボーナス項目を合算して計算されます。
ポイントカテゴリーの詳細
学歴
最大30点。博士号(30点)、修士号(20点)、学士号(10点)など。複数の分野での博士号・修士号等保持者には追加点(5点)があり、特定のトップレベル大学(法務大臣が告示で定める大学)卒業者にも追加点(10点)があります 。
職歴
活動類型により最大25点がプラスされます。関連する実務経験年数に応じてポイントが付与されます(例:10年以上は20点(イ/ロ)か25点(ハ)、7年以上は15点、5年以上は10点、3年以上は5点)。
年収
最大40点がプラスされます。年収額に応じてポイントが付与されますが、年齢区分によってポイントが付与される最低年収額が異なります(例:1,000万円以上は40点、800万円以上は30点)。また、活動類型(ロ:高度専門・技術活動、ハ:高度経営・管理活動)によっては、ポイントに関わらず最低年収300万円以上が必要となります 。
年齢
最大15点がプラスされます。若い申請者ほど高いポイントが得られます(例:29歳以下は15点、30歳~34歳は10点、35歳~39歳は5点)。
ボーナスポイント
研究実績や保有する国家資格、日本語能力などに応じてポイントがプラスされる場合があります。
(参照:出入国在留管理庁「ポイント評価の仕組みは?」)
モデルケースで見るポイント達成シミュレーション

高度人材ポイント制の仕組みは複雑に見えるかもしれませんが、具体的な人物像を想定すると、どのようにポイントが計算されるのかが分かりやすくなります。ここでは、70点と80点の基準を達成するためのモデルケースを2つご紹介します。
モデルケース1:70点以上を達成するITエンジニア(28歳)の例
海外のトップレベル大学を卒業し、日本のIT企業で働く28歳のエンジニアを想定してみましょう。
- 学歴:学士号(10点)に加え、「トップレベル大学」卒業のボーナス(10点)で合計20点。
- 職歴:ITエンジニアとしての実務経験5年で10点。
- 年収:28歳で年収600万円の場合、20点。
- 年齢:「29歳以下」の区分に該当し、15点。
- ボーナス:日本語能力試験N2に合格しているため10点。
これらのポイントを合計すると75点となり、70点の基準をクリアします。この結果、「高度専門職1号」の認定を受けられ、永住権申請までの期間が3年に短縮されるなどの優遇措置の対象となります。
モデルケース2:80点以上を達成する研究職(33歳)の例
次に、製薬会社で働く博士号を持つ33歳の研究職を想定し、永住権申請の最短ルートである80点以上を目指すケースを見てみましょう。
- 学歴:博士号を取得しているため、最大の30点。
- 職歴:研究職としての実務経験7年で15点。
- 年収:33歳で年収850万円の場合、30点。
- 年齢:「30歳~34歳」の区分に該当し、10点。
- ボーナス:日本語能力試験N1に合格しているため15点。
合計は100点となり、80点の基準を大きく上回ります。この場合、日本での在留期間がわずか1年で永住権の申請資格を得ることが可能になります。
ポイントが基準値を下回った場合のリカバリープラン
高度人材としての認定を受けた後も、ライフステージの変化によってポイントが変動し、基準値を下回ってしまう可能性があります。しかし、事前に対策を知っておけば、慌てずに対処できます。
ケース1:転職によって年収が下がった場合
キャリアチェンジやワークライフバランスの見直しのために転職し、年収が下がってポイントが減少したとします。(例:年収800万円→700万円で5ポイント減) このような場合、日本語能力の向上が有効な対策となります。例えば、日本語能力試験N2に合格すれば10点、N1なら15点が加算されるため、年収減によるポイント減少分を十分に補うことが可能です。
ケース2:年齢が上がりポイントが下がった場合
高度人材ポイント制では、若い人材が高く評価されるため、年齢を重ねるとポイントが減少します。特に39歳から40歳になるタイミングでは、年齢ポイントが5点から0点になり、合計点が70点を下回ってしまう可能性があります。 この場合の対策としては、現職に関連する日本の国家資格を取得することが挙げられます。資格に応じて5点または10点が加算されるため、年齢による減少分をカバーし、ポイントを維持することができます。
(参照:どのような優遇措置が受けられる? | 出入国在留管理庁)
おわりに

高度人材ポイント制は、専門的なスキルを持つ優秀な外国人材を採用・維持したい企業にとって、非常に有効な制度です。ポイント計算や申請手続はやや複雑な側面もありますが、そのメリットは企業、外国人材双方にとって大きいものです。
特に、永住権取得への道筋が明確になる点は、日本での長期的な活躍を希望する外国人材にとって大きな魅力となります。
この記事で解説した内容をもとに、高度人材ポイント制への理解を深め、自社の外国人採用戦略にぜひお役立てください。最新かつ詳細な情報については、必ず出入国在留管理庁のウェブサイトをご確認いただくようお願いいたします。
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