外国人従業員の採用・雇用管理において、在留カードのコピーは不可欠な書類です。

しかし、その取り扱いには細心の注意が必要で、特に機微情報の保護を目的とした「マスキング」は企業にとって重要な対応となります。

本マニュアルでは、採用担当者が実務で迷うことなく適切なマスキングをおこなえるよう、具体的な推奨箇所、手順、そして安全な管理方法を分かりやすく解説します。

企業のコンプライアンス遵守と外国人従業員のプライバシー保護にお役立てください。

ガイダブルジョブス 外国人採用

Guidable Jobsのサービス概要資料のダウンロードはこちら>>

在留カードコピー取得時の基本ルールと機微情報の認識

外国人従業員を雇用する際、企業は法令に基づき適切な対応をおこなう必要があります。在留カードのコピー取得もその一環ですが、個人情報保護の観点から、その目的と取り扱いについて正しく理解しておくことが重要です。

なぜコピーが必要?在留カードコピー取得の法的根拠と利用目的の限定

企業が外国人従業員の在留カードのコピーを取得・保管する主な法的根拠と目的は以下の通りです。

  • 外国人雇用状況の届出義務(雇用対策法第28条): 事業主は、外国人労働者の雇入れおよび離職の際に、その氏名、在留資格、在留期間等をハローワークへ届け出る義務があります。この届出内容の確認のために在留カードの情報が必要となります。
    (参照: 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」
  • 不法就労防止のための確認: 出入国管理及び難民認定法では不法就労助長行為等が禁止されており、事業主は外国人を雇用する際、在留カード等により就労資格を慎重に確認することが求められています。

これらの目的を達成するために必要な範囲でコピーを取得し、目的外での利用は厳に慎む必要があります。

在留カードに潜む「機微情報(要配慮個人情報)」とは?~個人情報保護法の視点~

在留カードには多くの個人情報が記載されていますが、中には特に慎重な取り扱いが求められる情報も含まれます。個人情報保護法では、本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして「要配慮個人情報」が定められています(同法第2条第3項)。

在留カード記載情報のうち、例えば「国籍・地域」は、それ自体が直ちに要配慮個人情報に該当するわけではありませんが、人種や民族を推知させ、結果として差別や偏見に繋がる可能性があるため、要配慮個人情報に準じた慎重な取り扱いが推奨されます。

「性別」や「顔写真」なども、業務上の必要性が明確でない場合は、プライバシー性の高い情報として配慮が必要です。これらの情報を不必要に収集・保管・利用することは、プライバシー侵害や企業に対する法的責任、レピュテーションリスクに繋がる可能性があります。

マスキングは企業の責任!~安全管理措置としての推奨と社内ルール化~

現行法において、在留カードの特定箇所をマスキングすることが直接的に義務付けられているわけではありません。しかし、個人情報保護法は、事業者が取り扱う個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置(安全管理措置)を講じることを義務付けています(同法第23条)。

マスキングは、この安全管理措置の一環として、特に機微性の高い情報の漏えい等を防ぎ、外国人従業員のプライバシーを保護するために、実務上強く推奨される対応です。担当者任せにせず、社内で統一したマスキングルール(対象項目、方法、確認手順など)を策定し、関係者に周知徹底することが、コンプライアンス遵守と適切な情報管理に不可欠です。

✔︎ 関連コンテンツ

『在留資格ガイド』を無料ダウンロードする>>

在留カードの具体的なマスキング推奨箇所一覧

在留カードのコピーをマスキングする際の基本方針は、「就労資格の確認に不要」かつ「プライバシー性が高い」情報を対象とすることです。以下に、表面と裏面の推奨マスキング箇所とその理由を解説します。

マスキングすべきでない情報(就労資格確認等に必須)

以下の情報は、外国人従業員の就労資格や在留状況を確認するために不可欠ですので、マスキングしてはいけません。

  • 表面: 氏名、生年月日、在留カード番号、交付年月日、有効期間満了日、在留資格、在留期間、就労制限の有無(例:「就労不可」「指定書により指定された就労活動のみ可」等の記載)
  • 裏面: 資格外活動許可欄の「許可」の有無および許可されている時間の範囲(例:「原則週28時間以内」など)

