日本で生活する外国籍の方が離婚した場合、その方の「永住権」や「配偶者ビザ」といった在留資格にどのような影響が及ぶのでしょうか。在留資格は日本での活動の法的基盤となるため、身分関係の変動がもたらす影響を正確に理解しておくことは重要です。

本記事では、外国籍の方が離婚した場合、特に「永住権」および「配偶者ビザ」にどのような影響があるのか、またその時に留意しておくべき点を、行政機関の情報をもとに解説していきます。

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永住者が離婚したら永住権はなくなるのか

まず、日本での永住権を持つ人が離婚した場合について見ていきましょう。

永住権とは

「永住者」の在留資格は、在留期間の更新を必要とせず、日本での活動内容にも原則として制限がない、非常に安定した在留資格です。法務大臣が永住を認める者に対して付与されます。

離婚しても永住権はなくならない

原則として、永住者が離婚しても永住権は失われません。

永住権は、個人の日本における生活状況や素行、日本の国益への適合性などを総合的に審査された結果、許可されるものです。そのため、日本人や永住者である配偶者と離婚したという事実のみをもって、直ちに永住権が取り消されることはありません。

また、離婚した事実を出入国在留管理庁に届け出る法的な義務もありません。

永住権を失うのはどんなとき?

それでは「永住権の取消」について、ケースごとにご紹介いたします。

ケース1:犯罪行為への加担など、罪を犯した場合

重大な犯罪を犯してしまった場合、永住権が取り消されることがあります。
具体的な例としては、2023年に東京で発生した詐欺事件に関わった外国人の永住権が取り消されたケースがあります。この事件では永住権を持っていた外国人が、詐欺グループのメンバーとして活動していたことが判明し、裁判で有罪判決を受けたあとに永住権が取り消されました。

このような刑事犯罪、再犯率の高い犯罪(窃盗、暴行など)、テロ行為、スパイ行為、反社会的行為なども、永住権の取消しの理由となります。

ケース2:出入国管理法違反

虚偽申請や不法滞在など、出入国管理法に違反した場合も、永住権は取り消されることがあります。具体的には2022年にフィリピン出身の女性が、永住権申請の際に虚偽の書類を提出していたことが発覚、その後に永住権が取り消されました。
このようなケースではただ永住権の取り消しだけではなく、「営利目的在留資格等不正取得助長罪となる場合もあります。

ケース3:長期間の海外滞在

永住権を持っている方が特別な理由なく長期間日本国外に滞在した場合にも、永住権が取り消されることがあります。一般的には一年以上日本を離れていると問題となることが多いです。

2009年7月には「特別再入国許可制度」ができました。これによって永住者は再入国許可を取得せずに出国ができ、出国から一年以内に再入国すれば永住権はそのまま保持されます。

永住権を失効してしまうケースとしては「期限を忘れてしまうこと」や「急な病気や事故など、家族の事情などで再入国できなくなってしまうこと」などが理由としては多いです。

ケース4:生活基盤の喪失

永住者が生活基盤を失った場合、たとえば安定した収入源がない、あるいは社会的に不適切な行為をくり返している場合などにも、永住権が取り消されることがあります。

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永住権とは? 取得できる外国人の条件、帰化や特別永住者との違い、採用するメリットなどをくわしく解説

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永住権が取り消されたら?

永住権が取り消されるまでの流れ

  1. 法務大臣が在留資格の取消を行う場合、まず出入国在留管理庁から「意見聴取通知書」が送付されます(緊急の場合は口頭の場合もあります)。
  2. 本人あるいは代理人が「意見聴取通知書」に記載された日時に指定場所に出向きます。陳述・証拠提出を実施。正当な理由がなく欠席した場合、在留資格が取り消されることがあります。出頭する日は調整することが可能です。
  3. 取消決定後、「在留資格取消通知書」が送付されます。
  4. 取消通知書には30日以内で出国日が指定され、行動範囲等の制限や条件が提示されます。
  5. 指定の期間内に出国しなければなりません。

退去強制手続及びの出国命令手続きの流れ

出典:出入国在留管理庁 「退去強制手続き及びの出国命令手続きの流れ

「意見聴取通知書」が送られてきたときは、記載された取消の原因と理由を確認し、心当たりがない場合は該当しないことを説明・立証しなければなりません。
また取消の原因と理由に該当しても、かならず在留資格が取り消されるわけではありません。

取消の原因と理由に該当するにいたった理由、反省の気持ち、日本に在留する必要性などが記された資料を提出して、資格を取り消さないように要望したり、在留特別許可を要望したりすることができます。

永住権の再取得は可能?

永住権を取り消されたあとで再取得することは可能です。
ただし特例に該当しない限り、ふたたび在留資格を取得して、10年在留などの要件をクリアする必要があります。

永住権をもう一度取得するための条件

条件となる項目内容
継続した在留期間通常は再申請する場合も、日本に継続して10年以上在留していることがもとめられます。このうち直近5年間は、就労資格または居住資格を持っている必要があります。
安定した収入と納税状況安定した収入があり、過去の納税義務を果たしていることが必要です。
法律を遵守していること過去に重大な法律違反や社会的な問題行動をしていないことがもとめられます。
身元保証人永住権の申請には、日本国内に居住する身元保証人が必要です。
健康状態健康であることも考慮される場合があります。

手続き

永住権の再申請手続きは通常の永住権申請手続きと同じで、出入国在留管理庁に必要書類を提出します。書類には在留カード、パスポート、収入証明書、納税証明書、身元保証人の情報などがふくまれます。

注意点

過去に永住権を取り消された理由が重大なものである場合、再申請が難しくなることがあります。とくに犯罪歴や重大な法律違反が原因で取り消された場合は、再取得の可能性が低くなるでしょう。

配偶者ビザを持つ人が離婚したらどうなる?

次に、いわゆる「配偶者ビザ」と呼ばれる在留資格を持つ方が離婚した場合の影響についてお話します。

配偶者ビザ

一般的に「配偶者ビザ」と称されるものには、主に以下の在留資格があります。

  • 「日本人の配偶者等」: 日本人と結婚している外国人の方など。
  • 「永住者の配偶者等」: 永住者や特別永住者と結婚している外国人の方など。

これらの在留資格は、その名の通り「配偶者としての身分や活動」を前提として許可されています。

離婚したら配偶者ビザは取り消しになる

日本人や永住者である配偶者と離婚または死別した場合には、14日以内にその旨を出入国在留管理庁長官に届け出る義務があります。離婚により配偶者としての身分を失った場合、原則として現在の在留資格のまま在留期間を更新することはできません。

その時、在留資格を「定住者」に変更するための許可申請をすることになります。

  • 実態のある結婚生活が三年以上あったこと。
  • 離婚後も独立して生計を営む資産又は技能を有すること。

以上の条件を満たしていた場合、定住者として引き続き日本に滞在することができます。

また、正当な理由なく配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合(別居など)には、在留資格が取り消される対象となります。

参照:e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」、出入国在留管理庁「在留資格『日本人の配偶者等』」、同庁「在留資格『永住者の配偶者等』

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おわりに

外国籍の方が日本で安定して活動するためには、在留資格に関する正しい理解が重要です。在留資格に関する知識を深め、必要な場合に的確な対応ができるよう備えておくことが大切です。当事者が直面する可能性のある状況を理解し、必要に応じて専門機関への相談を検討することが推奨されます。

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