外国料理屋の外国人たちってなんのビザ?

れ国人労働者はそれぞれ、従事する業務に該当する在留資格を取得して働いています。同じ飲食店で同じように勤務しているように見えても、お店のオーナー=経営者と調理師スタッフ、さらにはホールなどのアルバイト店員では所持している在留資格に違いがあるなど、実に様々。そこでこの記事では、外国料理屋に勤務する外国人労働者やその在留資格、注意点などを詳しく解説します。
目次
外国料理屋の外国人の現状とは歴史
食の国際交流と言っても過言ではないほど現在、日本国内には様々な外国料理専門店があります。中でも女性を中心に人気が高いのがタイ料理で、店舗数・売り上げともに堅調です。市場調査会社の富士経済によると、タイ料理など東南アジア料理の外食市場は2012年に650億円だった売上が、2019年の見込みでは727億円、また店舗数も1080店舗から約1350店舗に伸びるなど、年々拡大を続けています。
外国料理屋の従業員に関して言えば、「資格外活動(留学)」の在留資格を保有した外国人留学生のアルバイトは年々増加しており、人手不足の飲食業界では貴重な人材です。その一方で留学を装い、出稼ぎ目的で入国する外国人が多いことが問題となっています。
以前技能実習生として入国していた者が本国に帰国後、留学生として再入国することは認められておらず、ビザの取得はできません。外国人をアルバイトとして採用する際は、これまでの経歴をしっかりと確認することが大切です。事前に知らされていなかったとはいえ、雇用対象者が出稼ぎ目的の再入国者であることが発覚した場合、事業主側も入国管理局から厳重注意される事例が過去に実在しています。入念な確認は怠らないように気を付けましょう。
外国料理屋を経営している外国人とは?
外国料理屋を経営している外国人は、経営者として在留資格「経営・管理」を取得しなければなりません。経営管理ビザではオーナー自ら調理することができないことや申請の難しさがあり、特殊な在留資格とも言えます。ここでは、経営管理ビザとその申請方法について解説します。
経営管理ビザとは
法務省入国管理局のガイドラインによると、経営管理ビザとは「外国人が我が国において,事業を起こし,その経営又は管理に従事する場合に該当する在留資格」と記載されています。分かりやすくいいかえると「外国人が経営者として日本で事業を起こしたい場合は、在留資格『経営・管理』が必要ですよ」という内容です。
あくまで経営者としてのスタンスが求められるため、以前は料理人であったオーナーシェフでも料理人時代と同じように調理場で料理を作ることは「経営管理ビザ」では認められていません。料理人時代のように調理場でシェフとして調理をすると入管法違反となってしまうので注意が必要です。
経営管理ビザの特徴として挙げられるのが、申請件数の少なさと取得難易度の高さです。申請件数が少ない理由として、会社を設立しなければならないことが大きな障壁となっています。事業計画などの書類提出や審査基準が厳しいことが関係しており、仮に管理ビザの要件となっている500万円以上の出資金をつぎ込んで会社を設立しても、在留資格を取得できる保証はありません。日本で事業を起こしたい外国人としても、依頼を受ける行政書士としてもリスクが高い特殊な在留資格といえます。
申請方法は?