在留カード【表面】のマスキング推奨箇所と理由

① 国籍・地域:

理由: 人種や民族を推知させる可能性があり、要配慮個人情報に準じた慎重な取り扱いが求められるため。就労資格の確認は在留資格でおこなうため、国籍情報は通常業務上不要です。

② 性別:

理由: 業務内容によって必要性が異なるため、明確な業務上の必要性がなければ、個人のプライバシーに関わる情報としてマスキングを検討します。

③ 顔写真(一部または全部):

理由: 本人確認が完了した後、コピーを業務で常時参照する必要性が低い場合。ただし、偽造防止や再確認の観点からマスキングしないという判断も企業方針によりあり得ます。マスキングする場合は、目元など個人識別性の高い部分を対象とすることが考えられますが、慎重な検討が必要です。

  • (参考)臓器提供意思表示欄:
    • 在留カードの表面デザインには直接ありませんが、裏面に記載があるため、その機微性を認識しておくことが重要です。

在留カード【裏面】のマスキング推奨箇所と理由

① 住居地記載欄(変更履歴部分):

理由: 最新の住居地は労務管理上必要な場合がありますが、過去の複数の転居履歴までを企業が常に把握する必要性は低いため。

② 資格外活動許可欄(許可された具体的な活動内容):

理由: 「許可」の有無と許可時間は確認が必要ですが、許可された具体的な活動場所の名称(例:以前のアルバイト先など)が自社の業務と無関係であれば、プライバシー保護の観点からマスキングを検討します。

③ 在留期間更新等許可申請欄(過去の申請スタンプの詳細):

理由: 「申請中」である旨のスタンプは在留状況の確認に重要ですが、過去の複数の申請履歴は、現在の在留資格が有効であれば通常業務上不要です。

④ 臓器提供に関する意思の記載欄:

理由: 生命倫理に関わる極めて機微な情報であり、業務上一切不要なため、確実にマスキングします。

(注意)個人番号(マイナンバー)の記載について:

    • 在留カードの裏面には、個人番号(マイナンバー)は記載されません。マイナンバーの取り扱いは別途厳格なルールがあるため、混同しないよう注意が必要です。

なぜこの箇所か?マスキング判断の根拠補足

マスキングの判断は、個人情報保護委員会の発行する「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」や関連Q&A、さらには企業の業種や業務内容、外国人従業員との信頼関係などを総合的に考慮しておこないます。基本は「業務上の必要最小限」の原則と「安全管理措置」の観点です。

人手不足対策!留学生採用と「在留カード」完全ガイド

✔︎ 関連コンテンツ

具体的なマスキング作業の手順と注意点

 

マスキング作業は、正確かつ丁寧におこなうことが重要です。物理的な方法とデジタルな方法のいずれか、または両方を活用できます。

物理的マスキングの実践:手軽で確実な方法

準備するツール例: 隠ぺい力の高い黒色の油性マーカー、幅広タイプの修正テープ、透けないマスキングテープや専用シール、マスキングスタンプなど。

手順例:

  1. 在留カードの鮮明なコピー(裏表)を用意します。
  2. 社内ルールに基づき、マスキングすべき箇所をリストなどで再確認します。
  3. 選択したツールを使い、該当箇所を丁寧に見えなくなるように塗りつぶすか、または覆います。文字が透けて見えないように注意が必要です。
  4. マスキング漏れや、逆に必要な情報まで隠してしまっていないか、複数人でダブルチェックをおこないます。

メリット: 特別なスキルや高価なソフトウェアが不要で、誰でも手軽に実施できます。

デメリット: 手作業のため、大量処理には時間と手間がかかる場合があります。修正が難しいこともあります。

デジタルマスキングの実践:効率的でデータ管理もしやすい方法(スキャンデータの場合)

使用するツール例: PDF編集ソフトウェア(例:Adobe Acrobat Proの「墨塗り」機能)、高機能な画像編集ソフトウェア(例:Photoshopの塗りつぶしツールやぼかしフィルター)。無料の画像編集ソフト(例:GIMP)でも対応可能です。

手順例:

  1. 在留カードをスキャナーで読み取り、PDFまたは画像ファイルとして保存します。
  2. 社内ルールに基づき、マスキングすべき箇所を再確認します。
  3. 選択したソフトウェアの機能(塗りつぶし、墨塗り、ピクセル化など)を使用し、該当箇所を確実にマスキング処理します。元情報が復元できないような処理方法を選択することが重要です。
  4. マスキング処理後のファイルは、元ファイルとは別名で保存し、アクセス権限を適切に設定します(元ファイルの取り扱いルールも社内で定めてください)。
  5. マスキング漏れや過度なマスキングがないか、画面上で複数人で確認します。

メリット: 大量処理に適しており作業効率が良いです。マスキングの品質を均一化しやすく、データでの保管・管理が容易になります。

デメリット: ソフトウェアの導入コストや操作スキルの習得が必要です。元データの取り扱いやデジタルデータのセキュリティ対策(不正アクセス防止など)が別途重要になります。

外国人採用の成功事例を無料でダウンロードする>>

マスキング作業時および保管・廃棄に関する重要チェックポイント

マスキング作業を適切に実施し、その後の個人情報管理を徹底するためには、いくつかの重要なポイントがあります。以下に主要なチェックポイントをまとめました。

  • 作業担当者の限定と教育: 個人情報を取り扱うことの重要性を十分に理解した担当者(例:人事・労務担当者)に作業を限定し、事前に社内ルールや作業手順に関する研修をおこないます。
  • マスキング漏れ・過剰マスキングの防止: マスキング箇所を明確にしたチェックリストを作成し、作業者と確認者によるダブルチェック体制を導入することを推奨します。
  • コピー・スキャンデータの品質確保: マスキング後も、就労資格確認に必要な情報(氏名、在留資格、在留期間等)が明確に読み取れる品質であることを確認します。不鮮明なコピーは再取得が必要です。
  • 保管場所とアクセス管理: マスキング済みのコピー(紙媒体・デジタルデータ共)は、施錠可能なキャビネットやパスワードで保護されたサーバー・フォルダなど、権限のない者が容易にアクセスできない安全な場所に保管します。
  • 保管期間と廃棄: 利用目的(例:外国人雇用状況の届出内容の確認)を達成した後は、関連法令で定められた保管期間(例:雇用対策法に基づく外国人雇用状況届出に関する書類は届出に係る離職又は雇入れの日の翌日から起算して3年間(※2025年5月16日現在。最新情報をご確認ください))が経過したら、復元不可能な方法(紙媒体はシュレッダー処理、デジタルデータは専門業者によるデータ消去や物理的破壊など)で確実に廃棄します。 (参照:厚生労働省「外国人雇用状況の届出」

まとめ

在留カードの適切なマスキング処理は、企業のコンプライアンス体制と外国人従業員のプライバシー保護を示す上で、実務上非常に重要な対応です。

本マニュアルで解説した推奨箇所や手順を参考に、ぜひ貴社でも明確な社内ルールを整備・運用してください。

これにより、外国人従業員との信頼関係を深め、より良い多文化共生職場を実現する一助となることを願っています。

日々の実務にお役立ていただき、安全かつ適正な外国人雇用を推進しましょう。

適切な採用手続きの次は、定着・活躍へ!

今なら、具体的なノウハウ満載の「外国人採用 成功事例集」を無料配布中!

成功企業のリアルな声から、採用後の育成や活躍のヒントを発見してみてください。

こちらから無料ダウンロード>>

ガイダブルジョブス 外国人採用 特定技能

[Guidable Jobs(ガイダブルジョブス)へのお問い合わせはこちら]

外国人採用ハンドブックを見てみる⇒資料はこちらから