経営管理ビザを申請する場合、経営又は管理をする企業や団体の種類によって提出書類が異なり、そのカテゴリーは4つに分類されます。
<会社規模によるカテゴリー分けの基準>
- カテゴリー1:大手企業や公共団体で、許可が比較的おりやすい
- カテゴリー2:中規模の会社
- カテゴリー3:小規模会社
- カテゴリー4:新設法人などで、1から3に該当しない団体・個人が多い
経営管理ビザの申請件数の中で多くの割合を占めるのが、「カテゴリー4:新設法人」です。カテゴリー4のケースの経営管理ビザ申請方法を解説します。必要となるビザの要件は以下の通りです。
<経営管理ビザの要件>
①500万円以上の出資金
②2人以上の常勤の従業員(日本に)を雇用すること
③①または②に準ずる規模であると認められるものであること
投資額が500万円以上でありかつ500万円の投資額が維持されていることを証明できれば、「日本に居住する2人以上の常勤職員が従事する規模」と認められ、雇用対象はアルバイトスタッフでもよいとされています。また外国料理屋を起業する場合は、上記の要件に加えて以下の要件も満たさなければなりません。
<料理人として独立開業する場合の具体的要件>
①調理スタッフの確保が必須
②厨房や店内に調理用の器具や設備、椅子やテーブルが整っていること
③日本の飲食店営業許可免許を取得
経営管理ビザ申請の流れとは
①経営管理ビザの申請者本人または代理人が日本で定款の認証手続きを行い、その定款を添付して経営管理ビザ(4ヶ月)を取得する。
②経営管理ビザ(4ヶ月)の保有者として日本に入国、その後在留カードをもらい、取得した在留カードを提示して銀行口座を開設する。
③開設した銀行口座に資本金(500万円)の払い込みをする。常勤雇用者を2名以上雇わない場合には、この資本金の払い込みによって経営管理ビザの要件を満たすことが証明されます。
④会社設立の登記を行って、保有している経営管理ビザの4ヶ月の在留期限を1年に更新する在留資格更新申請を行います。
外国料理屋で働くコックは?
外国人自らがオーナーとして料理店を経営する場合は、在留資格「経営・管理」が必要ですが、厨房に立って調理師として働く場合は在留資格「技能ビザ」が必要です。ここでは、「経営・管理」よりも申請ケースが多い「技能ビザ」について解説します。
技能ビザとは
外国人の調理師やシェフを雇用する場合に必要となるのが在留資格「技能ビザ」です。例えばタイ料理店を営むオーナーが現地のシェフを日本に招いて雇用する場合、海外から来日するスタッフには技能ビザを取得してもらわなければなりません。技能ビザと言っても、単に料理が美味しいというだけで取得できるものではなく、一定の要件を満すことが求められることを覚えておきましょう。
申請方法は?
技能ビザの取得に際しては必要な要件と資料を揃えた後に、入国管理局にビザ申請を行います。様々な審査が絡むビザ申請は、専門の行政書士に依頼するのも一つの方法です。取得に関する要件をまとめました。
<技能ビザの取得要件>
- 外国料理専門店であること
- 実務経験が10年以上であること
調理師やシェフとして技能ビザを取得するための要件のうちの一つに「我が国において特殊なものを要する業務」とあります。どういうことかと言うと、料理のプロとして専門的に外国料理を作る料理人であるということ。そのため一般の家庭料理しか作ることができない場合、技能ビザの資格を取得することはできません。
例えば中華料理を例にすると、ラーメン店のようなお店は「特殊なものを要する業務」として認められない可能性が高いです。つまり技能ビザの取得要件の基準は、料理人がプロレベルの外国料理をふるまえる腕前があること、勤務する料理店が専門店であることが条件です。
実務経験が10年以上という要件に関してですが、ここでいう実務経験とは外国料理店でシェフや調理師として勤務していた期間のこと。また、調理の専門学校で勉強していた期間も「実務経験が10年以上」にカウントすることができる点はポイントとして抑えておきましょう。
例えば専門学校で3年間勉強した後、7年間調理師として勤務していた場合は通算して10年の実務要件を満たすことが可能。提出書類としては、働いていたことを証明するための在職証明書などが必要となります。
ただし、タイ人料理人の場合、実務経験は「5年」とされる例外が認められます。
<タイ料理人のビザ取得要件>
- タイ料理人として実務経験が5年以上であること
- 初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書
- 過去1年間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な額の報酬を受けていたことを証明する資料
外国料理屋で働く外国人らについて詳しくなりましたか?
同じ飲食店で同じように勤務しているように見えても、外国人労働者はそれぞれ、従事する業務に該当する在留資格を取得して働いています。また雇用する側、される側でも取得資格が異なる点にも注意が必要。経営者の立場であるお店のオーナーと調理師スタッフ、さらにはアルバイト店員では所持する在留資格に違いがあり、内容をよく理解していないと違法行為となってしまうため気を付けましょう。